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  • 平成27年10月

地域再生法に基づく事業の実施状況等について


3 検査の状況

(1) 地域再生計画の作成及び認定状況等

ア 地域再生計画の作成及び認定状況

前記のとおり、地域再生法によれば、地方公共団体は、地域再生計画を作成し内閣総理大臣の認定を申請することができるとされており、内閣総理大臣は、地方公共団体から認定申請があった場合、その内容が認定基準に適合すると認めるときは認定するものとし、また、基準に適合しなくなったと認めるときは認定を取り消すことができるとされている。

そして、内閣府は、基本方針に基づき、原則、年3回、地域再生計画の認定申請を受け付けており、受け付けた地域再生計画について、申請マニュアル(総論)等に基づき、地域再生計画の区域、地域再生を図るために行う事業に関する事項、計画期間、地域再生計画の目標、地域再生計画の名称、達成状況評価に関する事項等が適切に記載されているかを確認し、必要に応じて地方公共団体に対して、記載内容の修正等に関する助言を行うなどしている。また、地域再生計画に支援措置が記載されている場合は、支援措置を所管している府省庁に対して、支援措置に係る同意のための協議を行っている。そして、最終的に記載内容が認定基準に適合すると認めた計画について認定しており、17年度から26年度までの間に1,870計画が内閣総理大臣の認定を受けている。

上記の1,870計画に係る26年度末の状況をみると、計画期間が終了したものは1,425計画、実施中のものは425計画、認定を取り消されたものは20計画となっていて、この20計画の認定の取消しは、全て認定地方公共団体からの申出によるものである。取消しを申し出た理由をみると、市町村合併に伴い認定地域再生計画を統合することによるものが9計画、経済状況の悪化等により認定地域再生計画に記載した事業の実施が困難となったことによるものが9計画となっていたが、2計画については、事業の実施について地域の同意を得られず、認定の取消しを申し出たものであった。

前記の1,870計画について、年度別の認定数をみると、図表1-1-1のとおり、初年度の17年度が703計画(1,870計画の37.5%)と最も多く、次いで、21年度の256計画(同13.6%)、26年度の204計画(同10.9%)の順となっていた。認定数の推移をみると、全体としては減少傾向となっているものの、21年度は、17年度に認定を受けた計画の計画期間の終了に伴い、これらの計画の後継計画の認定申請が多かったことなどから前年度と比べて増加していた。また、26年度は、21年度に認定を受けた計画の計画期間の終了に伴い、これらの計画の後継計画の認定申請が多かったことなどから前年度と比べて増加していた。

そして、1,870計画について、17年度から21年度まで及び22年度から26年度までの各5年間に分けて年平均認定数をみると、17年度から21年度までの5年間の認定数は計1,365計画で年平均認定数は273計画となっていたが、22年度から26年度までの5年間の認定数は計505計画で年平均認定数は101計画となっていて、前半の5年間に比べて後半の5年間は大幅に減少していた。

また、都道府県別の認定数をみると、域内の市町村数が最も多い北海道の81計画(1,870計画の4.3%)、次いで、市町村数が2番目に多い長野県の79計画(同4.2%)の順に多くなっており、東京都の8計画(同0.4%)が最も少なかった。このほか、都道府県をまたいだ計画は4計画(同0.2%)となっていた。

図表1-1-1 年度別及び都道府県別の地域再生計画認定数(平成17年度~26年度)

(単位:団体、計画)
都道府県名 管内市町村数 地域再生計画の認定年度
平成17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
北海道 179 10 13 19 7 6 5 5 3 2 11 81
青森県 40 13 3 5 5 6 7 2 1 4 3 49
岩手県 33 28 4 2 3 7 4 1 2 51
宮城県 35 14 1 1 2 3 2 1 1 1 26
秋田県 25 12 8 4 2 4 1 1 2 2 36
山形県 35 11 2 3 4 5 3 4 6 3 41
福島県 59 15 2 2 3 4 6 1 1 3 37
茨城県 44 26 3 4 4 5 1 4 4 51
栃木県 25 24 3 1 7 6 1 6 48
群馬県 35 29 2 1 9 5 5 51
埼玉県 63 13 5 2 1 3 4 1 3 32
千葉県 54 10 2 1 1 2 1 1 2 3 23
東京都 62 4 2 1 1 8
神奈川県 33 10 4 1 1 5 1 1 23
新潟県 30 15 5 5 1 5 1 1 1 6 40
富山県 15 8 2 3 1 1 3 18
石川県 19 15 4 5 2 6 2 2 1 6 43
福井県 17 16 4 1 3 6 3 33
山梨県 27 18 2 1 2 9 2 2 8 44
長野県 77 35 8 4 1 12 4 2 1 12 79
岐阜県 42 12 1 2 6 4 1 6 32
静岡県 35 21 2 4 2 6 2 1 1 4 43
愛知県 54 25 6 6 9 2 3 11 62
三重県 29 21 3 3 9 3 1 1 8 49
滋賀県 19 7 5 1 2 2 1 1 19
京都府 26 9 1 1 2 5 4 1 1 5 29
大阪府 43 10 4 3 1 1 1 1 21
兵庫県 41 15 6 8 1 4 4 2 1 4 45
奈良県 39 8 2 2 2 3 3 3 23
和歌山県 30 14 4 1 3 1 1 2 26
鳥取県 19 10 2 1 1 2 1 4 21
島根県 19 21 2 2 3 12 3 3 1 2 4 53
岡山県 27 24 3 5 2 11 5 2 3 9 64
広島県 23 11 4 1 7 1 1 1 7 33
山口県 19 10 1 2 1 2 2 4 3 25
徳島県 24 12 4 1 4 6 1 2 1 4 35
香川県 17 3 2 1 2 1 9
愛媛県 20 12 6 5 3 10 1 2 2 1 7 49
高知県 34 12 5 6 10 6 7 2 4 5 2 59
福岡県 60 19 6 6 1 8 2 1 2 3 7 55
佐賀県 20 18 4 1 2 7 2 1 5 40
長崎県 21 12 2 5 2 2 1 1 4 1 30
熊本県 45 19 6 2 6 6 3 3 5 50
大分県 18 17 3 1 1 7 2 3 2 3 39
宮崎県 26 20 3 4 9 4 1 2 4 8 55
鹿児島県 43 14 5 2 8 8 6 2 2 1 7 55
沖縄県 41 1 7 4 6 3 2 1 4 3 31
その他
(注1)
2 1 1 4
1,741 703 165 141 100 256 134 58 50 59 204 1,870
  (構成比) (37.5%) (8.8%) (7.5%) (5.3%) (13.6%) (7.1%) (3.1%) (2.6%) (3.1%) (10.9%) (100%)
注(1)
その他は、都道府県をまたいだ複数の認定地方公共団体が作成主体となっている地域再生計画である。
注(2)
地方公共団体別の地域再生計画の一覧については、別表3を参照。
注(3)
管内市町村数は平成26年度末現在の団体数である。
図表1-1-2 年度別の地域再生計画認定数の推移(平成17年度~26年度)
図表1-1-2 年度別の地域再生計画認定数の推移(平成17年度~26年度)画像

前記の1,870計画について、作成主体となっている認定地方公共団体の構成をみると、図表1-2のとおり、一つの市町村が作成主体となっているものが1,104計画(1,870計画の59.0%)と最も多く、都道府県と市町村が共同で作成主体となっているものが647計画(同34.5%)、一つの都道府県が作成主体となっているものが96計画(同5.1%)などとなっていた。都道府県と市町村が共同で作成主体となっている647計画の中には、複数の都道府県と複数の市町村が共同で作成主体となっているものも1計画見受けられた。

図表1-2 作成主体となっている認定地方公共団体の構成

(単位:計画)
区分 計画数 作成主体の区分
一つの都道府県が作成主体となっている 複数の都道府県が共同で作成主体となっている 都道府県と市町村が共同で作成主体となっている 一つの市町村が作成主体となっている 複数の市町村が作成主体となっている 一部事務組合が都道府県又は市町村と共同で作成主体となっている
認定地域再生計画 1,870 96 2 647 1,104 19 2
  (構成比) (100%) (5.1%) (0.1%) (34.5%) (59.0%) (1.0%) (0.1%)

イ 人口規模別等にみた地方公共団体の地域再生計画の作成状況

全国の地方公共団体において、近年における急速な少子高齢化の進展や産業構造の変化等の社会経済情勢の変化が起こり、様々な課題が生じている。このような社会経済情勢の変化を背景として、過疎化が進んでいる地域や厳しい経済状況に置かれている地域においては、地域再生が地域の喫緊の課題となっている。一方、地域再生計画は、地域が自主的かつ自立的に取り組むものであることから、地域再生計画を作成するかどうかは、地方公共団体の判断に委ねられている。

そこで、26年度末現在の全国の市町村1,741団体について、26年1月1日現在の人口規模別に地域再生計画の認定を受けた市町村(以下「認定市町村」という。)及び地域再生計画を作成していない市町村(以下「非認定市町村」という。)の割合をみると、図表1-3のとおり、全国の市町村の半数以上が認定市町村となっているものの、人口規模が1万人未満の市町村では、認定市町村よりも非認定市町村の割合が高くなっていて、地域再生が喫緊の課題であると考えられる人口規模が小さい市町村ほど認定市町村となっている割合が低くなっていた。

図表1-3 人口規模別にみた認定市町村及び非認定市町村の割合

図表1-3 人口規模別にみた認定市町村及び非認定市町村の割合画像

また、1,741団体について、25年度の財政力指数(注5)別に認定市町村及び非認定市町村の割合をみると、図表1-4のとおり、財政力指数が0.2未満と低い市町村及び0.8以上となっている市町村は、認定市町村となっている割合が低くなっていた。

(注5)
財政力指数  地方公共団体の財政力を示す指数で、基準財政収入額を基準財政需要額で除して得た数値の過去3年間の平均値。財政力指数が高いほど、普通交付税算定上の留保財源が大きいことになり、財源に余裕があるとされている。
      図表1-4 財政力指数別にみた認定市町村及び非認定市町村の割合
図表1-4 財政力指数別にみた認定市町村及び非認定市町村の割合画像

非認定市町村777団体のうち調書の対象とした44都道府県管内の733団体に対して地域再生計画を作成していない主な理由について調査したところ、666団体から回答があった。666団体が地域再生計画を作成していない主な理由をみると、図表1-5のとおり、地域再生制度に係る理由を挙げているものが319団体(666団体の47.8%)となっており、このうち地域再生計画の作成を必要としない国の他の制度等を活用しているためとしているものが144団体(同21.6%)、活用したい支援措置がないためとしているものが120団体(同18.0%)、一体的に整備する複数の施設がないなど交付金の要件を満たす施設がないためとしているものが55団体(同8.2%)となっていた。また、非認定市町村の事情に係る理由を挙げているものが320団体(同48.0%)となっており、このうち地域再生制度を十分に理解していないためとしているものが83団体(同12.4%)、地域再生計画の作成に関して検討が十分でないためとしているものが80団体(同12.0%)、地域再生計画を実施するための人員等が不足しているためとしているものが65団体(同9.7%)となっていた。

図表1-5 地域再生計画を作成していない主な理由

(単位:団体)
区分 団体数
(A)
地域再生計画を作成していない主な理由
地域再生制度に係る理由(B)  非認定市町村の事情に係る理由(C) その他
(D)
  地域再生計画
の作成を必要
としない国の
他の制度等を
活用している
ため
(E)
活用したい支
援措置がない
ため
(F)
交付金の要件
を満たす施設
がないため
(G)
  地域再生制度
を十分に理解
していないた

(H)
地域再生計画
の作成に関し
て検討が十分
でないため
(I)
地域再生計画
を実施するた
めの人員等が
不足している
ため
(J)
ニーズがない
など作成する
必要性がない
ため
(K)
(B)/(A) (E)/(A) (F)/(A) (G)/(A) (C)/(A) (H)/(A) (I)/(A) (J)/(A) (K)/(A) (D)/(A)
非認定市町村 666 319 144 120 55 320 83 80 65 92 27
  (構成比) (100%) (47.8%) (21.6%) (18.0%)  (8.2%)  (48.0%) (12.4%)  (12.0%) (9.7%) (13.8%) (4.0%)

上記666団体から地域再生計画を作成していない主な理由がその他である27団体を除く639団体について、人口規模別に地域再生計画を作成していない主な理由をみると、図表1-6のとおり、人口規模が小さい市町村ほど、人員等が不足しているためや、制度を十分に理解していないためとしている割合が高くなっていた。

図表1-6 人口規模別にみた地域再生計画を作成していない主な理由の割合
図表1-6 人口規模別にみた地域再生計画を作成していない主な理由の割合画像

また、財政力指数別に地域再生計画を作成していない主な理由をみると、図表1-7のとおり、財政力指数が低い市町村ほど、人員等が不足しているためとしている割合が高くなっていた。

図表1-7 財政力指数別にみた地域再生計画を作成していない主な理由の割合
図表1-7 財政力指数別にみた地域再生計画を作成していない主な理由の割合画像

前記のとおり、人口規模が小さい市町村及び財政力指数が低い市町村は、認定市町村となっている割合が低くなっていて、地域再生計画を作成していない主な理由は、人口規模が小さいほど、また、財政力指数が低いほど、人員等が不足しているためとしている割合が高くなっていた。

ウ 地域のニーズの把握状況

申請マニュアル(総論)によれば、地域の創意工夫をこらした自主的かつ自立的な取組を推進する観点から、地方公共団体が地域再生計画を作成する際には、地域の民間企業やNPO等を通じて、地域のニーズを十分把握し、反映するように努めることが望まれるとされている。

そこで、調書の対象とした1,756計画に係る地域再生計画の作成に際しての地域のニーズの把握状況をみると、図表1-8のとおり、地域のニーズを把握していないとしているものが157計画(1,756計画の8.9%)となっており、これらの地域再生計画に基づく事業の実施については、地域のニーズを反映した自主的かつ自立的な取組を推進することとはならないことが懸念される。

図表1-8 地域再生計画の作成に際しての地域のニーズの把握状況

(単位:計画)
区分 計画数
(A)
地域のニーズを把握している(B) 地域のニーズを把握していない
(C)
不明
(D)
  ニーズの把握方法
地域再生計画の作成過程において地域のニーズを調査(E) 地域再生計画の作成過程以外において地域のニーズを調査(F)
(B)/(A) (E)/(A) (F)/(A) (C)/(A) (D)/(A)
認定地域再生計画 1,756 1,590 282 1,308 157 9
  (構成比) (100%) (90.5%) (16.0%) (74.4%) (8.9%) (0.5%)

エ 地方公共団体間の調整及び連携

地域再生法によれば、地域再生計画には、地域再生計画の区域を記載するものとされている。そして、申請マニュアル(総論)によれば、地域再生計画の対象となる区域(以下「対象区域」という。)は、計画の作成主体である地方公共団体の区域にこだわることなく、計画の内容や支援措置の特性に応じて、任意に設定できるとされている。

また、内閣府は、地方公共団体が申請する地域再生計画は、対象区域に関係する地方公共団体間で合意形成された後に申請されるものであるとしている。そして、 1,756計画のうち、対象区域に作成主体以外の地方公共団体が含まれているものは102計画となっていた。

そこで、上記の102計画について、対象区域に含まれている地方公共団体が作成主体となっていない主な理由をみると、図表1-9のとおり、作成主体が、地域再生計画の作成段階において、該当する地方公共団体と調整を行わなかったためとしたものが16計画(102計画の15.6%)となっていた。

図表1-9 対象区域に含まれている地方公共団体が作成主体となっていない主な理由

(単位:計画)
区分 計画数 対象区域に含まれている地方公共団体が作成主体となっていない主な理由
該当する地方公共団体と調整を行わなかったため 該当する地方公共団体と調整を行った結果であるため 都道府県が作成主体となっており、都道府県の全域又は一部の区域を対象とした計画であるため
対象区域に作成主体以外の地方公共団体が含まれている認定地域再生計画 102 16 51 35
  (構成比) (100%) (15.6%) (50.0%) (34.3%)

作成主体が、地域再生計画の作成段階において、対象区域に含まれている地方公 共団体と調整を行っていない事例及び行っている事例を示すと次のとおりである。

<事例1-1> 対象区域に含まれている地方公共団体と調整を行っていないもの
都道府県名 作成主体 計画名 計画期間 支援措置名 事業費(うち国の支出額)
三重県 三重県、津市 伊勢湾内のイカナゴ漁を守る、安心安全、活気あるみなとづくり 平成19~23年度 交付金(港整備交付金) 8億1213万余円
(3億3392万余円)
 三重県及び津市は、港整備交付金を活用して地方港湾の白子港及び千代崎港(県事業)と白塚漁港(津市事業)とを一体的に整備するなどとする地域再生計画の認定を受けており、対象区域を津市及び鈴鹿市の一部としている。
 検査したところ、県は、地域再生計画において県事業として整備する予定である港湾施設(白子港及び千代崎港)が津市と隣接する鈴鹿市に所在していることから、当該地域再生計画が鈴鹿市の地域再生にも資するとして対象区域に鈴鹿市を含めていた。しかし、県は、当該地域再生計画の作成に当たり対象区域に鈴鹿市を含めることについて、鈴鹿市と調整を行っていなかった。
<参考事例1-1> 対象区域に含まれている地方公共団体と調整を行っているもの
都道府県名 作成主体 計画名 計画期間 支援措置名 事業費(うち国の支出額)
岡山県 岡山県、備前市、赤磐市、和気郡和気町 東備地域の資源を活用した都市と農村の交流促進計画 平成23~28年度 交付金(道整備交付金) 35億5300万円
(17億7650万円)
 岡山県、備前市、赤磐市及び和気町(以下「県及び3市町」という。)は、道整備交付金を活用して広域農道(県事業)と赤磐市道とを一体的に整備するなどとする地域再生計画の認定を受けており、対象区域を備前市、赤磐市及び和気町の全域としている。
 検査したところ、県及び3市町は、市道整備を実施するのは赤磐市のみであるが、広域農道の整備区域には赤磐市のほか備前市及び和気町を含んでおり、備前市及び和気町の地域再生にも資することから、県及び3市町において調整を行い、地域再生計画に基づく事業の実施について連携を図ることとして共同で地域再生計画を作成した。そして、当該地域再生計画に支援措置として道整備交付金を記載するのに加え、県及び3市町が行う単独事業等も記載するなど、県及び3市町が相互に連携して、交付金事業とこれらの事業とを総合的・一体的に行うこととした。
 このため、県及び3市町は、地域再生計画の目標として、広域農道及び赤磐市道の整備による交通アクセスの改善等のほか、備前市及び和気町の観光人口の増加等を設定していて、広域農道を中心とした幅広い区域における地域再生を推進していた。

オ 認定地域再生計画の公表状況等

内閣府は、基本方針に基づいて、全ての認定地域再生計画を内閣府のホームページで公表している。一方、基本方針、申請マニュアル(総論)等において、認定地方公共団体が認定地域再生計画を公表する必要があるとはしていない。

他方、前記のとおり、基本方針において、地域再生の推進により実現すべき目標の一つとして、地域の創意工夫を凝らした取組の成果として地域再生の成功事例を示すことにより、他の地域における取組を刺激し、多様な分野での地域再生の取組の総体として、全国的な規模での地域の活力の増進を図ることとされている。また、認定地方公共団体が認定地域再生計画に基づく事業を円滑に実施するためには、地域住民の理解と協力が必要であることなどから、認定地域再生計画を自ら公表して地域住民により分かりやすくその内容を周知することが重要である。

そこで、調書の対象とした1,756計画から、26年度末に認定を受けて間もない169計画を除いた1,587計画について、認定地方公共団体における公表状況をみると、図表1-10のとおり、作成主体である認定地方公共団体において自らは公表していないとしているものは761計画(1,587計画の47.9%)、過去の資料等が残っておらず公表状況が不明であるとしているものは14計画(同0.8%)となっていた。

図表1-10 認定地方公共団体における認定地域再生計画の公表状況

(単位:計画)
区分 計画数 認定地域再生計画の公表状況
公表している 公表していない 不明
認定地域再生計画 1,587 812 761 14
  (構成比) (100%) (51.1%) (47.9%) (0.8%)

また、認定地域再生計画を自らは公表していない主な理由をみると、図表1-11のとおり、認定地域再生計画の実施内容について公表する必要がないと考えたためとしているものが260計画(761計画の34.1%)、次いで基本方針等において公表することとなっていないためとしているものが231計画(同30.3%)等となっていた。

図表1-11 認定地方公共団体が認定地域再生計画を自らは公表していない主な理由

(単位:計画)
区分 計画数 公表していない主な理由
地域再生計画の実施内容について公表する必要がないと考えたため 基本方針等において公表することとなっていないため 公表する予定であったが失念したため 内閣府等のホームページにおいて公表されているため 今後公表する予定であったため その他
公表していない認定地域再生計画 761 260 231 24 76 122 48
  (構成比) (100%) (34.1%) (30.3%) (3.1%) (9.9%) (16.0%) (6.3%)

(2) 支援措置の適用を受けた事業の実施状況等

ア 予算措置を伴う支援措置の適用を受けて実施した事業に係る国の支出額等

(ア) 支援措置の分類

17年度から26年度までの間の支援措置112件については、次の4種類に分類することができる(図表2-1参照)。

    

① 予算措置を伴うもの    92件(うち26年度末現在における支援措置21件)

 国の予算措置を伴う補助事業、利子補給金事業、委託事業、請負事業等(以下「補助事業等」という。)の実施による支援、また、補助事業等の採択や選定に当たり一定の配慮をするなどの支援を受けられるもの

    

② 財政上の優遇措置              9件(同4件)

 課税の特例や地方債の起債対象が拡大するなどの財政上の優遇措置による支援を受けられるもの

    

③ 規制の緩和                 4件(同4件)

 法令等の特例措置や規制の緩和による支援を受けられるもの

    

④ その他                   7件(同5件)

 ①、②及び③以外の支援を受けられるもの

図表2-1 支援措置の分類別件数

(単位:件)
区分 支援措置の分類
予算措置を伴うもの 財政上の優遇措置 規制の緩和 その他
  うち、地域再生計画の認定を受けることが事業実施の要件となっているもの   うち、地域再生計画の認定を受けることが事業実施の要件となっているもの   うち、地域再生計画の認定を受けることが事業実施の要件となっているもの   うち、地域再生計画の認定を受けることが事業実施の要件となっているもの   うち、地域再生計画の認定を受けることが事業実施の要件となっているもの
支援措置 112
(34)
34
(19)
92
(21)
15
(6)
9
(4)
8
(4)
4
(4)
4
(4)
7
(5)
7
(5)
(注)
括弧内は支援措置のうち平成26年度末現在の支援措置の件数で内数である。
(イ) 予算措置を伴う支援措置の適用を受けて実施した事業に係る国の支出額

検査の対象とした1,506計画のうち、予算措置を伴う支援措置が記載されていたものは1,446計画となっていた。認定地方公共団体等が、1,446計画において、予算措置を伴う支援措置の適用を受けて実施した事業に係る国の支出額をみると、図表2-2のとおり、総額で8524億余円となっていた。年度別の国の支出額の推移をみると、認定数が最多となっていた17年度に認定された地域再生計画の計画期間である18年度から21年度までの間の国の支出額が多くなっており、その後、認定数の減少に伴い国の支出額も減少していた。国の支出額を府省庁別にみると、国土交通省の計4771億余円(8524億余円の55.9%)が最も多く、農林水産省が計3039億余円(同35.6%)、環境省が計305億余円(同3.5%)と上位となっていて、地域再生計画の認定が事業実施の要件となっている交付金を所管している上記の3省の支出額が多くなっていた。また、地域再生計画の認定が事業実施の要件となっている「実践型地域雇用創造事業」等を所管している厚生労働省が計294億余円(同3.4%)となっていた。

図表2-2 予算措置を伴う支援措置の適用を受けて実施した事業に係る国の支出額  (平成17年度~26年度)

(単位:百万円)
府省名 平成17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
内閣府 43 44 42 41 50 12 15 9 273 58 590
財務省 9 - - - - - - - - - 9
文部科学省 169 641 977 1,152 1,800 1,952 1,441 1,054 588 114 10,254
厚生労働省 1,012 1,979 674 1,831 3,318 3,104 4,779 4,680 4,966 3,129 29,477
農林水産省 19,353 39,919 39,504 36,637 32,740 31,581 27,090 31,901 26,355 18,860 303,945
経済産業省 - - 84 248 59 70 - - - - 463
国土交通省 42,614 71,363 72,209 70,129 64,273 46,940 28,986 33,905 27,035 19,707 477,167
環境省 4,769 4,928 4,557 4,214 3,233 2,272 1,838 2,151 1,521 1,097 30,583
67,971 118,876 118,051 114,616 105,476 85,934 64,151 73,702 60,740 42,969 852,489
(注)
岩手、宮城、福島各県に係る国の支出額は除いている。

上記8府省の支出額を支援措置別にみると、図表2-3のとおり、農林水産省、国土交通省及び環境省所管の交付金が計8089億余円(8524億余円の94.8%)と最も多く、次いで、厚生労働省所管の「実践型地域雇用創造事業」が計116億余円(同1.3%)、同省所管の「地域雇用創造推進事業」が計107億余円(同1.2%)、文部科学省所管の「科学技術振興調整費「地域再生人材創出拠点の形成」プログラム」が計91億余円(同1.0%)等となっていた。

図表2-3 支援措置別の国の支出額(平成17年度~26年度)

(単位:百万円)
法定措置又は連動施策 支援措置名 府省名 平成17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
法的措置 地域再生基盤強化交付金 内閣府 農林水産省 19,353 39,889 39,446 36,408 31,604 30,564 27,007 31,898 26,351 18,821 301,345
国土交通省 42,614 71,363 72,209 70,098 64,238 46,915 28,958 33,899 27,026 19,707 477,032
環境省 4,769 4,928 4,557 4,214 3,233 2,272 1,838 2,151 1,521 1,097 30,583
3省計 66,737 116,181 116,213 110,721 99,076 79,752 57,803 67,949 54,899 39,626 808,961
地域再生支援利子補給金 内閣府 - - - - - - - 1 24 31 56
連動施策 科学技術振興調整費「地域再生人材創出拠点の形成」プログラム 文部科学省 - 428 744 1,290 1,635 1,883 1,441 1,054 588 114 9,181
実践型地域雇用創造事業 厚生労働省 - - - - - - - 3,816 4,656 3,129 11,603
地域雇用創造推進事業 - - 635 1,790 3,129 1,930 3,227 - - - 10,713
地域提案型雇用創造促進事業(パッケージ事業) 1,012 1,910 - - - - - - - - 2,922
地域雇用創造実現事業 - - - - 155 1,127 1,508 842 309 - 3,942
農山漁村活性化プロジェクト支援交付金 農林水産省 - - - 194 344 763 35 - - 1 1,339
その他26件 - 222 356 457 620 1,135 476 135 38 262 66 3,770
67,971 118,876 118,051 114,616 105,476 85,934 64,151 73,702 60,740 42,969 852,489
(注)
岩手、宮城、福島各県に係る国の支出額は除いている。

イ 支援措置数の推移の状況

国は、地域の自主的・自立的な取組である認定地方公共団体における認定地域再生計画に基づく事業の実施を支援するために、地域のニーズを踏まえて支援措置のメニューを整備するとしている。そして、内閣府は、定期的に支援措置の見直しを行っており、支援措置のうち連動施策については、毎年度、当初予算の成立時期に併せて各府省庁に対して見直し作業を依頼して、各府省庁から提出された資料を基に連動施策の追加、廃止等を行っている。

17年度から26年度までの間における支援措置数の推移をみると、図表2-4のとおり、地域再生制度が創設された17年度当初は16件であった。そして、7プログラムの作成に伴い、19年度末では52件、20年度末では56件と増加したものの、26年度末現在では34件まで減少している。

図表2-4 支援措置数の推移(平成17年度~26年度)
図表2-4 支援措置数の推移(平成17年度~26年度)画像

また、17年度の地域再生制度創設当初から26年度末までの支援措置数を所管府省庁別にみると、図表2-5のとおり、最も多いのは農林水産省の計36件となっており、年度別では、19年度末及び21年度末の16件が最も多くなっていて、26年度末現在では11件となっている。次いで多いのは経済産業省の計18件となっており、年度別では、20年度末では9件であったが、26年度末現在では3件と減少している。文部科学省は計11件となっており、19年度末では7件であったが、26年度末現在では「社会システム改革と研究開発の一体的推進「地域再生人材創出拠点の形成」プログラム」の1件となっている。ただし、当該事業の新規受付は行っていないことから、26年度末現在における文部科学省所管の支援措置は実質的にない状況となっている。

図表2-5 年度別及び所管府省庁別支援措置数の推移(平成17年度~26年度)

(単位:件)
府省庁名 平成17年度当初 17年度末 18年度末 19年度末 20年度末 21年度末 22年度末 23年度末 24年度末 25年度末 26年度末 府省庁別計
内閣官房 - - - - 1 (1) 1 (1) - - - - - 1 (1)
内閣府 4 (2) 4 (2) 4 (2) 5 (3) 7 (4) 8 (4) 5 (2) 5 (2) 9 (5) 9 (5) 10 (6) 16 (9)
金融庁 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2
総務省 5 7 7 5 5 4 4 4 5 (1) 5 (1) 5 (1) 9 (1)
法務省 - - - 2 2 2 2 2 2 2 2 2
財務省 3 4 4 4 4 1 1 1 1 1 1 5
文部科学省 1 5 5 7 5 5 3 3 2 2 1 11
厚生労働省 4 5 5 6 7 8 8 7 6 5 5 12
農林水産省 3 (1) 4 (1) 4 (1) 16 (1) 15 (1) 16 (1) 12 (1) 8 (1) 8 (1) 10 (1) 11 (2) 36 (2)
経済産業省 2 5 5 7 9 8 7 5 5 4 3 (1) 18 (1)
国土交通省 3 (1) 5 (1) 5 (1) 9 (1) 10 (1) 10 (1) 7 (1) 8 (1) 8 (1) 8 (1) 8 (1) 15 (1)
環境省 2 (1) 2 (1) 2 (1) 2 (1) 5 (1) 4 (1) 4 (1) 3 (1) 3 (1) 3 (1) 3 (1) 5 (1)
全府省庁 1 (1) 1 (1) 1 (1) 1 (1) 1 (1) 1 (1) 1 (1) 1 (1) 1 (1) 1 (1) 1 (1) 1 (1)
年度別計 16 (3) 29 (3) 29 (3) 52 (4) 56 (5) 53 (5) 41 (3) 33 (3) 35 (6) 35 (6) 34 (8) 112 (10)
注(1)
括弧内は支援措置のうち法定措置の数で内数である。
注(2)
一つの支援措置に対して所管する府省庁が複数あるものがあるため合計しても112件にはならない。

支援措置のうち、連動施策の追加及び廃止の状況をみると、図表2-6-1のとおり、17年度から26年度までの間に新たに追加した連動施策は89件となっていて、廃止した連動施策は76件となっていた。そして、17年度は廃止した連動施策はなく、19、20両年度は追加した件数が廃止した件数を上回っていて、連動施策の件数は増加していたが、21年度以降は25年度を除く各年度において廃止した件数が追加した件数を上回っていた(図表2-6-2参照)。

図表2-6-1 連動施策の追加及び廃止の状況(平成17年度~26年度)

(単位:件)
区分 平成17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
連動施策の追加 13 - 31 11 11 5 5 5 7 1 89
連動施策の廃止 - - 8 9 14 15 13 6 7 4 76
図表2-6-2 連動施策の件数の推移(平成17年度~26年度)
図表2-6-2 連動施策の件数の推移(平成17年度~26年度)画像
(注)
連動施策の件数は各年度末の件数である。

17年度から26年度までの間に追加した89件のうち、62件は、7プログラムの作成や地域再生法の改正等に伴い、地域の活性化に資する事業として新規に追加したものとなっていた。また、27件は、既に連動施策としていた事業が整理・統合され、当該事業を引き継いだものであった。そして、新規に追加した62件の追加年度についてみると、20年度以前に追加した連動施策は50件、21年度以降に追加した連動施策は12件となっていた。このように、近年、新規に追加する連動施策が減少している一方で、19、20両年度に7プログラムの作成に伴い連動施策となった各事業が終了したことが、20年度末には56件あった支援措置が、26年度末には34件まで減少している原因となっていた。

ウ 支援措置と地域再生計画との関係等

支援措置は、支援措置ごとに地域再生計画との関係や配慮の内容が異なることから、内閣府は、地域再生計画の認定を申請しようとする地方公共団体に対して、認定地方公共団体が受けられる支援の内容等について、支援措置ごとに、基本方針、申請マニュアル(各論)、手引等において記載して紹介している。

前記のとおり、支援措置は、地域再生計画の認定を受けることを事業実施の要件としている支援措置と、地域再生計画の認定を受けることにより事業の採択や選定に当たり一定の配慮をする支援措置とに分類することができる(図表2-7参照)。このうち、一定の配慮をする支援措置は63件となっていて、その配慮の内容をみると、認定地方公共団体が認定地域再生計画に基づいて事業の採択申請をした場合、所管府省庁において事業採択に当たり採点ポイントを加算するものが23件、事業採択等に当たり地域再生計画の認定を受けている旨を審査委員に周知するなどポイント加算以外の配慮をするものが40件となっていた。

図表2-7 支援措置と地域再生計画との関係による分類

(単位:件)
区分 件数 支援措置と地域再生計画との関係による分類
事業実施の要件としているもの(B) 事業の採択や選定に当たり一定の配慮をするもの(C) その他(D)
  採点ポイントを加算するもの(E) ポイント加算以外の配慮をするもの(F)
(A) (B)/(A) (C)/(A) (E)/(A) (F)/(A) (D)/(A)
支援措置 112
(34)
34
(19)
63
(11)
23
(6)
40
(5)
15
(4)
  (構成比) (100%) (30.3%) (56.2%) (20.5%) (35.7%) (13.3%)
(注)
括弧内は支援措置のうち平成26年度末現在の支援措置の件数で内数である。

また、112件の支援措置について、内閣府が申請マニュアル(各論)等で紹介している以外の、支援措置の所管府省庁による地域再生計画との関係及び配慮の内容の周知の状況をみると、図表2-8のとおり、周知していないものは17件(112件の15.1%)となっていた。

図表2-8 支援措置と地域再生計画との関係及び配慮の内容の周知状況

(単位:件)
区分 支援措置の分類
実施要綱等に記載して周知している 説明会等の際の資料に記載して周知している 周知していない その他
  うち、地域再生計画の認定を受けることが事業実施の要件となっているもの   うち、地域再生計画の認定を受けることが事業実施の要件となっているもの   うち、地域再生計画の認定を受けることが事業実施の要件となっているもの   うち、地域再生計画の認定を受けることが事業実施の要件となっているもの   うち、地域再生計画の認定を受けることが事業実施の要件となっているもの
支援措置 112
(34)
34
(19)
79
(24)
28
(15)
6
(1)
- 17
(6)
6
(4)
10
(3)
-
(注)
括弧内は支援措置のうち平成26年度末現在の支援措置の件数で内数である。

そして、所管府省庁において地域再生計画との関係を周知していない17件の支援措置のうち、地域再生計画の認定を受けることが事業実施の要件となっているものが6件となっていた。

その事例を示すと次のとおりである。

<事例2-1> 地域再生計画の認定を受けることが事業実施の要件となっていることについて周知していないもの
 

金融庁は、「地域資本市場育成のための投資家教育プロジェクトとの連携事業」を平成17年4月以降支援措置(連動施策)としており、同事業は地域再生計画の認定を受けることが事業実施の要件となっている。同事業は、地域における投資知識の普及に関する取組を実施する事業主体に対して、同庁が、アドバイスや講師の派遣等を行うものである。

 

しかし、同庁は、同事業が地域再生計画の認定を受けることが事業実施の要件となっていることについて、申請マニュアル(各論)以外では地方公共団体に対して周知していなかった。

また、前記の採点ポイントを加算する以外の配慮をする支援措置及びその他の支援措置の中には、所管府省庁において、認定地方公共団体が認定地域再生計画に基づいて事業の採択申請をした場合における配慮の内容を具体的に定めておらず、地方公共団体から地域再生計画の認定申請や事業の採択申請を受けてから、配慮の内容を検討するとしていたものが11件見受けられた。

その事例を示すと次のとおりである。

<事例2-2> 配慮の内容を具体的に定めていないもの

国土交通省は、「地域再生等に資する実用化技術の研究開発助成」を平成19年4月以降支援措置(連動施策)としている。同助成は、地域のニーズ等に応じた実用化段階の技術研究開発のテーマについて、地域の産学官連携等による研究開発課題に対して補助を行うものである。

しかし、同省は、地方公共団体が支援措置として同助成を記載した地域再生計画の認定を受けた場合、審査の際に配慮するとしているものの、これまでに支援措置の適用を受けて同助成を実施した計画は1計画もないことから、配慮の内容を具体的に定めていなかった。

前記のように、所管府省庁において地域再生計画と支援措置との関係及び配慮の内容を周知していない支援措置が見受けられたり、上記のように、所管府省庁において配慮の内容を具体的に定めていない支援措置が見受けられたりしており、これらについては、地方公共団体が支援措置を一つ又は複数選択して自主的に地域再生計画を作成する際の選択の幅を広げることに資する状況とはなっていない。

エ 支援措置の記載回数別の状況

支援措置112件について、調書の対象とした1,756計画に記載された回数をみると、図表2-9のとおり、1回も記載されていないものは49件(112件の43.7%)となっていた。

図表2-9 認定地域再生計画における支援措置の記載回数

(単位:件)
区分 地域再生計画との関係 件数 記載回数
なし 1回 2~5回 6~10回 11回以上 不明
支援措置 事業実施の要件としているもの 34 11 1 4 3 15 -
一定の配慮をするもの 63 32 12 11 6 2 -
その他 15 6 2 3 1 - 3(注)
  112 49 15 18 10 17 3
  (構成比) (100%) (43.7%) (13.3%) (16.0%) (8.9%) (15.1%) (2.6%)
(注)
記載回数が不明である3件は、財務省所管の「日本政策投資銀行の低利融資等(大学等との連携)」、「日本政策投資銀行の低利融資等(形成、事業化に対するアドバイス)」及び「日本政策投資銀行の低利融資等(地域雇用の創出に資する取組)」である。
 

上記の49件について、地域再生計画との関係をみると、認定地域再生計画に記載されていることを事業実施の要件としているものは11件、認定地域再生計画に記載されている場合に一定の配慮をするものは32件となっていて、一定の配慮をする支援措置については、記載回数が少ない傾向となっていた。

また、49件の中には、地方公共団体が地域再生計画を作成し、その認定を受けた時期には既に事業の公募期間が終了していて、認定地域再生計画に記載しても支援措置の適用を受けることが不可能であったものが5件見受けられた。

その事例を示すと次のとおりである。

<事例2-3> 事業の公募期間が終了していて、認定地域再生計画に記載しても支援措置の適用を受けることが不可能であったもの

環境省は、「再生可能エネルギー導入加速化事業」を、支援措置(連動施策)として平成20年4月25日に追加し21年4月24日に廃止している。同事業は、地域の特色ある再生可能エネルギーを地産地消し、地域全体での効率的なCO2削減を実現するモデル地域を整備するため、地域における再生可能エネルギーの集中的な導入を支援するもので、同省は、地方公共団体が支援措置として同事業を認定地域再生計画に記載した場合、同事業の採択に当たり一定の配慮をするとしていた。

しかし、下図のとおり、同事業の20年度の公募期間は20年4月11日から同年同月30日までとなっていて、支援措置となった20年4月25日以降で最も早い内閣府による地域再生計画の認定申請受付期間より前に公募期間が終了していることから、地方公共団体が同支援措置として同事業を記載した地域再生計画の認定を受けたとしても、支援措置の適用を受けることはできない状況となっていた。

そして、支援措置として同事業を認定地域再生計画に記載した計画はない。

なお、環境省によれば、地域再生計画の認定を待って公募した場合、事業期間が短くなるため事業実施者が見込めなくなるなど、日程的に無理があったとしている。

事例2-3画像

オ 提案制度等の活用状況

国は、地域再生法制定以前の15年12月及び16年6月に、地方公共団体、民間事業者等を対象として地域再生のための新たな支援措置等に関する提案募集を行った。また、17年4月の地域再生法制定以降は、基本方針に規定する地域再生に資する施策についての提案制度(以下「提案制度」という。)に基づき、24年度を除く毎年度、地方公共団体、民間事業者等から新たな支援措置の提案募集を行っている。そして、24年11月の地域再生法の改正において、提案制度を法制化して、現場の声をより重視した地域再生の推進を図ることとした。

そこで、地域再生法制定以前の提案募集及び提案制度(以下「提案制度等」という。)による年度別の提案件数の推移をみると、図表2-10のとおり、15年度から26年度までの間に計1,396件の提案があったものの、法制化以降の提案件数をみると、25年度は1件、26年度は2件となっていて、提案制度がほとんど活用されていない状況となっていた。また、受け付けた提案については、内閣官房が実現に向けて関係府省庁と調整を行い、その結果を踏まえ、関係府省庁において必要な措置が講ぜられるものとなっていて、これまでに各府省が提案制度等に基づき新たに追加した支援措置は1件、既存の支援措置の対象を拡大したものが3件となっていた。

図表2-10 年度別の提案件数の推移(平成15年度~26年度)

(単位:件)
区分 平成15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
提案件数 673 522 96 23 22 7 15 26 9 - 1 2 1,396
  (構成比) (48.2%) (37.3%) (6.8%) (1.6%) (1.5%) (0.5%) (1.0%) (1.8%) (0.6%) (-%) (0.0%) (0.1%) (100%)
注(1)
平成24年度は地域再生法の改正に伴い提案募集を実施していない。
注(2)
募集期間が年度をまたいでいる場合は募集締切時点の年度としている。

認定地方公共団体における提案制度等の活用状況をみると、認定地方公共団体927団体から一部事務組合の2団体を除く925団体のうち、提案制度等を活用したことがないものは623団体(925団体の67.3%)となっていた。623団体が提案制度等を活用していない理由をみると、図表2-11のとおり、提案制度等を知らなかったためとしているものが45団体(623団体の7.2%)、提案制度等を十分理解していなかったためとしているものが205団体(同32.9%)となっていて、認定地方公共団体であっても、提案制度等を知らなかったり、理解が十分でなかったりする団体が多く見受けられた。

図表2-11 認定地方公共団体の提案制度等の活用状況

(単位:団体)
区分 団体数 提案制度等を活用したことがある(B) 提案制度等を活用したことがない(C)
  活用していない理由
提案制度等を知らなかったため(D) 提案制度等を十分理解していなかったため(E) 意見がないため(F) その他(G)
(A) (B)/(A) (C)/(A) (D)/(C) (E)/(C) (F)/(C) (G)/(C)
認定地方公共団体 925 302 623 45 205 348 25
  (構成比) (100%) (32.6%) (67.3%) (7.2%) (32.9%) (55.8%) (4.0%)

(3) 交付金事業の実施状況等

前記のとおり、17年度に法定措置として創設された交付金は、17年度から26年度までの間の国の支出額が計8089億余円と支援措置の中で最も多く、全体の94.8%を占めている。また、調書の対象とした1,756計画のうち、支援措置として交付金が記載されたものは、1,094計画に上っている。そこで、交付金事業の実施状況等について分析した。

ア 交付金事業の実施状況

(ア) 交付金の予算額及び決算額

交付金に係る国の予算は、内閣府に一括計上された後、所管省庁に移し替えられて執行される。17年度から26年度までの間における各年度の交付金の予算額をみると、図表3-1-1のとおり、制度創設時の17年度に認定を受けた地域再生計画の計画期間となっている18年度から22年度までの間は、1000億円を超える規模となっていた。

しかし、23年度は、18年度を初年度とする認定地域再生計画の計画期間が終了したこと、22年6月に実施された交付金に係る行政事業レビュー公開プロセス(注6)において、個々の計画の効果測定がされていないこと、他の国庫補助金等と統合した一括交付金化の議論が進展していたことから、「廃止を含め抜本的な見直しを行う。」との評価結果が出されたことに伴い、一部の地方公共団体が交付金の活用を見合わせたことなどにより、予算額が前年度に比べて大幅に減少した。そして、24年度以降も交付金をはじめとする国庫補助金等により、交付金の対象施設の一部では整備が進み、2種類以上の類似施設を一体的に整備する需要が減ったことなどから、地方公共団体からの交付金の予算要望が減少したことなどにより、交付金の予算額は減少傾向となっており、最も多い年度で1446億余円であった予算額が26年度には451億余円まで減少していた。

なお、23年度に、上記の一括交付金として地域自主戦略交付金が創設されたものの、交付金については、22年度以前から交付金事業を実施していた認定地方公共団体等からの継続要望が多く出されたことから23年度予算に計上されることとなり、廃止にはならなかった。

図表3-1-1 交付金の予算額(平成17年度~26年度)

(単位:千円)
年度 平成17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
内閣府予算額
(A)
81,000,000 137,700,000 141,833,000 144,608,000 144,608,000 103,389,000 62,000,000 75,060,942 62,720,000 45,118,000 998,036,942
移替先計
(B)
80,019,002 133,862,537 138,072,478 123,385,510 114,014,672 89,305,258 61,560,377 75,060,942 62,720,000 45,118,000 923,118,776
  農林水産省 24,205,662 49,044,058 49,404,246 42,938,864 38,932,176 37,295,882 29,802,726 36,928,960 30,460,280 21,593,054 360,605,908
  国土交通省 50,941,857 79,325,388 82,486,102 75,611,980 70,714,086 49,224,270 29,840,286 36,325,108 30,537,671 22,096,428 527,103,176
  環境省 4,871,483 5,493,091 6,182,130 4,834,666 4,368,410 2,785,106 1,917,365 1,806,874 1,722,049 1,428,518 35,409,692
残額
(A)-(B)
980,998 3,837,463 3,760,522 21,222,490 30,593,328 14,083,742 439,623 74,918,166
注(1)
金額は、歳出予算額である。
注(2)
平成17年度の予算額は、歳出予算額に流用等増減額を加除した金額である。
図表3-1-2 交付金の予算額の推移(平成17年度~26年度)
図表3-1-2 交付金の予算額の推移(平成17年度~26年度)画像
(注6)
行政事業レビュー公開プロセス  各府省自らが、自律的に、概算要求前の段階において、原則全ての事業について、予算が最終的にどこに渡り(支出先)、何に使われたか(使途)といった実態を把握し、これを国民に明らかにした上で、外部の視点も活用しながら、過程を公開しつつ事業の内容や効果の点検を行い、その結果を予算の概算要求や執行等に反映させる取組
 

また、17年度から26年度までの間における交付金の決算額は、図表3-2のとおり、計8873億9010万余円となっており、このうち、国土交通省所管が5132億4855万余円、農林水産省所管が3433億0606万余円、環境省所管が308億3549万余円となっていた。

図表3-2 交付金の決算額(平成17年度~26年度)

(単位:千円)
年度 平成17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
決済額 61,494,314 128,537,048 134,031,289 126,764,458 110,733,399 75,668,263 68,715,581 61,778,868 61,582,532 58,084,351 887,390,106
  農林水産省 18,821,085 46,358,738 47,625,583 44,420,560 38,664,529 28,102,761 31,528,117 29,810,407 30,221,003 27,753,276 343,306,063
  国土交通省 38,014,255 77,078,996 81,264,913 77,999,853 68,652,572 45,203,468 35,547,050 30,342,165 29,863,891 29,281,385 513,248,551
  環境省 4,658,973 5,099,313 5,140,792 4,344,044 3,416,298 2,362,034 1,640,413 1,626,295 1,497,638 1,049,690 30,835,491
(注)
金額は、支出済歳出額である。
 
(イ) 計画期間終了後における交付金の対象施設の整備状況

交付金が創設された17年度には、交付金のほかに環境省所管の循環型社会形成推進交付金(以下「循環型交付金」という。)が、22年度には、農林水産省所管の農山漁村地域整備交付金(以下「農山漁村交付金」という。)及び国土交通省所管の社会資本整備総合交付金(以下「総合交付金」という。)が創設された。そして、交付金の対象施設と循環型交付金、農山漁村交付金及び総合交付金の対象施設についてみると、浄化槽は循環型交付金の対象施設となっている。広域農道、林道、集落排水施設及び漁港は農山漁村交付金の対象施設となっている。また、市町村道、公共下水道及び地方港湾は総合交付金の対象施設となっている。したがって、交付金以外の国庫補助金等を活用しても交付金の対象施設の整備はできることとなる。そして、前記のとおり、22年度以降の交付金の予算額は減少傾向となっている。

そこで、調書の対象とした1,756計画のうち、26年度末までに計画期間が終了していて、交付金を記載した816計画の作成主体の計画期間終了後における交付金の対象施設の整備状況をみると、図表3-3のとおり、新たに地域再生計画の認定を受けて、引き続き交付金を活用して整備しているものは380計画(816計画の46.5%)となっていたが、地域再生計画の認定を新たに受けることなく、交付金以外の国庫補助金等を活用して整備しているものも344計画(同42.1%)に上っていた。このように認定地方公共団体において、交付金以外の国庫補助金等を活用することによって交付金の対象施設を整備していることも、交付金の予算額が減少している要因の一つとなっていた。

図表3-3 計画期間終了後における交付金の対象施設と同種の施設の整備状況

(単位:計画)
区分 計画数 計画期間終了後における交付金の対象施設の整備状況
新たに地域再生計画の認定を受けて、引き続き交付金を活用して整備している 地域再生計画の認定を新たに受けることなく、交付金以外の国庫補助金等を活用して整備している 国庫補助金等を活用せずに整備している 整備していない その他
認定地域再生計画 816 380 344 14 58 20
  (構成比) (100%) (46.5%) (42.1%) (1.7%) (7.1%) (2.4%)

イ ワンストップ窓口の活用状況

農林水産省、国土交通省及び環境省は、交付金に係る交付事務については、基本大綱に基づき、各省の地方支分部局等が連携して一元的に取り扱うワンストップ窓口により、地方公共団体の事務手続に係る負担の軽減を図ることとしている。ワンストップ窓口については、図表3-4のとおり、都道府県において、従来は交付対象施設を所管する各省にそれぞれ提出していた交付金に係る交付申請書その他の書類(以下「交付申請書等」という。)をいずれかの省庁の地方支分部局等の一箇所で、まとめて申請することができるものである。そして、交付申請書等の提出を受けた地方支分部局等は、他の省庁の地方支分部局等が所管する施設に係る交付申請書等が含まれている場合は、当該施設を所管している省庁の地方支分部局等へ送付する仕組みとなっている。

図表3-4 ワンストップ窓口を活用した交付金の交付申請の例
図表3-4 ワンストップ窓口を活用した交付金の交付申請の例画像

調書の対象とした都道府県44団体のうち、交付金の活用がない沖縄県を除く43団体におけるワンストップ窓口の活用状況をみると、ワンストップ窓口を活用したことがあるとしているのは1団体のみとなっており、42団体は、従来の国庫補助金等と同様に、交付担当大臣が所管する省庁の地方支分部局等に交付金の交付申請等を行っていて、交付金のワンストップ窓口を活用していないとしている状況となっていた。そして、42団体がワンストップ窓口を活用していないとしている理由をみると、都道府県において交付金の対象施設を所管している部署が異なっており、部署間で連携を図ることができないためとしている都道府県が18団体、交付金の交付申請等を行う際に他の国庫補助金等の交付申請等と合わせて交付申請した方が効率的であるためとしている都道府県が20団体などとなっていた。

ウ 年度間融通の活用状況等

(ア) 年度間融通の活用状況

国は、認定地方公共団体が、交付金事業の進捗に応じて年度間融通を活用することにより、繰越しの手続等を不要とすることで事務の簡素化を図ることとしている。手引によれば、年度間融通は、年度間に発生する事業の進捗状況の変化に応じて当該年度の国費の充当率(以下「補助率」という。)を変更し、次年度以降で調整することができるものとされている(図表3-5参照)。

図表3-5 年度間融通の例
図表3-5 年度間融通の例画像

そこで、前記816計画の年度間融通の活用状況をみると、図表3-6のとおり、年度間融通を活用するような事業の進捗状況の変化はあったが、年度間融通を活用していないものは84計画(816計画の10.2%)となっていた。

そして、84計画の年度間融通を活用していない理由をみると、年度間融通を活用することを検討しなかったためとしているものが42計画(84計画の50.0%)となっていて、84計画の作成主体である97認定地方公共団体は、年度間融通を活用することなく、従来の国庫補助金等と同様に繰越しの手続をとっていた。一方、年度間融通を活用した認定地方公共団体から寄せられた意見には、「予算の満額執行に満たない場合でも、事業の進捗状況に応じて重点的な施工ができた」、「下水道整備等の継続事業にとっては利点が多く、これからも活用していきたい」等、年度間融通が有効であるとする意見が多く見られた。

図表3-6 年度間融通の活用状況

(単位:計画)
区分 計画数 年度間融通の活用状況
年度間融通を活用している認定地域再生計画数(B) 年度間融通を活用するような事業の進捗状況の変化がなかった認定地域再生計画数(C) 事業の進捗状況の変化はあったが、年度間融通を活用していない認定地域再生計画数(D)  
年度間融通を活用していない理由
年度間融通を活用することを検討しなかったため(E) 年度間融通を活用すると、後年度に認定地方公共団体の負担する割合が大きくなることを懸念したため(F) 年度間融通の制度を知らなかったため(G) 他施設充当をしたため(H) その他(I)
(A) (B)/(A) (C)/(A) (D)/(A) (E)/(D) (F)/(D) (G)/(D) (H)/(D) (I)/(D)
認定地域再生計画 816 442 290 84 42 20 9 6 7
  (構成比) (100%) (54.1%) (35.5%) (10.2%) (50.0%) (23.8%) (10.7%) (7.1%) (8.3%)
(イ) 単年度交付額を超える交付金の交付状況

汚水要綱等によれば、計画期間内における交付金の交付限度額及び単年度交付額は、次のとおり算出されることとされている。なお、計画期間の初年度の単年度交付額は、前年度末までの交付額がないことから、交付限度額に当該年度の年度末における対象施設に係る事業について見込まれる進捗率を乗じて得た金額となる。

 (イ) 単年度交付額を超える交付金の交付状況画像

そして、汚水要綱、手引等によれば、年度間融通は、交付決定後に発生する事業の進捗状況の変化に応じて当該年度の補助率を変更することができるものであるとされているものの、交付決定の段階で年度間融通を活用することとして、単年度交付額を超える交付金の交付を受けることまでは認めていない。

そこで、17年度から26年度までの間に年度間融通の対象となった2,062施設の年度間融通の活用状況のうち、前年度までの交付額がないことから確認が容易である計画期間の初年度の単年度交付額を超える交付金の交付状況をみると、図表3-7のとおり、17年度から26年度までの間に交付決定の段階で単年度交付額を超える交付金の交付を受けているものは100施設(2,062施設の4.8%)となっていた。そして、100施設に単年度交付額を超える交付金が交付された年度別にみると、17年度が80施設、18年度が16施設と交付金の創設当初が多くなっていた。

100施設を交付金の所管省別にみると、国土交通省所管が73施設、環境省所管が27施設となっていた。さらに、100施設を施設別にみると、公共下水道が70施設と最も多く、次いで浄化槽が27施設となっており、汚水処理施設整備交付金の対象施設に対して、交付決定の段階で年度間融通を活用することとして単年度交付額を超える交付金を交付している事態が多く見受けられた。

なお、100施設に単年度交付額を超えて交付された額については、認定地方公共団体において、いずれも次年度以降に減額調整していた。

図表3-7 単年度交付額を超える交付金の交付状況(初年度)

(単位:施設)
省名 交付金の対象施設 交付決定の段階で単年度交付額を超える交付金の交付状況
平成17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 25年度 26年度
国土交通省 市町村道 2 2
公共下水道 56 13 1 70
地方港湾の港湾施設 1 1
58 13 1 1 73
環境省 浄化槽 22 3 1 1 27
合計 80 16 1 2 1 100

交付決定の段階で年度間融通を活用することとして単年度交付額を超える交付金の交付を受けている事例を示すと次のとおりである。

<事例3-1> 交付決定の段階で年度間融通を活用することとして単年度交付額を超える交付金の交付を受けているもの

都道府県名 作成主体 計画名 計画期間 支援措置名 事業費(うち国の支出額)
山形県 酒田市 酒田の自然・まちなみ・こころの再生 平成17~21年度 交付金(汚水処理施設整備交付金) 34億9333万余円
(17億1198万余円)
 酒田市は、汚水処理施設整備交付金(総事業費34億9333万余円(うち交付金17億1198万余円))を活用して、公共下水道(事業費12億2220万余円(うち交付金6億1110万円))、農業集落排水施設(事業費20億6302万余円(うち交付金10億3151万余円))及び浄化槽(事業費2億0810万余円(うち交付金6936万余円))を一体的に整備している。
 同市は、平成17年8月に公共下水道の整備に係る事業費2億7520万円に対する交付金1億3760万円の交付申請を行い、同額の交付決定を受けていた。その後、同市は、山形県から交付金の追加配分の照会を受けたため、同年12月に事業費を変更することなく交付金の額を計2億0760万円とする交付決定の変更申請を行い、交付決定の変更を受け、18年4月に2億0760万円の交付を受けていた。
 しかし、汚水要綱によれば、施設ごとの交付金の単年度交付額は、「交付限度額」に「交付金が交付される年度の年度末における対象施設に係る事業について見込まれる進捗率」を乗じて得た金額から「算出の対象とする年度の前年度末までに交付された交付金の総額」を減じた金額とされている。したがって、計画期間の初年度である17年度の単年度交付額は、公共下水道に係る交付限度額5億1200万円に進捗率26.875%を乗じた1億3760万円となることから、同市が交付を受けていた2億0760万円のうち7000万円が単年度交付額を超えて交付されていた。
 なお、同市は、交付金について、20年度に7000万円を減額調整していた。

エ 他施設充当の活用状況

国は、認定地方公共団体が、交付金事業の進捗に応じて他施設充当を行えることとして、交付された交付金の効率的な使用及び弾力的な事業実施を可能としている。

手引によれば、他施設充当は、単年度交付額の2分の1未満で、かつ他の施設の当該年度の交付額未満の範囲において、交付された交付金を他の施設の整備に要する経費として充てることができるものとされている(図表3-8参照)。

図表3-8 他施設充当の例
図表3-8 他施設充当の例画像

そこで、前記816計画の他施設充当の活用状況をみると、図表3-9のとおり、他施設充当を活用しているものは74計画(816計画の9.0%)にとどまっていた。また、事業の進捗状況の変化はあったが、他施設充当を活用していないものは296計画(同36.2%)となっていた。

そして、296計画において他施設充当を活用していない理由をみると、他施設充当を活用することを検討しなかったためとしているものが49計画(296計画の16.5%)となっていた。一方、他施設充当を活用した認定地方公共団体から寄せられた意見には、「早急に整備しなければならない事業が生じた際に、他の施設の事業主体と連携を図り、他施設充当を活用することにより、対応することができた」等、他施設充当が有効であるとする意見も見られた。

図表3-9 他施設充当の活用状況

(単位:計画)
区分 計画数 他施設充当の活用状況
他施設充当を活用している認定地域再生計画数(B) 他施設充当を活用するような事業の進捗状況の変化がなかった認定地域再生計画数(C) 事業の進捗状況の変化はあったが、他施設充当を活用していない認定地域再生計画数(D)  
他施設充当を活用していない理由
他施設充当を活用することを検討しなかったため(E) 他施設の事業主体が他の部署(又は他の地方公共団体)で、連携を図ることができなかったため(F) 他施設充当の制度を知らなかったため(G) 年度間融通をしたため(H) その他(I)
(A) (B)/(A) (C)/(A) (D)/(A) (E)/(D) (F)/(D) (G)/(D) (H)/(D) (I)/(D)
認定地域再生計画 816 74 446 296 49 48 6 177 16
  (構成比) (9.0%) (54.6%) (36.2%) (16.5%) (16.2%) (2.0%) (59.7%) (5.4%)

オ 認定地域再生計画の計画変更の認定申請等の状況

前記のとおり、 認定地方公共団体は認定地域再生計画を変更しようとする場合には、軽微な変更を除き、地域再生法に基づき、内閣総理大臣の認定が必要となっている。そして、交付金に係る計画の軽微な変更については、基本大綱において、①施設ごとの整備量又は交付金の種類ごとの事業費の2割以内の増減、②交付金を充てて行う施設の整備の事業期間の変更に伴う1年以内の変更であって、目標の達成に支障がなく、やむを得ないと認められるものと規定されている。ただし、内閣府は、施設ごとの整備量又は交付金の種類ごとの事業費が2割を超えて減少する場合については、認定地方公共団体は、安易に認定地域再生計画を変更して整備量等を減ずるのではなく、認定地域再生計画において地域再生を図るため必要であるとした事業を実施するよう努めて達成状況評価で整理すべきであるとして、計画変更の必要はないとする運用を行っている。また、手引において、交付金を活用した認定地域再生計画の軽微な変更を行おうとする認定地方公共団体は、変更内容、変更理由等について、内閣府へ報告することとなっている。

そこで、前記816計画の計画変更の認定申請の状況をみると、図表3-10のとおり、整備量の実績が認定地域再生計画に記載されている整備量に対して2割を超えて増加しているのに計画変更の認定申請をしていないものは14計画となっていた。14計画の計画変更の認定申請を行わなかった理由をみると、計画変更に関する基準を知らなかったためとしているものが5計画(14計画の35.7%)、計画変更の認定申請を失念したためとしているものが7計画(同50.0%)となっていた。

図表3-10 認定地域再生計画の計画変更の認定申請の状況

(単位:計画)
区分 計画数 計画変更の認定申請の状況
整備量の実績が認定地域再生計画に記載されている整備量に対して2割を超えて増加しているのに計画変更の認定申請をしていない計画数 計画変更の認定申請を行わなかった理由
計画変更に関する基準を知らなかったため 計画変更の認定申請を失念したため 計画値と実績値を達成状況評価で公表すればよいと判断したため その他
認定地域再生計画 816 14 5 7 1 1
  (構成比) (100%) (35.7%) (50.0%) (7.1%) (7.1%)

認定地域再生計画の計画変更の認定申請を適時適切に行っていないものの事例を示すと次のとおりである。

<事例3-2> 認定地域再生計画の計画変更の認定申請を適時適切に行っていないもの
都道府県名 作成主体 計画名 計画期間 支援措置名 事業費(うち国の支出額)
栃木県 小山市 小山市「水と緑と大地を未来につなぐまち」自然環境再生計画 平成18~22年度 交付金(汚水処理施設整備交付金) 13億0494万余円
(5億8030万余円)
 小山市は、交付金(汚水処理施設整備交付金、総事業費13億0494万余円(うち交付金5億8030万余円))を活用することとして、公共下水道(計画延長7,300m、事業費8億7200万円(うち交付金4億3600万円))及び浄化槽(計画基数1,400基、事業費4億3294万余円(うち交付金1億4430万余円))を整備するとした地域再生計画を作成し、平成18年3月に内閣総理大臣の認定を受けている。
 同市は、計画期間の終了年度である22年度末までの公共下水道の整備量の実績(9,703m)が、認定地域再生計画に記載した整備量に対して2割を超えて増加しているのに、認定地域再生計画の計画変更の認定申請を行うことなく、事業を終了していた。
 このため、同市が18年度から22年度までに整備した公共下水道の実績整備量と同市が認定地域再生計画に記載した公共下水道の整備量の差である2,403mは、認定地域再生計画の計画変更の認定申請が適時適切に行われないまま整備されていた。
 同市によれば、計画変更の認定申請を失念していたとしている。

また、前記の816計画について、認定地域再生計画の軽微な変更の報告の状況をみると、図表3-11のとおり、整備量の実績が認定地域再生計画に記載されている整備量に対して100%を超えて120%以内となっているのに内閣府に対する報告を行っていないものは210計画、事業費の実績が同様に100%を超えて120%以内となっているのに報告を行っていないものは55計画となっていた。そして上記の210計画と55計画は25計画が重複していることから、地域再生法に基づく軽微な変更の報告を行っていないものは計240計画となっていた。これら240計画の変更の報告を行わなかった理由をみると、軽微な変更に関する基準を知らなかったためとしているものが59計画(240計画の24.5%)、軽微な変更の報告を行うことを失念したためとしているものが94計画(同39.1%)となっていた。

図表3-11 認定地域再生計画の軽微な変更の報告の状況

(単位:計画)
区分 計画数 軽微な変更の報告の状況
整備量又は事業費の実績が認定地域再生計画に記載されている整備量又は事業費に対して100%を超えて120%以内となっているのに内閣府に対する報告を行っていない計画数 軽微な変更の報告を行っていない理由
軽微な変更に関する基準を知らなかったため 軽微な変更の報告を行うことを失念したため 計画値と実績値を達成状況評価で公表すればよいと判断したため その他
認定地域再生計画 整備量 816 210 58 72 40 40
  (構成比) (100%) (27.6%) (34.2%) (19.0%) (19.0%)
事業費 816 55 7 31 8 9
  (構成比) (100%) (12.7%) (56.3%) (14.5%) (16.3%)
816 240 59 94 44 43
  (構成比) (100%) (24.5%) (39.1%) (18.3%) (17.9%)
(注)
整備量と事業費を合算した値と計が一致しないのは、整備量と事業費とで重複した計画があるためである。

(4) 認定地域再生計画における目標の設定状況及び達成状況等

ア 認定地域再生計画における目標の設定状況及び達成状況

(ア) 目標の設定状況

地域再生法等によれば、地域再生計画には、地域再生計画の目標、達成状況評価に関する事項を記載するよう努めることとされている。そして、申請マニュアル(総論)によれば、目標は、基本方針と計画の内容の整合性を勘案し、原則として定量的な値・指標を用い、地域再生計画の計画期間の満了時等に地方公共団体が効果測定を容易に実施できるよう具体的に設定することとされている。このため、認定地方公共団体は、例えば、「汚水処理施設の整備の促進(汚水処理人口普及率81.8%から97%に向上)」、「年間観光客入り込数増加(330万人から340万人)」、「市街地から病院への時間短縮(30分から20分)」等様々な目標を設定している。

そこで、調書の対象とした1,756計画のうち、認定地域再生計画の計画期間が終了している1,332計画における目標の設定状況をみると、図表4-1のとおり、設定された目標数は計3,514目標となっていた。このうち、定量的な目標は3,428目標、定性的な目標は86目標となっていた。さらに、定量的な目標について、アウトプット指標又はアウトカム指標(注7)に分類すると、アウトプット指標は355目標、アウトカム指標は3,073目標となっていた。

(注7)
アウトプット指標・アウトカム指標  「アウトプット指標」とは、事業の実施により直接発生する実績を表す指標をいい、「アウトカム指標」とは、事業の実施により発生する成果を表す指標をいう。

図表4-1 認定地域再生計画における目標の設定状況

(単位:目標)
区分 目標数 定量的な目標(B)   定性的な目標(C)
アウトプット指標(D) アウトカム指標(E)
(B)/(A) (D)/(A) (E)/(A) (C)/(A)
計画期間が終了している認定地域再生計画に設定された目標 3,514 3,428 355 3,073 86
  (構成比) (100%) (97.5%) (10.1%) (87.4%) (2.4%)
(イ) 目標の達成状況
 

内閣府は、地方公共団体から認定申請があった地域再生計画について、申請マニュアル(総論)等に基づき、地域再生計画の目標等の記載事項が適切であるかを確認した上で、その内容が認定基準に適合すると認めるときは認定を行っている。そして、地域再生法において、認定基準の一つとして、円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであることが規定されており、具体的には、基本方針において、地域再生を図るために行う事業について、事業主体が特定されているか又は特定される見込みが高いこと及び事業の実施スケジュールが明確であることとしている。 このため、認定地域再生計画に設定された目標は、地域再生計画が円滑かつ確実に実施されて達成されるものであると考えられる。

 

そこで、認定地域再生計画に設定された目標のうち、達成状況を判定することが容易である1,311計画に設定された定量的な目標3,428目標の達成状況をみると、図表4-2のとおり、達成したとしているものは1,749目標(3,428目標の51.0%)にとどまっていた。そして、交付金を記載していた816計画に設定された2,227目標のうち、達成したとしているものは602計画に設定された1,171目標(2,227目標の52.5%)、交付金以外の支援措置を記載していた495計画に設定された1,201目標のうち、目標を達成したとしているものは327計画に設定された578目標(1,201目標の48.1%)となっており、交付金以外の支援措置を記載していた計画に設定された目標の達成率は50%を下回る状況となっていた。

 

また、3,428目標について指標別に目標の達成状況をみると、アウトプット指標355目標のうち、達成したとしているものは206目標(355目標の58.0%)、アウトカム指標3,073目標のうち、達成したとしているものは1,543目標(3,073目標の50.2%)となっていた。

図表4-2 認定地域再生計画に設定された定量的な目標の達成状況

(単位:目標)
区分 計画期間が終了している認定地域再生計画に設定された定量的な目標(A) 目標の達成状況
目標を達成している(B) 目標を達成していない(C) 目標の達成状況が不明(D)
(B)/(A) (C)/(A) (D)/(A)
支援措置別 交付金 2,227 1,171 708 348
  (構成比) (100%) (52.5%) (31.7%) (15.6%)
交付金以外 1,201 578 495 128
  (構成比) (100%) (48.1%) (41.2%) (10.6%)
3,428 1,749 1,203 476
  (構成比) (100%) (51.0%) (35.0%) (13.8%)
指標別 アウトプット指標 355 206 118 31
  (構成比) (100%) (58.0%) (33.2%) (8.7%)
アウトカム指標 3,073 1,543 1,085 445
  (構成比) (100%) (50.2%) (35.3%) (14.4%)
3,428 1,749 1,203 476
  (構成比) (100%) (51.0%) (35.0%) (13.8%)

目標を達成していないとしている1,203目標の目標を達成していない理由をみると、図表4-3のとおり、交付金を記載していた計画における708目標については、関係者との調整に時間を要しているためとしているものが78目標(708目標の11.0%)となっており、このうち58目標は、道整備交付金を記載していた計画における目標であった。これらは、道路整備に当たり地権者との用地買収交渉に時間を要していたなどによるものである。また、目標の設定が適切でなかったためとしているものが25目標(同3.5%)となっていた。

交付金以外の支援措置を記載していた計画における495目標については、関係者との調整に時間を要しているためとしているものが46目標(495目標の9.2%)となっていた。

図表4-3 認定地域再生計画に設定された目標を達成していない理由

(単位:目標)
区分 目標を達成していない(A) 目標を達成していない理由
関係者との調整に時間を要しているため(B) 目標の設定が適切でなかったため(C) 住民等に対する周知が十分でなかったため(D) 事業を中止したため(E) 事業実施箇所が当初想定していた条件と異なるなどして、対策を図る必要があったため(F) 財源の確保が困難であったため(G) 事業主体が計画作成主体と異なっていて、自ら事業を推し進めることができなかったため(H) 関連事業が進捗しなかったため(I) 災害、不況等のため(J) その他(K)
(B)/(A) (C)/(A) (D)/(A) (E)/(A) (F)/(A) (G)/(A) (H)/(A) (I)/(A) (J)/(A) (K)/(A)
交付金 708 78 25 18 84 59 26 346 72
  (構成比) (100%) (11.0%) (3.5%) (2.5%) (11.8%) (8.3%) (3.6%) (48.8%) (10.1%)
交付金以外 495 46 14 13 11 51 15 59 5 218 63
  (構成比) (100%) (9.2%) (2.8%) (2.6%) (2.2%) (10.3%) (3.0%) (11.9%) (1.0%) (44.0%) (12.7%)
1,203 124 39 31 11 135 74 59 31 564 135
  (構成比) (100%) (10.3%) (3.2%) (2.5%) (0.9%) (11.2%) (6.1%) (4.9%) (2.5%) (46.8%) (11.2%)

認定地域再生計画に設定された目標を達成していないとしているものの事例を示すと次のとおりである。

<事例4-1> 関係者との調整に時間を要したため認定地域再生計画に設定された目標を達成していないとしているもの
都道府県名 作成主体 計画名 計画期間 支援措置名 事業費(うち国の支出額)
福岡県 福岡県、京都郡苅田町 苅田町“陸に海に空に”未来にはばたく街づくり計画 平成18~24年度(当初18~22年度) 交付金(道整備交付金) 29億4650万円
(14億6080万円)
 福岡県及び苅田町は、道整備交付金を活用して町道の整備事業等を実施することとした地域再生計画を作成し、内閣総理大臣は、当該地域再生計画が円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであるなどとして認定している。
 検査したところ、同町では、関係者との調整に時間を要したため、認定地域再生計画に基づく町道の整備が遅延し、認定地域再生計画を変更して計画期間を2年間延長してもなお完了していなかった。このため、認定地域再生計画に設定された目標(拠点施設へのアクセス20%改善等)は達成していなかった。
 同町によれば、町道の整備は必要であるとしており、計画期間終了後の平成25年度以降は、町の単独費で引き続き町道の整備を実施している。

イ 地域再生制度における国と地方公共団体との連携に関する課題等

前記のとおり、地域再生制度は、地域が行う地域再生のための自主的・自立的な取組を総合的かつ効果的に支援するために、国が認定地域再生計画に基づく事業に対して特別な措置を講ずる制度であり、認定地域再生計画に支援措置が記載されている場合、当該支援措置が適用されることとなる。

 

そして、地域再生法によれば、国は地域再生に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有するとされ、また、国は関係行政機関の連携の強化を図るとともに、地方公共団体等と相互に連携し、及び協働するよう努めなければならないとされている。

一方、会計実地検査を行った一部の認定地方公共団体においては、地域再生法に基づく事業の実施に当たり、地域再生制度に関する課題、地方公共団体の事情に係る課題等を抱えており、これらの課題に対して様々な意見や要望を持っていた。

そこで、地方公共団体における地域再生法に基づく事業の実施に関する課題、意見、要望等について、前記の認定地方公共団体925団体及び非認定市町村733団体に対して調査したところ、認定地方公共団体166団体及び非認定市町村60団体、計226団体から回答があった。226団体から回答された課題等についてみると、図表4-4のとおり、様々な内容となっていた。

図表4-4 地域再生法に基づく事業の実施に関する地方公共団体の主な意見、要望等

(単位:件)
課題 項目 主な意見、要望等 件数
認定地方公共団体 非認定市町村
地域再生制度に関する課題 手続の効率化等 ・簡素化した使いやすい制度にしてほしい。
・事業実施内容の変更が柔軟にできない。
38 9 47
事務手続等の簡素化 ・地域再生計画の作成、協議会の設立等の手続が煩雑なため簡素化してほしい。
・地域再生計画の作成に手間がかかるので記載を簡素化してほしい。
23 8 31
支援措置の充実 ・活用したい支援措置が少ないので支援措置数を増やしてほしい。
・地域再生計画に基づく支援措置が少なく、計画を作成するメリットが少ない。
・財政支援措置を充実してほしい。
18 10 28
省庁との調整 ・地域再生計画を作成する際、調整内容や関係機関が多く認定までに時間を要している。 15 15
予算の確保 ・計画期間中の予算は確保してほしい。
・委託費の交付時期が遅く、一時借入れして対応したので、もっと早く委託費を交付してほしい。
11 1 12
交付金事業の実施に関する課題 制度の仕組み ・汚水処理施設整備交付金において農業集落排水事業と浄化槽事業で国庫補助率が違うため他施設充当が難しい。
・交付金制度はありがたいが、計画策定が煩雑で手が回らない。
31 9 40
補助率のかさ上げ等 ・交付金の国の負担割合を上げてもらいたい。
・計画期間中は交付金が廃止にならないように予算は確保していただきたい。
11 11
地方公共団体の事情に係る課題 内部の連携等 ・地方公共団体の内部の連携を取ることが難しい。 6 2 8
人材不足 ・専門的な知識を持つ人材が不足している。
・小規模な地方公共団体にこそ必要な制度だと思われるが、人材不足により地域再生計画の作成から認定までの事務を行うことができない地方公共団体が多いと思われる。
2 2 4
地域再生制度に係る情報収集等に関する課題 説明会開催等 ・地域再生制度周知のための説明会、研修会等を開催してほしい。
・新たな支援措置の提案について、どの程度まで提案してよいか分からず提案しにくい。
16 7 23
情報提供等 ・成功事例等を情報提供してほしい。
・他の地方公共団体の活用状況等の情報を得ることができる機会を設けてほしい。
10 6 16
創生法との関連に係る課題 ・地方版総合戦略と地域再生計画とを別々に作成しなければならない状況を改善してほしい。
・地域再生制度は創生法に基づく地方創生と重複する部分が多いと思われるため、より利用しやすくなるように考え方の整理と説明をお願いしたい。
5 11 16
小計   186 65 251
制度の良さ ・計画期間で成果が期待できる制度であることから制度の継続を希望する。
・交付金で年度間融通ができたことを非常に良かったと感じている。予算の満額執行に満たない場合でも、事業の進捗状況に応じて重点的な施工ができた。
・地域再生制度は地方公共団体の自主的・自立的な取組を支援するものであり、市町村にとって大変ありがたい有益な制度である。
50 2 52
合計   236 67 3031
(注)
複数回答である。

このうち、地域再生制度に関する課題が数多く挙げられており、中でも「簡素化した使いやすい制度にしてほしい。」等の手続の効率化等に関する意見等が計47件となっていた。また、「活用したい支援措置が少ないので支援措置数を増やしてほしい。」等の支援措置の充実に関する意見等が計28件となっていた。

交付金事業の実施に関する課題では、「汚水処理施設整備交付金において農業集落排水事業と浄化槽事業で国庫補助率が違うため他施設充当が難しい。」等の制度の仕組みに関する意見等が計40件となっていた。

地方公共団体の事情に係る課題では、「地方公共団体の内部の連携を取ることが難しい。」等の内部の連携等に関する意見等が計8件、「専門的な知識を持つ人材が不足している。」等の人材不足に関する意見等が計4件、合計12件となっていた。

また、地域再生制度に係る情報収集等に関する課題については、「地域再生制度周知のための説明会、研修会等を開催してほしい。」、「新たな支援措置の提案について、どの程度まで提案してよいか分からず提案しにくい。」等の説明会開催等に関する意見等が計23件、「成功事例等を情報提供してほしい。」等の情報提供等に関する意見等が計16件、合計39件となっていた。このうち非認定市町村からの意見等が計13件となっていた。

そして、創生法との関連に係る課題については、「地方版総合戦略と地域再生計画とを別々に作成しなければならない状況を改善してほしい。」等の意見等が計16件となっていて、このうち非認定市町村からの意見等が計11件となっていた。

上記のとおり、地方公共団体は、地域再生法に基づく事業の実施に関して様々な課題等を抱えていることから、国は、地方公共団体との連携を強化して、地方公共団体の地域再生のための取組に対する支援を効果的なものとすることが重要となる。