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独立行政法人における関連法人の状況について


3 検査の状況

(1) 関連法人の数の推移

独立行政法人は、通則法、会計基準等に基づき、財務諸表において、関連法人に係る情報を開示しなければならないこととなっている。

そのため、独立行政法人は、財務諸表の作成に当たり、出資及び取引の相手方が関連法人に該当するかどうかを判断する必要があることから、次の①から③までのような調査を行っている。

① 出資については、出資先法人に対する年度末における議決権の所有割合を当該出資先法人の事業報告書等により確認する。

② 取引については、年度内における各取引先法人との間の取引額を集計した上で、取引先法人に調査票を送付して回答を得るなどの方法により、当該年度における取引先法人の事業収入を確認する。

③ 出資先法人又は取引先法人の役員数や当該独立行政法人の役職員経験者の有無については、出資先法人又は取引先法人に調査票を送付して回答を得るなどの方法により確認する。

そして、このような調査の結果を踏まえて、20年度から24年度までの各年度末において、各独立行政法人が関連法人に該当すると判断した法人の数及びそれらの関連法人を有する独立行政法人の数は表3のとおりとなっている(独立行政法人ごとの内訳については巻末別表1参照。また、独立行政法人ごとの関連公益法人等の内訳については巻末別表2参照。)。

表3 関連法人に該当すると判断した法人の数及びそれらの関連法人を有する独立行政法人の数

(単位:法人)
関連法人の種別 平成20年度末 21年度末 22年度末 23年度末 24年度末
特定関連会社 45 41 38 38 35
  特定関連会社を有する独立行政法人 8 7 7 7 7
関連会社 172 172 175 179 177
  関連会社を有する独立行政法人 7 7 7 7 7
関連公益法人等 H3-CHU1注(1) 144 147 131 73 80
  関連公益法人等を有する独立行政法人 30 29 26 22 22
関連法人 H3-CHU1注(1) 361 360 344 290 292
関連法人を有する独立行政法人 H3-CHU2注(2) 33 31 29 24 26
注(1)
「関連公益法人等」欄及び「関連法人」欄は、複数の独立行政法人が同一の公益法人等を関連公益法人等としている場合には、当該公益法人等を複数の関連公益法人等として集計しているため、関連公益法人等又は関連法人の実数とは一致しない。
注(2)
「関連法人を有する独立行政法人」欄は、1独立行政法人が複数の種別の関連法人を有する場合であっても1独立行政法人として集計しているため、関連法人の種別ごとの独立行政法人の数の合計とは一致しない。

各独立行政法人が関連法人に該当すると判断した法人は、20年度末の361法人から24年度末の292法人と69法人減少している。

このうち、特定関連会社については、20年度末の45法人から24年度末の35法人と10法人減少し、関連会社については、20年度末の172法人から24年度末の177法人と僅かに増加している。また、関連公益法人等については、20年度末の144法人から24年度末の80法人と大きく減少している。この主な要因は、高齢・障害・求職者雇用支援機構において、独法見直し方針に基づき事務・事業の見直しを行い、それまで関連公益法人等への委託により実施していた雇用安定事業等を23年度以降は自ら実施することとしたことなどのために、同機構が有する関連公益法人等の数が22年度末の48法人から23年度末の3法人と大幅に減少したことや、各独立行政法人が関連公益法人等との間で締結していた随意契約が整理合理化計画等に基づいて一般競争入札等の契約方式に切り替えられたことにより、関連公益法人等に該当していた法人の一部において、独立行政法人との取引額が減少して関連公益法人等に該当しなくなったことなどによるものである。

(2) 特定関連会社等への出資等の状況

ア 特定関連会社等への出資

24年度末において、特定関連会社等に対する出資残高を有している独立行政法人は、9独立行政法人(注3)となっている。これらは、いずれも特殊法人等が行っていた出資に係る権利等を承継した独立行政法人であり、このうち、一部の独立行政法人においては、新たな出資も行っている。そして、これらの出資に係る財源は、国からの出資金、保有していた株式を処分して得た対価等となっている。

9独立行政法人について、15年度から24年度までの各年度末における出資残高の推移をみたところ、表4のとおりとなっていた。

(注3)
9独立行政法人  情報通信研究機構、国際協力機構、医薬基盤研究所、農業・食品産業技術総合研究機構、農畜産業振興機構、情報処理推進機構、石油天然ガス・金属鉱物資源機構、中小企業基盤整備機構、都市再生機構

表4 出資残高の推移(平成15年度末から24年度末まで)

(単位:百万円)
独立行政法人名 年度末出資残高
平成15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度
情報通信研究機構 2,350 2,000 2,000 800 800 800 800 800 800
国際協力機構 1,000 1,000 1,000 1,000 137,194 125,644 125,644 114,715 97,321
医薬基盤研究所 17,815 17,092 11,141 8,429 8,429 6,794 5,310 5,310
農業・食品産業技術総合研究機構H4-CHU(注) 21,408 15,284 15,428 11,843 8,408 6,191 5,342 3,871 3,871 3,871
農畜産業振興機構 10,024 10,024 10,024 9,124 9,289 9,289 8,789 8,614 8,614 8,614
情報処理推進機構 7,200 7,200 6,800 6,800 6,800 5,600 5,600 5,600 5,600 5,200
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 19,648 63,850 64,895 70,797 83,473 103,580 112,696 159,678 220,679 306,612
中小企業基盤整備機構 56,442 55,192 55,050 54,250 54,227 53,587 52,987 51,957 50,914
都市再生機構 12,481 12,471 12,431 12,431 12,431 12,431 12,261 12,261 12,261
59,281 168,633 185,628 186,139 186,593 337,743 333,319 376,250 423,808 490,905
(注)
農業・食品産業技術総合研究機構の平成15年度末から17年度末までの出資残高は、同機構の前身の独立行政法人である農業・生物系特定産業技術研究機構の出資残高を計上している。

9独立行政法人のうち7独立行政法人において出資残高が減少傾向にある一方で、石油天然ガス・金属鉱物資源機構においては、石油の探鉱等に必要な資金に対する出資が累増していた(15年度末出資残高に対する24年度末出資残高の増加額2869億余円)。また、国際協力機構においては、20年10月に、国際協力銀行が出資していた法人の株式(株式に係る出資額1378億余円)を承継したことから出資残高が増加していた。これらのため、9独立行政法人の出資残高の合計も増加している状況となっていた(15年度末出資残高に対する24年度末出資残高の増加額4316億余円)。

また、24年度末において、9独立行政法人の出資先である特定関連会社等の数は、計192法人となっている。9独立行政法人の中には、中小企業基盤整備機構(81法人)、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(50法人)等のように多数の特定関連会社等に出資している独立行政法人が見受けられる一方で、情報通信研究機構(2法人)及び医薬基盤研究所(1法人)のように出資先である特定関連会社等が少数の独立行政法人も見受けられた(特定関連会社等の一覧については巻末別表3参照)。

なお、9独立行政法人のうち5独立行政法人は、24年度末において、特定関連会社等以外の会社計28法人に対して出資しており、これらの出資残高は計96億余円となっている。上記の28法人が特定関連会社等とされていないのは、いずれも議決権の所有割合が100分の20未満であって、独立行政法人が財務及び事業運営の方針決定に重要な影響を与えることができないと判断しているためである。

イ 特定関連会社等に対する出資目的、出資対象事業の実施状況等

(ア) 特定関連会社等に対する出資目的等

9独立行政法人について、特定関連会社等に対する出資目的、個別法に新たな出資を行うための規定があるかどうかなどについてみたところ、表5のとおりとなっていた(出資目的等の詳細については巻末別表4参照)。

表5 9独立行政法人における出資目的等の概要

独立行政法人名 出資目的の概要 規定の有無(注) 出資残高(平成24年度末)
情報通信研究機構 有線テレビジョン放送番組充実事業等の実施に必要な資金等のための出資 8億円
国際協力機構 我が国又は開発途上地域の法人等が行う開発事業の遂行等のために行う出資 973億余円
医薬基盤研究所 民間において行われる医薬品技術に関する試験研究に必要な資金のための出資 × 53億余円
農業・食品産業技術総合研究機構 高性能な農業機械の実用化を促進する事業を実施する者に対する当該事業の実施に必要な資金等のための出資 38億余円
農畜産業振興機構 農畜産業及びその関連産業の健全な発展等に寄与することを目的とする出資 × 86億余円
情報処理推進機構 ソフトウェア供給力開発事業に必要な資金のための出資 × 52億円
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 海外及び本邦周辺の海域における石油等の探鉱、採取に必要な資金等のための出資 3066億余円
中小企業基盤整備機構 中心市街地の活性化を図ることなどに必要な資金のための出資 509億余円
都市再生機構 再開発事業により建設した事務所、店舗等の施設管理に係る業務等を行うために設立した会社等に対する出資 122億余円
(注)
「規定の有無」欄については、個別法に新たな出資を行うための規定がある場合には「○」、個別法に新たな出資を行うための規定がなく、特殊法人等から承継した出資に係る権利等の管理及び処分のみを行っている場合には「×」をそれぞれ記載している。

9独立行政法人のうち8独立行政法人においては、他の法人が行う事業に必要な資金を供給する目的で出資を行っている一方で、都市再生機構のように、他の法人に独立行政法人の業務の一部を代行させるのに必要な資金等を供給する目的で出資を行っている独立行政法人も見受けられた。

また、個別法に新たな出資を行うための規定があるかどうかなどについてみると、個別法に基づき新たな出資を行っている独立行政法人と、個別法に新たな出資を行うための規定がなく、特殊法人等から承継した株式の管理及び処分のみを行っている独立行政法人が見受けられた。

(イ) 出資対象事業の実施状況等

前記のとおり、独立行政法人が行う出資は、国の一般会計及び特別会計からの出資金を主な財源として行われている。そのため、資金の有効活用を図るなどの観点から、独立行政法人が出資した資金を用いて実施される特定関連会社等の事業(以下「出資対象事業」という。)の実施状況について、独立行政法人は、出資対象事業を取り巻く社会経済情勢等の変化を考慮の上、適宜フォローアップを行って、必要に応じて適切な措置を執ることが重要となる。

そこで、9独立行政法人の出資先である192特定関連会社等について、出資対象事業の実施状況等をみたところ、農畜産業振興機構において、特定関連会社等の株式を処分して出資金を回収するなどの適切な措置を執る必要があると認められる事態が、また、医薬基盤研究所において、出資対象事業が終了した後、特定関連会社等の行う事業が大きく変更されている事態が、それぞれ事例1事例2のとおり見受けられた。

<事例1> 株式を処分して出資金を回収するなどの適切な措置を執る必要があるもの

農畜産業振興機構(以下「機構」という。)は、平成15年10月に、よつ葉乳業株式会社(以下「よつ葉乳業」という。)の非上場株式9,000株(取得価額9億円)を畜産振興事業団から承継して関係会社株式として保有している。

上記の株式9,000株のうち4,000株は、配当が他の普通株主に劣後する条件となっている後配株式であり、畜産振興事業団が、昭和48年によつ葉乳業の全脂濃縮乳部門に寄与する目的で取得した普通株式について、全脂濃縮乳部門における損失の状況及び経営に与える影響を勘案して、50年の株主総会での議決を経て後配株式に転換されたものである。また、残りの5,000株は、畜産振興事業団が、55年に国産ナチュラルチーズ部門に寄与する目的で取得した後配株式であったが、平成23年3月に、今後とも当該部門の損益の安定化が継続するとの見通しの下で、普通株式に転換されている。

よつ葉乳業の近年の経営状況をみたところ、各部門を合わせた会社全体の決算において、18年度から24年度まで継続して当期純利益を計上しており、24年度当期純利益は20億余円、24年度末利益剰余金は238億余円となっていた。

一方、機構が保有する株式9,000株は、譲渡制限株式であり、かつ、このうち4,000株は後配株式ではあるものの、24年度末における実質価額(当該法人の純資産額に独立行政法人の出資割合を乗じて得た額)は78億余円(必ずしも譲渡を行う際の価額とは一致しない。)となっていた。また、24年度における普通株式5,000株への配当が1株当たり5,000円、計2500万円となっているが、機構が保有する後配株式4,000株については、過去全く配当が行われていない状況となっている。

そして、後配株式に係る出資が行われた全脂濃縮乳部門については、昭和48年以降累積欠損金を生じているが、普通株式に係る出資が行われた国産ナチュラルチーズ部門については、事業が継続して、損益の安定化が継続するとの見通しとなっており、よつ葉乳業の経営は近年順調に推移していて、多額の利益剰余金を保有するに至るなどしている。

これらのことから、よつ葉乳業においては、出資目的が達成され、かつ、当該株式をよつ葉乳業に譲渡して処分するなどしても、その事業を継続していくことが可能となっていると認められた。

なお、機構は、会計検査院の検査を踏まえて、機構が保有する後配株式を普通株式に転換する条件を整理するとともに、機構が保有するよつ葉乳業の株式の処分等についてよつ葉乳業と検討を行っている。

<事例2> 出資対象事業が終了した後、特定関連会社等の行う事業が大きく変更されているもの

医薬基盤研究所は、平成17年4月の設立時に、株式会社ディナベック研究所(以下「ディナベック研究所」という。)の株式を取得している。この株式は、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(以下「機構」という。)が7年3月から16年2月までの間に計53億1000万円を出資して得たディナベック研究所の株式を医薬品医療機器総合機構が承継し、さらに医薬基盤研究所が承継したものである(医薬基盤研究所の承継時における再評価後の価額は2億6802万余円)。

この機構からの出資は、遺伝子治療製剤の研究開発を目的とするものであり、ディナベック研究所は、当該出資によって得た資金を財源として、研究開発事業を実施していた。

ディナベック研究所は、研究開発事業の終了後、ディナベック研究所の設立者が15年9月に新たに設立したディナベック株式会社(以下「新ディナベック」という。)と、機構の了承を得て、16年4月に特許実施許諾契約を締結して、研究開発事業の成果としてディナベック研究所が登録していた特許権等に関する専用実施権等を新ディナベックに許諾することとし、代わりに、許諾された特許権等に基づく新ディナベックの売上の一部をディナベック研究所にロイヤリティとして支払うこととした。また、ディナベック研究所の保有していた貯蔵品等は新ディナベックに譲渡され、ディナベック研究所は、従業員のいない特許の管理のみを行う会社となっている。

医薬基盤研究所が保有するディナベック研究所の株式の実質価額(当該法人の純資産額に独立行政法人の出資割合を乗じて得た額)は、出資残高53億1000万円に対して24年度末で5572万余円となっていた。そして、上記のロイヤリティ等の収入による当期純利益は、23年度167万余円、24年度410万余円となっており、今後はこのような当期純利益により欠損金を補塡していくことが見込まれている。

また、機構が出資金の早期回収を図るためには、ディナベック研究所が直接特許権等を使用して新たな事業を行うことも選択肢として考えられたが、機構がこのことの是非について検討を行っていたことを示す記録は、医薬基盤研究所には残されていない。

出資後相当の期間が経過し、特定関連会社等において、出資対象事業が順調に実施され、利益剰余金が発生していて、独立行政法人が特定関連会社等の株式を全部又は一部処分したとしても出資対象事業を継続していくことが可能となっているなどの場合、独立行政法人において、出資目的の達成状況を踏まえて、特定関連会社等の株式を処分することなどにより出資金の回収を図ることを十分に検討して適切な措置を執ることが求められる。また、特定関連会社等の行う事業が大きく変更されるような場合、独立行政法人において、その後の出資金の回収についての見通しなどを踏まえつつ、慎重に対応を検討することなどが求められる。

ウ 出資先である特定関連会社等の決算等の状況

(ア) 出資先である特定関連会社等の決算の状況

9独立行政法人の出資先である192特定関連会社等について、24年度末における利益剰余金、繰越欠損金等の状況を確認したところ、表6のとおり、利益剰余金を計上しているのは73特定関連会社等、繰越欠損金を計上しているのは119特定関連会社等であり、119特定関連会社等のうち10法人が債務超過となっていた。

表6 特定関連会社等における利益剰余金等の状況(平成24年度末)

(単位:法人)
独立行政法人名 利益剰余金を計上し ている特定関連会社 等 繰越欠損金を計上している特定関連会社等  
うち債務超過となっている特定関連会社等
情報通信研究機構 0 2 0 2
国際協力機構 4 3 0 7
医薬基盤研究所 0 1 0 1
農業・食品産業技術総合研究機構 0 5 1 5
農畜産業振興機構 13 6 0 19
情報処理推進機構 4 9 0 13
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 11 39 6 50
中小企業基盤整備機構 29 52 3 81
都市再生機構 12 2 0 14
73 119 10 192

9独立行政法人のうち、国際協力機構、農畜産業振興機構及び都市再生機構においては、利益剰余金を計上している特定関連会社等の数が繰越欠損金を計上している特定関連会社等の数を上回っている。これらの特定関連会社等が利益剰余金を計上している要因は次のとおりであった。

① 国際協力機構については、特定関連会社等が、大規模なナショナルプロジェクトとして海外の合弁会社等に直接又は間接的に出資したところ、当該プロジェクトが軌道に乗って、合弁会社等から配当金を受け取ることで利益を計上していたこと

② 農畜産業振興機構については、畜産物の流通等の事業を行っていた特定関連会社等が、少額ではあるが利益を積み重ねてきたこと

③ 都市再生機構については、特定関連会社等が同機構からの業務委託事業等や、ニュータウン地区の商業施設に入居しているテナントからの賃貸料収入等により安定して利益を計上していたことなど

なお、利益剰余金を計上している特定関連会社等のうち、国際協力機構の1法人、農畜産業振興機構の3法人及び都市再生機構の1法人は、出資対象事業が不調だったことなどにより発生した繰越欠損金を減少させるなどのために、24年度までに減資を行っている。そして、このうちの国際協力機構の1法人及び農畜産業振興機構の3法人については、減資した額より24年度末における利益剰余金の額の方が小さいことから、仮に減資を行っていなかったとすると、24年度末において繰越欠損金を計上していた可能性がある。

一方、情報通信研究機構、医薬基盤研究所、農業・食品産業技術総合研究機構、情報処理推進機構、石油天然ガス・金属鉱物資源機構及び中小企業基盤整備機構については、繰越欠損金を計上している特定関連会社等の数が利益剰余金を計上している特定関連会社等の数を上回っている。これらの特定関連会社等が繰越欠損金を計上している要因は次のとおりであった。

① 情報通信研究機構、情報処理推進機構及び中小企業基盤整備機構については、地方公共団体の出資を受けた第3セクターである特定関連会社等において、地域の経済的事情の変化等により出資対象事業が軌道に乗らなかったことなど

② 医薬基盤研究所及び農業・食品産業技術総合研究機構については、研究開発事業に必要な資金の出資を受けた特定関連会社等において、研究開発費用に見合う収益が上がらなかったこと

③ 石油天然ガス・金属鉱物資源機構については、石油の探鉱等に必要な資金の出資を受けた特定関連会社等において、探鉱中であり収益が得られていないこと

なお、債務超過となっている10特定関連会社等について、その一例を示すと、次のとおりである。

<事例3> 債務超過となっているもの

中小企業基盤整備機構(以下「機構」という。)は、平成16年7月の設立時に、中小企業総合事業団から、商店街の近代化、活性化を図るためにコミュニティプラザ及び共同店舗を設置する目的で中小企業事業団が4年12月に3億円を出資した株式会社松阪街づくり公社(以下「公社」という。)の株式を承継している。

公社は、出資を受けた資金等によりコミュニティプラザ、駐車場施設等を整備しているが、当初の計画ほど駐車場の利用が伸びなかったことなどにより、経営状況が悪化したことなどから、繰越欠損金を解消して企業信用力の向上を図るなどのため、17年12月に資本金を12億2000万円から9760万円にする減資を行った。

しかし、公社は、24年度決算においても、当期純損失が301万余円で、資本金9760万円に対して繰越欠損金は4億8129万余円と債務超過となっていて、24年度末における機構の貸借対照表上の公社の株式の価額は0円となっている。

なお、機構は、公社に融資又は出資を行っている三重県及び松阪市、公社等と協議を実施するなどして、経営状況の改善を促しているところである。

(イ) 資産の運用状況等

特定関連会社等の中には、子会社を支配するなどの目的で株式を保有したり、余裕金の運用の一環として、投資等の目的で、株式、社債、外貨建てなどの外国債券(以下「外債」という。)、仕組債(注4)又は国債等の公債を保有したりしているものがある。これらの有価証券は、金融市場や為替市場の状況によってその価値が変動するものであり、価値の下落により独立行政法人からの出資金が毀損され、独立行政法人の財務状況にも影響を及ぼす結果となる可能性がある。

(注4)
仕組債  為替相場の変動等に応じて債券の利率が変化する条件で発行された債券

そこで、9独立行政法人の出資先である192特定関連会社等が24年度末に保有している有価証券の状況について、特定関連会社等の貸借対照表の「投資有価証券」、「関係会社株式」等の科目の内訳を確認したところ、8独立行政法人の105特定関連会社等において、これらの科目に有価証券が計上されていた。

そこで、独立行政法人ごとに、特定関連会社等が貸借対照表のこれらの科目に計上している有価証券について、その種別ごとの計上額をみたところ、表7のとおりとなっていた。

表7 105特定関連会社等が保有している有価証券の貸借対照表への計上額(平成24年度末)

(単位:法人、百万円)
独立行政法人名 株式   社債、外債、仕組債   国債、地方債、政府 保証債等
うち投資等の目的で 保有している株式 うち外債及び仕組債
特定関連会社等数 貸借対照表計上額 特定関連会社等数 貸借対照表計上額 特定関連会社等数 貸借対照表計上額 特定関連会社等数 貸借対照表計上額 特定関連会社等数 貸借対照表計上額
情報通信研究機構 0 - 0 - 0 - 0 - 1 101
国際協力機構 6 172,889 0 - 0 - 0 - 0 -
農業・食品産業技術総合研究機構 0 - 0 - 1 221 1 100 1 492
農畜産業振興機構 13 1,253 1 0 0 - 0 - 1 100
情報処理推進機構 0 - 0 - 2 327 2 114 3 460
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 15 144,993 1 2 0 - 0 - 1 13
中小企業基盤整備機構 35 249 5 140 9 2,333 4 826 24 10,210
都市再生機構 7 1,005 1 576 0 - 0 - 2 5,040
76 320,391 8 719 12 2,882 7 1,040 33 16,419

株式を保有していたのは、5独立行政法人の76特定関連会社等で、貸借対照表への計上額は計3203億余円となっていた。また、株式のうち、特定関連会社等が自らの子会社を支配するなどの目的で保有しているものが、3196億余円とほとんどを占めているが、4独立行政法人の8特定関連会社等においては、投資等の目的で保有している株式(以下「投資目的の株式」という。)があり、その貸借対照表への計上額は計7億余円となっていた。

なお、国際協力機構及び石油天然ガス・金属鉱物資源機構の特定関連会社等が投資等以外の目的で保有している多額の株式は、特定関連会社等が資源開発等を行わせる目的で海外の合弁会社等に出資を行って取得したものである。

一方で、これらの有価証券のうち、社債、外債又は仕組債(以下、これらを合わせて「社債等」という。)を保有していたのは、3独立行政法人の12特定関連会社等で、貸借対照表への計上額は計28億余円となっていた。また、これらのうち、外債及び仕組債については、高い利率で配当を受け取ることなどが期待できる一方で、為替相場の変動等により実質利回りが変化したり、投資元本が損なわれたりするおそれがあるが、3独立行政法人の7特定関連会社等が外債及び仕組債を保有しており、その貸借対照表への計上額は計10億余円となっていた。

そして、投資目的の株式又は社債等を保有しているのは、6独立行政法人の19特定関連会社等であり、このうちの1特定関連会社等は、投資目的の株式と社債等の両方を保有している。これらの投資目的の株式及び社債等について、24年度末における時価が取得価額と比較してどのようになっているかについて独立行政法人ごとにみたところ、表8のとおりとなっていた。

表8 特定関連会社等が保有している投資目的の株式及び社債等の状況(平成24年度末)

(単位:法人、百万円)
独立行政法人名 時価と取得価額との比較 投資目的の株式 社債等
外債及び仕組債を除く 外債及び仕組債
特定関連会社等数 時価 取得価額 特定関連会社等数 時価 取得価額 特定関連会社等数 時価 取得価額 特定関連会社等数 時価 取得価額
農業・食品産業技術総合研究機構 時価 取得価額 0 - - 1 0 0 1 100 100 1 100 100
0 - - 1 121 121 1 - 99 1 121 221
農畜産業振興機構 時価 取得価額 0 - - 0 - - 0 - - 0 - -
1 0 30 0 - - 0 - - 1 0 30
情報処理推進機構 時価 取得価額 0 - - 1 203 200 2 105 102 2 308 302
0 - - 1 10 20 1 9 10 2 19 30
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 時価 取得価額 1 1 1 0 - - 0 - - 1 1 1
1 0 3 0 - - 0 - - 1 0 3
中小企業基盤整備機構 時価 取得価額 4 123 106 6 1,451 1,402 4 586 580 11 2,162 2,088
2 10 20 2 99 100 2 215 250 6 325 370
都市再生機構 時価 取得価額 1 520 175 0 - - 0 - - 1 520 175
1 56 300 0 - - 0 - - 1 56 300
時価 取得価額 6 645 282 8 1,654 1,602 7 792 782 H8-CHU1注(1) 16 3,092 2,667
5 67 353 4 230 241 4 224 359 H8-CHU1注(1) 12 523 954
注(1)
時価が取得価額以上となっている16法人及び時価が取得価額を下回っている12法人の中に重複している特定関連会社等が9法人あるため、投資目的の株式又は社債等を保有している特定関連会社等の数は19法人となっている。
注(2)
特定関連会社等が保有している有価証券の中には貸借対照表上への計上額と時価とが一致しないものがあるため、時価と表7の貸借対照表への計上額とは必ずしも一致しない。

時価が取得価額以上となっているのは16特定関連会社等で、時価が計30億余円、取得価額が計26億余円、評価差額が計4億余円、また、時価が取得価額を下回っているのは12特定関連会社等で、時価が計5億余円、取得価額が計9億余円、評価差額が計4億余円となっていた。そして、社債と比べて、投資目的の株式並びに外債及び仕組債については、時価と取得価額とのかい離が大きくなる傾向にあった。

そして、特定関連会社等が保有している社債等の中には、投資先が債務不履行に陥ったために、時価が取得価額を大幅に下回っている社債や、時価が評価できない外債も見受けられた。

このような事態に鑑みれば、独立行政法人は、特定関連会社等が投資目的で保有する有価証券に損失が生ずることにより独立行政法人からの出資金が毀損される結果となることを極力回避するように、出資者として、特定関連会社等に適切な運営等を求める必要がある。

エ 独立行政法人に対する配当及び特定関連会社等からの出資金の回収状況

(ア) 独立行政法人に対する配当の状況

出資対象事業は、収益性が低かったり、成否に関するリスクが高かったりしていることなどから、短期的には配当は見込めないが、長期的には配当を可能とする利益が発生し、配当を受け取れる場合もある。そして、株式を保有している間に受け取った配当金は、出資金の回収そのものではないが、独立行政法人にとっては特定関連会社等から出資に伴う経済的な利得を得たという意味では出資金の回収と同一の効果を有していると考えられる。

そこで、24年度末において192特定関連会社等に出資している9独立行政法人(出資残高計4909億余円)が、特定関連会社等の株式を取得してから25年度までの間に受け取った配当金の状況をみたところ、表9のとおりとなっていた。

表9 独立行政法人が特定関連会社等の株式を取得してから平成25年度までの間に受け取った配当金の状況

(単位:法人、百万円)
独立行政法人名 出資残高を有している特定関連会社等数 うち配当を行っている特定関連会社等数 配当金収入累計額
情報通信研究機構 2 0 -
国際協力機構 7 5 96,291
医薬基盤研究所 1 0 -
農業・食品産業技術総合研究機構 5 0 -
農畜産業振興機構 19 1 75
情報処理推進機構 13 2 4
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 50 3 10,233
中小企業基盤整備機構 81 5 15
都市再生機構 14 2 7,453
192 18 114,073

9独立行政法人の192特定関連会社等のうち、6独立行政法人の18特定関連会社等が配当を行った実績があり、6独立行政法人が受け取った配当金の累計額は、計1140億余円に上っている。

これらの配当金のうち、国際協力機構及び石油天然ガス・金属鉱物資源機構に8特定関連会社等から支払われた計1065億余円については、外国の石油化学事業や石油の開発等に関する大規模なプロジェクトである出資対象事業が軌道に乗って、利益が発生したことによるものである。

また、都市再生機構に2特定関連会社等から支払われた配当金74億余円のうち72億余円は、独法見直し方針において、同機構の関連法人の利益剰余金等について国庫納付等を行うこととなったのを受けて、同機構が特定関連会社等の利益剰余金等を精査して、その一部について25年度に配当を行わせたことによるものである。

一方、192特定関連会社等のうち174法人は、独立行政法人が株式を取得してから25年度までの間に一度も配当を行っていない。

そこで、174法人が25年度までに一度も配当を行っていない理由について、独立行政法人を通じて確認したところ、経営不振等により繰越欠損金を計上していたり、利益剰余金を計上しているもののその額が少額であり配当を行う余力がなかったり、施設整備等のために内部留保を行ったりなどしているためであるとしていた。

<事例4> 多額の利益剰余金を計上しているが、配当を行っていなかったもの

都市再生機構(以下「機構」という。)は、商業施設等の管理運営等を行う新都市センター開発株式会社(以下「新都市センター」という。)の株式1,648,000株(取得価額8億2400万円、出資割合は34.3%で、筆頭株主である。)を保有している。この株式は、日本住宅公団が、昭和45年3月に多摩ニュータウン地区及びその周辺地区において、居住者等の利便に供する施設の建設及び管理運営を行わせるために出資を行って取得し、機構が承継したものである。

新都市センターの経営状況をみたところ、平成24年度末において、利益剰余金75億4884万余円を計上しているが、有利子負債の圧縮による財務基盤の強化や既存施設への設備投資による施設整備を図る必要があることを理由に、新都市センターは、設立以降一度も配当を行っていなかった。

なお、新都市センターは、機構を含めた株主から配当を行うよう要請されたことなどから、25年度決算において、総額4800万円(うち機構に対して1648万円)の配当を行っている。

(イ) 株式の処分に関する規定等

独立行政法人が行う出資は、国の一般会計や特別会計からの出資金を主な財源として行われている。そのため、資金の有効活用を図るなどの観点から、3(2)イ(イ)のとおり、出資後相当の期間が経過し、特定関連会社等において、出資対象事業が順調に実施され、利益剰余金が発生していて、独立行政法人が特定関連会社等の株式を全部又は一部処分したとしても、出資対象事業を継続していくことが可能となっているなどの場合、独立行政法人において、出資目的の達成状況を踏まえて、特定関連会社等の株式を処分することなどにより出資金の回収を図ることを十分に検討して適切な措置を執ることなどが求められる。

そこで、9独立行政法人において、どのような場合に特定関連会社等の株式を処分して出資金を回収するかなどの業務方法書等の規定の有無及びその内容についてみたところ、多くの独立行政法人では、業務方法書等において、出資目的を達成するなどして株式の全部又は一部を処分することが適当であると認められる場合には株式を処分するなどといった規定を設けていた。しかし、国際協力機構を除いて、出資金を回収するかどうかを判断するための具体的な判断基準等までは定めていなかった(巻末別表5参照)。

そして、9独立行政法人の出資先である192特定関連会社等の株式について、24年度末の実質価額(当該法人の純資産額に独立行政法人の出資割合を乗じて得た額)が出資額と比較してどのようになっているかみたところ、表10のとおりとなっていた。

表10 特定関連会社等の株式の実質価額(平成24年度末)

(単位:法人、百万円)
独立行政法人名 実質価額と出資額の比較 特定関連会社等数 実質価額(A) 出資額(B) 差引((A)-(B))
情報通信研究機構 実質価額 出資額 0 - - -
2 564 800 △ 235
小計 2 564 800 △ 235
国際協力機構 実質価額 出資額 3 30,058 15,639 14,418
4 53,361 81,682 △ 28,320
小計 7 83,420 97,321 △ 13,901
医薬基盤研究所 実質価額 出資額 0 - - -
1 55 5,310 △ 5,254
小計 1 55 5,310 △ 5,254
農業・食品産業技術総合研究機構 実質価額 出資額 0 - - -
5 488 3,871 △ 3,382
小計 5 488 3,871 △ 3,382
農畜産業振興機構 実質価額 出資額 10 13,705 4,542 9,163
9 2,922 4,072 △ 1,149
小計 19 16,628 8,614 8,013
情報処理推進機構 実質価額 出資額 2 827 800 27
11 3,106 4,400 △ 1,293
小計 13 3,933 5,200 △ 1,266
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 実質価額 出資額 11 118,886 116,477 2,408
39 115,291 190,135 △ 74,843
小計 50 234,178 306,612 △ 72,434
中小企業基盤整備機構 実質価額 出資額 17 11,811 10,955 856
64 29,344 39,959 △ 10,614
小計 81 41,155 50,914 △ 9,758
都市再生機構 実質価額 出資額 12 55,438 7,661 47,777
2 297 4,600 △ 4,302
小計 14 55,736 12,261 43,475
実質価額 出資額 55 230,727 156,076 74,651
137 205,433 334,829 △ 129,395
合計 192 436,161 490,905 △ 54,744

192特定関連会社等のうち55法人は株式の実質価額が出資額以上となっており、独立行政法人ごとの合計額でみると、特に、都市再生機構から業務委託等を受けている特定関連会社等の株式について、実質価額が出資額を大きく上回っていた(独立行政法人と関連法人との契約等の状況については、後述(3)参照)。

また、特定関連会社等の株式の中には、譲渡による株式の取得について特定関連会社等の取締役会の承認が必要とされるなどの株式の譲渡制限が設けられているものがある。

そこで、9独立行政法人の出資先である192特定関連会社等を対象として、特定関連会社等において株式の譲渡制限が設けられているかについて、独立行政法人が株式を全部又は一部処分したとしても出資対象事業を継続していくことが可能かという観点から、利益剰余金を計上している法人と、繰越欠損金を計上している法人に分けてみたところ、表11のとおり、利益剰余金を計上している73特定関連会社等のうち59法人において、株式の譲渡制限が設けられているなど、多数の特定関連会社等において株式の譲渡制限が設けられていた。

表11 特定関連会社等における株式の譲渡制限の状況(平成24年度末)

(単位:法人)
株式の譲渡が制限されている法人 株式の譲渡が制限されていない法人
利益剰余金を計上している特定関連会社等 59 14 73
繰越欠損金を計上している特定関連会社等 99 20 119
158 34 192

株式の譲渡制限は、好ましくない者が株式を取得して会社の運営が混乱することを防止するという利点があるとされているものの、一方で、独立行政法人が保有する株式の処分を行おうとする際に、取締役会の承認が得られなかったり、承認を得るのに時間を要したりなどして処分を迅速に行えない可能性もある。

(ウ) 全株式の譲渡又は清算が行われた特定関連会社等における出資金の回収状況

9独立行政法人が、設立されてから24年度までの間に、出資目的が達成されたなどとして全株式の譲渡を行ったり、期待された成果が上がらなかったなどとして清算を行ったりした特定関連会社等は、93法人となっている。

そして、これらの特定関連法人等から株式を保有している間に受け取った配当金、株式の譲渡代金及び清算分配金(以下、これらを合わせて「回収金」という。)による出資金の回収状況についてみたところ、表12のとおりとなっていた。

表12 特定関連会社等の株式に係る回収金の状況(独立行政法人設立から平成24年度まで)

(単位:法人、百万円)
独立行政法人名 分類 特定関連会社等数 H12-CHU1注(1) 出資金累計額(A) 回収金(B) 差額((B)-(A)) 回収金が全く得られなかった特定関連会社等数
配当金収入累計額 譲渡代金、清算分配金 回収益 回収不能額
情報通信研究機構 譲渡 2 700 - 141 - △ 558 0
清算 1 1,200 - 409 - △ 790 0
小計 3 1,900 - 550 - △ 1,349 0
国際協力機構 譲渡 3 29,172 18,506 64,474 53,808 - 0
清算 3 2,040 - 1,147 - △ 892 0
小計 6 31,213 18,506 65,622 53,808 △ 892 0
医薬基盤研究所 譲渡 0 - - - - - 0
清算 14 23,116 - 242 - △ 22,874 1
小計 14 23,116 - 242 - △ 22,874 1
農業・食品産業技術総合研究機構 H12-CHU2注(2) 譲渡 3 1,530 37 162 - △ 1,330 0
清算 39 23,807 - 1,053 - △ 22,753 3
小計 42 25,337 37 1,215 - △ 24,084 3
農畜産業振興機構 譲渡 0 - - - - - 0
清算 2 1,075 - 666 - △ 408 1
小計 2 1,075 - 666 - △ 408 1
情報処理推進機構 譲渡 0 - - - - - 0
清算 4 1,600 - 895 - △ 704 1
小計 4 1,600 - 895 - △ 704 1
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 譲渡 0 - - - - - 0
清算 2 29 - 12 - △ 16 0
小計 2 29 - 12 - △ 16 0
中小企業基盤整備機構 譲渡 4 355 - 10 - △ 345 3
清算 15 5,123 - 2,235 - △ 2,887 9
小計 19 5,478 - 2,245 - △ 3,232 12
都市再生機構 譲渡 1 200 - 200 - - 0
清算 0 - - - - - 0
小計 1 200 - 200 - - 0
譲渡 13 31,957 18,544 64,988 53,808 △ 2,234 3
清算 80 57,991 - 6,662 - △ 51,328 15
合計 93 89,948 18,544 71,650 53,808 △ 53,562 18
注(1)
株式を段階的に譲渡したことにより、全株式を譲渡した際には、特定関連会社等ではなくなっていた法人を含む。
注(2)
農業・食品産業技術総合研究機構については、前身の独立行政法人である農業・生物系特定産業技術研究機構による回収金の実績を含む。

都市再生機構を除く8独立行政法人の89特定関連会社等については、出資金累計額から回収金を差し引いた結果、当該特定関連会社等に対する出資金に係る計535億余円の回収不能額が生じており、89特定関連会社等のうち、清算等が行われた際に債務超過になっていたことなどにより独立行政法人は回収金を得ることができなかったため、出資金累計額の全てが回収不能額となっている状況が18特定関連会社等において見受けられた。これらの例として、医薬基盤研究所及び農業・食品産業技術総合研究機構による事業化へのリスクが高い研究開発の分野に係る出資について、その成果が事業化されなかったことなどから回収不能額が多額となったものがあり、また、医薬基盤研究所の1特定関連会社等及び農業・食品産業技術総合研究機構の3特定関連会社等に対する出資について、出資金累計額の全てが回収不能額となっているものがある。

一方、全株式の譲渡が行われた国際協力機構の3特定関連会社等は、同機構が海外投融資業務に関して保有していた当該特定関連会社等の株式について、簿価以上で譲渡できることが見込まれるなど出資金を回収できる条件が整ったことから株式を他の株主に譲渡することとしたもので、回収金が出資金累計額を計538億余円上回っていた。

(3) 独立行政法人と関連法人との契約等の状況

ア 関連法人との契約の状況

(ア) 契約を締結している関連法人の数、契約額等

検査の対象とした98独立行政法人が、20年度から24年度までの各年度において、独立行政法人の支出の原因となる契約(以下「支出原因契約」という。)及び収入の原因となる契約を締結している関連法人の数についてみたところ、表13のとおりとなっていた。

表13 独立行政法人が契約を締結している関連法人の状況

(単位:法人)
年度 関連法人と契約を締結した独立行政法人数 独立行政法人と契約を締結した関連法人数
  特定関連会社 関連会社 関連公益法人等 対20年度割合
対20年度割合     対20年度割合   対20年度割合   対20年度割合
平成20 100.0% 29 (1) 155 (14) 20 (6) 100.0% 21 (6) 100.0% 114 (2) 100.0% 100.0%
21 96.5% 28 (1) 145 (14) 18 (5) 90.0% 20 (6) 95.2% 107 (3) 93.8% 93.5%
22 82.7% 24 (1) 125 (11) 18 (3) 90.0% 17 (5) 80.9% 90 (3) 78.9% 80.6%
23 72.4% 21 (1) 73 (15) 17 (4) 85.0% 18 (6) 85.7% 38 (5) 33.3% 47.0%
24 79.3% 23 (1) 76 (16) 19 (2) 95.0% 19 (9) 90.4% 38 (5) 33.3% 49.0%
注(1)
関連法人数には、少額随意契約又は不落・不調随意契約のみの関連法人を除く。
注(2)
括弧書きは、独立行政法人の収入の原因となる契約のみが締結されている法人で、内数である。

独立行政法人が契約を締結した特定関連会社及び関連会社の数は、いずれも横ばい傾向となっていた。これは、独立行政法人の中には、自らの業務目的を達成するために不可欠な附帯業務等を特定関連会社等に継続的に行わせている独立行政法人があることなどによると考えられる。なお、20年度に独立行政法人が契約を締結していた20特定関連会社及び21関連会社のうち、24年度まで毎年度契約を継続していたのは、それぞれ17特定関連会社及び13関連会社となっていた。また、関連公益法人等の数は、20年度の114法人から24年度の38法人と大幅に減少している。これは、3(1)のとおり、高齢・障害・求職者雇用支援機構において、それまで関連公益法人等への委託により実施していた業務を23年度以降は自ら実施することとし、同機構が有する関連公益法人等の数が減少したことなどによる。

また、24年度に関連法人と支出原因契約を締結した独立行政法人について、関連法人との支出原因契約の契約額等をみると、表14のとおりとなっていた。

表14 独立行政法人が支出原因契約を締結している関連法人の状況(平成24年度)

(単位:法人、百万円)
独立行政法人名 種別ごとの法人数・契約額 関連法人計 各独立行政法人計 H14-CHU1注(1) 全支出原因契約の契約額に占める関連法人との契約額の割合(d)/(e)
特定関連会社 関連会社 関連公益法人等 法人数 契約額(d)=(a)+(b)+(c)
法人数 契約額(a) 法人数 契約額(b) 法人数 契約額(c) 契約額(e)
国際協力機構 - - - - 2 1,677 2 1,677 103,614 1.6%
科学技術振興機構 - - - - 3 218 3 218 155,547 0.1%
理化学研究所 - - - - 1 4,004 1 4,004 52,649 7.6%
宇宙航空研究開発機構 - - - - 3 2,759 3 2,759 117,230 2.3%
日本芸術文化振興会 - - - - 3 5,032 3 5,032 8,767 57.3%
海洋研究開発機構 - - - - 1 3 1 3 33,328 0.0%
日本原子力研究開発機構 - - - - 4 1,327 4 1,327 142,734 0.9%
高齢・障害・求職者雇用支援機構 - - - - 1 3,044 1 3,044 18,490 16.4%
医薬基盤研究所 - - - - 1 127 1 127 6,295 2.0%
国立がん研究センター - - - - 1 149 1 149 17,112 0.8%
農業・食品産業技術総合研究機構 1 18 - - - - 1 18 11,485 0.1%
工業所有権情報・研修館 - - - - 1 115 1 115 2,073 5.5%
製品評価技術基盤機構 - - - - 2 204 2 204 4,100 4.9%
新エネルギー・産業技術総合開発機構 - - - - 3 1,537 3 1,537 21,569 7.1%
情報処理推進機構 - - 1 4 - - 1 4 2,665 0.1%
石油天然ガス・金属鉱物資源機構 1 1,087 4 3,265 2 389 7 4,743 103,411 4.5%
中小企業基盤整備機構 - - 1 559 - - 1 559 21,632 2.5%
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 - - - - 1 612 1 612 272,532 0.2%
水資源機構 - - - - 1 125 1 125 35,266 0.3%
都市再生機構 13 225,751 4 92 2 173 19 226,016 475,806 47.5%
住宅金融支援機構 2 12,296 - - - - 2 12,296 60,734 20.2%
国立環境研究所 - - - - 1 164 1 164 8,177 2.0%
22独立行政法人計 17 239,153 10 3,921 33 21,666 60 264,740 1,675,226
注(1)
「各独立行政法人計」欄は、関連法人との契約以外も含めた当該独立行政法人が締結している全支出原因契約に係る合計額である。
注(2)
少額随意契約及び不落・不調随意契約は除いている。

独立行政法人が支出原因契約を締結した関連法人のうち特定関連会社は、60法人のうち17法人(28.3%)であるが、契約額でみると2647億余円のうち2391億余円(90.3%)とほとんどを占める状況となっていた。

また、独立行政法人ごとに、全支出原因契約の契約額に占める関連法人との契約額の割合をみると、日本芸術文化振興会は50%を超えており、都市再生機構も47.5%と高くなっていた。また、契約額については、都市再生機構が計2260億余円と多額になっていた。

各独立行政法人は、これまでも、関連法人との契約の透明性を確保するために様々な取組を行ってきているが、全支出原因契約の契約額に占める関連法人との契約額の割合が高い独立行政法人を始めとして、関連法人と取引がある独立行政法人においては、引き続き契約の透明性を確保するための取組を継続する必要があると認められる。

(イ) 独立行政法人ごとの関連法人との契約の内訳

独立行政法人が支出原因契約を締結した各関連法人について、事業収入に占める独立行政法人との契約に基づく収入の割合を算定し、その割合別に年度ごとの関連法人の数の推移等をみたところ、表15のとおりとなっていた。

表15 関連法人の事業収入に占める独立行政法人との契約に基づく収入の割合

(単位:法人)
関連法人の種別 特定関連会社 関連会社 関連公益法人等
年度
契約額割合
平成20 21 22 23 24 20 21 22 23 24 20 21 22 23 24
3分の2以上 8
(57.1%)
7
(53.8%)
7
(46.6%)
8
(61.5%)
9
(52.9%)
2
(13.3%)
2
(15.3%)
2
(16.6%)
2
(18.1%)
3
(30.0%)
76(35)
(67.8%)
63(27)
(60.5%)
47(18)
(54.0%)
18
(54.5%)
19
(57.5%)
3分の1以上3分の2未満 2
(14.2%)
2
(15.3%)
2
(13.3%)
1
(7.6%)
0
(0.0%)
2
(13.3%)
1
(7.6%)
2
(16.6%)
2
(18.1%)
1
(10.0%)
28(21)
(25.0%)
36(24)
(34.6%)
31(16)
(35.6%)
11
(33.3%)
10
(30.3%)
3分の1未満 4
(28.5%)
4
(30.7%)
6
(40.0%)
4
(30.7%)
8
(47.0%)
11
(73.3%)
10
(76.9%)
8
(66.6%)
7
(63.6%)
6
(60.0%)
8(8)
(7.1%)
5(5)
(4.8%)
9(5)
(10.3%)
4
(12.1%)
4
(12.1%)
14
(100.0%)
13
(100.0%)
15
(100.0%)
13
(100.0%)
17
(100.0%)
15
(100.0%)
H15-CHU1注(1) 13
(100.0%)
12
(100.0%)
H15-CHU1注(1) 11
(100.0%)
10
(100.0%)
112(64)
(100.0%)
104(56)
(100.0%)
87(39)
(100.0%)
33
(100.0%)
33
(100.0%)
全関連法人数 45 41 38 38 35 172 172 175 179 177 144 147 131 73 80
注(1)
関連会社の平成21年度及び23年度の法人数については、契約を締結しているが事業収入がない1法人を除いている。
注(2)
「関連公益法人等」欄における平成20年度から22年度までに記載されている上段括弧書きは、高齢・障害・求職者雇用支援機構の22年度までの委託契約に係る関連公益法人等の数を除いた法人数である。
注(3)
下段括弧書きは、当該年度における関連法人の種別ごとの全体に占める割合を示す。

特定関連会社については、独立行政法人からの収入の割合が3分の2以上の区分に該当する法人の数が、独立行政法人が支出原因契約を締結している特定関連会社の数全体の46.6%から61.5%までの比較的高い率でほぼ横ばいで推移している。この中には、独立行政法人と毎年度継続して締結する受託契約等を主要業務としている法人が見受けられた。

関連会社については、24年度における全関連会社177法人のうち、独立行政法人と支出原因契約を締結しているのが10法人と少なく、また、独立行政法人からの収入の割合が3分の1未満の区分に該当する関連会社の数が、独立行政法人が支出原因契約を締結している関連会社の数全体の60.0%から76.9%までとなっており、関連法人の種別の中で、事業収入に占める独立行政法人との契約に基づく収入の割合が最も低くなっていた。

関連公益法人等については、24年度において、独立行政法人からの収入の割合が3分の2以上の区分に該当する関連公益法人等の数が、独立行政法人が支出原因契約を締結した関連公益法人等全体の57.5%に当たる19法人であったが、このうち16法人は、独立行政法人が研究施設の運営を委託するなどしているもので、残りの3法人は、独立行政法人が研究業務を委託しているものであった。

事業収入に占める独立行政法人との契約に基づく収入の割合が高い特定関連会社や関連公益法人等の多くは、独立行政法人との契約が安定的な収入源となっていると認められることから、独立行政法人は、これらの関連法人との契約について、引き続き契約の透明性を確保するための取組を積極的に行っていく必要があると認められる。

(ウ) 契約方式別の契約の推移

98独立行政法人が締結している支出原因契約について、契約方式別の件数及び契約額の推移をみたところ、表16のとおりとなっていた。

表16 独立行政法人が締結している支出原因契約の契約方式別の件数及び契約額の推移

(単位:件、百万円)
年度 競争性のある契約 競争性のない契約
一般競争(価格競争) 一般競争(総合評価) 随意契約(企画競争) 随意契約(公募) 随意契約(特命等)
件数 契約額 件数 契約額 件数 契約額 件数 契約額 件数 契約額 件数 契約額
平成20 37,814
(16,277)
902,092
(306,520)
1,381
(566)
312,117
(113,482)
8,153
(2,703)
310,711
(146,091)
8,404
(3,634)
144,395
(68,911)
19,324 586,152 75,076
(23,180)
2,255,468
(635,005)
21 39,121
(15,299)
795,329
(237,555)
1,906
(486)
347,703
(82,592)
8,164
(2,868)
308,320
(143,338)
10,694
(4,493)
170,304
(76,824)
17,807 488,732 77,692
(23,146)
2,110,390
(540,310)
22 38,338
(11,986)
794,835
(200,739)
3,817
(778)
491,973
(101,064)
7,063
(1,925)
261,165
(85,264)
8,968
(5,145)
158,690
(84,591)
12,868 502,280 71,054
(19,834)
2,208,946
(471,659)
23 36,831
(11,177)
841,817
(200,766)
3,134
(797)
389,398
(108,188)
6,455
(1,903)
223,755
(89,519)
8,546
(4,448)
149,987
(88,014)
10,187 428,277 65,153
(18,325)
2,033,237
(486,489)
24 35,937
(10,899)
814,205
(214,663)
4,557
(1,728)
694,970
(357,457)
5,561
(1,833)
211,675
(81,700)
11,281
(3,959)
285,861
(113,168)
9,730 415,075 67,066
(18,419)
2,421,788
(766,989)
注(1)
括弧書きは1者応札又は1者応募の件数及び契約額であり、各項目の件数及び契約額の内数である。
注(2)
少額随意契約及び不落・不調随意契約の件数及び契約額は除いている。

年度ごとの契約件数及び契約額について、24年度を20年度と比較すると、件数では75,076件から67,066件と10.6%減少している一方で、契約額は2兆2554億余円から2兆4217億余円と7.3%増加しており、1者応札又は1者応募の契約件数及び契約額についてもそれぞれ同様の減少傾向又は増加傾向が見受けられる。

契約件数が減少する一方で、契約額が増加しているのは、独立行政法人全体の24年度における契約額のうち、19.6%と最も高い割合を占める都市再生機構において、23年度まで賃貸住宅1戸ごとに少額随意契約で実施していた修繕等の契約を、24年度から工区ごとに3か年度又は6か年度の複数年度分を一括して一般競争(総合評価)により発注したことなどによる。そこで、この少額随意契約から変更された一般競争(総合評価)による契約の件数993件及び契約額2426億余円を、24年度における独立行政法人全体の一般競争(総合評価)の件数及び契約額から除き、件数及び契約額の合計について24年度を20年度と比較すると、件数では75,076件から66,073件、契約額では2兆2554億余円から2兆1791億余円と、それぞれ減少傾向となっている。また、1者応札又は1者応募についても同様に減少傾向となっている。

そして、この都市再生機構による、少額随意契約から変更された一般競争(総合評価)による契約の件数及び契約額を除き、支出原因契約全体に占める競争性のある契約の割合について、24年度を20年度と比較すると、図3のとおり、件数比では74.3%が85.3%、契約額比では74.0%が81.0%となっており、件数は11.0ポイント、契約額は7.0ポイント増加している。

図3 独立行政法人全体の契約に占める競争性のある契約の割合

図3 独立行政法人全体の契約に占める競争性のある契約の割合画像

次に、98独立行政法人が締結している支出原因契約のうち関連法人との間で締結している契約について、契約方式別の件数及び契約額の推移をみたところ、表17のとおりとなっていた(独立行政法人ごとの内訳については巻末別表6参照)。

表17 独立行政法人が関連法人との間で締結している支出原因契約の契約方式別の件数及び契約額の推移

(単位:件、百万円)
年度 競争性のある契約 競争性のない契約
一般競争(価格競争) 一般競争(総合評価) 随意契約(企画競争) 随意契約(公募) 随意契約(特命等)
件数 契約額 件数 契約額 件数 契約額 件数 契約額 件数 契約額 件数 契約額
平成20 213
(149)
7,102
(5,376)
68
(55)
29,226
(28,097)
579
(347)
45,192
(30,335)
60
(49)
14,202
(6,394)
701 70,331 1,621
(600)
166,055
(70,205)
21 466
(206)
16,648
(6,300)
51
(34)
21,164
(18,506)
1,531
(339)
63,818
(43,281)
57
(51)
5,280
(5,242)
452 47,074 2,557
(630)
153,985
(73,330)
22 307
(161)
7,603
(5,795)
766
(143)
91,889
(33,323)
760
(100)
16,552
(9,211)
32
(27)
2,606
(2,569)
365 30,287 2,230
(431)
148,939
(50,900)
23 257
(88)
11,345
(8,200)
435
(131)
47,769
(16,981)
131
(24)
6,668
(4,915)
25
(20)
1,595
(1,557)
29 10,478 877
(263)
77,858
(31,654)
24 260
(68)
10,959
(7,477)
1,170
(492)
238,125
(188,347)
113
(23)
5,845
(3,482)
16
(14)
879
(851)
18 8,929 1,577
(597)
264,740
(200,158)
注(1)
括弧書きは1者応札又は1者応募の件数及び契約額であり、各項目の件数及び契約額の内数である。
注(2)
少額随意契約及び不落・不調随意契約の件数及び契約額は除いている。

各年度の契約件数及び契約額について、24年度を20年度と比較すると、件数では1,621件から1,577件と2.7%減少している一方で、契約額は1660億余円から2647億余円と59.4%増加している。また、1者応札又は1者応募の契約件数及び契約額については、件数はほぼ横ばいであるものの、契約額は185.1%と大幅に増加している。

契約件数がほぼ横ばいである一方で、契約額が増加している主な理由は、都市再生機構における上記の少額随意契約から変更された一般競争(総合評価)により発注した業務を特定関連会社が受注したことによるものである。そこで、この少額随意契約から変更された一般競争(総合評価)による契約の件数395件及び契約額1794億余円を、24年度における独立行政法人全体の関連法人との間で締結している一般競争(総合評価)の件数及び契約額から除き、件数及び契約額の合計について24年度を20年度と比較すると、件数では1,621件から1,182件、契約額では1660億余円から853億余円と、それぞれ減少傾向となっている。また、1者応札又は1者応募についても同様に減少傾向となっている。

そして、この都市再生機構による、少額随意契約から変更された一般競争(総合評価)による契約の件数及び契約額を除き、支出原因契約全体に占める競争性のある契約の割合について、24年度を20年度と比較すると、図4のとおり、件数比では56.8%が98.5%、契約額比では57.6%が89.5%となっており、件数は41.7ポイント、契約額は31.9ポイント増加している。

図4 独立行政法人が関連法人と締結している契約に占める競争性のある契約の割合

図4 独立行政法人が関連法人と締結している契約に占める競争性のある契約の割合画像

独立行政法人が締結する契約、特に、関連法人との間で締結する契約について、上記のように競争性のある契約方式による契約の占める割合が増加しているのは、1(5)のとおり、整理合理化計画に基づき、随意契約の見直しなどに取り組むなどして、競争性のある契約方式への移行が推進されたことなどによると考えられる。

(エ) 1者応札又は1者応募となっていた契約の状況

独立行政法人は、1(5)のとおり、「契約状況の点検・見直し」に基づいて、随意契約のほか、1者応札又は1者応募となっていた契約等について、点検及び見直しを行い、随意契約等見直し計画を策定することとなっている。そして、各独立行政法人は、随意契約等見直し計画において改善することとなった契約について、1者応札又は1者応募となった原因を分析して契約条件を見直すなど、競争性を確保するための様々な取組を行い、その改善状況を毎年公表している。

そこで、独立行政法人が関連法人との間で締結している支出原因契約のうち、24年度に1者応札又は1者応募であった契約であって、同じ内容の契約が25年度にも締結された契約47件(契約額47億余円)の改善状況をみたところ、25年度に複数応札又は複数応募となっていた契約は46件(契約額47億余円)で、これらの契約における平均落札率は、24年度が96.0%であったのに対して、25年度は90.0%となっていた。この要因としては、公告期間の延長、関連業務を実施した実績のある者への情報提供、仕様の内容による分割、複数年度にわたる契約の導入、入札参加資格の拡大等の改善策が講じられて、応札者又は応募者が増加するなどした結果、平均落札率が低下したことによるものと考えられる。

なお、前記の表17のとおり、独立行政法人が関連法人との間で締結している支出原因契約のうち、1者応札又は1者応募の件数及び契約額について、24年度を20年度と比較すると、件数はほぼ変わらないものの、契約額は大幅に増加している。件数がほぼ変わっていないのは、1者応札又は1者応募であった契約について点検及び見直しが行われるなどして改善がなされる一方で、随意契約(特命等)から競争性のある契約方式に移行したものの1者応札又は1者応募となったものがあったことなどによると考えられる。また、件数がほぼ変わっていないのに、契約額が大幅に増加しているのは、1者応札又は1者応募の契約について、契約1件当たりの契約額が他の契約方式に比べて大きい一般競争(総合評価)の割合が増加していることなどによると考えられる。

(オ) 契約方式の選定

1(5)のとおり、基本的方針によれば、各独立行政法人は、一般競争入札等を原則としつつも、事務・事業の特性を踏まえ、随意契約によることができる事由を明確化し、公正性・透明性を確保しつつ合理的な調達を実施することとなっている。

独立行政法人が関連法人との間で締結する契約の中には、特定の公益法人等のみが所有する施設を使用する必要がある業務を当該公益法人等に委託する業務委託契約、あるいは、特定の研究開発の委託を行うために設置した公益法人等にその研究開発を委託する業務委託契約が見受けられる。

そして、このような契約は、随意契約(特命等)により行うことの合理性があると考えられるが、一部の独立行政法人において、このような契約について、公告、入札、公募等の手続が必要となる一般競争入札等の契約方式により行っている事態が見受けられた。

<事例5> 随意契約(公募)により契約を締結しているが、随意契約(特命等)によることの合理性があると考えられるもの

鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「機構」という。)は、機構の関連公益法人等であるフリーゲージトレイン技術研究組合との間で、平成22、23、24各年度にそれぞれ「フリーゲージトレインの開発研究」(3契約)及び「フリーゲージトレインの走行試験及び設備等の維持管理に関する業務委託契約」(3契約)の計6契約について、参加者の有無を確認する公募を経た後、随意契約(公募)を締結している。

しかし、この開発研究は、国土交通省の指導の下、機構が新幹線と在来線との直通運転を可能とすることを目的として行ってきたものであり、同組合は、フリーゲージトレイン(軌道可変電車)の早期実現を目指し、鉄道車両メーカー等の計12団体で組織され、14年に国土交通省が認可した技術研究組合である。

したがって、上記の開発研究及び走行試験等に係る業務委託内容の特殊性及び専門性が高く、同組合以外に契約の相手方となり得る者がおらず、随意契約(特命等)によることの合理性があると考えられる。

このように特殊性及び専門性が高い開発研究に係る業務委託であって契約相手方が特定されるなどの場合には、随意契約(特命等)によることの合理性があると考えられることから、随意契約等見直し計画に基づき一律に一般競争入札等に移行させるのではなく、透明性を確保しつつ、一般競争入札等に要する事務処理量の増加、契約締結や成果物納入までに必要となる期間等も勘案した上で、合理的な調達になるよう取り組むことが重要であると考えられる。

イ 契約監視委員会による随意契約等の点検及び見直しの状況

独立行政法人は、従来、契約の締結に当たっては、随意契約とする理由が妥当であるか、また、一般競争入札等の競争性があるとされている契約方式による場合であっても、入札又は公募の結果、1者応札又は1者応募となった契約について真に競争性が確保されていたかどうかについて、自らの契約担当部署等において確認を行っている。

そして、独立行政法人は、1(5)のとおり、「契約状況の点検・見直し」に基づいて、契約監視委員会を設置して、20年度に締結した契約のうち、随意契約、1者応札又は1者応募となった契約等について、点検及び見直しを行っている。そして、21年度以降に締結した契約の状況を20年度に締結した契約の状況と比較して、随意契約等見直し計画に基づき、随意契約がどの程度競争性のある契約方式に移行したか、あるいは、1者応札又は1者応募となった契約について、契約方式の変更だけでなく、仕様書の変更、参加条件の変更等の契約の条件がどの程度見直されたかなどについて公表を行っている。

上記の点検及び見直しの実施状況等について、契約監視委員会の設置要綱、議事録等に基づき確認したところ、各独立行政法人は、「契約状況の点検・見直し」において定められている共通の観点に基づき点検及び見直しを行っていた。そして、各独立行政法人において、随意契約等見直し計画の達成に向けて取り組んだ結果、競争性のない契約方式である随意契約(特命等)が競争性のある契約方式に移行している傾向となっており、契約監視委員会は一定の機能を果たしていると考えられる。

また、契約監視委員会は、21年度以降に新たに随意契約等として締結した契約についても、点検及び見直しの対象としている。このように、契約の競争性を確保するため、契約監視委員会を今後も引き続き活用することが重要であると考えられる。

ウ 関連法人における独立行政法人の役職員経験者の在職状況

1(3)アのとおり、独立行政法人の役職員経験者が他の法人の取締役会の構成員の過半数を継続的に占めているなどの場合、当該他の法人は関連法人に該当することがある。

また、独立行政法人は、会計基準第130に基づき、連結財務諸表において関連法人の役員の氏名を開示するとともに、当該役員が独立行政法人の役職員経験者である場合には、独立行政法人における最終職名を開示しなければならないこととなっている。

そこで、検査の対象とした98独立行政法人が24年度末において有する292関連法人(3(1)参照)において、同年度末に役員として在職している独立行政法人の役職員経験者の状況についてみたところ、表18のとおりとなっていた。

表18 関連法人における独立行政法人の役職員経験者の在職状況(平成24年度末)

(単位:人)
関連法人の種別 全役員数(a) 左のうち独立行政法人の役職員経験者数(b) 全役員数に占める独立行政法人の役職員経験者数の割合(b)/(a)
特定関連会社(35法人) 251 70 27.8%
関連会社(177法人) 1,620 62 3.8%
関連公益法人等(80法人H18-CHU(注)) 1,032 150 14.5%
  うち事業収入に占める独立行政法人との取引額が3分の1以上かつ理事等のうち独立行政法人の役職員経験者の占める割合が3分の1以上である関連公益法人等(8法人) 88 30 34.0%
(注)
「関連公益法人等」欄の80法人とは、複数の独立行政法人が同一の公益法人等を関連公益法人等としている場合には、当該公益法人等を複数の関連公益法人等として集計しているため、関連公益法人等の実数とは一致しない。

全役員数に占める独立行政法人の役職員経験者数の割合(以下「在職率」という。)を関連法人の種別ごとに比較すると、特定関連会社における在職率が関連会社及び関連公益法人等における在職率と比較して高くなっている。なお、35特定関連会社のうち12法人は、在職率が50%以上となっていた。

また、80関連公益法人等(22独立行政法人の関連公益法人等)のうち、事業収入に占める独立行政法人との取引額が3分の1以上かつ理事等のうち独立行政法人の役職員経験者の占める割合が3分の1以上となっている8関連公益法人等(4独立行政法人の関連公益法人等)の在職率についてみると、80関連公益法人等全体の14.5%よりも高い34.0%となっている。なお、当該8関連公益法人等のうち、独立行政法人との取引額が最も大きい法人(宇宙航空研究開発機構の1関連公益法人等)についてみると、事業収入29億余円のうち独立行政法人との取引額が23億余円(79.3%)、全役員10人のうち4人(40.0%)が独立行政法人の役職員経験者となっていた。

(4) 関連法人に係る情報開示等の状況

ア 特定関連会社に係る情報開示等

(ア) 特定関連会社の分類

独立行政法人が有する各特定関連会社について、会計基準において定められた特定関連会社に該当する条件ごとに分類したところ、表19のとおり、独立行政法人が議決権の過半数を所有していることにより特定関連会社に該当するとされた法人が大半を占めていた。このほか、独立行政法人及び特定関連会社が、出資又は投資を行い、多大な影響力を与えていると認められることにより特定関連会社に該当するとされた法人等が見受けられた。

表19 特定関連会社の分類

(単位:法人)
年度 特定関連会社  
独立行政法人が議決権の過半数を所有していることによるもの(会計基準第107第2項(1)) その他のもの
平成20 45(8) 39(7) 6(4)
21 41(7) 36(6) 5(4)
22 38(7) 33(6) 5(4)
23 38(7) 33(6) 5(4)
24 35(7) 30(6) 5(4)
(注)
各欄の括弧書きは、当該特定関連会社を有する独立行政法人の数である。括弧書きについては、異なる条件に該当する複数の特定関連会社を有している独立行政法人があるため、各欄の計と「特定関連会社」欄は一致しない。
(イ) 特定関連会社に係る情報開示の状況

1(3)イ(ア)のとおり、連結財務諸表を作成するに当たっては、原則として関連法人のうち特定関連会社を連結に含めることとなっている。ただし、特定関連会社であっても、その資産、収益等を考慮して、連結の範囲から除いても財政状態、運営状況及び公的資金の使用状況等に関する合理的な判断を妨げない程度に重要性が乏しいものは、連結の範囲に含めないことができることとなっている。そして、独立行政法人は、連結に含める特定関連会社を有する場合、連結財務諸表を作成しなければならないこととなっている。

また、1(3)イ(ウ)のとおり、独立行政法人は、連結財務諸表を作成する場合、関連法人情報を連結財務諸表において開示しなければならないこととなっている。

さらに、連結財務諸表を作成しない場合であっても、関連法人のうち関連公益法人等については、関連法人情報を個別財務諸表において開示することが求められている。一方、特定関連会社等の関連法人情報の取扱いについては、会計基準等において明文の規定が設けられていない。

24年度において、特定関連会社を有する7独立行政法人のうち、連結財務諸表を作成していたのは5独立行政法人、特定関連会社の重要性が乏しいとして連結財務諸表を作成していなかったのは2独立行政法人となっていた。

そして、特定関連会社の関連法人情報に係る情報開示の状況についてみたところ、連結財務諸表を作成している独立行政法人は、いずれも会計基準等に基づいて、連結財務諸表において情報開示を行っていた。

また、連結財務諸表を作成していない2独立行政法人のうち住宅金融支援機構は、同機構が有する特定関連会社の関連法人情報の有用性を踏まえた自主的な判断に基づき、個別財務諸表において情報開示を行っていた。一方、医薬基盤研究所は、特定関連会社であるディナベック研究所(前記の事例2参照)の資産、収益等を考慮して、連結の範囲から除いても財政状態、運営状況及び公的資金の使用状況等に関する合理的な判断を妨げない程度に重要性が乏しいと判断して連結の範囲に含めていない。本来、連結の範囲からの除外に関する重要性の判断と、詳細な情報が含まれるべき附属明細書において開示される関連法人情報の有用性の判断は、1(3)イ(ウ)のとおり、異なった観点から行われる必要がある。しかし、17年度に医薬品医療機器総合機構から承継した当該特定関連会社に対する出資残高が53億余円と多額に上っていることなどから当該特定関連会社の関連法人情報は有用な情報であると考えられるのに、会計基準等において明文の規定が設けられていないこと、及び連結の範囲に関して重要性が乏しいとする判断のみにより、関連法人情報の有用性が乏しいという判断を行ったことから、個別財務諸表において情報開示を行っていなかった。

このように、連結財務諸表を作成しない場合における特定関連会社の関連法人情報に係る情報開示については、情報の有用性を踏まえた自主的な判断に基づき、個別財務諸表において情報開示を行っている独立行政法人と、会計基準等において明文の規定が設けられていないなどのことから情報開示を行っていない独立行政法人があり、ばらつきが生じていた。そして、これと同様の状況が、関連会社についても見受けられた(後述3(4)イ(イ)参照)。

しかし、1(2)アのとおり、独立行政法人の会計は、国民その他の利害関係者の独立行政法人の状況に関する判断を誤らせないようにするため、取引及び事象の金額的側面及び質的側面の両面からの重要性を勘案して、適切な記録、計算及び表示を行わなければならないこととなっている。また、複数の独立行政法人間における財務諸表の比較可能性が確保された方が、財務諸表の有用性が高まると考えられる。

さらに、連結財務諸表を作成しない場合における特定関連会社等の関連法人情報に関しては、次の①及び②の点に留意する必要があると考えられる。

① 連結財務諸表を作成する場合には、特定関連会社等について、関連法人情報が連結財務諸表において開示されることとなっているが、連結財務諸表を作成しない場合には、特定関連会社等の関連法人情報の開示について会計基準等において明文の規定が設けられていないことから、開示されないおそれがあること

② 特定関連会社等の株式の状況については、個別財務諸表の「有価証券の明細」において「関係会社株式」として記載されるものの、記載される株式のうち、どの株式が特定関連会社の株式又は関連会社の株式であるかが明らかにならないこと

このような事態に鑑みれば、連結財務諸表を作成しない場合における特定関連会社等の関連法人情報について、情報開示の一層の促進に努める必要がある。

イ 関連会社に係る情報開示等

(ア) 関連会社の分類

独立行政法人が有する各関連会社について、会計基準において定められた関連会社に該当する条件ごとに分類したところ、表20のとおり、独立行政法人及び特定関連会社が議決権の100分の20以上を実質的に所有していることにより関連会社に該当するとされた法人が大半を占めていた。このほか、議決権の所有割合が100分の20未満であっても、一定の議決権を有しており、かつ、独立行政法人の役職員経験者等が代表取締役等に就任していることにより関連会社に該当するとされた法人等が見受けられた。

表20 関連会社の分類

(単位:法人)
年度 関連会社  
独立行政法人及び特定関連会社が議決権の100分の20以上を実質的に所有していることによるもの(会計基準第118第3項(1)) その他のもの
平成20 172(7) 165(7) 7(3)
21 172(7) 164(7) 8(4)
22 175(7) 168(7) 7(3)
23 179(7) 172(7) 7(3)
24 177(7) 170(7) 7(3)
(注)
各欄の括弧書きは、当該関連会社を有する独立行政法人の数である。括弧書きについては、異なる条件に該当する複数の関連会社を有している独立行政法人があるため、各欄の計と「関連会社」欄は一致しない。
(イ) 関連会社に係る情報開示の状況

1(3)イ(イ)のとおり、関連会社に対する出資について、連結財務諸表を作成する場合には、持分法を適用しなければならないこととなっており、また、連結財務諸表を作成しない場合には、個別財務諸表において持分法損益等の注記を行うこととなっている。

そこで、関連会社を有する各独立行政法人が、連結財務諸表を作成しない場合に持分法損益等の注記を行っているかについてみたところ、いずれも会計基準等に基づいて注記を行っていた。

さらに、関連会社を有する各独立行政法人における関連会社の関連法人情報に係る情報開示の状況についてみたところ、連結財務諸表を作成している独立行政法人は、いずれも会計基準等に基づいて、連結財務諸表において情報開示を行っていた。また、24年度において、連結財務諸表を作成していない3独立行政法人のうち、国際協力機構及び農畜産業振興機構は、両機構が有する関連会社の関連法人情報の有用性を踏まえた自主的な判断に基づき、個別財務諸表において、情報開示を行っていた。一方、情報通信研究機構は、会計基準等において明文の規定が設けられていないことから、個別財務諸表において関連法人情報に係る情報開示を行っていなかった。このように、連結財務諸表を作成しない場合における関連会社の関連法人情報に係る情報開示については、3(4)ア(イ)に記述した特定関連会社の場合と同様に、ばらつきが生じていた。

ウ 関連公益法人等に係る情報開示等

(ア) 関連公益法人等の分類

独立行政法人が有する各関連公益法人等について、会計基準において定められた関連公益法人等に該当する条件ごとに分類したところ、表21のとおり、事業収入に占める独立行政法人との取引額が3分の1以上であること(以下「事業収入条件」という。)により関連公益法人等に該当するとされた法人が大半を占めていた。このほか、理事等のうち独立行政法人の役職員経験者の占める割合が3分の1以上であること(以下「理事等割合条件」という。)により、又は事業収入条件と理事等割合条件の両方に該当することにより関連公益法人等に該当するとされた法人等が見受けられた。

表21 関連公益法人等の分類

(単位:法人)
年度 関連公益法人等 H21-CHU1注(1)  
事業収入条件に該当するもの(事業収入条件と理事等割合条件の両方に該当するものを除く。)
(会計基準第129第2項(2)に該当)
理事等割合条件に該当するもの(事業収入条件と理事等割合条件の両方に該当するものを除く。)
(会計基準第129第2項(1)に該当)
事業収入条件と理事等割合条件の両方に該当するもの その他のもの
平成20 144(30) 104(21) 11(5) 12(7) 17(5)
21 147(29) 105(20) 13(6) 11(6) 18(6)
22 131(26) 83(17) 12(7) 8(5) 28(6)
23 73(22) 40(14) 13(8) 6(4) 14(4)
H21-CHU2注(2) 24 80(22) 48(15) 12(9) 8(4) 12(4)
注(1)
「関連公益法人等」欄は、複数の独立行政法人が同一の公益法人等を関連公益法人等としている場合には、当該公益法人等を複数の関連公益法人等として集計しているため、関連公益法人等の実数とは一致しない。
注(2)
平成24年度における関連公益法人等につき、該当する条件ごとの分類については巻末別表2参照
注(3)
各欄の括弧書きは、当該関連公益法人等を有する独立行政法人の数である。括弧書きについては、異なる条件に該当する複数の関連公益法人等を有している独立行政法人があるため、各欄の計と「関連公益法人等」欄は一致しない。

このうち事業収入条件と理事等割合条件の両方に該当していて、取引及び人事の双方において独立行政法人と密接な関係にある関連公益法人等は、減少傾向にあるものの、24年度においても全80関連公益法人等のうちの1割に当たる8関連公益法人等が該当していた。

なお、23年度において関連公益法人等の数が大きく減少しているのは、3(1)のとおり、独法見直し方針に基づく事務・事業の見直しが行われたことなどによるものである。

(イ) 関連公益法人等に該当するかどうかの調査及び判断

独立行政法人が、取引先等の公益法人等について、関連公益法人等に該当するかどうかを判断するに当たっては、公益法人等の事業収入に占める独立行政法人との取引額の割合等を公益法人等に確認するなど、特定関連会社等に該当するかどうかを判断するときよりも広範な情報を収集する必要がある。

一方、1(3)イ(ウ)のとおり、関連法人情報についての会計監査人の監査において、関連公益法人等の計算書類等によらなければ確認することが困難な事項については、会計監査人の責任外となっており、関連公益法人等に該当するか否かの判断及び財務諸表に記載する関連公益法人等の網羅性についても、会計監査人の監査対象外となっている。

そこで、各独立行政法人が、関連公益法人等に該当するかどうかをどのように判断しているかについて確認したところ次のとおりとなっていた。

a 調査の対象とする公益法人等

関連公益法人等に該当するかどうかを判断するに当たって、どのような調査を行っているかについてみたところ、いずれの独立行政法人においても、公益法人等の事業収入、役員数、役員の職歴等について、調査票等の書面により確認することとしていたが、調査の対象とする公益法人等の範囲について、次のような事態が見受けられた。

98独立行政法人のうち41独立行政法人は、年度中に取引のあった全ての公益法人等を対象として、関連公益法人等に該当するかどうかを確認していたが、残りの57独立行政法人は、次の①から④までのとおり、契約額や年間取引額が一定の額を下回るなどの公益法人等を調査の対象としていなかった。

① 契約額が独立行政法人の設定した基準額(例:少額随意契約とされる限度額)を超える契約を締結した公益法人等のみを調査の対象としていた独立行政法人 27法人

② 年間取引額が独立行政法人の設定した基準額(例:1000万円)を超える公益法人等のみを調査の対象としていた独立行政法人 12法人

③ 前年度以前に一度でも関連公益法人等に該当していたことのある公益法人等を調査の主な対象としていた独立行政法人 12法人

④ 年間取引額が独立行政法人の設定した基準を超えるか又は前年度以前に一度でも関連公益法人等に該当していたことのある全ての公益法人等を調査の主な対象としていた独立行政法人 6法人

b 公益法人等の事業収入等の判断

1(3)アのとおり、公益法人等の事業収入に占める独立行政法人との取引額が3分の1以上である場合(ただし、独立行政法人が交付する助成金等による収入が事業収入の3分の1以上を占めるために、これに該当することとなる場合を除く。)には、独立行政法人が当該公益法人等の財務及び事業運営の方針決定に重要な影響を与えることができないことが明らかに示されない限り、当該公益法人等は関連公益法人等に該当することとなっている。

そこで、各独立行政法人において、公益法人等の事業収入、独立行政法人との取引額、助成金等の額等を適切に判断しているかなどについてみたところ、5独立行政法人の取引先である5公益法人等において、次のような事態が見受けられた。

① 国民生活センター、産業技術総合研究所及び新エネルギー・産業技術総合開発機構は、これらの独立行政法人との取引額が事業収入の3分の1以上である公益法人等それぞれ1法人について、支払に対して相当の反対給付を受ける請負契約、不動産の購入契約及び研究開発に係る委託契約による公益法人等の事業収入であって、一般的には助成金等に該当しないと考えられるものを助成金等であると判断し、事業収入条件には当たらないとして、当該公益法人等は関連公益法人等に該当しないとしていた。

② 国立青少年教育振興機構は、同機構との取引額が事業収入の3分の1以上である1公益法人等について、当該公益法人等の財務諸表において「補助金等」の科目に計上されたものは、事業に係る収入であっても事業収入には該当しないとし、同機構からの受託契約による収入を事業収入でないと判断し、事業収入条件には当たらないとして、当該公益法人等は関連公益法人等に該当しないとしていた。

③ 国立がん研究センターは、1公益法人等について、同センターとの取引額が事業収入の3分の1以上であることを契約部門において確認していたのに、その情報が財務諸表を作成する部門に伝達されなかったため、一部の年度の財務諸表において、当該公益法人等を関連公益法人等に該当しないものとしていた。

c 公益法人等に与える影響についての判断

1(3)アのとおり、公益法人等の事業収入に占める独立行政法人との取引額が3分の1以上であるなどの条件に該当する場合、独立行政法人が当該公益法人等の財務及び事業運営の方針決定に重要な影響を与えることができないことが明らかに示されない限り、当該公益法人等は関連公益法人等に該当することとなっている。

しかし、事例6のとおり、国際協力機構において、公益法人等の財務及び事業運営の方針決定に重要な影響を与えることができないことが明らかには示されていないのに、同機構との取引額が事業収入の3分の1以上である公益法人等(24年度32法人)について、関連公益法人等に該当しないこととしている事態が見受けられた。

<事例6> 重要な影響を与えることができないことが明らかには示されていないのに関連公益法人等に該当しないとしていたもの

国際協力機構(以下「機構」という。)は、機構との人事等の関係、公益法人等の設立の経緯等を勘案して、機構との取引額が事業収入の3分の1以上である公益法人等の一部(平成24年度4法人)を関連公益法人等として、個別財務諸表において関連法人情報に係る情報開示を行っている。

そして、上記の公益法人等以外で、取引額が事業収入の3分の1以上である公益法人等(24年度32法人)については、機構と当該公益法人等との契約が競争性のある契約方式によっていることから、公益法人等の財務及び事業運営の方針決定に重要な影響を与えることができないことが明らかであると判断して、関連公益法人等に該当しないこととしていた(24年度の32法人の機構との取引額は、最も多い法人で4億7017万余円、最も少ない法人で388万余円。事業収入に占める割合が50%以上となっている法人は25法人、80%以上となっている法人は10法人)。

しかし、一般に、競争性のある契約方式によっていることのみをもって、公益法人等の財務及び事業運営の方針決定に重要な影響を与えることができないことを明らかに示しているとはいえないと考えられる。

(ウ) 関連公益法人等の関連法人情報に係る情報開示の状況

1(3)イ(ウ)のとおり、独立行政法人は、連結財務諸表を作成する場合、関連法人情報を連結財務諸表において開示しなければならないこととなっている。そして、連結財務諸表を作成しない場合であっても、関連公益法人等の関連法人情報については、個別財務諸表において開示することが求められている。

そこで、各独立行政法人が関連公益法人等に該当すると判断した公益法人等について、関連法人情報に係る情報開示が適切に行われているかについてみたところ、いずれも会計基準等に基づいて、上記の情報開示が行われていた。

エ 独立行政法人の監事等による監査及び財務諸表の信頼性の確保の状況

(ア) 監事が行う関連法人に対する調査

1(2)エのとおり、独立行政法人の監事は、独立行政法人の財務諸表の監査を行うこととなっている。独立行政法人の監事の権限等は、通則法において基本的な事項が規定されているが、その他の事項については、各独立行政法人が定める監事監査に関する内部規程(以下「監事監査規程等」という。)に委ねられている。このため、監事が、その職責を果たすために必要な事項は、各独立行政法人の監事監査規程等において明確にされていることが重要である。

そして、監事が行う関連法人に対する調査についても、通則法において特に定められていないため、独立行政法人等の監事が監事監査規程等を整備するに当たって参考にし、活用するものとして取りまとめられた「監事監査に関する参考指針について」(平成16年3月独立行政法人、特殊法人等監事連絡会策定)においては、監事は、必要があると認めるときは、子会社及び重要な関連会社に対して業務及び財産の状況の調査の協力を求めることができるものとするとなっている。

そこで、24年度末において特定関連会社を有する7独立行政法人について、監事監査規程等の整備状況及びその内容についてみたところ、全ての独立行政法人において監事監査規程等が整備されていたが、特定関連会社に対する調査について監事監査規程等において定めているのは、3独立行政法人のみであった。

なお、通則法については、「独立行政法人通則法の一部を改正する法律」(平成26年法律第66号。以下「改正通則法」という。)が26年6月に成立しており、27年4月から施行されることとなっている。そして、これにより、監事及び会計監査人は、その職務を行うため必要があるときは、独立行政法人がその経営を支配している法人として総務省令で定める子法人に対して、事業の報告又は会計に関する報告を求めたり、子法人の業務及び財産の状況の調査を行ったりすることができるとされ、監事及び会計監査人の調査権限が明確化されることとなっている。

(イ) 関連公益法人等の財務情報の信頼性

3(4)ウ(イ)のとおり、独立行政法人が、取引先等の公益法人等について関連公益法人等に該当するかどうかを判断するに当たっては、特定関連会社等に該当するかどうかを判断する際よりも広範な情報を収集する必要がある。

そして、独立行政法人は、関連公益法人等に該当するかどうかを判断して、関連公益法人等の関連法人情報に係る情報開示を行うに当たり、関連公益法人等の財務諸表を入手して利用している。

一方、1(3)イ(ウ)のとおり、関連法人情報についての会計監査人の監査において、関連公益法人等の計算書類等によらなければ確認することが困難な事項については、会計監査人の責任外となっている。

そこで、各独立行政法人において、関連公益法人等の財務諸表の内容の正確性についてどのような確認を行っているかみたところ、財務諸表に記載された数値間の整合性を確認したり、関連公益法人等のホームページ等で公開された財務諸表や定時総会招集通知に添付された財務諸表と一致していることを確認したりしていた。また、これに加えて、関連公益法人等の財務諸表に監査報告書が添付されている場合にその内容を確認したり、過年度の数値と比較して異常なかい離がある場合に関連公益法人等に問い合わせて原因分析を行ったりしている独立行政法人も見受けられた。