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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成27年3月

東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について

第2 検査の結果

2 復興等の各種施策及び支援事業の実施状況

(4) 復旧・復興事業 に係る予算の執行状況

東日本大震災関係経費については、23年度以降、毎年度、多額の予算が計上されている。23年度から25年度までの復旧・復興予算における歳出予算額は、表100のとおり、23年度1次補正で計4兆0153億余円、23年度2次補正で計1兆8106億余円、23年度3次補正で計9兆0095億余円、これらの合計14兆8354億余円、24年度復興特会予算で計4兆9706億余円、25年度復興特会予算で計5兆3023億余円であり、3か年度の合計は25兆1085億余円となっている。

表100 平成23年度から25年度までの復旧・復興予算における歳出予算額

(単位:億円)

経費項目 一般会計 復興特会 合計
23年度
1次補正
23年度
2次補正
23年度
3次補正
平成23年度
24年度 25年度
災害救助等関係経費 4828 941 5770 762 836 7368
災害廃棄物処理事業費 3519 3859 7378 3442 1265 1兆 2086
災害対応公共事業関係費 1兆 2019 1兆 2019 1兆 2019
施設費災害復旧費等 4160 4160 4160
公共事業等の追加 1兆 4734 1兆 4734 5091 1兆 9825
復興関係公共事業等 8793 8793
災害関連融資関係経費 6406 6715 1兆 3122 1209 963 1兆 5295
地方交付税交付金 1200 3573 1兆 6635 2兆 1408 5490 6053 3兆 2951
東日本大震災復興交付金 1兆 5611 1兆 5611 2867 5917 2兆 4397
全国防災対策費 5751 5751 4826 1兆 0578
その他の東日本大震災関係経費 8018 2兆 4631 3兆 2649 3998 6255 4兆 2903
被災者支援関係経費 3773 3773 3773
東日本大震災復興対策本部運営経費 5 5 5
原子力損害賠償法等関係経費 2754 2754 2754
原子力災害復興関係経費 3557 3557 4811 7093 1兆 5462
国債整理基金特別会計への繰入(復興債の償還財源等) 1253
(補) 9895
(計) 1兆 1148
661
(補) 8446
(計) 9107
2兆 0256
予備費(平成 23年度は東日本大震災復旧・復興予備費、 25年度は復興加速化・福島再生予備費) 8000 8000 4000 6000 1兆 8000
社会インフラ整備・住民の定着促進等対策費 (補) 1964 1964
産業の復興と雇用機会の創出 (補) 512 512
原子力災害等対策費 (補) 700 700
福島の再生関係経費 (補) 1718 1718
復興まちづくり関係経費 (補) 2282 2282
産業の復興関係経費 (補) 1329 1329
被災者支援関係経費 (補) 306 306
(既定経費の減額) △2343 △2343 (補) △1119 (補) △4899 △8362
合計 4兆 0153 1兆 8106 9兆 0095 14兆 8354 3兆 7753
(補) 1兆 1952
(計) 4兆 9706
4兆 3839
(補) 9183
(計) 5兆 3023
25兆 1085
注(1)
「23年度2次補正」の「地方交付税交付金」は、5454億余円から、普通交付税増額分881億余円及び復旧・復興事業以外の経費に充てた1000億円を控除した額である。
注(2)
「23年度3次補正」の「合計」は、9兆2438億余円から、東日本大震災復旧・復興予備費のうち台風12号対策等の財源に充当した2343億円を控除した額である。
注(3)
表中「24年度」及び「25年度」の計数に付している(補)は補正予算額を、(計)は当初予算と補正予算の合計額を、付記のないものは当初予算額を示している。

なお、地方交付税交付金は、23年度2次補正で4573億余円が復旧・復興予算として計上されたが、その後の財政需要を勘案した結果、1000億円を復旧・復興事業以外の経費に充てることとなったため、23年度2次補正での計上額は3573億余円となり、これに伴って23年度補正予算は計14兆8354億余円となっている。

復旧・復興予算は、他の予算と同様に、各府省庁等の概算要求を受けて財務省が査定した後、閣議の決定を経て国会に予算案として提出され、審議及び議決を受けて成立している。復旧・復興予算は、どのような経費に配分されているか、また、復興基本方針の復興施策等はどのような事業により実施されているかなどに着眼して検査した。

各府省庁等が実施する様々な復旧・復興事業の実施状況については、事業主体に直接確認するなどしない限り正確に把握することは極めて困難であるが、各府省庁等が把握している予算の執行状況に現れてくる。そこで、検査に当たっては、各府省庁等から調書を徴するなどして、東日本大震災関係経費に係る予算及び決算の数値を把握し、23年度復旧・復興予算(25年度への事故繰越分(以下「23年度事故繰越分」という。)を含む全額)について、また、24年度復興特会予算のうち25年度への繰越分(以下「24年度繰越分」という。)及び25年度復興特会予算について、それぞれ25年度の執行状況を分析した。

また、上記の調書を基に復旧・復興事業ごとの予算現額、支出済額、繰越額、事故繰越額及び不用額を調査した。そして、復旧・復興事業に係る執行率、複数年度の累計の支出済額の予算現額に対する割合(以下「累計執行率」という。)、繰越率、事故繰越額の予算現額に対する割合(以下「事故繰越率」という。)、不用率及び予算措置年度から25年度末までの累計の不用額(以下「累計不用額」という。)の予算現額に対する割合(以下「累計不用率」という。)をそれぞれ求めて、経費項目別、復興施策等別及び実施方法別に集計するとともに、繰越し及び不用の事由を整理するなどした。

なお、経費項目については、24、25両年度の復興特会予算において、当初予算及び補正予算それぞれの区分ごとに執行率等の指標を算出することとなっていないため、各年度の補正予算で実施している事業は、25年度の一部の経費項目を除き当初予算の経費項目の区分により整理している。実施方法については、表101のとおり、23年度事故繰越分、24年度繰越分及び25年度復興特会予算で実施している各事業を区分して整理した。

表101 23年度事故繰越分、24年度繰越分及び25年度復興特会予算で実施している事業の実施方法

① 直轄 各府省庁等が、請負契約や委託契約を締結する場合を含め、直接事業を実施するもの
② 補助 国以外の者が行う事業等に助成等を行う補助事業の実施方法のうち、基金、運営費交付金及び拠出金による方法を除いたもの
③ 直轄、補助等 ①又は ②を含めて複数の方法で行うもの
④ 補助(基金) 国が地方公共団体、公益法人その他団体等に対して、基金の設置造成等を行って事業を実施するのに必要な費用を補助等しているもの
⑤ 補助(運営費交付金) 国が独立行政法人等に対して、業務に必要な金額の一部又は全部を交付等しているもの
⑥ 補助(拠出金) 国が団体等に対して、拠出金として交付しているもの
⑦ 出資 国が団体等に対して、出資金として出資しているもの
⑧ 地方交付税交付金 国が地方公共団体の財源の偏在を調整するために、資金を交付しているもの
⑨ その他 ①~ ⑧以外のもの

また、事業数については、同一の事業が複数の府省庁等で実施されている場合には、それぞれの府省庁等に計上して集計しているものや、同一の事業が複数の実施方法で実施されている場合には、事業を分割して各府省庁等に計上して集計しているものがある。

23年度予算及び24、25両年度の復興特会予算の執行状況は、表102及び図45-1から図45-3までのとおり、予算現額計25兆1009億余円に対して、支出済額計20兆1211億余円(執行率80.1%)、繰越額計1兆9604億余円(繰越率7.8%)、不用額計3兆0192億余円(不用率12.0%)となっている。このうち、23年度予算は、予算現額計が3か年度計の6割近くを占める14兆8243億余円であり、支出済額計12兆5622億余円(執行率84.7%)、不用額計2兆2621億余円(不用率15.2%)で全額の執行を終えている。なお、当該不用額計2兆2621億余円は、一般会計の剰余金として24年度以降に復興特会へ繰り入れられている。

23年度予算の執行状況をみると、23年度1次補正の執行率が77.1%と23年度2次補正及び23年度3次補正の執行率に比べて低くなっている。また、24年度復興特会予算の執行状況をみると、執行率が87.4%となっていて、大半の事業が進捗しているものの、予算現額に対して3.7%が事故繰越しとなり、8.8%が不用となっている。さらに、25年度復興特会予算の執行状況をみると、執行率は60.5%と他の年度に比べて低くなっているが、これは、26年度へ多額の繰越し(繰越率33.4%)をしているためである(23年度の執行状況は、24年報告リンク参照24年度の執行状況は、25年度報告リンク参照参照)。

表102 23年度予算及び24、25両年度の復興特会予算の執行状況

(単位:億円、%)

区分 23年度予算 24年度
復興特会
予算
25年度
復興特会
予算
合計
予備費 23年度
1次補正
23年度
2次補正
23年度
3次補正
予算現額 A 503 3兆9537 1兆5763 9兆2438 14兆8243 4兆9742 5兆3023 25兆1009
支出済額 B 503 3兆0519 1兆3182 8兆1417 12兆5622 4兆3497 3兆2092 20兆1211
繰越額  C - - - - - 1841 1兆7762 1兆9604
  うち事故繰越 - - - - - 1841 291 2133
不用額  D=A-B-C - 9018 2580 1兆1021 2兆2621 4402 3168 3兆0192
執行率  B/A 100.0 77.1 83.6 88.0 84.7 87.4 60.5 80.1
繰越率  C/A  - - - - - 3.7 33.4 7.8
不用率  D/A - 22.8 16.3 11.9 15.2 8.8 5.9 12.0
注(1)
23年度予算の予備費は、応急仮設住宅の供与等に必要な経費として支出されたものである。
注(2)
23年度2次補正の予算現額1兆5763億余円は、地方交付税交付金1000億円を復旧・復興事業以外の経費に充てたことに伴い、1兆6763億余円から当該金額を控除したものである。
注(3)
24年度復興特会予算の予算現額4兆9742億余円は、国有林野事業特別会計が平成24年度末に廃止され、同特会に計上されていた東日本大震災関係経費35億余円を法令等に基づき復興特会へ繰り越したことに伴い、4兆9706億余円に当該金額を加算したものである。

図45-1 23年度予算の平成25年度末までの執行内訳

図45-1 23年度予算の平成25年度末までの執行内訳 画像

図45-2 24年度復興特会予算の平成25年度末までの執行内訳

図45-2 24年度復興特会予算の平成25年度末までの執行内訳 画像

図45-3 25年度復興特会予算の平成25年度の執行内訳

図45-3 25年度復興特会予算の平成25年度の執行内訳 画像

ア 23年度復旧・復興予算の25年度末までの執行状況

23年度復旧・復興予算は、25年度末で、その全額の執行を終えていることから、その執行はどのようなものとなっているかについて、経費項目別及び復興施策等別に分析した(23年度復旧・復興予算の事業別の執行状況は、別表13参照)。

(ア) 経費項目別の執行状況

23年度復旧・復興予算(予備費503億余円を含まない。)の執行状況は、表103のとおり、予算現額合計14兆7740億余円に対して23年度から25年度までに計12兆5118億余円が支出され、累計執行率84.6%となっている一方、累計不用額2兆2621億余円が生じている。

また、年度別の支出済額をみると、23年度計8兆9010億余円、24年度計3兆1609億余円、25年度計4499億余円と、その大部分が23、24両年度に支出されている。

表103 23年度復旧・復興予算の平成25年度末までの執行状況

(単位:件、億円、%)

経費項目 事業数 予算現額
平成23年度
支出済額
24年度
支出済額
24年度
支出済額
累計
不用額
E=
A-(B+C+D)
累計
執行率
(B+C+D)/A
累計
不用率
E/A
2
3


1


(1)災害救助等関係経費 8 4828 4647 - - 181 96.2 3.7
(2)災害廃棄物処理事業費 1 3519 2530 650 9 328 90.6 9.3
(3)災害対応公共事業関係費 41 1兆2019 2731 3051 892 5343 55.5 44.4
(4)施設費災害復旧費等 54 3884 1096 832 197 1758 54.7 45.2
(5)災害関連融資関係経費 19 6403 6308 - - 94 98.5 1.4
(6)地方交付税交付金 1 1200 1200 - - - 100.0 -
(7)その他の東日本大震災関係経費 113 7682 5920 381 68 1311 82.9 17.0
237 3兆9537 2兆4435 4915 1168 9018 77.1 22.8
2
3


2


1原子力損害賠償法等関係経費 28 2754 2566 28 - 158 94.2 5.7
  (1)原子力損害賠償法関係経費 25 2473 2380 28 - 64 97.3 2.6
(2)原子力損害賠償支援機構法関係経費 3 280 186 - - 93 66.4 33.5
2被災者支援関係経費 11 3773 1770 541 6 1455 61.4 38.5
  (1)二重債務問題対策関係経費 10 773 607 105 6 53 93.0 6.9
(2)被災者生活再建支援金補助金 1 3000 1162 435 - 1401 53.2 46.7
3東日本大震災復興対策本部
運営経費
2 5 3 - - 1 67.7 32.2
4東日本大震災復旧・復興予
備費
14 5656 3681 852 157 964 82.9 17.0
5地方交付税交付金 1 3573 3573 - - - 100.0 -
56 1兆5763 1兆1595 1422 164 2580 83.6 16.3
2
3


1


(1)災害救助等関係経費 69 941 794 97 1 46 95.0 4.9
(2)災害廃棄物処理事業費 4 3859 656 2333 574 295 92.3 7.6
(3)公共事業等の追加 129 1兆4734 1611 3820 2164 7138 51.5 48.4
(4)災害関連融資関係経費 21 6711 6684 - - 27 99.5 0.4
(5)地方交付税交付金 1 1兆6635 1兆6635 - - - 100.0 -
(6)東日本大震災復興交付金 14 1兆5611 2506 1兆3104 0 0 99.9 0.0
(7)原子力災害復興関係経費 54 3557 1474 304 61 1716 51.7 48.2
(8)全国防災対策費 101 5751 1107 4002 76 565 90.1 9.8
(9)その他の東日本大震災関係経費 242 2兆4635 2兆1508 1608 287 1230 95.0 4.9
635 9兆2438 5兆2978 2兆5271 3167 1兆1021 88.0 11.9
合計 928 14兆7740 8兆9010 3兆1609 4499 2兆2621 84.6 15.3

23年度復旧・復興予算の経費項目別の執行状況をみると、累計執行率は、23年度1次補正の「(3)災害対応公共事業関係費」が55.5%、同「(4)施設費災害復旧費等」が54.7%、23年度2次補正の「2 被災者支援関係経費」の「(2)被災者生活再建支援金補助金」が53.2%、23年度3次補正の「(3)公共事業等の追加」が51.5%、同「(7)原子力災害復興関係経費」が51.7%と低くなっており、これらの経費項目において、被災した公共土木施設、公立学校施設、介護関係施設、医療施設、社会教育施設等の災害復旧事業や、放射性物質汚染廃棄物処理事業等が実施されている。そして、上記5項目の予算現額計3兆7196億余円に対して累計不用額計は1兆7359億余円(累計不用額全体の76.7%)となっており、多額の不用が生じている。

上記のように、累計執行率が50%台にとどまっているのは、23年度2次補正の「2 被災者支援関係経費」の「(2)被災者生活再建支援金補助金」による同名の事業(別表13、No3276)において、市街地・居住地復興のための事業等の進捗が遅れているため当該支援金の申請が少なかったこと、23年度3次補正の「(3)公共事業等の追加」による「災害復旧等事業費(水産)」(別表13、No3367)において、地元住民等との調整等に不測の時間を要したことに伴い実績が予定を下回ったこと、同「(7)原子力災害復興関係経費」による「放射性物質により汚染された土壌等の除染の実施」(別表13、No3532)において、用地確保のための地元住民等との調整に至らず事業に着手できなかったことなどのためである。

(イ) 23年度3次補正の復興施策等別の執行状況

23年7月に決定された復興基本方針では、「1 基本的考え方」、「2 復興期間」等とともに、「5 復興施策」及び「6 原子力災害からの復興」が示されている(24年報告リンク参照)。「5 復興施策」によれば、国は、各府省一体となって、「災害に強い地域づくり」、「地域における暮らしの再生」、「地域経済活動の再生」及び「大震災の教訓を踏まえた国づくり」の4項目を総合的かつ計画的に実施することとされている。また、「6 原子力災害からの復興」によれば、「応急対策、復旧対策」、「復興対策」及び「政府系研究機関の関連部門等の福島県への設置等の促進」の3項目について迅速な対応を図ることとされている。

そこで、復興基本方針の策定以降に成立した23年度3次補正により実施されている事業のうち、地方交付税交付金等を除いた復興基本方針の復興施策等との関連が明確にあるものを対象として、上記「5 復興施策」4項目及び「6 原子力災害からの復興」3項目の計7項目(以下「復興施策等7項目」という。)の項目別の25年度の執行はどのようなものとなっているかについて、事業を実施している府省庁等から調書を徴するなどして分析した。なお、一部の事業は複数の項目に該当していることから、当該事業の予算現額は全額を該当する項目に重複して計上している。さらに、24年報告及び25年報告において各事業が該当している項目を、その後実施した事業の施策内容に対応した項目に見直して計上している。また、表101の「④補助(基金)」から「⑨その他」までの実施方法(以下「補助(基金)等」という。)は、国から事業主体に資金が支出された時点で全額が執行されることになるため、これらを除いて分析している。

23年度3次補正により実施されている事業のうち復興施策等との関連が明確にある事業の25年度末までの執行状況をみると、表104のとおり、予算現額は「5 復興施策」3兆0767億余円、「6 原子力災害からの復興」2970億余円、計3兆3737億余円であるのに対して、3年間の累計執行率は73.3%となる一方、累計26.6%の不用が生じている。

上記のうち、「5 復興施策」については、23年度執行率が18.1%、24年度までの累計執行率が69.3%と執行が大きく進んだ一方、25年度までの累計執行率は76.3%と執行が進まず、結果として累計23.6%の不用が生じている。また、「6 原子力災害からの復興」については、25年度までの累計執行率が41.6%と執行が進まず、累計58.3%もの不用が生じている。

表104 23年度3次補正の復興施策等別の平成25年度末までの執行状況

(単位:億円、%)

復興基本方針における復興施策等 予算現額 執行率 累計
不用率
平成
23年度
23年度
から
24年度
までの
累計
23年度
から
25年度
までの
累計
5 復興施策 3兆0767 18.1 69.3 76.3 23.6
  (1)災害に強い地域づくり 7391 17.3 55.4 63.0 36.9
  ①高齢化や人口減少等に対応した新し
い地域づくり
130 1.8 59.6 60.0 39.9
②「減災」の考え方に基づくソフト・ハードの施策の総動員 6215 13.3 49.6 58.7 41.2
③土地利用の再編等を速やかに実現で
きる仕組み等
21 14.5 75.6 75.6 24.3
④被災者の居住の安定確保 971 43.4 89.3 89.4 10.5
⑤市町村の計画策定に対する人的支援、復興事業の担い手等 52 42.6 88.1 88.1 11.8
(2)地域における暮らしの再生 2155 11.6 37.2 44.2 55.7
  ①地域の支え合い 732 18.6 46.8 49.2 50.7
②雇用対策 19 24.1 29.8 32.4 67.5
③教育の振興 1318 6.2 30.6 39.7 60.2
④復興を支える人材の育成 38 61.5 65.1 65.1 34.8
⑤文化・スポーツの振興 46 5.8 51.0 77.3 22.6
(3)地域経済活動の再生 9343 11.4 67.7 81.1 18.8
  ①企業、産業・技術等 1095 8.6 75.2 94.3 5.6
②中小企業 136 7.8 63.4 63.4 36.5
③農業 338 33.4 78.4 79.0 20.9
④林業 378 6.8 49.5 58.1 41.8
⑤水産業 1711 6.5 37.1 50.6 49.3
⑥観光 43 84.3 93.8 96.0 3.9
⑦コミュニティを支える生業支援 16 74.6 87.6 87.6 12.3
⑧二重債務問題等 51 0.4 32.2 57.0 42.9
⑨交通・物流、情報通信 2171 23.3 86.8 88.4 11.5
⑩再生可能エネルギーの利用促進とエネルギー効率の向上 175 0.0 11.9 98.8 1.1
⑪環境先進地域の実現 3 21.4 74.1 74.1 25.8
⑫膨大な災害廃棄物の処理の促進 3222 4.8 72.9 90.7 9.2
(4)大震災の教訓を踏まえた国づくり 1兆1876 25.1 85.0 86.7 13.2
  ①電力安定供給の確保とエネルギー戦略の見直し 137 42.5 88.1 90.8 9.1
②再生可能エネルギーの導入促進及び省エネルギー対策等の推進 2356 27.2 87.5 87.7 12.2
③世界に開かれた復興 141 30.1 84.4 84.4 15.5
④社会的包摂の実現と「新しい公共」の推進 9 76.8 87.6 87.6 12.3
⑤今後の災害への備え 9057 24.5 84.3 86.3 13.6
⑥震災に関する学術調査、災害の記録と伝承 173 8.6 87.1 93.5 6.4
6 原子力災害からの復興 2970 28.4 39.5 41.6 58.3
  (1)応急対策、復旧対策 2957 28.5 39.4 41.6 58.3
  ①応急対策、各種支援、情報提供等 100 37.4 74.7 74.7 25.2
②安全対策・健康管理対策等 8 58.7 63.0 63.0 36.9
③賠償・行政サービスの維持等 313 6.7 15.3 15.9 84.0
④放射性物質の除去等 2535 30.7 41.0 43.4 56.5
(2)復興対策 0 71.6 71.6 71.6 28.3
  ①医療産業の拠点整備 - - - - -
②再生可能エネルギーの拠点整備 0 71.6 71.6 71.6 28.3
(3)政府系研究機関の関連部門等の福島県
への設置等の促進
12 0.1 49.1 49.1 50.8
3兆3737 19.0 66.7 73.3 26.6

(注) 実施方法が補助(基金)等による事業は除いている。

「5 復興施策」4項目の施策別の執行状況をみると、次のとおりとなっている。

① 「(1)災害に強い地域づくり」は、23年度執行率17.3%から25年度までの累計執行率63.0%へと上昇している一方、累計36.9%の不用が生じている。これは、内訳である「②「減災」の考え方に基づくソフト・ハードの施策の総動員」で実施している「災害復旧等事業費(補助)」(別表13、No3368)において、地質調査結果に伴う堤防復旧工法の変更等により累計執行率が10.2%にとどまっていることなどのためである。

② 「(2) 地域における暮らしの再生」は、25年度までの累計執行率が44.2%と「5 復興施策」4項目のうち最も低くなっている。これは、内訳である「③教育の振興」で実施している「公立学校施設災害復旧費」(別表13、No3416)において累計執行率が14.2%にとどまっていることなどのためである。

③ 「(3)地域経済活動の再生」は、23年度執行率が11.4%にとどまっていたが、24年度までの累計執行率は67.7%に大きく上昇し、25年度までの累計執行率は81.1%と更に上昇していて、23年度執行率からの上昇幅は復興施策等7項目の中で最も大きくなっている。これは、当該施策の内訳である「①企業、産業・技術等」、「⑨交通・物流、情報通信」、「⑫膨大な災害廃棄物の処理の促進」等に係る事業の執行率が上昇しているためである。しかし、主に津波により甚大な被害を受けた沿岸地域の復旧・復興に関する施策である「⑤水産業」の25年度までの累計執行率は50.6%にとどまっている。

④ 「(4)大震災の教訓を踏まえた国づくり」は、予算現額が1兆1876億余円、25年度までの累計執行率が86.7%とそれぞれ最も高くなっている。これは、内訳である「⑤今後の災害への備え」において、全国防災対策費等の被災地以外で実施する公共事業等が進捗し、23、24両年度にその大部分が執行されたことなどのためである。

このように、復興基本方針に基づく23年度3次補正の復興施策等別の執行状況については、項目ごとの執行率に差があり、復旧・復興事業全体の中で「6 原子力災害からの復興」において進捗の遅れが見受けられる。また、復旧・復興事業の進捗の遅れなどにより、多額の予算が不用額として計上される状況となっている。

イ 24、25両年度の復興特会予算の25年度末までの執行状況

24年度復興特会予算の24年度末時点における執行状況については、25年報告において、予算現額4兆9706億余円、支出済額3兆1522億余円、繰越額1兆6327億余円、不用額1857億余円等として報告を行っている(25年報告リンク参照)。

そこで、25年度において執行された24年度繰越分及び25年度復興特会予算の執行状況を、経費項目別及び復興施策等別に、それぞれ分析した。

(ア) 経費項目別の執行状況

24年度復興特会予算のうち24年度繰越分は、25年度への繰越額1兆6327億余円に、国有林野事業特別会計の廃止に伴い復興特会に繰り越された35億余円を加えた計1兆6362億余円となっている。そして、この24年度繰越分の25年度の執行状況は、表105のとおり、支出済額計1兆1975億余円、26年度への事故繰越額計1841億余円、不用額計2545億余円となっている。

24年度繰越分で実施している事業を含む経費項目の25年度までの累計執行率のうち、50%未満となっている経費項目は、「(3)公共事業等の追加」の「③施設費等」(47.9%)及び「(9)その他の東日本大震災関係経費」の「③情報通信関係」(46.0%)の2項目である。このうち「③情報通信関係」で実施している「被災地域情報化推進事業」(別表13、No4336)は、市街地・居住地復興のための事業等の進捗の影響を受けたことなどにより、累計執行率は28.5%にとどまっている。

また、26年度への事故繰越しの状況は、事故繰越率の平均が3.7%であるのに対して「(9)その他の東日本大震災関係経費」の「⑪中小企業組合等共同施設等災害復旧費」が33.3%と著しく高くなっている。これは、当該経費項目で実施している「中小企業組合等共同施設等災害復旧事業」(別表13、No4419)において、作業員の確保が予定を下回り事業が遅延したことなどにより事故繰越しとなったためである。

表105 24年度繰越分の経費項目別の執行状況

(単位:億円、%)

経費項目 平成24年 25年度 累計
執行率
(B+E)/A
事故
繰越率
F/A
累計
不用率
(C+G)/A
予算現額
A
支出済額
B
不用額
C
予算現額
(24年度
繰越分)
D
支出済額
E
繰越額
(24年度事
故繰越分)
F
不用額
G=D-E-F
(1)災害救助等関係経費 268 166 101 0 0 - 0 62.2 - 37.7
  ②被災者緊急支援経 268 166 101 0 0 - 0 62.2 - 37.7
(2)災害廃棄物処理事業費 3442 504 10 2926 2630 78 218 91.0 2.2 6.6
(3)公共事業等の追加 5231 1563 427 3240 1954 364 921 67.2 6.9 25.7
  ①災害復旧等事業費 2149 519 94 1535 718 217 600 57.5 10.1 32.3
②一般公共事業関係費 2463 849 93 1520 1134 87 298 80.5 3.5 15.9
③施設費等 618 194 239 184 101 59 23 47.9 9.6 42.4
(6)東日本大震災復興交付金 2867 90 0 2776 2776 - 0 99.9 - 0.0
(7)原子力災害復興関係経費 5125 1865 121 3139 1319 891 927 62.1 17.3 20.4
(8)全国防災対策費 5940 2846 205 2888 2536 31 319 90.6 0.5 8.8
  ①学校施設耐震化・防災機能強化 2442 666 18 1756 1464 10 281 87.2 0.4 12.3
②一般公共事業関係費 2770 1732 114 922 890 7 25 94.6 0.2 5.0
③警察・消防関係費 73 57 12 4 3 0 0 82.4 0.1 17.3
④自衛隊の災害対処能力の向上 242 142 4 95 82 12 0 92.8 5.0 2.0
⑤社会福祉施設整備費等 72 45 1 25 24 1 0 96.6 1.5 1.8
⑥その他 339 202 53 83 71 0 11 80.6 0.1 19.2
(9)その他の東日本大震災関係経費 3660 2113 155 1390 756 476 157 78.4 13.0 8.5
  ②警察・消防関係 70 25 8 36 25 8 3 71.6 11.9 16.4
③情報通信関係 74 22 16 35 12 - 23 46.0 - 53.9
④大学等を活用した地域の再生等 362 205 2 155 140 14 0 95.1 4.1 0.7
⑧農林業関係 360 327 21 11 9 1 0 93.5 0.3 6.0
⑨水産業関係 280 176 45 58 38 14 4 76.9 5.3 17.7
⑪中小企業組合等共同施設等災害復旧費 1300 294 0 1004 448 433 123 57.1 33.3 9.5
⑭自衛隊関係 793 692 23 76 72 2 1 96.4 0.3 3.1
⑮その他 417 369 36 11 9 - 2 90.7 - 9.2
24年度に執行を終えた経費項目 2兆3206 2兆2371 835 - - - - 96.4 - 3.5
4兆9742 3兆1522 1857 1兆6362 1兆1975 1841 2545 87.4 3.7 8.8
(注)
平成25年度へ繰越しのある経費項目については、経費項目別に執行状況を示し、繰越しのない経費項目について は、「24年度に執行を終えた経費項目」として一括して執行状況を示している。

25年度復興特会予算の執行状況は、表106のとおり、予算現額計5兆3023億余円に対して支出済額計3兆2092億余円(執行率60.5%)、繰越額計1兆7762億余円(繰越率33.4%)、不用額計3168億余円(不用率5.9%)となっている。

繰越率が高い経費項目は、「(8)その他の東日本大震災関係経費」の「⑩資源・エネルギー関係」(繰越率93.6%)、「⑧中小企業対策」(同60.8%)等である。このうち、「⑩資源・エネルギー関係」で実施している「浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」(同99.9%、別表13、No5283)は、浮体式洋上風力発電システムの実用化を目指した実証事業である。25年度においては、ボーリング調査の結果、地盤改良の範囲や方法について再検討を行う必要が生じたことなどから、同年度内の完了が困難になったため、予算現額375億円のうちほぼ全額の374億余円を26年度に繰り越している。

また、「⑧中小企業対策」で実施している「中小企業組合等共同施設等災害復旧事業」(同93.6%、別表13、No5272)は、地域経済の核となる中小企業等グループが復興事業計画に基づき、施設等の復旧、整備等を行う場合に、国が補助をする事業である。25年度においては、被災した中小企業が複数の避難先に点在していることなどからグループの構成や事業計画内容の調整に不測の日数を要したため、予算現額454億余円のうち425億余円を26年度に繰り越している。

不用率が高い経費項目は、「(10)復興加速化・福島再生予備費」(不用率100%)及び「(1)災害救助等関係経費」(同26.2%)である。このうち、「(10)復興加速化・福島再生予備費」は、被災地全体の諸課題について事業費の追加に機動的に対応するものとして、25年度当初予算で6000億円が計上されたものの、当該予備費は使用されることなく、25年度補正予算で1500億円に減額された上で、25年度末には全額が不用となっている。

また、「(1)災害救助等関係経費」で実施している「災害救助法による災害救助(災害救助費等負担金)」(同15.8%、別表13、No5001)は、応急仮設住宅の民間住宅等借上げ分が想定していた戸数に達しなかったため、予算現額529億余円のうち83億余円を不用としている。

表106 25年度復興特会予算の平成25年度の経費項目別の執行状況

(単位:億円、%)

経費項目 予算現額
A
支出済額
B
繰越額
C
不用額
D=A-B-C
執行率
B/A
繰越率
C/A
不用率
D/A
(1)災害救助等関係経費 879 648 - 230 73.7 - 26.2
  ①災害救助費 529 445 - 83 84.1 - 15.8
②被災者緊急支援経費 307 171 - 135 55.8 - 44.1
③災害弔慰金等負担金 9 7 - 1 80.1 - 19.8
④災害援護貸付金 33 23 - 9 71.8 - 28.1
(2)災害廃棄物処理事業費 1265 535 689 41 42.2 54.4 3.2
(3)復興関係公共事業等 9309 4000 4873 434 42.9 52.3 4.6
  ①災害復旧等事業費 5941 1530 4072 338 25.7 68.5 5.6
②一般公共事業関係費 2609 2120 453 36 81.2 17.3 1.3
③施設費等 758 350 347 60 46.1 45.8 8.0
(4)災害関連融資関係経費 1269 1252 - 16 98.7 - 1.2
  ①中小企業等関係費 1130 1130 - - 100.0 - -
②農林漁業者等関係費 139 122 - 16 88.3 - 11.6
(5)地方交付税交付金 6053 5771 - 281 95.3 - 4.6
(6)東日本大震災復興交付金 6528 1725 4803 - 26.4 73.5 -
(7)原子力災害復興関係経費 8417 4149 4129 138 49.2 49.0 1.6
(8)その他の東日本大震災関係経費 8992 5357 3267 367 59.5 36.3 4.0
  ①被災者生活再建支援金補助金 839 201 622 16 23.9 74.0 1.9
②警察・消防・自衛隊活動経費等 816 736 46 33 90.1 5.7 4.0
③教育支援等 153 117 27 8 76.6 17.9 5.3
④医療、介護、福祉等 217 202 0 14 93.1 0.0 6.8
⑤雇用関係 472 457 - 14 96.9 - 3.0
⑥農林業関係 185 135 22 26 73.2 12.3 14.4
⑦水産業関係 101 64 27 9 63.8 26.6 9.5
⑧中小企業対策 710 248 432 29 35.0 60.8 4.1
⑨立地補助金 1430 1430 - - 100.0 - -
⑩資源・エネルギー関係 400 24 374 0 6.1 93.6 0.2
⑪住宅関係 254 251 - 2 98.9 - 1.0
⑫学校施設の耐震化 1582 382 1075 125 24.1 67.9 7.9
⑬津波被害対応の公共事業 836 356 476 4 42.5 56.9 0.5
⑭その他 990 748 161 81 75.5 16.2 8.2
(9)国債整理基金特別会計への繰入 8808 8650 - 157 98.2 - 1.7
(10)復興加速化・福島再生予備費 1500 - - 1500 - - 100.0
5兆3023 3兆2092 1兆7762 3168 60.5 33.4 5.9
(イ) 復興施策等別の執行状況

24、25両年度の復興特会予算で実施している事業のうち復興施策等との関連が明確にあるものについて、復興施策等7項目に対応させた予算現額は、表107のとおり、24年度2兆5184億余円、25年度1兆9985億余円、計4兆5170億余円であり、24年度から25年度までの累計執行率は68.2%となっている。

表107 24、25両年度の復興特会予算の復興施策等別の執行状況

(単位:億円、%)

復興基本方針における復興施策等 平成24年度
予算現額
25年度
予算現額
予算現額計
C=A+B
Cに対する
累計執行率
5 復興施策 2兆0046 1兆2483 3兆2530 73.6
  (1)災害に強い地域づくり 3264 1616 4880 78.0
  ①高齢化や人口減少等に対応した新しい地域づくり 27 25 52 90.3
②「減災」の考え方に基づくソフト・ハードの施策の総動員 1699 969 2669 69.6
③土地利用の再編等を速やかに実現できる仕組み等 28 26 55 64.3
④被災者の居住の安定確保 1161 587 1749 93.3
⑤市町村の計画策定に対する人的支援、復興事業の担い手等 347 7 354 66.6
(2)地域における暮らしの再生 756 906 1663 61.9
  ①地域の支え合い 181 351 533 80.4
②雇用対策 198 9 207 53.0
③教育の振興 339 503 842 52.3
④復興を支える人材の育成 12 20 33 55.1
⑤文化・スポーツの振興 24 20 45 68.8
(3)地域経済活動の再生 7434 5462 1兆2897 70.6
  ①企業、産業・技術等 295 197 492 89.1
②中小企業 1307 462 1769 43.0
③農業 315 382 697 66.5
④林業 86 132 218 72.3
⑤水産業 592 504 1097 47.2
⑥観光 18 31 50 68.3
⑦コミュニティを支える生業支援 1 1 2 73.4
⑧二重債務問題等 7 35 42 68.6
⑨交通・物流、情報通信 1648 2042 3691 88.7
⑩再生可能エネルギーの利用促進とエネルギー効率の向上 - 375 375 -
⑪環境先進地域の実現 0 - 0 96.0
⑫膨大な災害廃棄物の処理の促進 3160 1298 4458 76.8
(4)大震災の教訓を踏まえた国づくり 8590 4499 1兆3089 76.4
  ①電力安定供給の確保とエネルギー戦略の見直し - 3 3 90.0
②再生可能エネルギーの導入促進及び省エネルギー対策等の推進 8 9 18 61.5
③世界に開かれた復興 29 10 40 93.9
④社会的包摂の実現と「新しい公共」の推進 21 7 29 99.2
⑤今後の災害への備え 8504 4455 1兆2959 76.2
⑥震災に関する学術調査、災害の記録と伝承 25 13 38 99.4
6 原子力災害からの復興 5137 7501 1兆2639 54.4
  (1)応急対策、復旧対策 5137 7411 1兆2549 54.8
  ①応急対策、各種支援、情報提供等 371 179 551 34.4
②安全対策・健康管理対策等 46 18 65 83.8
③賠償・行政サービスの維持等 24 249 273 20.1
④放射性物質の除去等 4694 6964 1兆1659 56.4
(2)復興対策 - 89 89 -
  ①医療産業の拠点整備 - - - -
②再生可能エネルギーの拠点整備 - 89 89 -
(3)政府系研究機関の関連部門等の福島県への設置等の促進 - - - -
2兆5184 1兆9985 4兆5170 68.2

(注) 実施方法が補助(基金)等による事業は除いている。

復興施策等別の累計執行率をみると、「5 復興施策」は73.6%、「6 原子力災害からの復興」は54.4%となっている。「6 原子力災害からの復興」の執行率が低いのは、「(1)応急対策、復旧対策」の内訳である「④放射性物質の除去等」で実施している「放射性物質汚染廃棄物処理事業」(24年度事業は別表13、No415725年度事業は別表13、No5146)において、地元自治体等との調整に時間を要し、事業に着手できなかったことなどのためである。

ウ 事業別の執行状況

23年度復旧・復興予算及び24、25両年度の復興特会予算により、多数の復旧・復興事業が実施されていて、その内容も多岐にわたっている。各年度の事業数は、23年度928件、24年度493件、25年度373件、延べ1,794件となっており、その執行率は0%から100%と事業により区々となっている(各事業の執行率は、別表13参照)。

そこで、25年度において、23年度事故繰越分、24年度繰越分及び25年度復興特会予算に係る復旧・復興事業が円滑かつ迅速に実施されているかなどに着眼して、各府省庁等から各復旧・復興事業の内容、執行状況等について調書を徴するとともに、繰越し及び不用が発生している事業については、その主な事由等を整理した。

(ア) 24年度繰越分の事故繰越しの状況

24年度繰越分のうち、25年度において避け難い事故のため26年度に再び繰り越したもの(以下「24年度事故繰越分」という。)について、財務省が復興事業の円滑な執行に資するよう特例措置として定めた「被災地域における平成25年度の事故繰越事務手続について」の事故繰越要因類型を基に、主な事故繰越しとした事由(以下「事故繰越事由」という。)を各府省庁等から調書を徴するなどして把握し整理した(事故繰越事由は、別表13参照)。

24年度事故繰越分の事業数及び事故繰越額は、表108のとおり、計46件、計1841億余円となっていて、24年度復興特会予算の予算現額計4兆9742億余円に対する事故繰越率は、表105のとおり、3.7%となっている。これらを事故繰越事由別に示すと、事業数では「地元住民等調整」(11件)が最も多く、事故繰越額では「自然災害」(884億余円)及び「作業員」(693億余円)の2事由で全体の8割以上を占めている。

表108 24年度事故繰越分の事故繰越事由別の事業数及び事故繰越額

(単位:件、%、億円)

事故繰越事由 予算区分
24年度事故繰越分
事業数   事故繰越額  
割合 割合
自然災害 8 17.3 884 48.0
建設資材 4 8.6 26 1.4
作業員 7 15.2 693 37.6
入札不調 2 4.3 10 0.5
地元住民等調整 11 23.9 178 9.6
地中埋設物 2 4.3 1 0.0
地権者等 2 4.3 15 0.8
請負業者の倒産 - - - -
他事業等との関係 4 8.6 19 1.0
事業実施に当たり発生した障害 5 10.8 12 0.6
用地の確保 1 2.1 0 0.0
行方不明者の捜索 - - - -
建築制限 - - - -
46 100.0 1841 100.0

また、24年度事故繰越分の事故繰越事由別・事故繰越率別の事業数は、図46のとおり、事故繰越率80%以上の事業は「自然災害」に1件、また、事故繰越率60%以上80%未満の事業は「自然災害」、「地元住民等調整」及び「他事業との関係」にそれぞれ1件ずつ生じている。このうち「地元住民等調整」を事由とした事業をみると、「放射性物質対処型森林・林業復興対策実証事業(補助)」(別表13、No4169)は、地元住民との調整や県外に避難している地権者との連絡等に時間を要したことから、24年度予算現額9億余円に対して事故繰越額6億余円(66.1%)が生じている。

図46 24年度事故繰越分に係る事故繰越事由別・事故繰越率別の事業数

図46 24年度事故繰越分に係る事故繰越事由別・事故繰越率別の事業数 画像

(イ) 25年度復興特会予算の繰越しの状況

25年度復興特会予算のうち26年度に繰り越したもの(以下「25年度繰越分」という。)について、財務省が作成した「箇所別調書及び理由書の繰越事由欄の記載方法」の繰越事由分類基準を基に、主な繰越しとした事由(以下「繰越事由」という。)を各府省庁等から調書を徴するなどして把握し整理した(繰越事由は、別表13参照)。

25年度繰越分の事業数及び繰越額は、表109のとおり、計112件、計1兆7762億余円となっていて、25年度復興特会予算の予算現額5兆3023億余円に対する繰越率は、表106のとおり、33.4%となっている。これらを繰越事由別に示すと、事業数では「計画に関する諸条件」(90件)が最も多く、この内訳は「基本計画の策定・変更」(51件)が最も多くを占めている。また、繰越額では「計画に関する諸条件」の内訳である「基本計画の策定・変更」(6087億余円)、「公害等に係る地元との調整」(4861億余円)及び「関係機関との協議・許認可等」(4811億余円)の3事由で全体の8割以上を占めている。このうち「基本計画の策定・変更」を事由とした事業をみると、「災害復旧等事業(国交省関係)」(別表13、No5031)は、基本計画の策定・変更に当たり、他事業との調整、工法の検討等に不測の日数を要したことから、予算現額3031億余円に対して繰越額1985億余円が生じている。

表109 25年度繰越分の繰越事由別の事業数及び繰越額

(単位:件、%、億円)

事故繰越事由 予算区分
25年度繰越分
事業数   事故繰越額  
割合 割合
計画に関する諸条件 90 80.3 1兆6396 92.3
  公害等に係る地元との調整 19 16.9 4861 27.3
状況変化による施行能率の低下 4 3.5 85 0.4
運搬路に係る地元との調整 - - - -
基本計画の策定・変更 51 45.5 6087 34.2
他事業との調整 1 0.8 82 0.4
関係機関との協議・許認可等 7 6.2 4811 27.0
その他 8 7.1 468 2.6
設計に関する諸条件 8 7.1 146 0.8
  工法選択 4 3.5 127 0.7
設計変更等 4 3.5 18 0.1
その他 - - - -
気象の関係 1 0.8 2 0.0
  豪雨 - - - -
豪雪 1 0.8 2 0.0
風浪 - - - -
その他 - - - -
用地の関係 5 4.4 536 3.0
  用地買収交渉 2 1.7 110 0.6
工事用用地の借上げ 2 1.7 425 2.3
その他 1 0.8 0 0.0
補償処理の困難 - - - -
  用地買収交渉 - - - -
工事用用地の借上げ - - - -
その他 - - - -
資材の入手難 5 4.4 49 0.2
  資材不足 1 0.8 30 0.1
労務者手配調整 3 2.6 19 0.1
資材運搬不能 - - - -
特注品納期遅延 1 0.8 0 0.0
その他 - - - -
試験研究に際しての事前調査又は研究方式の決定の困難 - - - -
  事前調査 - - - -
研究方式 - - - -
その他 - - - -
上記以外のもの - - - -
その他のやむを得ない事由(事故繰越しを含む。) 3 2.6 631 3.5
112 100.0 1兆7762 100.0

また、25年度繰越分の繰越事由別・繰越率別の事業数は、図47のとおり、繰越率80%以上の事業は、「計画に関する諸条件」(30件)、「設計に関する諸条件」(2件)及び「用地の関係」(2件)となっている。このうち、「用地の関係」を事由とした「長期避難者生活拠点形成事業」(別表13、No5150)は、長期避難者のための安定した生活環境を確保するために、復興公営住宅を中心とした基盤整備等を推進するものである。25年度においては、用地取得に係る関係自治体等との調整に不測の日数を要したことから、25年度予算現額99億余円の全額を繰り越している。

図47 25年度繰越分に係る繰越事由別・繰越率別の事業数

図47 25年度繰越分に係る繰越事由別・繰越率別の事業数 画像

(ウ) 不用の状況

25年度に実施された23年度事故繰越分、24年度繰越分及び25年度復興特会予算による復旧・復興事業について、25年度末に不用が生じた主な事由(以下「不用事由」という。)を、各府省庁等から調書を徴するなどして把握し分析した。

25年度末に不用が生じている事業の事業数及び不用額は、表110のとおり、23年度事故繰越分97件、計1203億余円、24年度繰越分107件、計2545億余円、25年度復興特会予算283件、計3168億余円で、合計487件、6917億余円となっている。

表110 23年度事故繰越分、24年度繰越分及び25年度復興特会予算に係る不用事由別の事業数及び不用額

(単位:件、%、億円)

不用事由 予算区分
23年度繰越分 25年度繰越分
事業数   不用額   事業数   不用額  
a 割合 A 割合 b 割合 B 割合
①予定より実績が下回ったもの 27 27.8 602 50.0 20 18.6 197 7.7
②事業計画の変更により減額したもの 29 29.8 436 36.3 32 29.9 1695 66.6
③事業執行に伴い節減したもの 9 9.2 138 11.4 3 2.8 0 0.0
④契約価格が予定を下回ったもの 27 27.8 12 1.0 39 36.4 301 11.8
⑤その他 5 5.1 13 1.1 13 12.1 350 13.7
97 100.0 1203 100.0 107 100.0 2545 100.0
不用事由 予算区分
25年度繰越分
事業数   不用額   事業数   不用額  
割合 C 割合 a+b+c 割合 A+B+C 割合
①予定より実績が下回ったもの 121 42.7 783 24.7 168 34.4 1583 22.8
②事業計画の変更により減額したもの 52 18.3 358 11.3 113 23.2 2491 36.0
③事業執行に伴い節減したもの 13 4.5 17 0.5 25 5.1 156 2.2
④契約価格が予定を下回ったもの 80 28.2 119 3.7 146 29.9 432 6.2
⑤その他 17 6.0 1889 59.6 35 7.1 2253 32.5
283 100.0 3168 100.0 487 100.0 6917 100.0

不用事由別の事業数をみると、「①予定より実績が下回ったもの」(計168件)、「④契約価格が予定より下回ったもの」(計146件)及び「②事業計画の変更により減額したもの」(計113件)が多くなっていて、これら3事由により全体の8割以上を占めており、不用額では、「②事業計画の変更により減額したもの」(計2491億余円)及び「①予定より実績が下回ったもの」(計1583億余円)が多額となっていて、これら2事由が全体の6割近くを占めている(「⑤その他」(計2253億余円)には、25年度復興加速化・福島再生予備費の不用額1500億円が含まれている。)。このように、不用の多くは「①予定より実績が下回ったもの」又は「②事業計画の変更により減額したもの」を事由としている。

そして、「②事業計画の変更により減額したもの」(不用額計2491億余円)が不用事由となっている主な事業は、「放射性物質汚染廃棄物処理事業」(同514億余円、別表13、No4157)、「災害復旧事業」(同429億余円、別表13、No4060)、「福島原子力災害避難区域等帰還・再生加速事業」(同166億余円、別表13、No4158)等、各種災害復旧や原子力災害からの復興に関連した事業である。これらの事業は、計画変更により事業規模を縮小したものの、集中復興期間終了後も引き続き事業の実施が必要となる。

前記のとおり、25年度は「①予定より実績が下回ったもの」及び「②事業計画の変更により減額したもの」を不用事由としている事業が多くなっていることから、23年度から25年度までの各年度に実施され、不用率が高い復旧・復興事業のうち、これら2事由に該当する事業を対象として、各府省庁において、市街地・居住地復興のための事業等の進捗と不用との関係等について聴取した。

その結果、表111のとおり、市街地・居住地復興のための事業等が実施されている地区の中には、当該事業の進捗が、私立学校施設の災害復旧事業、中小企業組合等共同施設等災害復旧事業等の当該地区で実施される他の事業の進捗に影響を及ぼしている状況となっている地区が見受けられた。これらの事業では、まちづくり計画の策定等が遅れたため、工事の着手が遅れたり、事業の申請数が見込みを下回ったりなどしたことにより不用が生じているが、各府省庁は、市街地・居住地復興のための事業等の進捗に伴い、それぞれの事業を改めて実施する必要性が高まり新たな予算措置及びその執行が見込まれるとしている。

表111 市街地・居住地復興のための事業等の進捗の影響を受けている事業

所管 予算年度
及び
別表 13の No
事業名 事業概要 市街地・居住地復興のための
事業等の進捗と不用との関係
復興庁 (23) 3308
(24) 4008
(25) 5007
復興特区支援利子補給金 復興推進計画の目標を達成する上で中核となる事業の実施者が、国の指定する金融機関から当該事業を実施する上で必要な資金を借り入れる場合に、利子補給金を支給するもの 津波の被害を受けた沿岸部でのインフラ整備の進捗に差が生じる中、企業の設備投資に至らなかったことなどから、案件数が見込みを下回った。
内閣府
(金融庁)
(23) 3288
(24) 4010
(25) 5010
(23)個人債務者の私的整理に係る支援に必要な経費
(24)(25)個人債務者の私的整理に係る支援事業
東日本大震災の影響によって既往債務(震災発生以前に負担した債務)を弁済できなくなった個人債務者の債務整理を円滑に進めるため、「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」の運用支援として、ガイドライン運営委員会に対して補助するもの 被災者の中には、地域の復興計画や原子力損害賠償の支払の動向を見極めていることなどから当事業の利用を保留している者がいるため、利用実績が見込みを下回った。
総務省 (23) 3709
(24) 4336
(25) 5316
(23)情報通信基盤復興支援事業
(24)(25)被災地域情報化推進事業
東日本大震災で被災した地方公共団体が抱える課題について、当該地方公共団体が情報通信技術(ICT)を活用して効率的・効果的に解決する取組に対して支援するもの ブロードバンドの基盤整備に関し、まちづくり事業による土地の造成等の目途が立たなければ当事業に着手できず、実施案件数が見込みを下回った。
文部科学省 (23) 3052
(25) 5105
(23)施設災害復旧費等
(25)私立学校建物其他災害復旧(専修学校除く)
私立学校施設の復旧事業等 津波被災地域及び避難指示区域に所在する学校は、復興計画の策定、移転先の確保、避難指示の解除等の条件が整い次第着手することになるため、このような学校法人からの申請数が見込みを下回った。
厚生労働省 (23) 3018
   3372
(24) 4061
(23)水道施設災害復旧事業
(23)(24)水道施設の災害復旧
津波等で甚大な被害を受けた地域で、都市計画の見直しなど、通常の原形復旧では対応できない水道施設の復旧・復興を図る事業等 津波被害の甚大な一部の地域において、まちづくり計画の策定が予定より遅れたことに伴い、災害復旧が当初の見込みどおり進まなかった。
農林水産省 (23) 3415
(24) 4101
(23)水産業共同利用施設復旧整備事業(ハード)
(24)水産業共同利用施設復旧整備事業
漁協等の共同利用施設等の復旧整備に対して支援するもの 防潮堤や道路の整備計画の策定に時間を要し、当初計画どおりの事業実施が見込まれなくなった。
経済産業省 (24) 4419
(25) 5272
中小企業組合等共同施設等災害復旧事業 地域経済の核となる中小企業等グループが県の認定した復興事業計画に基づき、当該計画に必要な施設等の復旧・整備等に対して補助を行うもの 自治体の復興計画の策定や土地のかさ上げ工事等の進捗が遅れていることから、当事業の完了に至らなかった。
(エ) 他の特別会計へ繰り入れられた東日本大震災関係経費の状況

東日本大震災関係経費の中には、23年度の一般会計及び24、25両年度の復興特会から他の特別会計へ繰り入れられて復旧・復興事業に充てられているものが含まれている。

これらのうち、他の特別会計への繰入額が毎年度多額となっているものとしては、交付税及び譲与税配付金特別会計(以下「交付税特会」という。)へ繰り入れられた「地方交付税交付金」及び「国債整理基金特別会計へ繰入」がある(国債整理基金特別会計(以下「国債整理特会」という。)への繰入れの状況は、リンク参照)。地方交付税交付金のうち震災復興特別交付税は、復旧・復興事業を実施する特定被災自治体等の財源の裏付けとなるものであり、交付税特会に繰り入れられた後に当該自治体等での事業実施状況等に応じた額が決定され交付されている。そこで、震災復興特別交付税に係る経費の23年度の一般会計及び24、25両年度の復興特会における執行状況をみると、表112のとおり、23年度の一般会計及び24年度の復興特会から予算現額の全額が、25年度の復興特会から予算現額の大部分がそれぞれ交付税特会に繰り入れられており、23年度から25年度までの執行率は99.0%と極めて高くなっている。

表112 震災復興特別交付税に係る経費の平成23年度の一般会計及び24、25両年度の復興特会における執行状況

(単位:件、%、億円)

年度 別表
13の No
事業名 予算現額
支出済額
不用額 翌年度
繰越額
執行率B/A
平成 23 3517 地方交付税の加算(震災復興特別交付税 ) 1,663,525 1,663,525 - - 100.0
24 4151 震災復興特別交付税の追加 670,413 670,413 - - 100.0
25 5138 震災復興特別交付税の追加 605,302 577,189 28,113 - 95.3
2,939,241 2,911,127 28,113 - 99.0

そこで、繰入先の交付税特会における執行状況をみると、図48のとおり、23年度から25年度までの繰入額計2兆9111億余円に対する交付税特会での支出済額計は2兆0850億余円(3か年の執行率71.6%)となっている。

年度別にみると、23年度は、23年度3次補正において一般会計から繰り入れられた1兆6635億余円に対する交付税特会での支出済額が8134億余円(執行率48.8%)であり、支出残額8500億余円の全額が24年度に繰り越されている。

24年度は、23年度からの繰越額8500億余円及び新たに復興特会から繰り入れられた6704億余円の計1兆5204億余円に対する交付税特会での支出済額が7645億余円(執行率50.2%)である。そして、特会法第27条の規定では、交付税特会の支出残額は、翌々年度への繰越しが認められていないため、24年度の支出残額7559億余円のうち、同年度に復興特会から繰り入れられた上記の6704億余円に相当する額は全て25年度に繰り越され、残余の855億余円が不用とされている。

25年度は、24年度からの繰越額6704億余円、新たに復興特会から繰り入れられた5771億余円及び上記24年度の不用額に相当する額855億余円の計1兆3331億余円が交付税特会の予算現額として計上されている。特会法第231条の規定では、復興特会から交付税特会に繰り入れられた金額が、復興費用の支出に必要な金額として繰り入れるべき金額を超過した場合には、翌年度の繰入額を減額して調整することとなっている。この規定により、上記の855億余円は、繰入額の超過分として、25年度に繰り入れるべき額6627億余円から減額され、同年度の繰入額は5771億余円となっている。

上記25年度の交付税特会の予算現額1兆3331億余円に対する交付税特会での支出済額は5070億余円(執行率38.0%)である。そして、24年度と同様に特会法の規定により、25年度の支出残額8260億余円のうち、同年度に復興特会から繰り入れられた上記の5771億余円に相当する額に24年度の不用額と同額の855億余円を加えた6627億余円が26年度に繰り越され、残余の1633億余円が不用とされている。

図48 震災復興特別交付税に係る経費の交付税特会における執行状況

図48 震災復興特別交付税に係る経費の交付税特会における執行状況 画像

このように、震災復興特別交付税に係る経費の交付税特会での執行率は、23年度から25年度までの累計では71.6%となっているが、年度別では、23年度48.8%、24年度50.2%、25年度38.0%と低くなっている。さらに、24、25両年度においては、いずれも支出済額が前年度からの繰越額を下回り、両年度に復興特会から繰り入れられた全額が翌年度に繰り越されている。

交付税特会での執行率がこのように低くなっている理由について、総務省は、当該交付税の交付対象である地方公共団体において、市街地・居住地復興のための事業等の実施において地域の合意形成が進んでいないことや入札不調により事業が遅延していることなどによるとしていて、今後、特定被災区域において実施している市街地・居住地復興のための事業等の進捗に伴い、当該事業に係る国庫補助金等の執行が見込まれるとともに、同時に震災復興特別交付税に係る経費の交付税特会における執行率も上昇することが考えられるとしている。

エ 実施方法別の執行状況

復旧・復興事業の実施方法としては、表101のとおり、「①直轄」(国自らが実施する直轄事業)、「②補助」(地方公共団体等が国からの補助金を受けて実施する補助事業)等の九つの区分に整理することができる。そこで、25年度に23年度事故繰越分、24年度繰越分及び25年度復興特会予算により実施された復旧・復興事業計651件、予算現額計7兆5089億余円について、表101の実施方法別に区分して整理した。

実施方法別に25年度の執行状況をみると、表113のとおり、執行率は、平均64.6%で、「①直轄」が77.7%、「②補助」が43.6%、「③直轄、補助等」が50.0%等となっている。また、予算現額計は、「②補助」が2兆4835億余円、「③直轄、補助等」が1兆7996億余円と多額に上っていて、これらの執行率が全体の執行率に与える影響は大きくなっている。

 「①直轄」の執行率は、平均が77.7%であるのに対して23年度事故繰越分が96.5%、24年度繰越分が59.8%、25年度復興特会予算が77.4%であり、24年度繰越分の執行率が他の執行率に比べて低くなっている。これは、24年度繰越分により実施している「福島原子力災害避難区域等帰還・再生加速事業」(25年度予算現額207億余円、別表13、No4158)において、事業規模の見直しによる事業計画の変更等のため執行率が19.3%にとどまっていること、「災害廃棄物処理代行事業」(同142億余円、別表13、No4058)において、事業の実施に当たり地元自治体等との調整が難航したため執行率が26.0%にとどまっていることなどによる。

 「②補助」及び「③直轄、補助等」の執行率は、平均がそれぞれ43.6%、50.0%と、他の実施方法に比べて低くなっている。これは、25年度復興特会予算により「②補助」として実施している「災害復旧等事業(水産)」(同1684億余円、別表13、No5032)及び「③直轄、補助等」として実施している「災害復旧等事業(林業)」(同277億余円、別表13、No5034)において、作業員の手配に不測の日数を要したり、入札不調により設計を変更したりなどしたため、執行率がそれぞれ18.9%、17.2%にとどまっていることなどによる。また、補助事業では、事業主体が特定被災自治体であり、限られた人員で膨大な事業を実施していること、実施している復旧・復興事業の多くが、関係機関との調整や地域住民との協議、調整等に日数を要することなども、執行率が低くなる要因となっている。

 「④補助(基金)」から「⑨その他」までの実施方法は、基金の設置造成等に係る資金、交付金、出資金等の支出に係るものであり、復旧・復興事業の進捗に応じて速やかに対応できるよう、予算措置された年度に特定被災自治体や政策金融機関等に対して支出される場合が多いことなどから、執行率は高くなっている。

表113 23年度事故繰越分、24年度繰越分及び25年度復興特会予算により平成25年度に実施された復旧・復興事業の実施方法別の執行状況

(単位:件、億円、%)

実施方法 予算区分
23年度事故繰越分 24年度繰越分
事業数
a
予算現額
(事故繰越分)
A
支出済額
B
執行率
B/A
事業数
b
予算現額
(繰越分)
C
支出済額
D
執行率
D/C
①直轄 25 992 957 96.5 46 938 561 59.8
②補助 89 3118 2347 75.2 80 7050 5428 76.9
③直轄、補助等 12 1591 1193 74.9 14 5250 2874 54.7
④補助(基金) - - - - 5 3040 3026 99.5
⑤補助(運営費交付金) - - - - - - - -
⑥補助(拠出金) - - - - - - - -
⑦出資 - - - - - - - -
⑧地方交付税交付金 - - - - - - - -
⑨その他 1 0 0 100.0 6 83 83 99.9
127 5702 4499 78.8 151 1兆6362 1兆1975 73.1
実施方法 予算区分
25年度復興特会予算
事業数
c
予算現額
E
支出済額
F
執行率
F/E
事業数
a+b+c
予算現額
G=A+C+E
支出済額
H=B+D+F
執行率
H/G
①直轄 135 4886 3782 77.4 206 6817 5302 77.7
②補助 178 1兆4666 3073 20.9 347 2兆4835 1兆0849 43.6
③直轄、補助等 18 1兆1154 4930 44.2 44 1兆7996 8998 50.0
④補助(基金) 14 4467 4418 98.9 19 7507 7445 99.1
⑤補助(運営費交付金) 12 157 157 100.0 12 157 157 100.0
⑥補助(拠出金) - - - - - - - -
⑦出資 5 1204 1204 100.0 5 1204 1204 100.0
⑧地方交付税交付金 1 6053 5771 95.3 1 6053 5771 95.3
⑨その他 10 1兆0432 8751 83.8 17 1兆0516 8836 84.0
373 5兆3023 3兆2092 60.5 651 7兆5089 4兆8566 64.6
オ まとめ

復旧・復興事業は、関係予算が多額に上る一方、事業の進捗の遅れに伴う長期化の傾向等も見受けられる。23年度復旧・復興予算の執行状況をみると、事業の進捗の遅れなどにより2兆2621億余円もの多額の不用が生じている。また、24年度復興特会予算の執行状況をみると、予算措置から2年が経過しおおむね進捗していることがうかがえる一方で、25年度復興特会予算の執行状況をみると、1兆7762億余円もの多額の繰越しが生じている。経費項目別や復興施策等別の執行状況については、大規模な災害復旧事業、原子力災害関連事業等の一部の事業で多額の繰越しや不用が生じている。実施方法別の執行状況については、補助事業の執行率が他の実施方法に係る執行率に比べて低く、不用が多く生じている。さらに、復旧・復興事業の財源に充てるために他の特別会計へ繰り入れている経費において、繰入先の特別会計での執行率が低くなっている状況が見受けられる。

国は、復旧・復興予算の執行に当たり、今後も復旧・復興事業が有効かつ効率的に実施されるよう予算を確保し配分するとともに、各種事業が円滑かつ迅速に実施されるよう、関係行政機関等が実施する事業の進捗状況を的確に把握し、復興施策の実施の推進及び総合調整を行う必要がある。また、事業が進捗していない特定被災自治体等に対しては、関係行政機関等は当該自治体等との緊密な連絡調整やより一層の必要とされる支援を行うなどして、復旧・復興予算が計画的に執行され、復旧・復興事業が円滑かつ迅速に実施されるよう努める必要がある。