(「自家発電設備導入促進事業の補助対象事業費に、補助事業期間終了後に購入した燃料費を含めるなどしていたもの」及び「自家発電設備導入促進事業の補助対象事業費の算定に当たり、電気の供給量を誤って転記したため、補助対象事業費を過大に精算していたもの」参照)
【意見を表示したものの全文】
自家発電設備導入促進事業等の効果の把握について
(平成27 年10 月22 日付け資源エネルギー庁長官宛て)
標記について、会計検査院法第36 条の規定により、下記のとおり意見を表示する。
記
貴庁は、平成23年度以降に、東日本大震災の影響等によって電力需給がひっ迫する、又はひっ迫するおそれがある地域(注1)において、電気の供給力を強化し、電力需給状況の安定化に資することを目的として、民間団体等が電気事業者への電気の供給(以下「売電」という。)又は自家消費のために、重油、ガス、石炭等を燃料として使用する自家発電設備の新増設・増出力、休止・廃止設備の再稼働を行う場合に必要な費用の2分の1以内又は3分の1以内を補助するなどの自家発電設備導入促進事業等(以下「自家発事業」という。)を実施している。
自家発事業には、自家発電設備の新増設等を行う場合に必要な設備の購入費等を補助する事業(以下「設備補助」という。)と、増出力等を行った自家発電設備に要した燃料費について補助する事業(以下「燃料費補助」という。)とがある。
貴庁は、23、24両年度において、国の歳出予算により自家発事業を行うこととして、8経済産業局(注2)が自家発事業を実施する民間団体等(以下「事業主体」という。)の公募、選定等の業務を行っていた。その後、貴庁は、25年度に、30年3月末までを期限とした取崩し型の基金(80億円)を分散型電源導入促進事業費補助金(うち自家発設備導入促進事業)により造成することとして、同基金の管理団体を公募により選定するとともに、別の公募により選定した民間事業者に、事業主体の公募、選定等の業務を行わせている。
自家発事業の23年度から26年度までの執行額は、表1のとおり、国の歳出予算により直接執行された額計250億7656万余円、基金により執行された額計57億7003万余円、合計308億4659万余円となっており、基金の26年度末残高は22億2996万余円となっている。
執行年度 | 予算等 | 会計名等 | 科目(項)(目) | 国の予算により直接執行された額 | 基金により執行された額 | 年度末時点の基金残額 |
---|---|---|---|---|---|---|
平成 23 |
平成23年度特別会計第1次補正予算 | エネルギー対策特別会計(エネルギー需給勘定) | (項)エネルギー需給構造高度化対策費 (目)エネルギー使用合理化設備導入促進等対策費補助金 |
7,348,559 | / | / |
平成23年度一般会計第3次補正予算 | 一般会計 | (項)東日本大震災復旧・復興電力需要抑制対策費 (目)電力需要抑制対策事業費補助金 |
3,017,235 | |||
24 | 平成23年度一般会計第3次補正予算(繰越し分) | 一般会計 | (項)東日本大震災復旧・復興電力需要抑制対策費 (目)電力需要抑制対策事業費補助金 |
14,443,757 | ||
平成24年度一般会計経済危機対応・地域活性化予備費 | 一般会計 | (項)地域経済活性化対策費 (目)自家発電設備導入緊急対策費補助金 |
220,010 | |||
25 | 平成23年度一般会計第3次補正予算(繰越し分) | 一般会計 | (項)東日本大震災復旧・復興電力需要抑制対策費 (目)電力需要抑制対策事業費補助金 |
46,999 | ||
平成25年度特別会計予算 | エネルギー対策特別会計 (エネルギー需給勘定) |
(項)エネルギー需給構造高度化対策費 (目)エネルギー使用合理化設備導入促進等対策費補助金 |
(8,000,000) <基金造成> (C) |
4,501,137 | 3,498,862 | |
26 | / | / | 1,268,894 | 2,229,967 (C)−(B) |
||
計 | 25,076,562 (A) (8,000,000) |
5,770,032 (B) |
/ | |||
執行額の合計 | 30,846,594 (A)+(B) |
/ |
そして、自家発事業は、電力供給がひっ迫するおそれがあると考えられた地域を選定するなどして、表2のとおり、23年度から26年度までに計12回公募によって実施されてきた。
年度 | 事業実施回数 | 予算等 | 実施時期 | 自家発事業の実施地域 | 公募期間 | 事業の実施期間 |
---|---|---|---|---|---|---|
平成23 | 1 | 平成23年度特別会計第1次補正予算 | 夏期及び冬期 | 東北、東京両電力管内 | 23年5月6日~5月23日 | 交付決定日~24年2月29日 |
2 | 平成23年度一般会計第3次補正予算 | 冬期 | 沖縄県を除く。 | 23年11月1日~11月22日 | ~24年3月30日 | |
3 | 平成23年度一般会計第3次補正予算 (二次募集) |
冬期 | 同上 | 23年11月29日~12月16日 | ~24年3月30日 | |
24 | 4 | 平成23年度一般会計第3次補正予算 (繰越し分) |
夏期及び冬期 | 同上 | 24年2月29日~3月30日 | ~25年3月29日 |
5 | 平成23年度一般会計第3次補正予算 (繰越し分、二次募集) |
夏期及び冬期 | 同上 | 24 年5月25日~6月29日 | ~25 年3月29日 | |
6 | 平成23年度一般会計第3次補正予算 (繰越し分、三次募集) |
冬期 | 北海道電力管内 | 24年8月28日~10月12日 | ~25年3月29日 | |
7 | 平成24年度一般会計経済危機対応・地域活性化予備費 | 冬期 | 同上 | 24年11月30日~12月14日 | ~25年3月29日 | |
8 | 平成24年度一般会計経済危機対応・地域活性化予備費 (二次募集) |
冬期 | 北海道、中部、北陸、関西、中国、四国及び九州各電力管内 | 25年1月28日~2月22日 | ~25年3月29日 | |
25 | 9 | 平成25年度特別会計予算 (基金事業) |
夏期及び冬期 | 沖縄県を除く。 | 25年5月16日~6月6日 | ~26年3月31日 |
10 | 平成25年度特別会計予算 (基金事業、二次公募) |
冬期 | 北海道電力管内 | 25年10月15日~12月6日 | ~26年3月31日 | |
26 | 11 | 平成25年度特別会計予算 (基金事業) |
夏期 | 中部、北陸、関西、中国、四国及び九州各電力管内 | ①26年5月16日~6月6日 ②26年6月9日~7月10日 |
~26年9月30日 |
12 | 平成25年度特別会計予算 (基金事業、二次公募) |
冬期 | 北海道電力管内 | ①26年10月14日~11月4日 ②26年11月5日~11月20日 |
~27年3月31日 |
貴庁は、自家発事業の実施に当たり、自家発電設備導入促進事業費補助金交付要綱(平成23・05・10財資第6号経済産業大臣制定)等(以下「要綱等」という。)を定めており、公募の都度、その時点における電力需給のひっ迫の状況に応じて、要綱等において、増出力の対象、売電を行う時間帯の対象範囲等の交付要件等を変更してきている。
そして、貴庁は、要綱等において、設備補助及び燃料費補助について次のように定めている。
(ア) 設備補助においては、自家発事業の実施期間中に自家発電設備を最大限の日数で運転することとなっているほか、自家発電設備を新増設(以下「自家発電設備の導入」という。)する場合には、自家発事業の終了後も導入した設備を効果的に運用することが求められている。
(イ) 燃料費補助においては、過去の一定期間(以下「基準期間」という。)の稼働実績と比較して増出力した電力量に要した燃料費を補助対象事業費とすることとしている。また、24年度以降については、冬期の一部地域を除き、9時から20時までなどの時間帯(以下「増出力対象時間帯」という。)に自家発電設備を増出力することとなっている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
自家発事業は、東日本大震災を契機として発生した電力需給のひっ迫等に対応するために国が執った緊急措置の一環として実施されたものであり、これまでに多額の国費が投入されている。
そこで、本院は、有効性等の観点から、自家発事業について、電気の供給力の強化又は電力需給状況の安定化に資する事業となっているか、事業を継続して実施するに当たり、実施済みの事業の効果を十分に把握して検証を行い、その結果を翌年度以降の事業に反映させているかなどに着眼して検査した。検査に当たっては、23年度から25年度までに191事業主体が実施した自家発事業314件(国庫補助金交付額計278億6915万余円)を対象として、貴庁、6経済産業局(注3)及び107事業主体において事業に係る実績報告書等を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、それ以外の84事業主体から自家発電設備の運転状況等に関する調書の提出を受けて、その内容を分析するなどして検査した。
(検査の結果)
検査したところ、23年度から25年度までの電力需要のピーク期間である夏期及び冬期それぞれの期間に自家発事業が実施されたことにより、各年度における電力が最小25万kW、最大114万kWの範囲で増加したことに伴って、供給予備率が最小0.1ポイント、最大1.8ポイントの範囲で向上している一方で、次のような事態が見受けられた。
自家発電設備の導入については、前記のとおり、要綱等において、自家発事業の実施期間中に自家発電設備を最大限の日数で運転することとなっている。
しかし、自家発電設備の導入を補助の対象とした76事業主体に係る76件(国庫補助金交付額計54億6300万余円)における電力需要の夏期のピーク期間の7月から9月までの約90日間、又は、冬期のピーク期間の12月から翌年3月までの約120日間に対する平均運転日数をみたところ、自家発電設備の導入期限が電力需要のピーク期間の最終月とされていたため、表3のとおり、それぞれ33.6日(稼働率36.4%)、24.0日(稼働率19.7%)にとどまっており、運転日数が10日に達していなかった自家発事業が21件(国庫補助金交付額計13億5483万余円)あった。
年度 | 夏期又は冬期のピーク期間 (ピーク期間日数) |
自家発電設備の導入 | 休止・廃止設備の改修 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
事業主体数 (事業件数) |
国庫補助金交付額 (千円) |
平均運転日数(日) | 稼働率(%) | うち運転日数が10日未満のもの | 事業主体数 (事業件数) |
国庫補助金交付額 (千円) |
平均運転日数(日) | 稼働率(%) | ||||
事業件数 | 国庫補助金交付額 (千円) |
平均運転日数(日) | ||||||||||
(A) | (B) | (B/A) | (C) | (C/A) | ||||||||
平成 23 |
7月~9月(92日間) | 36(36) | 3,858,224 | 34.1 | 37.0 | 10 | 1,015,269 | 3.0 | 7(7) | 840,842 | 60.5 | 65.7 |
12月~翌3月(122日間) | 12.7 | 10.4 | 2.4 | 31.0 | 25.4 | |||||||
12月~翌2月(91日間) | 63.0 | 69.2 | ― | ― | ― | |||||||
24 | 7月~9月(92日間) | 25(25) | 1,127,480 | 33.5 | 36.4 | 9 | 311,158 | 5.7 | 25(25) | 860,397 | 61.2 | 66.5 |
12月~翌3月(121日間) | 28.4 | 23.4 | 3.2 | 98.6 | 81.4 | |||||||
25 | 7月~9月(92日間) | 15(15) | 477,302 | 28.0 | 30.4 | 2 | 28,410 | 0.0 | 7(8) | 103,956 | 54.0 | 58.6 |
12月~翌3月(121日間) | 29.3 | 24.2 | 4.0 | 106.1 | 87.6 | |||||||
計 (又は平均) |
7月~9月 | 76(76) | 5,463,007 | 33.6 | 36.4 | 21 | 1,354,837 | 4.0 | 32(40) | 1,805,196 | 59.9 | 65.0 |
12月~翌3月 | 24.0 | 19.7 | 2.8 | 97.7 | 80.7 | |||||||
12月~翌2月 | 63.0 | 69.2 | ― | ― | ― |
一方、休止・廃止設備を改修して再稼働するなどの場合の平均運転日数は59.9日(稼働率65.0%)、97.7日(稼働率80.7%)となっていた。
自家発電設備の導入については、前記のとおり、自家発事業の終了後も導入した設備を効果的に運用することが求められている。
しかし、前記76件のうち事業終了後の運転記録が保管されていないなどのため実績が確認できなかった3件を除く73件(国庫補助金交付額計51億7598万余円)について、自家発事業の終了後の自家発電設備の運転状況をみたところ、表4のとおり、稼働率は平均32.6%にとどまっていた。また、20事業主体に係る20件(国庫補助金交付額計5億7653万余円)においては稼働率が10%未満となっており、19事業主体に係る19件(国庫補助金交付額計5億5819万余円)においては自家発電設備が全く運転されていない状況となっていた。
事業実施年度 | 事業主体数 (事業件数) |
国庫補助金交付額(千円) | 26年度末までの各ピーク期間の合計日数に対する運転日数の割合(稼働率)の平均(%) | ピーク期間に対する運転日数の割合が10%未満の事業 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
全く運転されていない事業 | |||||||
事業主体数 (事業件数) |
国庫補助金交付額(千円) | 事業主体数 (事業件数) |
国庫補助金交付額(千円) | ||||
平成23 | 34(34) | 3,820,446 | 26.3 | 13(13) | 412,415 | 13(13) | 412,415 |
24 | 24(24) | 878,234 | 32.0 | 6(6) | 151,842 | 5(5) | 133,502 |
25 | 15(15) | 477,302 | 47.8 | 1(1) | 12,280 | 1(1) | 12,280 |
計 | 73(73) | 5,175,983 | 32.6 | 20(20) | 576,538 | 19(19) | 558,198 |
そして、上記の全く運転されていない自家発電設備19件には、大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)等に基づき、通常は停電時以外は運転が認められていないが、電気事業者による使用電力削減要請がなされたとみなされた23年7月から9月までの間だけ停電時以外にも運転が認められたことから補助の対象となった非常用自家発電設備が10件(国庫補助金交付額計3億3724万余円)含まれていた。
上記について、事例を示すと次のとおりである。
<事例1>
事業主体Aは、平成23年度に、大気汚染防止法等に基づき、23年7月から9月までの間だけ停電時以外の運転が認められた非常用自家発電設備を設置して自家消費することで電力需要を抑制するとして非常用自家発電設備を設置して、5277万余円の国庫補助金の交付を受けていた。
上記の非常用自家発電設備は、建築基準法(昭和25年法律第201号)等に基づき停電時に必要となる需要設備に電気を供給するために既に設置されていた非常用自家発電設備とは異なり、一般の需要設備にしか電気を供給することができない設備であった。
このため、本件非常用自家発電設備は、大気汚染防止法等により、停電時以外の運転が認められた期間を過ぎた23年10月以降は使用できないこととなっており、自家発事業の終了後は全く運転されない状況となっていた。
しかし、停電時に必要となる需要設備に電気を供給するために設置された非常用自家発電設備(以下「法定発電機」という。)は、一定規模の建物であれば設置が義務付けられており多数設置されている。よって、これらの法定発電機から一般の需要設備に対しても電気を供給できるよう配線等を変更する費用を補助対象経費としていれば、事業の実施期間中に電力需要を抑制できるとともに、事業終了後も引き続き法定発電機として停電時に使用されるものであると認められた。
前記のとおり、自家発事業は23年度から26年度までの間に計12回の公募によって実施されており、貴庁はその都度増出力の対象等の交付要件等を変更してきており、燃料費補助では、基準期間の稼働実績と比較して増出力した電力量に要した燃料費を補助対象事業費とすることとしていた。
しかし、貴庁は増出力の比較対象となる基準期間における稼働実績の算定方法を要綱等に明確に示していなかったため、表5のとおり、燃料費補助により事業を実施した116事業主体に係る235件(国庫補助金交付額計226億6850万余円)をみたところ、9事業主体が実施した19件(国庫補助金交付額計34億2838万余円)において、増出力に必ずしも当たらない発電に要した燃料費が補助対象事業費に含まれるなどしていた。
表5 増出力に必ずしも当たらない発電に要した燃料費が補助対象事業費に含まれるなどしていた事業
年度 | 事業主体数 (事業件数) |
国庫補助金交付額 (千円) |
左のうち、増出力に必ずしも当たらない発電に要した燃料費が補助対象事業費に含まれるなどしていた事業 | |
---|---|---|---|---|
事業主体数 (事業件数) |
国庫補助金交付額 (千円) |
|||
平成23 | 51(52) | 7,683,850 | 6(6) | 1,385,915 |
24 | 107(118) | 11,921,163 | 9(9) | 1,739,703 |
25 | 52(65) | 3,063,494 | 4(4) | 302,767 |
計 | 116(235) | 22,668,508 | 9(19) | 3,428,385 |
上記について、事例を示すと次のとおりである。
<事例2>
事業主体Bは、平成24年4月27日から24年9月30日までの間に、基準期間の稼働実績である1時間当たり供給量951kWに対して、4,546kWを増出力して5,497kWを売電したとする実績報告書を提出して、4948万余円の国庫補助金の交付を受けていた。
しかし、増出力の比較対象となる基準期間における稼働実績の算定方法が、基準期間における供給量を、基準期間において売電を行った376.5時間で除すのか、暦日数に24時間を乗じた2,208時間で除すのか、要綱等において明確に示されていなかったため、Bは前者(2,786kW)ではなく、後者(951kW)を稼働実績としていた。このため、増出力したとする電力が大きく算定されており、自家発事業によって実質的に増出力に寄与していたのは、上記5,497kWから2,786kWを控除した2,711kWであった。
燃料費補助の実施に当たっては、前記のとおり、24年度以降、要綱等において、冬期の一部地域を除き、増出力対象時間帯に自家発電設備を増出力することとなっている。
しかし、増出力対象時間帯が指定されている99事業主体に係る152件(国庫補助金交付額計139億1844万余円)をみたところ、10事業主体に係る15件(国庫補助金交付額計21億1375万余円)において、事業主体が自家発事業を実施する以前から売電契約を締結していて、増出力を行う十分な余力がなかったため、表6のとおり、増出力対象時間帯の増出力量がそれ以外の時間帯の増出力量に比べて少なくなっており、補助の対象となった燃料費の多くが増出力対象時間帯の増出力に使用されたことにはなっていなかった。
表6 増出力対象時間帯における増出力量がそれ以外の時間帯の増出力量に比べて少なくなっている事業
年度 | 事業主体数 (事業件数) |
国庫補助金交付額(千円) | 左のうち、「増出力対象時間帯における増出力量<増出力対象時間帯以外の時間帯における増出力量」となっている事業主体数(事業件数) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
国庫補助金交付額(千円) | 増出力対象時間帯における増出力量(kWh) | 増出力対象時間帯以外の時間帯における増出力量(kWh) | 全増出力量に対する増出力対象時間帯における増出力量の割合(%) | |||||
(A) | (B) | (A) (A)+(B) |
×100 | |||||
平成 24 |
86(88) | 10,863,818 | 9(9) | 1,843,700 | 27,123,324 | 233,747,030 | 10.3 | |
25 | 51(64) | 3,054,623 | 6(6) | 270,054 | 41,689,276 | 232,332,568 | 15.2 | |
計 | 99(152) | 13,918,441 | 10(15) | 2,113,755 | 68,812,600 | 466,079,598 | 12.8 |
上記について、事例を示すと次のとおりである。
<事例3>
事業主体Cは、平成24年4月27日から25年3月29日までの間に、基準期間の稼働実績である1時間当たり供給量6,634kWに対して、7,871kWを増出力して売電したとする実績報告書を提出して、2億3439万余円の国庫補助金の交付を受けていた。
しかし、上記の1時間当たり供給量6,634kWは1日の平均値であり、増出力対象時間帯に限ると1時間当たり12,385kWを売電していたことから、増出力対象時間帯に増出力できる余力がほとんどない状態であった。そのため、電力需要のピークとなる7月から9月までの増出力対象時間帯における増出力量は、補助の対象となった増出力量の14.1%に過ぎなかった。
貴庁は、自家発事業を継続して実施するに当たり、上記のように事業効果が十分に発現しているとは認められない事態が見受けられたのに、事業の効果を把握することとしていなかった。そのため、自家発事業の事業効果について十分な検証を行っておらず、導入した自家発電設備の稼働率を上げるための方策や実態を踏まえた要綱等の見直しを検討するなどして翌年度以降の事業に反映させることとしていなかった。
(改善を必要とする事態)
自家発事業については、自家発事業の実施期間中の自家発電設備の運転状況が低調となっていたり、非常用自家発電設備も含めた自家発事業の終了後の自家発電設備の運転状況が低調となっていたり、増出力に必ずしも当たらない発電に要した燃料費が補助対象事業費に含まれるなどしていたり、増出力対象時間帯における増出力量がそれ以外の時間帯の増出力量に比べて少なくなっていたりする事態が見受けられた。その背景には、自家発事業が、国の緊急措置の一環として、東日本大震災を契機として発生した電力需給のひっ迫等に対応するために、電力の確保・安定供給を最優先に実施されたものであり、事業の制度設計に多くの時間をかけることができなかった状況があったと思料される。このような状況においては、事業実施中における検証とそれに基づく見直しがより重要であるにもかかわらず、実施済みの事業の効果を把握した上で検証して、翌年度以降の事業にその検証結果を十分に反映させないまま事業を継続してきた事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。
(発生原因)
このような事態が生じているのは、貴庁において、自家発事業を継続するに当たり、実施済みの事業の効果を十分に把握した上で検証する方法についての検討が十分でなく、翌年度以降の事業に検証した結果を反映させることとしていないことによると認められる。
電力の需給状況は、自家発事業が開始された当時の厳しい状況に比べて改善されているが、貴庁は、今後も自家発事業も含めた電力需給のひっ迫等に対する緊急措置的な事業を実施する必要に迫られる可能性がある。
ついては、貴庁において、自家発事業について、事業効果について改めて検証を行うとともに、将来同様の緊急措置的な事業を実施する場合に備えて、事業効果を把握して検証する方法についての知見を蓄積して、これを制度設計に活用する方法を検討するよう意見を表示する。