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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成27年9月

政府出資株式会社等における事業及び財務の状況等について


4 所見

(1) 検査の状況の概要

政府出資株式会社等における事業及び財務の状況等について、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、政府出資株式会社等に対する国の出資及び国等によるその他の財政支援等の状況はどのようになっているか、政府出資株式会社等の事業の実施状況及び財務状況はどのようになっているか、また、国等の財政支援等は政府出資株式会社等の財務にどのような影響を与えているか、政府出資株式会社等から国が得ている収入及び株式売却等の状況はどのようになっているか、さらに、国は政府出資株式会社等の事業の適正な実施を確保するためにどのような監督等を行っているか、財務報告の状況はどのようになっているかなどに着眼して検査した。

ア 政府出資株式会社等に対する国の出資及び国等によるその他の財政支援等の状況

政府出資株式会社等38法人における国の出資残高は、25年度末で19兆5961億余円となっている。そして、21年度から25年度までの間に行われた国等による財政支援等については、補助金等が12法人に計8兆0987億余円、運営費交付金が2法人に計1兆4223億余円それぞれ交付されており、また、融資残高は10法人に対して22兆6110億余円(25年度末)、債務保証残高は13法人に対して8兆7603億余円(同)となっている。三島会社では経営安定基金が設けられ、経営安定基金資産の残高は計1兆4034億余円(同)となっており、11法人では法人税法上の公共法人等に該当するとして法人税の優遇措置が講じられている(リンク8~20ページ参照)。

イ 政府出資株式会社等における事業の実施状況及び財務状況

政府出資株式会社等においては、各法人の設置根拠法に基づき、それぞれ公共性・公益性の高い事業が実施されており、政府出資株式会社等38法人の事業の実施状況及び財務状況については、次のようになっている。

(ア) 政府出資株式会社

政府出資株式会社28法人における21年度から25年度までの事業の実施状況をみると、高速道路会社4法人及び空港会社2法人における事業の実施状況を示す指標の値は、21年度に比べて25年度の方が多くなっており、その他の業種の3法人における事業の実施状況を示す指標の値はその増加傾向が顕著になっている。

そして、28法人における25年度の損益の状況については、19法人は単体決算に加えて連結決算を、9法人は単体決算のみを行っている。28法人のうち12法人は、主たる事業のみを行っているが、残りの16法人は、主たる事業以外の事業も行っており、このうち、9法人は、主たる事業で営業損失を計上している一方で、主たる事業以外の事業で営業利益を計上している。また、28法人の単体決算における当期純損益等については、6法人において当期純利益が増加傾向になっている(リンク20~31ページ参照)。

(イ) 非株式会社

非株式会社10法人における21年度から25年度までの事業の実施状況をみると、健康保険事業を行う1法人において、医療給付額の増加率が被保険者数の増加率を上回る状況となっていた。

そして、非株式会社10法人における25年度の損益の状況をみると、いずれも連結決算を行うこととなっておらず、10法人のうち7法人は勘定別に財務諸表を作成している。当期純損益等については、勘定によって当期純損失を計上している法人もある。なお、10法人のうち2法人は、設置根拠法等により収益から費用及び繰越欠損金の合計額を控除した額を責任準備金として積み立てることとなっており、当期利益金は計上されていない(リンク32~36ページ参照)。

(ウ) 財政支援等が政府出資株式会社等の財務に与える影響

国等から補助金等の財政支援等を受けている政府出資株式会社等の損益や純資産等の財務状況は、その効果が反映されたものになっていると考えられる。そして、主たる事業に係る営業損失の額が、他の政府出資株式会社のそれに比べて大きい政府出資株式会社4法人については、地方税の軽減措置等を考慮せずに損益を試算した場合は、営業損失が拡大するなどして、税引前の当期純利益が当期純損失に転ずることとなり、その損益に与える影響は大きいものとなっている(リンク36~38ページ参照)。

ウ 政府出資株式会社等から国が得ている収入及び株式売却等の状況

政府出資株式会社等から国が得ている収入には、国庫納付、配当及び納税によるものがある。また、国が保有する株式の売却収入があり、一部の政府出資株式会社に係る株式の売却収入については、東日本大震災に係る復興債の償還財源として位置付けられている。

そして、各法人の設置根拠法等において国庫納付規定がある法人は、政府出資株式会社2法人及び非株式会社9法人の計11法人であり、このうち国庫納付を行っている法人は、政府出資株式会社等8法人となっている(21年度から25年度までの国庫納付額計4兆1126億余円)。

また、配当については、政府出資株式会社8法人及び非株式会社1法人の計9法人が配当を行っている(21年度から25年度までの国が受領した配当額計9770億余円)。一方で、配当を行っていない政府出資株式会社20法人は、累積損失を計上していたり、剰余金の処分は準備金の積立てと国庫納付のみにより行うこととなっていたり、経営基盤の確立のため内部留保を行っていたりしている。

さらに、法人税等については、法人税法上の公共法人に該当する政府出資株式会社等6法人が非課税となっており、また、同法上の公益法人等に該当する非株式会社5法人は、収益事業から生じた所得がないことから法人税は課されていない。

政府出資株式会社の株式売却の状況については、3法人に係る株式が売却されて、27年6月末までに、国は総額17兆4834億余円の収入を得ている。一方で、1法人に係る株式については設置根拠法において早期に売却する旨の規定があり、その売却収入を東日本大震災に係る復興債の償還財源に充てることとされているものの、株式売却に向けての動きは進捗していない状況となっている(リンク38~47ページ参照)。

エ 政府出資株式会社等の事業及び財務に係る国の監督等

国は、政府出資株式会社に対する議決権の保有割合に応じて、株主権の行使を通じて、特定の役職員の選任等、剰余金の処分、定款の変更、重要な財産の譲渡等の決定等に係る事項を議決することができることとなっている。また、財務諸表等については設置根拠法に定められた大臣に提出することとなっている。

非株式会社については、設置根拠法等により、非株式会社の長等の任命が主務大臣により行われることなどとなっていたり、事業計画の決定等が主務大臣の認可事項となっていたりしている。また、財務諸表については設置根拠法等に定められた大臣に提出してその承認を受けることとなっている(リンク47~50ページ参照)。

オ 政府出資株式会社等の財務報告

政府出資株式会社28法人は、会社法に基づく計算書類等を開示しており、このうち15法人は、この計算書類等のほかに、金融商品取引法に基づく財務諸表等を開示している。また、非株式会社10法人については、設置根拠法等において連結財務諸表の作成は義務付けられておらず、法定財務諸表等の作成基準等については、3法人は独立行政法人会計基準を適用しており、2法人は設置根拠法において省令等の定めによることとなっていて、省令等に定めのないものについては一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うこととなっている。残りの5法人のうち4法人は特殊法人等会計処理基準を適用している。

財務諸表等の監査等については、政府出資株式会社28法人において、会社法に基づく監査役等及び会計監査人による監査が実施されており、財務諸表等を設置根拠法に定められた大臣に提出することとなっている。非株式会社10法人のうち、設置根拠法等に基づく監事による監査及び会計監査人による監査が義務付けられている法人は、それぞれ10法人及び3法人となっている。また、2法人は任意で会計監査人による監査を受けている。そして、会計監査人の監査を受けていない法人を含めて、全10法人は、財務諸表を設置根拠法等に定められた大臣に提出してその承認を受けなければならないこととなっている。

行政コスト計算財務書類については、作成指針の公表後に設立された非株式会社1法人が法定財務諸表等のみを作成しているが、同法人は、今後、必要に応じて同財務書類に準じた財務情報の開示の要否を検討していくこととしている(リンク50~56ページ参照)。

(2) 所見

国は、政府出資株式会社等に対して、各法人の設置根拠法に基づいて様々な事業を実施させており、総額19兆円を超える規模の出資を行うとともに、一部の法人に対して、補助金等、融資、債務保証等の財政支援等を行っている。そして、国は、政府出資株式会社等の剰余金や利益から国庫納付金や配当として収入を得るとともに、国に保有義務が課せられていない法人の株式を売却して収入を得ている。

一方、一部の政府出資株式会社に係る株式の売却収入は、復興財源法に基づいて東日本大震災に係る復興債の償還財源として位置付けられているが、売却に向けての動きが進捗していない状況も見受けられている。

以上の検査の状況を踏まえて、政府出資株式会社等の事業が引き続き効率的、効果的に実施されるよう、政府出資株式会社等及び関係府省においては、当該法人の事業の特性も考慮しつつ、次の点に十分留意することが必要である。

ア 政府出資株式会社等は、国から出資を受けて公共性・公益性の高い事業を実施していること、一部の法人は、国等から補助金等、融資、債務保証等による財政支援等を受けていることを踏まえて、法人の目的を達成するために引き続き適切に事業を実施すること

イ 政府出資株式会社等は、公共性・公益性の高い事業を実施していることを踏まえ、特に国等から多額の財政支援等を受けている法人においては、その事業が効率的かつ安定的に実施されるよう財務の健全性の確保に努めること

ウ 政府出資株式会社等は、国庫納付金や配当金が国の貴重な財源になっていることを踏まえて、引き続き効率的な経営に努めること

また、国に保有義務が課せられていない政府出資株式会社の株式のうち、その売却収入が東日本大震災に係る復興債の償還財源として位置付けられている株式については、売却に向けた必要な検討を着実に行うよう努めること

エ 国は、政府出資株式会社に対して、経営の自主性を尊重しつつ、引き続き適切に株主権を行使すること。また、政府出資株式会社等に対する認可事項等による国の監督については、当該法人の事業の特性に応じて、各法人の事業がその目的を達成するために適切に行われるよう、引き続き設置根拠法等に基づき適切に行うこと

オ 非株式会社は、財務諸表等の財務報告が、国及び国民において当該法人の事業の実施状況を把握し、その効率性や妥当性を評価する上で不可欠のものであることを踏まえて、財務状況の透明性の向上に努めるとともに、引き続き財務諸表等の作成及び開示を適切に行うこと

会計検査院としては、政府出資株式会社等が国費を財源として事業運営を行っており、その効率的な実施や財務状況の透明性の向上等を図ることが求められていることから、今後とも、政府出資株式会社等における事業及び財務の状況等について、引き続き注視していくこととする。