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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成27年3月

東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について

第2 検査の結果

2 復興等の各種施策及び支援事業の実施状況

(3) 原子力災害からの復興再生

国は、復興基本方針において、原子力災害からの復興については、責任を持って再生及び復興に取り組むこととし、福島第一原発が所在する福島県については、福島基本方針により、原子力災害からの福島の復興再生を国政の最重要課題と位置付けて、各種の取組を継続的に講ずることとした。そして、原子力災害からの復興再生に向けて、放射性物質の除去、安全対策・健康管理対策等の施策を講じてきた。特に、24年度補正予算及び25年度当初予算において、長期避難者の生活拠点形成、定住促進、帰還加速等の福島復興に向けた新たな支援措置を講ずることとした。

また、国は、前記のとおり、25年12月に福島復興の加速指針を閣議決定し、早期帰還支援と新生活支援の両面で福島を支え、原子力災害からの復興再生に向けて全力を挙げて取り組むこととしている。

そこで、原子力災害からの復興再生について、各府省庁、福島県等が実施する各種施策等の実施状況はどのようなものとなっているか、特に、除染等の事業、長期避難者支援等の事業は円滑かつ迅速に実施されているかなどに着眼して検査した。

ア 原子力災害関係の事業の実施状況

原子力災害関係の事業を予算年度別にみると、表79のとおり、25年度復興特会予算の予算現額は8417億余円であり、これに23年度補正予算及び24年度復興特会予算の予算現額を加えた3か年度の予算現額は計2兆3546億余円となっている。25年度が24年度に比べて多額となっているのは、除染等の事業に係る予算現額が増加したこと、福島復興に向けた新たな事業が予算措置されたことなどによる。

表79 予算年度別の原子力災害関係の事業に係る予算現額等

(単位:件、百万円)

予算年度 会計名 事業数 予算現額
平成23年度 一般会計 107 980,888
24年度 復興特会 66 531,934
25年度 復興特会 58 841,794
231 2,354,617

上記の予算現額計2兆3546億余円のうち、25年度に実施される原子力災害関係の事業に係る予算現額は、表80のとおり、25年度復興特会予算の8417億余円に加えて、23年度補正予算の事故繰越分の71億余円、24年度復興特会予算の翌年度繰越分の3139億余円、計1兆1629億余円となっている。

表80 平成25年度に実施される原子力災害関係の事業に係る予算現額等

(単位:件、百万円)

予算年度 平成23年度
(25年度への事故繰越分)
24年度
(25年度への繰越分)
25年度
経費項目 原子力災害復興関係経費 原子力災害復興関係経費 原子力災害復興関係経費
事業数 3 16 58 77
予算現額 7,182 313,934 841,794 1,162,911

25年度に実施される原子力災害関係の事業に係る経費項目は、原子力災害復興関係経費であり、その主な事業は、「汚染土壌等の除染」、「汚染廃棄物処理事業」、「長期避難者生活拠点形成事業」(以下「生活拠点形成事業」という。)等である。

また、前記のとおり、国は、福島復興に向けた新たな施策として、24年度補正予算で避難解除区域への帰還支援等に取り組む福島原子力災害避難区域等帰還・再生加速事業(以下「帰還・再生事業」という。)を、25年度当初予算で長期避難者の生活拠点の形成を支援する生活拠点形成事業及び福島県の子育て世帯が安心して定住できる環境を整え地域の復興再生を促進する福島定住等緊急支援事業(以下「福島定住事業」という。)を、それぞれ予算措置した。

さらに、25年8月に福島県の避難指示区域の見直しが全域で完了したことから、国は、今後は復興の新たな段階を迎えるとして、図33のとおり、それまで個別に実施していた生活拠点形成事業、福島定住事業及び帰還・再生事業に、町内復興拠点の整備等を新たに加えるなどして、長期避難者支援から早期帰還までの対応策を一括して支援する福島交付金を25年度補正予算において創設した。

このように24、25両年度に予算措置されたこれらの4事業が福島の復興再生の柱として実施されることとなった(以下、4事業を合わせて「福島復興事業」という。)。

図33 平成25年度に実施される福島復興事業の内訳

図33 平成25年度に実施される福島復興事業の内訳 画像

25年度に実施される原子力災害関係の事業に係る予算現額計1兆1629億余円の事業別の内訳をみると、図34のとおり、除染等の事業が9829億余円と全体の84.5%を占め、福島復興事業が1370億余円と全体の11.7%を占めている。

図34 平成25年度に実施される原子力災害関係の事業に係る予算現額の事業別内訳

図34 平成25年度に実施される原子力災害関係の事業に係る予算現額の事業別内訳 画像

上記の予算現額計1兆1629億余円について執行状況をみると、表81のとおり、支出済額は計5531億余円(執行率47.5%)、繰越額は計5021億余円(繰越率43.1%)となっている。このうち除染等の事業についてみると、執行率は49.6%、繰越率は40.6%となっている。

表81 平成25年度に実施される原子力災害関係の事業の執行状況

(単位:件、百万円、%)

予算年度 平成23年度
(25年度への事故繰越分)
24年度
(25年度への繰越分)
25年度  
経費項目 原子力災害復興関係
経費
原子力災害復興関係
経費
原子力災害復興関係
経費
左のうち
除染等の事業
左の計に
対する割合
事業数 3 16 58 77 8 10.3
予算現額 A 7,182 313,934 841,794 1,162,911 982,956 84.5
支出済額 B 6,173 131,993 414,946 553,112 488,136 88.2
繰越額  C - 89,178 412,958 502,136 399,899 79.6
不用額  D=A-B-C 1,009 92,763 13,889 107,661 94,921 88.1
執行率  B/A 85.9 42.0 49.2 47.5 49.6
繰越率  C/A - 28.4 49.0 43.1 40.6
不用率  D/A 14.0 29.5 1.6 9.2 9.6
イ 除染等の事業の実施状況

環境大臣は、放射性物質汚染対処特措法に基づき、国自ら主体的に除染を実施する除染特別地域や市町村等が国の補助を受けて実施する汚染状況重点調査地域を指定している。26年9月末現在、警戒区域又は計画的避難区域の指定を受けるなどした福島県管内の11市町村の地域を除染特別地域に指定している。そして、国(注11)及び市町村等は、これらの地域で汚染土壌等の除去、当該汚染の拡散の防止その他の措置(以下「除染等の措置」という。)並びに除去土壌の収集、運搬、保管及び処分を実施するとしている。

また、環境大臣は、放射性物質汚染対処特措法に基づき、上記11市町村の除染特別地域を汚染廃棄物対策地域(以下「対策地域」という。)に指定して、国自ら対策地域内において地震、津波等により発生した災害廃棄物等やその他除染等の措置に伴い発生した廃棄物(以下「除染廃棄物」といい、これらを合わせて「対策地域内廃棄物」という。)の収集、運搬、保管及び処分を行うことなどとしている。

さらに、国は、市町村等の協力を得ながら、対策地域内廃棄物等の処理のために必要な仮置場、中間貯蔵施設等の整備やその安全性の確保について、責任を持って行うこととしている。

そして、国は、放射性物質汚染対処特措法に基づき、前記の各地域等において除染等の事業として、汚染土壌等の除染、汚染廃棄物処理事業及び中間貯蔵施設事業を実施している。各事業の実施状況は、次のとおりである。

(注11)
除染特別地域に指定されたのは、福島県の楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村及び飯舘村の全域並びに田村市、南相馬市、川俣町及び川内村で警戒区域又は計画的避難区域であったことのある地域である。
(ア) 汚染土壌等の除染の実施状況

汚染土壌等の除染は、除染等の措置の実施や仮置場の設置及びその管理等を実施する事業であり、25年度の執行状況をみると、表82のとおり、予算現額7946億余円に対して、支出済額4622億余円(執行率58.1%)、繰越額3192億余円(繰越率40.1%)となっている。

表82 平成25年度の汚染土壌等の除染の執行状況

(単位:百万円、%)

事業等 実施
方法
予算現額
A
支出済額
B
繰越額
C
不用額
D=A-B-C
執行率
B/A
繰越率
C/A
不用率
D/A
平成23年度一般会計予算(25年度への事故繰越分) 6,759 5,751 - 1,008 85.0 - 14.9
  放射線量低減処理業務庁費等 直轄 3,781 3,779 - 1 99.9 - 0.0
放射線量低減対策特別緊急事業費補助金 補助等 2,978 1,972 - 1,006 66.2 - 33.7
  24年度復興特会予算(25年度への繰越分) 209,697 111,402 87,115 11,179 53.1 41.5 5.3
  放射線量低減処理業務庁費等 直轄 199,406 104,498 86,781 8,126 52.4 43.5 4.0
放射線量低減対策特別緊急事業費補助金 補助等 10,290 6,904
(2,300)
334 3,052 67.0 3.2 29.6
  25年度復興特会予算 578,203 345,085 232,117 1,000 59.6 40.1 0.1
  放射線量低減処理業務庁費等 直轄 295,267 71,490 223,067 708 24.2 75.5 0.2
放射線量低減対策特別緊急事業費補助金 補助等 282,935 273,594
(269,839)
9,049 291 96.6 3.1 0.1
794,660 462,239
(272,139)
319,233 13,187 58.1 40.1 1.6

(注) 実施方法は、表101参照。「補助等」は、基金を含む。

また、23年度から25年度までの3年間の支出済額は、図35のとおり、計8996億余円となっている。これを地域別にみると、除染特別地域が計2561億余円、汚染状況重点調査地域のうち福島県管内の40市町村が計6199億余円、福島県を除く岩手県等7県管内の60市町村が計235億余円となっており、除染特別地域と汚染状況重点調査地域の福島県管内市町村(図36参照)における支出済額が計8761億余円と支出済額全体の97.3%を占めている。

図35 地域別・年度別の汚染土壌等の除染に係る支出済額(平成25年度末現在)

図35 地域別・年度別の汚染土壌等の除染に係る支出済額(平成25年度末現在) 画像

支出年度 除染特別地域
A
汚染状況重点調査地域 合計 (参考)福島県内
A + B
福島県 B
(40市町村)
岩手県等7県
(60市町村)
平成23年度 1,346 255,828 253,896 1,931 257,174 255,243
  24年度 75,070 105,134 93,861 11,272 180,204 168,931
  25年度 179,768 282,470 272,167 10,303 462,239 451,936
256,185 643,433 619,925 23,507 899,618 876,111
注(1)
「除染特別地域A」には技術実証、普及啓発、調査等を含む。
注(2)
「福島県B」の平成23年度分には「除染に関する緊急実施基本方針」に基づく内閣府所管の国庫補助金分を含む。

図36 福島県内の除染特別地域及び汚染状況重点調査地域(平成26年9月末現在)

図36 福島県内の除染特別地域及び汚染状況重点調査地域(平成26年9月末現在) 画像

a 除染特別地域における除染等の措置の実施状況

国は、放射性物質汚染対処特措法に基づく特別地域内除染実施計画(以下「特別地域内計画」という。)の策定に当たり、23年11月に「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法に基づく基本方針」を閣議決定し、放射線量が特に高い地域を除き一律に25年度末までに除染等の措置を行い、発生する除去土壌等を仮置場へ搬入するなどとした。

また、環境省は、24年1月に「除染特別地域における除染の方針(除染ロードマップ)について」を作成し、新たな避難指示区域の区分ごとに、除染の優先順位、目標等の実施方針を示した。そして、環境大臣は、25年6月までに双葉町を除く10市町村について、市町村ごとに特別地域内計画を策定した。

特別地域内計画に基づく除染等の措置の進捗状況をみると、表83のとおり、26年9月末現在、楢葉町、大熊町、田村市及び川内村については、帰還困難区域を除き除染等の措置が終了している。

一方、上記の4市町村を除く富岡町、浪江町、葛尾村、飯舘村、南相馬市及び川俣町の6市町村については、葛尾村及び川俣町の宅地で除染等の措置が終了しているが、それ以外では進捗率が低くなっている。これは、特別地域内計画の策定、除去土壌等の仮置場の確保、地権者等の同意の取得等の事業に着手するまでの調整に時間を要したことなどによる。

除染等の措置に係る25年度の支出済額は計1797億余円となっており、楢葉町、富岡町、飯舘村及び南相馬市の4市町村が計1230億余円と全体の68.4%を占めている。これは、4市町村のいずれも除染対象となる避難指示解除準備区域及び居住制限区域の面積が広く、除染対象施設も多いことなどによる。

表83 市町村別・除染対象別の除染等の措置の進捗状況(帰還困難区域を除く。)及び平成25年度の支出済額

市町村名 楢葉町 富岡町 大熊町 双葉町 浪江町 葛尾村 飯舘村 田村市 南相馬 川俣町 川内村
宅地 平成
26年
3月末
進捗率 (%) 100 0.1 100 0.6 59 9 100 - 17 100
対象数 (宅地の件数) 2,500 6,000 調整中 1,700 160
(関係人の数) 170 5,900 480 3,900 360
(世帯数) 120
26年
9月末
進捗率 (%) 100 5 100 5 100 25 100 4 100 100
対象数 (宅地の件数) 2,500 6,000 180 調整中 1,100 1,800 5,200 360 160
(関係人の数) 5,900
(世帯数) 120
農地 26年
3月末
進捗率 (%) 100 0.2 100 0.7 0.1 4 100 0.4 5 100
対象数(千㎡) 8,100 8,400 1,700 調整中 19,000 4,300 22,000 1,400 31,000 6,800 1,300
26年
9月末
進捗率 (%) 100 0.9 100 5 17 12 100 1 15 100
対象数(千㎡) 8,100 7,700 1,700 調整中 19,000 4,300 22,000 1,400 31,000 7,300 1,300
森林
(生活圏)
26年
3月末
進捗率 (%) 100 0.1 100 4 99 5 100 1 14 100
対象数(千㎡) 4,500 8,300 1,600 調整中 3,800 6,500 14,000 1,900 12,000 5,100 2,000
26年
9月末
進捗率 (%) 100 4 100 8 99 17 100 15 36 100
対象数(千㎡) 4,500 6,600 1,600 調整中 3,800 6,000 14,000 1,900 12,000 5,100 2,000
道路 26年
3月末
進捗率 (%) 100 17 100 - 1 0.9 100 0.3 0.3 100
対象数(千㎡) 1,700 1,800 310 調整中 2,100 1,100 3,300 290 3,200 1,100 380
26年
9月末
進捗率 (%) 100 52 100 9 1 6 100 0.3 0.8 100
対象数(千㎡) 1,700 1,500 310 調整中 2,100 1,100 3,300 290 3,200 1,100 380
25年度の
支出済額
(百万円)
市町村別 計 23,787 32,778 8,553 - 9,037 11,645 38,278 4,918 28,160 10,824 5,169
その他 6,614
合計 179,768
注(1)
進捗率は、小数点第1位(1%未満の場合は第2位)を四捨五入しており、また、「-」は未発注を示す。
注(2)
対象数は、有効数字2桁で四捨五入した概数であり、進捗率算出の基とした実績数とともに今後の精査によって変わり得る。
注(3)
網掛けは、特別地域内計画に基づく除染等の措置が終了した市町村を示す。
注(4)
双葉町は、特別地域内計画を平成26年7月に策定し、対象数は調整中である。
注(5)
楢葉町、大熊町、葛尾村(宅地)、田村市、川俣町(宅地)及び川内村の対象数は、未同意等を除いている。
注(6)
その他は、国有財産の除染、技術実証、普及啓発、調査等である。

上記のとおり、市町村別の進捗に差が生じていることから、環境省は、25年9月に公表した「除染の進捗状況についての総点検」において、一律に25年度末までに除染等の措置を行い、発生する除去土壌等を仮置場へ搬入するとしていた従前の目標を改め、個々の市町村の状況に応じて、復興の動きと連動した除染等の措置を推進することとした。そして、環境大臣は、25年12月に富岡町等6市町村の特別地域内計画を改定(双葉町は26年7月策定)し、市町村の状況に応じた除染等の措置の終了時期を定めた。

そこで、26年9月末現在の除染等の措置の終了時期をみると、図37のとおり、楢葉町、大熊町、田村市及び川内村は同年3月までに終了し、富岡町等7市町村は、それぞれの終了時期までに終了するよう、事業を実施している。

国は、改定した各特別地域内計画の終了時期までに除染等の措置が終了するように、仮置場の用地確保等に当たり、市町村の協力を得ながら地権者を始めとする地元住民に丁寧な説明を行い、理解を得られるよう努めるとともに、これまでの実績を踏まえた効果的な手法や新技術の活用により除染等の措置の加速化を図っていくこととしている。なお、除染等の措置の終了後も、除染効果の維持を確認するために、必要な事後モニタリングを行うこととしている。

図37 除染特別地域における除染等の措置の計画及び実績(平成26年9月末現在)

図37 除染特別地域における除染等の措置の計画及び実績(平成26年9月末現在) 画像

b 汚染状況重点調査地域における除染等の措置の実施状況

放射性物質汚染対処特措法に基づき、汚染状況重点調査地域に指定された市町村の長等は、除染実施計画を策定し、国は、補助金等の財政措置等を講ずることとなっている。26年9月末現在、汚染状況重点調査地域に指定された市町村は、表84のとおり、福島県等の8県で100市町村となっており、このうち94市町村が除染実施計画を策定している。

上記の除染実施計画に基づく除染等の措置に係る25年度の支出済額は計2824億余円となっており、汚染状況重点調査地域に指定された市町村が多い福島県の支出済額が2721億余円と全体の96.3%を占めている。

表84 汚染状況重点調査地域として指定された市町村(平成26年9月末現在)及び県別の25年度の支出済額

(単位:百万円)

県名 市町村数 汚染状況重点調査地域として指定された市町村 平成25年度の
支出済額
除染実施計画策定済 当面策定
予定なし
岩手県 3 一関市、奥州市、平泉町 1,084
宮城県 8 白石市、角田市、栗原市、七ケ宿町、大河原町、丸森町、亘理町、山元町 1,452
福島県 40 (県北地域) 福島市、二本松市、伊達市、本宮市、桑折町、国見町、 川俣町、大玉村 272,167
(県中地域)  郡山市、須賀川市、田村市、鏡石町、天栄村、石川町、 玉川村、平田村、浅川町、古殿町、三春町、小野町
(県南地域) 白河市、西郷村、泉崎村、中島村、矢吹町、棚倉町、鮫川村 矢祭町、塙町
(会津地域) 会津坂下町、湯川村、会津美里町 柳津町、三島町
(相双地域) 相馬市、南相馬市、広野町、川内村、新地町
(いわき地域) いわき市
茨城県 20 日立市、土浦市、龍ケ崎市、常総市、常陸太田市高萩市北茨城市、取手市、牛久市、つくば市ひたちなか市鹿嶋市、守谷市、稲敷市、つくばみらい市、東海村美浦村阿見町、利根町 鉾田市 1,496
栃木県 8 佐野市、鹿沼市、日光市、大田原市、矢板市、那須塩原市、塩谷町、那須町 5,332
群馬県 10 桐生市、沼田市、渋川市みどり市下仁田町中之条町、高山村、 東吾妻町、川場村 安中市 321
埼玉県 2 三郷市、吉川市 17
千葉県 9 松戸市、野田市、佐倉市、柏市、流山市、我孫子市、鎌ケ谷市、印西市、 白井市 598
100 94(うち除染等の措置を完了した市町村数 17) 6 282,470

(注) 下線は除染等の措置を完了した市町村を示している。

そこで、除染実施計画を策定している福島県管内の36市町村における同計画に基づく除染等の措置の完了状況をみると、26年9月末現在、除染等の措置を完了した市町村はない。

除染等の措置の進捗状況は、表85のとおり、公共施設等と農地・牧草地の進捗率が高く、それぞれ71.4%、61.1%となっている。

公共施設等は、放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針において、学校、公園等の子どもの生活環境を優先的に実施することとされたことなどから、全ての地域で進捗率が高くなっている。また、農地・牧草地は、作付けや営農再開前に除染等の措置を完了させる必要があること、放射線量が低い地域では汚染のない下層の土壌と表層の土壌とを反転させる方法(反転耕)により仮置場の確保が不要となるなどの効率的な手法を取り入れたことなどから、進捗率が高くなっている地域がある一方、相双地域及びいわき地域の進捗率が14.6%、0.0%と低くなっている。これは、相双地域では放射線量が高い地域と低い地域が混在していることなどから除染の実施方法の検討に時間を要していること、いわき地域では表土除去の手法を執ったことから必要となる仮置場の確保に時間を要していることなどによる。

表85 福島県管内の地域別・除染対象別の除染等の措置の進捗状況(平成26年9月末現在)

地域 市町村数 住宅(戸数) 公共施設等(施設数) 道路(km)
平成26年9月末 26年3月末 平成26年9月末 26年3月末 平成26年9月末 26年3月末
予定数
A
実績数
B
進捗率(%)
B/A
進捗率(%) 予定数
A
実績数
B
進捗率(%)
B/A
進捗率(%) 予定数
A
実績数
B
進捗率(%)
B/A
進捗率(%)
県北 8 162,555 85,176 52.3 39.8 4,106 2,788 67.9 64.9 4,015 1,357 33.8 27.0
県中 12 140,855 51,688 36.6 24.5 2,759 2,029 73.5 53.3 4,887 426 8.7 2.0
県南 7 25,129 7,603 30.2 11.7 754 445 59.0 42.7 1,546 297 19.2 13.7
会津 3 6,688 2,645 39.5 26.6 144 137 95.1 65.9 183 45 24.5 23.7
相双 5 34,662 7,640 22.0 18.2 232 230 99.1 1,415 548 38.7 23.4
いわき 1 62,861 10,457 16.6 6.8 530 464 87.5 76.4 調整中
36 432,750 165,209 38.1 26.4 8,525 6,093 71.4 61.3 12,047 2,674 22.2 14.7
                     
地域 農地・牧草地(ha) 森林(生活圏)(ha)  
平成26年9月末 26年3月末 平成26年9月末 26年3月末
予定数
A
実績数
B
進捗率(%)
B/A
進捗率(%) 予定数
A
実績数
B
進捗率(%)
B/A
進捗率(%)
県北 16,108 14,628 90.8 89.5 1,548 404 26.1 17.1
県中 9,375 4,762 50.8 43.6 598 64 10.7 9.6
県南 550 472 85.8 86.8 811 54 6.6 6.4
会津 - - - - - - - -
相双 8,120 1,185 14.6 14.5 697 432 62.0 52.3
いわき 287 0 0.0 0.0 591 7 1.3 0.0
34,441 21,049 61.1 58.5 4,247 963 22.6 17.4
注(1)
予定数は、市町村により概数又は平成26年度末までの計画数を計上しているところがあるため、今後変更されることがある。また、「-」は実施予定がないこと、「調整中」は実施計画を調整中であることを示す。
注(2)
予定数及び実績数には、詳細測定(事前測定)の結果により除染が必要ないと判断されたものを含めている。
注(3)
平成26年3月末現在の進捗率は、26年9月末現在の予定数に対する進捗を示す。
注(4)
相双地域の公共施設等は、施設の区分を見直すなどしたため、平成26年3月末現在の進捗率を示していない。

次に、除染実施計画を策定している岩手県等7県(福島県を除く。)管内の58市町村における同計画に基づく除染等の措置の完了状況をみると、表86のとおり、26年9月末現在、17市町村は、除染等の措置を完了している。このほか、26市町村は、除染等の措置を完了したが、今後、更に除染等の措置が必要となった場合には同計画を改定して実施するとしており、また、15市町村は、継続して事業を実施している。

表86 岩手県等7県管内の市町村における除染等の措置の完了状況

県名 計画策定済の市町村数(平成26年9月末現在)
除染等の措置を完了して
いる市町村
除染等の措置を完了した
が、今後、更に除染等の措
置が必要となった場合には
除染実施計画を改定して除
染等の措置を実施するとし
ている市町村
継続して除染等の措置を
実施している市町村
岩手県 3 0 2 1
宮城県 8 0 3 5
茨城県 19 11 6 2
栃木県 8 0 4 4
群馬県 9 6 1 2
埼玉県 2 0 2 0
千葉県 9 0 8 1
58 17 26 15

岩手県等7県における除染等の措置の進捗状況をみると、表87のとおり、住宅、公共施設等、道路及び農地・牧草地の進捗率が9割程度となっている一方、森林(生活圏)の進捗率が51.9%となっている。これは、除染実施計画の策定に当たり、人の健康の保護の観点から除染対象に優先順位が設けられており、公共施設等、住宅、農地・牧草地の順に優先して実施されていることなどによる。

福島県と比べると全体的に進捗率は高くなっているが、一部の県では、道路、農地・牧草地等の進捗率が低くなっている。これは、除染の実施方法等の検討や仮置場の確保に時間を要していることなどによる。なお、福島県の住宅の進捗率が岩手県等7県と比べて低くなっているのは、除染を予定している住宅が26年9月末現在43万戸を超えることから、必要とされる仮置場の確保に時間を要していることなどによる。これについて、福島県では、仮置場の更なる確保や市町村における除染推進体制の強化等に取り組み、住宅の除染を着実に進めるとしている。

表87 岩手県等7県管内の県別・除染対象別の除染等の措置の進捗状況

県名 住宅(戸数、棟数) 公共施設等(施設数) 道路(km)
平成26年9月末 26年3月末 平成26年9月末 26年3月末 平成26年9月末 26年3月末
予定数
A
実績数
B
進捗率(%)
B/A
進捗率(%) 予定数
A
実績数
B
進捗率(%)
B/A
進捗率(%) 予定数
A
実績数
B
進捗率(%)
B/A
進捗率(%)
岩手県 18,621 15,187 81.5 79.5 3,675 3,148 85.6 83.8 2,151 2,140 99.4 97.2
宮城県 7,882 4,227 53.6 39.6 451 335 74.2 57.6 340 73 21.4 0.0
茨城県 46,663 46,652 99.9 99.6 1,851 1,849 99.8 99.7 1,164 1,120 96.2 92.5
栃木県 36,924 28,618 77.5 57.0 1,344 812 60.4 43.0 81 78 96.7 96.7
群馬県 6,192 6,164 99.5 99.4 188 187 99.4 99.4 203 203 100.0 99.9
埼玉県 0 0 - - 150 150 100.0 60.0 3 3 100.0 100.0
千葉県 19,159 19,159 100.0 99.8 2,490 2,490 100.0 99.9 232 232 100.0 100.0
135,441 120,007 88.6 81.8 10,149 8,971 88.3 84 4,177 3,852 92.2 88.2
(参考) 福島県管内の進捗率(再掲) 38.1 26.4 71.4 61.3 22.2 14.7
                   
県名 農地・牧草地(千m2 森林(生活圏)(千m2  
平成26年9月末 26年3月末 平成26年9月末 26年3月末
予定数
A
実績数
B
進捗率(%)
B/A
進捗率(%) 予定数
A
実績数
B
進捗率(%)
B/A
進捗率(%)
岩手県 - - - - - - - -
宮城県 557 217 38.9 37.7 2,000 635 31.7 31.3
茨城県 - - - - 7 7 100.0 100.0
栃木県 12,342 12,142 98.3 98.3 831 831 100.0 45.9
群馬県 1,043 1,043 100.0 100.0 60 30 50.1 50.1
埼玉県 - - - - - - - -
千葉県 - - - - - - - -
13,942 13,402 96.1 96 2,899 1,504 51.9 36.1
(参考) 福島県管内の進捗率(再掲) 61.1 58.5 22.6 17.4
注(1)
予定数は、平成26年9月末現在で具体的に予定があるものであり、今後市町村における除染の計画が具体化するにつれて増減する可能性がある。
注(2)
除染作業は事前のモニタリング結果を基にその要否を判断しており、予定数及び実績数には、不要と判断されたものを含めている。
注(3)
平成26年3月末現在の進捗率は、26年9月末現在の予定数に対する進捗を示す。

このように、岩手県等7県における除染等の措置は、一部の県において遅れが見受けられるものの、完了等したとしている市町村も多数に上っている。

一方、除染特別地域や汚染状況重点調査地域に指定された福島県の多くの地域では、福島第一原発の事故の発生から3年11か月が経過した今もなお、除染等の措置が完了していない。このため、国及び福島県管内の36市町村における除染等の措置は、今後も困難な状況が見込まれるところではあるが、特別地域内計画及び除染実施計画に基づき、地域の状況に応じた円滑かつ迅速な実施が望まれる。

(イ) 汚染廃棄物処理事業の実施状況

汚染廃棄物処理事業は、対策地域内廃棄物、事故由来放射性物質による汚染状態が放射能濃度8,000Bq/㎏(注12)を超え、特別な管理が必要な程度に汚染されたものとして環境大臣が指定した廃棄物(以下「指定廃棄物」という。)等の迅速な処理等を実施するものである。

なお、対策地域以外の地域の廃棄物は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)が適用され、市町村等が処理を行うこととなっているが、放射性物質により汚染された土壌等、落葉、焼却施設で発生した焼却灰等のうち、放射能濃度が8,000Bq/㎏を超えるものについては、放射性物質汚染対処特措法に基づき、環境大臣が当該廃棄物を指定廃棄物として指定し、対策地域内廃棄物と同様に国が責任を持って処理を行うこととなっている。

これらの廃棄物処理の主な流れは、図38のとおり、福島県の対策地域内廃棄物は、仮置場に保管した後、再生利用や焼却等を行うとともに、その放射能濃度により分別して処理施設等へ搬入し、また、福島県の指定廃棄物は、指定廃棄物が生じたごみ焼却施設、水道施設等の管理者及び指定廃棄物を占有する者(以下「施設管理者等」という。)の施設に保管した後、対策地域内廃棄物と同様に、その放射能濃度により分別して処理施設等へ搬入することとなっている。そして、福島県以外の都道府県の指定廃棄物は、施設管理者等の施設で保管した後、処理施設等へ搬入することとなっている。

(注12)
Bq(ベクレル) 1秒間に崩壊する原子核の数。放射性物質の量を表す場合に用いられる単位

図38 対策地域内廃棄物、指定廃棄物等の主な処理の流れ

図38 対策地域内廃棄物、指定廃棄物等の主な処理の流れ 画像

25年度の汚染廃棄物処理事業の執行状況をみると、表88のとおり、予算現額1717億余円に対して、支出済額236億余円(執行率13.7%)、繰越額803億余円(繰越率46.7%)、不用額677億余円(不用率39.4%)となっている。

表88 平成25年度の汚染廃棄物処理事業の執行状況

(単位:百万円、%)

事業等 実施
方法
予算現額 支出済額 繰越額 不用額 執行率 繰越率 不用率
A B C D=A-B-C B/A C/A D/A
平成23年度一般会計予算(25年度への事故繰越分) 50 49 - 0 98.3 - 1.6
  放射性物質汚染廃棄物処理事業費 直轄 50 49 - 0 98.3 - 1.6
24年度復興特会予算(25年度への繰越分) 74,579 11,880 958 61,741 15.9 1.2 82.7
  放射性物質汚染廃棄物処理事業費 直轄 51,563 11,246 958 39,357 21.8 1.8 76.3
  放射性物質汚染廃棄物処理業務委託費等 直轄、補助等 12,589 468 - 12,121 3.7 - 96.2
  放射性物質汚染廃棄物処理加速化事業費補助金 補助 10,427 164 - 10,262 1.5 - 98.4
25年度復興特会予算 97,099 11,730 79,354 6,015 12.0 81.7 6.1
  放射性物質汚染廃棄物処理事業費 直轄 34,238 858 33,258 121 2.5 97.1 0.3
  放射性物質汚染廃棄物処理業務委託費等 直轄、補助等 62,748 10,758 46,096 5,894 17.1 73.4 9.3
  土地建物借料等 直轄 112 112 - 0 99.9 - 0.0
171,730 23,659 80,312 67,757 13.7 46.7 39.4

(注) 実施方法は、表101参照

a 対策地域内廃棄物の処理の進捗状況

環境大臣は、24年6月に、放射性物質汚染対処特措法に基づき、福島県の双葉町を除く10市町村の対策地域内において地震、津波等により発生した災害廃棄物等及び除染廃棄物の処理方針に関する対策地域内廃棄物処理計画(以下「処理計画」という。)を策定した。そして、沿岸部の市町は、帰還困難区域を除き、24年度内を目途に災害廃棄物を仮置場へ搬入することとし、25年度末までに処理施設等への搬入を目指すこととした。また、内陸部の市町村は、帰還困難区域を除き、要解体建物等の状況を把握した上で、当該市町村と調整しつつ、25年度末までに処理施設等への搬入を目指すこととした。このほか、除染廃棄物については、今後、除染の内容等が具体化された段階で、除染廃棄物の種類及び発生量等の予測を行い、処理体制の整備状況等を踏まえて、処理目標を検討することとした。

既に処理が実施されている災害廃棄物等の処理状況をみると、表89のとおり、仮置場を設置せずに直接既存の処理施設等に搬入することを予定している田村市を除く10市町村の仮置場への搬入率は、25年度末現在13.5%、26年9月末現在22.1%と低くなっている。これは、仮置場の整備に時間を要したことなどによる。

田村市を除く10市町村の災害廃棄物等の仮置場への搬入等に係る25年度の支出済額は、計121億余円となっており、南相馬市及び楢葉町で計103億余円と全体の84.8%を占めている。これは、25年度末現在、対策地域内全体で14か所の仮置場が設置されているが、このうち、南相馬市が6か所、楢葉町が5か所の計11か所の仮置場を設置して災害廃棄物等の収集、運搬、選別業務等の事業を実施していることなどによる。

表89 処理計画における平成26年9月末現在の災害廃棄物等の推定量及び仮置場への搬入実績並びに25年度の支出済額

市町村名 注(1) 仮置場への搬入実績(t) 25年度の
支出済額
(百万円)
推定量(t) 平成25年度末 26年9月末
搬入率(%) 搬入率(%)
B/A C/A
沿

南相馬市   260,000 86,000 33.0 139,000 53.4 7,351
浪江町   289,000 1,000 0.3 1,900 0.6 430
双葉町   13,000 - - - - 4
大熊町   3,900 210 5.3 1,100 28.2 129
富岡町   105,000 1,200 1.1 3,300 3.1 229
楢葉町   76,000 19,000 25.0 31,000 40.7 2,964


飯舘村   42,000 - - 350 0.8 134
川俣町   3,300 - - 100 3.0 14
葛尾村   6,700 - - - - 2
田村市 注(2) 2,300 -
川内村   2,500 400 16.0 420 16.8 107
  その他 注(3) 785
802,000 12,155
田村市を除く 800,000 108,000 13.5 177,000 22.1
注(1)
平成25年12月の計画における推定量であり、帰還困難区域を含めていない。また、有効数字2桁で四捨五入(10万t以上の場合は、1,000t未満を四捨五入)している。
注(2)
田村市は、仮置場を設置せず直接処理先へ搬入を予定している。
注(3)
「その他」は、共通経費等である。

環境省は、災害廃棄物等の処理の進捗が遅れて25年度末までの完了が困難な状況であるとして、25年9月に「福島県の災害廃棄物等の処理進捗状況についての総点検」を公表し、避難者の円滑な帰還を積極的に推進する観点から、避難指示解除準備区域及び居住制限区域の災害廃棄物の処理に当たっては、帰還の妨げとなる廃棄物の処理を優先することとした。具体的には、帰還する地域周辺の災害廃棄物、帰還の準備に伴って生ずる家の片付けごみ、特に、緊急性の高い被災家屋の解体に伴う廃棄物等を速やかに撤去し、仮置場へ搬入することを優先目標とした。そして、環境大臣は、25年12月に処理計画を改定し、帰還の妨げとなる廃棄物の撤去と仮置場への搬入の完了時期を双葉町を含め市町村ごとに定めた。

そこで、26年9月末現在の帰還の妨げとなる廃棄物の仮置場への搬入状況をみると、図39のとおり、南相馬市(一部を除く。)、大熊町、楢葉町及び川内村は、改定された計画どおり26年3月に搬入を完了し、浪江町、富岡町、飯舘村及び川俣町は、搬入を開始した。一方、双葉町及び葛尾村には、26年9月末現在、仮置場が整備されていない。搬入を完了した上記の4市町村及び田村市を除く浪江町等6町村は、改定された計画どおり搬入が完了するよう、事業を実施している。

図39 対策地域内廃棄物、指定廃棄物等の主な処理の流れ

図39 対策地域内廃棄物、指定廃棄物等の主な処理の流れ 画像

b 指定廃棄物の処理の進捗状況

岩手県等12都県の指定廃棄物の数量は、表90のとおり、26年3月末に計約14万tであったものが同年9月末には計約15万tに増加している。そして、処理施設等の確保が進まないことから、その全量が地方公共団体や委託を受けた民間事業者等が所有する焼却施設等に保管されている。

表90 指定廃棄物の数量

(単位:t)

  都県名 岩手県 宮城県 山形県 福島県 茨城県 栃木県 群馬県
平成 26年3月末 468 3,271 2 119,052 3,532 10,499 1,186
  26年9月末 475 3,317 2 127,512 3,532 10,510 1,186
                 
  都県名 千葉県 東京都 神奈川県 新潟県 静岡県
  26年3月末 3,663 981 2 1,017 8 143,688
  26年9月末 3,687 981 2 1,017 8 152,236

そこで、指定廃棄物の処理施設等の確保の状況をみると、次のとおりとなっている。

環境省は、24年3月に「指定廃棄物の今後の処理の方針」をまとめ、指定廃棄物が多い福島県では、放射能濃度10万㏃/㎏超の指定廃棄物を搬入するための中間貯蔵施設を確保するとともに、放射能濃度10万㏃/㎏以下の指定廃棄物を既存の管理型処分場で処理する計画について関係地方公共団体及び関係者と協議を進めることとした。また、指定廃棄物が多量に発生して施設管理者等による保管がひ(・)っ(・)迫している宮城県、茨城県、栃木県、群馬県及び千葉県では、国が必要な最終処分場を確保することとした。

そして、国は、上記の宮城県等5県において最終処分場の候補地の選定作業を進めたが、地元自治体等の理解が得られなかったことから、25年2月に「指定廃棄物の最終処分場候補地の選定に係る経緯の検証及び今後の方針」をまとめ、最終処分場候補地の選定過程を大幅に見直すこととし、それ以降は、①市町村長会議の開催を通じて指定廃棄物処理に向けた共通理解の醸成、②専門家による評価の実施、③候補地の安全性に関する詳細調査の実施により、手順を踏んで着実に前進できるよう全力で取り組むこととした。

しかし、国は、26年9月末現在においても、処理施設の候補地を選定している段階であり、整備工事等は実施されていない。なお、国は、福島県において既存の管理型処分場を活用することについて関係地方公共団体と協議している。

このように、対策地域内廃棄物や指定廃棄物の処理は、仮置場の確保に時間を要しているため廃棄物の搬入が進捗していなかったり、処理施設等を確保できていないなどのため多量の指定廃棄物が長期間にわたり施設管理者等において保管されていたりしている。

このため、国は、帰還の妨げとなる廃棄物の処理や指定廃棄物の処理施設等の確保等について、今後も困難な状況が見込まれるところではあるが、環境の汚染による人の健康又は生活環境への影響を速やかに低減させるよう、関係地方公共団体と連携を図りながら推進していく必要がある。

(ウ) 中間貯蔵施設事業の実施状況

中間貯蔵施設事業は、福島県内における除染等の措置に伴って大量に発生が見込まれる除去土壌、放射能濃度10万Bq/kg超の指定廃棄物等を一定の期間、安全かつ集中的に管理及び保管を行うための中間貯蔵施設に係る調査検討・整備を行うものである。

25年度の中間貯蔵施設事業の執行状況をみると、表91のとおり、予算現額165億余円に対して、支出済額22億余円(執行率13.5%)、繰越額139億余円(繰越率84.1%)となっている。このように多額の繰越しが生じているのは、中間貯蔵施設の安全性の確保に必要な事項等を検討するための各種調査業務等の実施に際して、地元自治体等の調整に時間を要したことなどによる。

また、25年度復興特会予算では、中間貯蔵施設の用地取得等が見込まれていたため、新たに補償費、施工費等の環境保全復興事業費(予算現額44億円)が計上されていたが、整備候補地の環境影響調査等の段階にとどまっていて、当初計画されていた中間貯蔵施設の用地取得等に至らず、翌年度に40億円が繰り越されている。

表91 平成25年度の中間貯蔵施設事業の執行状況

(単位:百万円、%)

事業等 実施
方法
予算現額 支出済額 繰越額 不用額 執行率 繰越率 不用率
A B C D=A-B-C B/A C/A D/A
24年度復興特会予算(平成25年度への繰越分) 1,920 1,893 - 27 98.5 - 1.4
  環境保全復興政策費(調査費等) 直轄 1,920 1,893 - 27 98.5 - 1.4
25年度復興特会予算 14,645 344 13,948 352 2.3 95.2 2.4
  環境保全復興政策費(調査費等) 直轄 10,245 176 9,948 120 1.7 97.1 1.1
  環境保全復興事業費(補償費、施工費等) 直轄 4,400 167 4,000 232 3.8 90.9 5.2
16,566 2,237 13,948 380 13.5 84.1 2.2

(注) 実施方法は、表101参照

環境省は、大量の除去土壌等や指定廃棄物等の処理とこれに必要となる仮置場や中間貯蔵施設の基本的な考え方を示すために、23年10月に「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質による環境汚染の対処において必要な中間貯蔵施設等の基本的考え方について」を公表した。この中で、除染等の措置に伴い生ずる除去土壌等の仮置場への本格搬入開始から3年程度を目途として供用を開始することなどを目指すこととした中間貯蔵施設の整備に係る工程表(以下「中間貯蔵工程表」という。)を策定している(図40参照)。

中間貯蔵工程表によれば、26年3月末までに用地取得等(図40の項目1から6まで)が完了する予定であったが、前記のとおり、同年9月末現在においても基本設計・実施設計、環境影響調査等(図40の項目3及び4)の段階にあり、大幅に計画から遅延している。また、用地取得、本体工事等の実施についても依然として見通しが立たない状況であり、国は、引き続き中間貯蔵施設の整備に向けて関係地方公共団体等の理解を求めていくことにしている。

図40 中間貯蔵工程表及び進捗状況(平成26年9月末現在)

図40 中間貯蔵工程表及び進捗状況(平成26年9月末現在) 画像

中間貯蔵施設の整備は、汚染土壌等の除染や汚染廃棄物処理事業の進捗に不可欠な事業である。国は、中間貯蔵施設への搬入開始時期の目標について、中間貯蔵工程表では27年1月としていたが、同月にその見極めを行った結果、東日本大震災から5年目を迎える同年3月11日までとすることとし、搬入開始に向けて引き続き全力で取り組んでいくとしている。

一方、福島県では、中間貯蔵施設の整備が遅延すると、汚染状況重点調査地域において、仮置場等での除去土壌等の保管を継続する必要があるが、賃借している仮置場等について賃借の延長ができないおそれがあること、これに伴い新たな除染等の措置が実施できなくなることなどの支障が生じかねないとして、引き続き速やかな中間貯蔵施設の整備を要望している。

26年度以降は用地取得等に加えて、施設の本体工事、更には一部施設の本格運用を目指していることから、国は、中間貯蔵施設の整備に向けて、今後も困難な状況が見込まれるところであるが、関係地方公共団体等に対して中間貯蔵施設事業の必要性及び安全性について丁寧に説明し、施設に対する理解を得られるように取り組み、迅速に事業を実施していく必要がある。