独立行政法人における関連法人の状況について、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、独立行政法人から特定関連会社等への出資は独立行政法人の業務の目的に沿った適切なものとなっているか、独立行政法人が関連法人と締結している契約は競争性及び透明性が確保された適切なものとなっているか、関連法人に係る情報開示は財務状況の透明性が確保されるよう適切に行われているかなどに着眼して検査を実施した。
特定関連会社等へ出資している独立行政法人は24年度末において9法人であり、出資先である特定関連会社等の数は192法人、また、これらの特定関連会社等に対する出資残高は計4909億余円となっていた(3(2)アリンク参照)。
独立行政法人の出資先である特定関連会社等について、株式を処分して出資金を回収するなどの適切な措置を執る必要があると認められたり、出資対象事業が終了した後、特定関連会社等の行う事業が大きく変更されたりしている事態が見受けられた(3(2)イリンク参照)。
9独立行政法人の出資先である192特定関連会社等について、24年度末における利益剰余金、繰越欠損金等の状況を確認したところ、利益剰余金を計上しているのは73特定関連会社等、繰越欠損金を計上しているのは119特定関連会社等であり、119特定関連会社等のうち10法人が債務超過となっていた。
また、特定関連会社等が保有している社債等の中には、投資先が債務不履行に陥ったために、時価が取得価額を大幅に下回っている社債や、時価が評価できない外債も見受けられた(3(2)ウリンク参照)。
9独立行政法人の192特定関連会社等のうち、6独立行政法人の18特定関連会社等が配当を行った実績があり、6独立行政法人が受け取った配当金の累計額は、計1140億余円に上っていた。一方、利益を計上していても利益剰余金の額が少額であり配当を行う余力がないなどとしている特定関連会社等も見受けられた。
また、特定関連会社等に出資しているほとんどの独立行政法人は、特定関連会社等の株式を処分して出資金を回収するかどうかを判断するための具体的な判断基準等を定めていなかった(3(2)エリンク参照)。
20年度から24年度までの各年度末において独立行政法人と契約を締結している関連法人のうち、特定関連会社及び関連会社の数はいずれも横ばい傾向となっていたが、関連公益法人等の数は、独法見直し方針に基づく事務・事業の見直しが行われたことなどにより、近年大幅に減少している。
独立行政法人と関連法人との間で締結している契約については、競争性のある契約方式による契約の占める割合が増加していた。
また、各独立行政法人は、独法見直し方針等に基づいて、合理的な調達を実施すべく様々な取組を行っているが、随意契約(特命等)によることの合理性があると考えられる契約について、公告、入札、公募等の手続が必要となる一般競争入札等に付しているものが見受けられた(3(3)アリンク参照)。
契約監視委員会は、20年度に締結した随意契約等に加え、21年度以降に新たに締結した随意契約等についても、点検及び見直しを行っていた(3(3)イリンク参照)。
全役員数に占める独立行政法人の役職員経験者数の割合である在職率を関連法人の種別ごとに比較すると、特定関連会社における在職率が、関連会社及び関連公益法人等における在職率と比較して高くなっているなどの状況が見受けられた(3(3)ウリンク参照)。
独立行政法人は、会計基準に基づき、連結財務諸表において、関連法人情報を開示しなければならないこととなっているが、連結財務諸表を作成しない場合における特定関連会社等の関連法人情報に係る情報開示については、情報の有用性を踏まえた自主的な判断に基づき、個別財務諸表において情報開示を行っている独立行政法人と、会計基準等において明文の規定が設けられていないなどのことから情報開示を行っていない独立行政法人があり、ばらつきが生じていた(3(4)アイリンク参照)。
独立行政法人が、取引先等の公益法人等について、関連公益法人等に該当するかどうかを判断するに当たって、調査の対象とする公益法人等の範囲を限定していたり、公益法人等の事業収入、独立行政法人との取引額、助成金等の額等を適切に判断していなかったり、公益法人等の財務及び事業運営の方針決定に重要な影響を与えることができないことが明らかには示されていないのに、重要な影響を与えることができないことが明らかであると判断したりするなどして、関連公益法人等に該当しないとしていた独立行政法人が見受けられた(3(4)ウリンク参照)。
24年度末において特定関連会社を有する7独立行政法人は、監事監査規程等を整備していたものの、特定関連会社に対する調査について監事監査規程等において定めていたのは、7独立行政法人のうち3独立行政法人のみとなっていた(3(4)エリンク参照)。
独立行政法人は、国の一般会計や特別会計からの出資金を主な財源として、関連法人に対して多額の出資を行ったり、国から独立行政法人に対して毎年度交付されている運営費交付金を主な財源として、物品、役務等の調達を行って、その対価を支払ったりなどしている。
以上の検査の状況を踏まえて、独立行政法人及び関連法人における業務運営のより経済的、効率的及び効果的な実施を図るため、独立行政法人においては次の点に十分留意すること、主務府省においては独立行政法人が十分留意することとなるよう引き続き努めていくことが必要である。
(ア) 出資後相当の期間が経過し、特定関連会社等において、出資対象事業が順調に実施され、利益剰余金が発生していて、独立行政法人が特定関連会社等の株式を全部又は一部処分したとしても出資対象事業を継続していくことが可能となっているなどの場合、出資目的の達成状況を踏まえて、特定関連会社等の株式を処分することなどにより出資金の回収を図ることを十分に検討して適切な措置を執ること、また、特定関連会社等の行う事業が大きく変更されるような場合、その後の出資金の回収についての見通しなどを踏まえつつ、慎重に対応を検討すること
(イ) 特定関連会社等が投資目的で保有する有価証券に損失が生ずることにより独立行政法人からの出資金が毀損される結果となることを極力回避するように、出資者として、特定関連会社等に適切な運営等を求めること
(ウ) 特定関連会社等の株式を処分して出資金を回収するかどうかを判断するための具体的な判断基準等を定め、これに基づいて出資金の回収を行うことにより資金の有効活用を図ること
契約方式の選定に当たって、契約の競争性及び透明性が真に確保されているかどうかについて一層留意するとともに、随意契約(特命等)によることの合理性があると考えられる契約については、一律に一般競争入札等に移行させるのではなく、透明性を確保しつつ、一般競争入札等に要する事務処理量の増加、契約締結や成果物納入までに必要となる期間等も勘案した上で、合理的な調達になるよう取り組むこと
(ア) 独立行政法人における財務報告の目的を踏まえて、連結財務諸表を作成しない場合における特定関連会社等の関連法人情報について、情報開示の一層の促進に努めること
(イ) 会計基準等の趣旨や企業会計での取扱いを踏まえた会計基準等の適正な解釈に基づき、関連公益法人等に該当するかどうかの調査及び判断を適切に行うこと
会計検査院としては、独立行政法人が多額の国費を財源として業務運営を行っており、その徹底した効率化、透明化等を図ることが求められていること、さらに、27年4月に施行される改正通則法により、独立行政法人の業務運営の一層の適正化が求められていることを踏まえつつ、独立行政法人及び関連法人における業務の状況等について、今後とも多角的な観点から引き続き検査していくこととする。