独立行政法人は、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体に委ねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるものを効率的かつ効果的に行わせるために設立される法人であり、平成27年3月末現在における独立行政法人の数は98法人となっている。
また、国立大学法人及び大学共同利用機関法人(以下、これらを合わせて「国立大学法人等」という。)は、大学の教育研究に対する国民の要請に応えるとともに我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図ることを目的として設立される法人であり、27年3月末現在における国立大学法人等の数は、国立大学法人86法人及び大学共同利用機関法人4法人の計90法人となっている。
独立行政法人及び国立大学法人等は、業務運営の財源として、各法人の自己収入のほか、運営費交付金を充てており、特定の業務については、補助金、借入金等を充てている。自己収入には、授業料収入、病院収入等の各種事業収入や国、民間企業等からの研究の受託等による受託収入、寄附金の受入れによる収入等の外部資金等があり、25事業年度(以下、事業年度を「年度」という。)の決算報告書では、独立行政法人全98法人及び国立大学法人等全90法人において自己収入が計上されている。また、自己収入で賄えない部分の金額については、原則として、国が財源措置を行うこととされており、25年度に運営費交付金の交付を受けている法人は、独立行政法人84法人、国立大学法人等全90法人となっている。
独立行政法人に交付される運営費交付金の額の算定は、毎年度、自己収入が想定される場合は、必要と見込まれる経費から自己収入の見込額を控除して行うことになっており、控除する自己収入については、独立行政法人ごとに異なっているが、原則として、利息収入等の恒常的に獲得が想定される自己収入を控除対象とすることになっている。一方、国立大学法人等に交付される運営費交付金のうち、例えば、学生数等の客観的な指標に基づいて各大学共通の方式により算出される一般運営費交付金の額の算定は、毎年度、必要と見込まれる経費から、大学の入学定員等に基づく入学料及び授業料の自己収入の見込額を控除するなどして行うことになっているが、受託収入、寄附金収入等の外部資金については、控除対象としない取扱いとなっている。
独立行政法人の自己収入については、「独立行政法人整理合理化計画」(平成19年12月閣議決定)等において、寄附金募集の拡大に向けた取組の強化等自己収入の増大に向けた取組が推進されるなどし、また、「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(平成25年12月閣議決定)において、自己収入の増加が見込まれる際の運営費交付金の額の算定方針が示されている。一方、国立大学法人等については、法人が獲得した自己収入については、前記のとおり、法人の経営努力に一定の配慮がなされる形で運用されている。また、文部科学省は、「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」(平成27年6月文部科学大臣決定)等において、財源の多様化等による自己収入の増加を図ることなどとしている。
独立行政法人及び国立大学法人等は、前記のとおり公共的な性格を有し、個別法等又は国立大学法人法に規定されている各法人の目的に応じた業務運営を行っており、自己収入はその目的を達成するために重要な財源となっている。そして、多くの法人は、自己収入のほか、運営費交付金等を充てて業務運営を行っているが、近年の我が国の厳しい財政状況の中、各法人に交付される運営費交付金の額は全体として減少してきており、自己収入を確保することはますます重要となっている。
また、独立行政法人及び国立大学法人等は、前記の閣議決定等において、自主性・自律性をより発揮した業務運営による行政サービスや教育研究の質の向上等の実現が求められており、各法人の業務運営の財源の多様化等に資するために、外部資金を獲得するなどの自己収入の拡大に向けた取組は重要なものと位置付けられている。
そこで、本院は、これらの状況を踏まえて、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、独立行政法人及び国立大学法人等において、同種の事務・事業を行う法人に特有の自己収入及び各法人に共通性のある自己収入について、各法人の状況はどのようになっているか、自己収入の確保等に向けてどのような取組が行われているか、独立行政法人と国立大学法人等との間で相互に参考となる取組はないかなどに着眼して検査した。
27年3月末現在における独立行政法人全98法人及び国立大学法人等全90法人を対象とし、財務諸表等及び提出を受けた調書等を在庁して分析するとともに、独立行政法人28法人及び国立大学法人等22法人に対して会計実地検査を行った。
(以下、各法人の名称中、「独立行政法人」、「国立大学法人」又は「大学共同利用機関法人」は記載を省略した。)
21年度から25年度までの独立行政法人全体の収入額の合計は307兆7171億余円、国立大学法人等全体の収入額の合計は16兆1575億余円となっており、25年度における独立行政法人全体の収入額の合計は58兆4347億余円、国立大学法人等全体の収入額の合計は3兆4389億余円となっている。
21年度から25年度までの独立行政法人全体の自己収入の合計は188兆9884億余円、国立大学法人等全体の自己収入の合計は7兆9408億余円となっている。25年度における自己収入は独立行政法人全体で合計37兆2419億余円、国立大学法人等全体で合計1兆6988億余円、収入額に占める自己収入の割合は、それぞれ63.7%及び49.4%となっている。
独立行政法人について、国立大学法人等との間で共通性が見られる事務・事業を類型化し、当該事務・事業を実施している独立行政法人を三つの業務類型に分類すると、次のとおりである。なお、複数の業務類型に重複して分類されている独立行政法人がある。
① 特定の職業人等の教育・養成等を目的として学校等を設置して文教研修業務を行う独立行政法人(以下「文教研修型」という。)
9法人(注1)
② 科学技術に関する試験、研究、開発等の研究開発業務を自ら行う独立行政法人(以下「研究開発型」という。)
34法人(注2)
③ 病院等を設置して医療診療業務を行う独立行政法人(以下「医療診療型」という。)
9法人(注3)
そして、上記の①から③までのいずれの業務類型にも該当しない独立行政法人(以下「その他型」という。)が56法人(注4)ある。
一方、国立大学法人等を、附属病院の設置の有無により二つの業務類型に分類すると、①附属病院を設置せず教育研究業務のみを行っている国立大学法人及び研究業務のみを行っている大学共同利用機関法人(以下、これらを合わせて「国大教育研究型」という。)は48法人(注5)、②教育研究業務に必要な機関として附属病院を設置している国立大学法人(以下「国大病院設置型」という。)は42法人(注6)となる。
25年度における業務類型ごとの収入額についてみると、文教研修型は9法人計3兆8518億余円、研究開発型は34法人計3兆2029億余円、医療診療型は9法人計1兆5607億余円となっている。ただし、文教研修型及び研究開発型については当該業務類型の業務以外の業務に係る収入額が多額となっている法人を除くと、文教研修型は6法人計2819億余円、研究開発型は33法人計1兆3510億余円となっている。また、国大教育研究型は48法人計5899億余円、国大病院設置型は42法人計2兆8489億余円となっている。そして、25年度における収入額に占める自己収入の割合は、特に、医療診療型及び国大病院設置型においてその割合が高くなっている。
独立行政法人の各業務類型に特有の自己収入としては、文教研修型については授業料収入、入学料収入及び検定料収入(以下、これらを合わせて「授業料等収入」という。)が、研究開発型については受託研究収入、受託事業収入及び共同研究収入(以下、これらを合わせて「受託研究等収入」という。)が、また、医療診療型については病院収入が挙げられる。同様に、国立大学法人等については授業料等収入及び受託研究等収入が、そのうち国大病院設置型については、それらに加えて病院収入が挙げられる。また、各独立行政法人においては、各法人固有の業務に係る自己収入があるほか、業務類型にかかわらず、独立行政法人及び国立大学法人等に共通性のある自己収入として、自動販売機の設置による収入等の施設の貸付け等に係る収入、特許権に係る収入、寄附金収入、余裕金の運用に係る収入等がある。
文教研修型の独立行政法人9法人及び国立大学法人全86法人は、それぞれの法人の目的を達成するために学校等を設置して、授業料、入学料及び検定料(以下「授業料等」という。)を徴収しており、25年度における授業料等収入は、それぞれ独立行政法人が計215億余円、国立大学法人が計3345億余円となっている。
上記の法人においては、現状においては定員を充足している法人が多数を占めるものの、今後、入学者数が減少して授業料収入が減少することも想定されることから、学生数の確保等に資する取組の状況についてみたところ、入学希望者の増加を図るための取組はほとんどの法人において行われており、各法人の実情を踏まえた独自の取組を実施している法人も見受けられる。また、授業料等の金額については、積極的な検討はされていない状況が見受けられる。
国立高等専門学校機構及び国立大学法人全86法人において年度中に放棄された債権を含めた授業料に係る債権の状況は、21年度から25年度までの平均で計7億余円となっている。そして、授業料の未納防止対策や授業料に係る債権の督促等の実施状況をみると、国立高等専門学校機構においては、納付義務等の説明、督促等共に保護者(保証人)に対しての実施率が高いが、国立大学法人においては、納付義務等の説明については学生に対する実施率が高く、授業料に係る債権が発生した以降では保護者(保証人)に対する督促の実施率が高くなっている。
独立行政法人及び国立大学法人等は、民間企業等との間で受託研究、受託事業及び共同研究(以下「受託研究等」という。)を実施している。文教研修型、研究開発型及び医療診療型のいずれかの業務類型に該当する独立行政法人42法人における25年度の受託研究等に係る契約件数は11,890件、25年度の契約金額は2328億余円となっている。また、国立大学法人等全90法人においては、同様に、32,410件、1938億余円となっている。
中期計画等における目標の設定、委員会の設置、対外的な情報発信等に係る取組の検討等を行っている法人の割合は、国立大学法人等の方が高くなっている。
民間企業の委託を受けて締結する受託研究契約及び受託事業契約においては、委託者への請求金額において研究担当者等の常勤職員の人件費を算定していなかったり、受託研究契約に係る標準的な間接経費率の見直しを行っていなかったり、契約履行のための支出額が契約金額を上回る場合に自らがその費用を負担したりしている法人が見受けられる。
共同研究の結果取得された共有に係る特許権等から生ずる特許権等収入の分配割合を、共有に係る当該特許権等の権利の帰属割合によるとしている法人が多く見受けられるが、権利の帰属割合を上回る分配割合としている法人や権利の帰属割合を下回る分配割合としている法人も見受けられる。また、一部の法人においては、定額の一時金のみとする場合もあり、共有に係る特許権等から想定を上回る特許権等収入が生じた場合にはその利益を十分に享受できない可能性がある。
医療診療型の独立行政法人9法人及び国大病院設置型の国立大学法人42法人における25年度の病院収益は、独立行政法人が計1兆2464億余円、国立大学法人が計9516億余円となっている。
病院施設の稼働状況を測る上で有用と考えられる病床利用率等の指標に係る目標値の設定状況をみたところ、目標値を設定していない病院も一部見受けられる。また、各法人で委員会等を設置して検討するなど病院収入の確保や増加につながる取組を行っている。
患者に対する未収診療費に係る債権(以下「未収診療費債権」という。)の残高は、25年度末において独立行政法人が計102億余円、国立大学法人が計90億余円となっており、債権の発生から1年以上が経過している債権が50%以上を占める法人も見受けられる。また、債権管理マニュアル等に規定している未収診療費債権の回収方法に法人間でばらつきが見受けられたり、時効の中断を図るための債権の保全措置を実施していない病院が見受けられたりなどしている。
保険診療を行った医療機関では、診療報酬明細書又は調剤報酬明細書(以下「レセプト」という。)の医師による点検が未了であるなどの場合に、社会保険診療報酬支払基金等(以下「基金等」という。)への請求を保留するレセプト(以下「保留レセプト」という。)が生じたり、レセプトの記載内容に誤りや不備があることが判明した場合に医療機関に返戻されるレセプト(以下「返戻レセプト」という。)が生じたりすることがあり、そのような場合、診療報酬の入金が遅れることになる。保留レセプト及び返戻レセプトに係る未処理額については、各病院の機能・役割や診療内容の相違による影響に留意する必要があるが、21年度から25年度までの年度末残高は、それぞれ計60億円前後及び計190億円前後で推移しており、25年度末におけるレセプト未処理額のうち23年度以前に発生したレセプトの割合は、それぞれ0.2%及び0.8%である。さらに、レセプトの処理に関しては、医師に確認等を依頼しているが実行されないままになっているなど事務処理の遅延に起因して未処理の状態が長期化しているものも見受けられる。
また、基金等におけるレセプトの審査の結果、過剰診療と判断されるなどした場合におけるレセプトの査定率(診療報酬請求額に対する査定額の割合)は、審査基準の厳しい高難度で複雑な医療を多く実施した場合には上昇の一因となることがあるが、25年度の独立行政法人及び国立大学法人における査定率はそれぞれ0.36%及び0.59%で、全体として年々上昇傾向にある。
独立行政法人51法人及び国立大学法人等89法人は、業者に敷地を貸し付けたり、使用許可(以下、敷地の貸付けと使用許可を合わせて「敷地貸付け等」という。)をしたりするなどして食堂又は売店を設置しており、25年度の貸付料等収入は、独立行政法人で計7億余円、国立大学法人等で計4億余円となっている。このうち、外部の利用者が多数見込まれる法人では、業者に有償で敷地貸付け等をする契約の割合が高いが、有償で参入する業者がいないことや、利用者に対する安価なサービスの提供を条件としていることなどの理由から無償で敷地貸付け等をする契約も見受けられる。
独立行政法人72法人及び国立大学法人等全90法人は自動販売機を設置しており、25年度の貸付料等収入はいずれも計1億余円、手数料収入はいずれも計5億余円で、手数料収入が貸付料等収入を大きく上回っているが、競争性のない契約方式を採用して、貸付料等を無償とし、かつ手数料を得ていない契約も多く見受けられる。
独立行政法人59法人及び国立大学法人等88法人は業務運営上必要な駐車場を設置しており、25年度においてそれぞれ計26億余円及び計27億余円の収入を得ているが、有料駐車場の割合はそれぞれ13.5%及び24.9%であり、このうち、医療診療型の独立行政法人の駐車場及び国大病院設置型の国立大学法人における病院駐車場についてはそれぞれ45.7%及び81.0%と上記の割合より高くなっている。
なお、京都大学において、職員等駐車場の駐車整理業務により生ずる利益を享受できるようにするなどの適切な処置を執る必要があると認められる事態が見受けられたことから、本院は、27年12月に、会計検査院法第34条の規定により、「職員等駐車場に係る駐車整理業務の委託契約の見直し等について」として、京都大学学長に対して是正改善の処置を求めた(意見を表示し又は処置を要求した事項参照)。
独立行政法人45法人及び国立大学法人等89法人は職員宿舎を保有しており、25年度の宿舎使用料収入は、それぞれ計40億余円及び計31億余円となっている。統一的な宿舎使用料見直しの取組が行われていない国立大学法人等では、従前の宿舎使用料のままとなっているなどの法人が見受けられる。
独立行政法人16法人及び国立大学法人等41法人では、法人の業務内容等の広報等のために公開施設を設置している。このうち独立行政法人7法人で計20施設(全施設の39.2%)、国立大学法人等11法人で計16施設(同21.9%)を有料施設として運営しており、それぞれ25年度の入場料収入は、計21億余円及び計2億余円となっている。そして、有料施設では、当該施設の維持及び管理に必要な経費の一部に充当するために入場料を徴収する取組が見受けられる。
独立行政法人38法人及び国立大学法人等79法人は、受託研究等により研究用機器を取得している。取得価額500万円以上の研究用機器に係る25年度における民間企業に対する貸付額は、独立行政法人3法人で計1278万余円、国立大学法人1法人で計13万余円であり、一部の法人では、有償で譲渡を行っている事例も見受けられる。
独立行政法人55法人及び国立大学法人等83法人は、21年度から25年度までの間に特許権を保有するなどしており、25年度における特許権収入は、それぞれ計17億余円及び計18億余円、特許料等の費用はそれぞれ計30億余円及び計26億余円となっている。そして、25年度において特許権収入が特許料等の費用を上回っている法人は独立行政法人12法人及び国立大学法人等10法人となっている。
特許権収入が特許料等の費用を大きく上回っていた10法人では、事業性を重視した特許権取得を推進するなどの取組を行っている。また、特許権の保有の見直しについては、独立行政法人15法人及び国立大学法人等38法人では登録から3年以内に行うこととしているが、見直しまでの期間を設定していない法人も独立行政法人30法人及び国立大学法人等35法人見受けられる。
独立行政法人59法人及び国立大学法人等全90法人は、21年度から25年度までの間に寄附金の受入実績があり、25年度の受入額は独立行政法人で計94億余円、国立大学法人等で計758億余円となっており、寄附金の受入実績のある法人では、寄附金獲得のための様々な取組が見受けられる。
独立行政法人62法人及び国立大学法人等89法人は、25年度において余裕金を運用しており、運用に係る収入はそれぞれ計344億余円及び計19億余円となっている。余裕金の運用を行っていない独立行政法人34法人の中には、運用原資平均が10億円以上の法人が14法人、余裕金の運用を行う場合の権限等を定めた要領等を定めていない法人が24法人見受けられる。
文教研修型の独立行政法人9法人及び国立大学法人全86法人は在学生及び卒業生等に対して各種証明書等を発行しているが、その発行に当たり発行手数料を徴収している法人は独立行政法人4法人及び国立大学法人41法人となっている。
独立行政法人33法人及び国立大学法人等73法人は、事業を実施した結果産出された農産物等の売却等により収入を得ている。また、法人のブランドを利用した商品の販売、法人のホームページ等への広告掲載等により収入を得ている法人が見受けられる。
独立行政法人及び国立大学法人等の自己収入の確保等に向けた取組の状況について検査したところ次のような状況が見受けられた。
25年度の独立行政法人全体及び国立大学法人等全体の収入額は、計58兆4347億余円及び計3兆4389億余円であり、自己収入は独立行政法人全体で計37兆2419億余円、国立大学法人等全体で計1兆6988億余円となっている。
(ア) 授業料等収入については、入学希望者の増加を図るための取組はほとんどの法人で行われており、各法人の実情を踏まえた独自の取組を実施している法人も見受けられる。国立高等専門学校機構及び国立大学法人全86法人における年度中に放棄された債権を含めた授業料に係る債権の発生状況は、21年度から25年度までの平均で計7億余円となっている。
(イ) 受託研究等収入については、文教研修型、研究開発型及び医療診療型のいずれかの業務類型に該当する独立行政法人42法人及び国立大学法人等全90法人において民間企業の委託を受けて締結する受託研究契約及び受託事業契約では、委託者への請求金額において研究担当者等の常勤職員の人件費を算定していない法人等が見受けられる。また、共同研究で取得された共有に係る特許権等収入の分配割合については、一部の法人において、権利の帰属割合を下回る割合としたり、定額の一時金を受け取るのみとしたりする状況が見受けられる。
(ウ) 病院収入については、医療診療型の独立行政法人9法人及び国大病院設置型の国立大学法人42法人において、病院収入の確保や増加につながる取組を行っている。一方、25年度末における未収診療費債権の残高のうち、債権の発生から1年以上が経過している債権が50%以上を占める法人も見受けられる。また、レセプトの処理に関しては、事務処理の遅延に起因して未処理の状態が長期化しているものも見受けられる。
(ア) 施設の貸付け等に係る収入については、独立行政法人51法人及び国立大学法人等89法人では食堂又は売店を設置して貸付料等収入を得ており、無償で敷地貸付け等をする契約も見受けられる。また、独立行政法人72法人及び国立大学法人等全90法人では自動販売機の設置による貸付料等収入や手数料収入を得ているが、競争性のない契約方式を採用して、貸付料等を無償とし、かつ手数料を得ていない契約も多く見受けられる。独立行政法人59法人及び国立大学法人等88法人では業務運営上必要な駐車場を設置して収入を得ており、有料駐車場の割合はそれぞれ13.5%及び24.9%である。
(イ) 公開施設に係る入場料収入については、独立行政法人7法人及び国立大学法人等11法人で公開施設に係る入場料収入を得ている。
(ウ) 受託研究等により取得した研究用機器の貸付け等に係る収入については、独立行政法人38法人及び国立大学法人等79法人において、受託研究等により研究用機器を取得しており、一部の法人では有償で譲渡を行っている事例も見受けられる。
(エ) 各法人が保有する特許権については、独立行政法人55法人及び国立大学法人等83法人のうち、特許権収入が特許料等の費用を上回っている法人は独立行政法人12法人及び国立大学法人等10法人であり、特許権の保有の見直しを行うまでの期間を設定していない法人も見受けられる。
(オ) 寄附金に係る収入については、独立行政法人59法人及び国立大学法人等全90法人に寄附金の受入実績があり、これらの法人において、寄附金獲得のための様々な取組が見受けられる。
(カ) 余裕金の運用に係る収入については、独立行政法人62法人及び国立大学法人等89法人は、25年度において余裕金を運用しており、余裕金の運用を行っていない独立行政法人の中には、運用原資平均が10億円以上の法人等が見受けられる。
(キ) 文教研修型の独立行政法人9法人及び国立大学法人全86法人は、各種証明書等を発行しており、その中には、発行手数料を徴収している法人が見受けられる。また、事業を実施した結果産出された農産物等の売却等により収入を得ている法人が見受けられる。
独立行政法人及び国立大学法人等は、公共的な性格を有し、各法人の目的に応じた業務運営を行っており、自己収入は、その目的を達成するために重要な財源となっている。
そして、多くの法人は、自己収入のほか、運営費交付金等を充てて業務運営を行っているが、近年の我が国の厳しい財政状況の中、各法人に交付される運営費交付金の額は全体として減少してきており、自己収入を確保することはますます重要となっている。
また、独立行政法人及び国立大学法人等は、自主性・自律性をより発揮した業務運営により行政サービスや教育研究の質の向上等の実現が求められており、各法人の業務運営の財源の多様化等に資するために、外部資金を獲得するなどの自己収入の拡大に向けた取組は重要なものと位置付けられている。
そして、前記のとおり、各法人における自己収入の確保等に向けた取組の状況は様々であり、他の法人において参考とすべき事例も見受けられた。
したがって、以上の検査の状況を踏まえ、自己収入の確保等に向けた取組が効果的、効率的に行われるよう、独立行政法人及び国立大学法人等においては、他法人の取組を参考にするとともに、次の点に留意することが必要である。
また、共有に係る特許権等の実施により生ずる特許権等収入の分配について、契約相手方と協議した上で、法人の貢献度等に見合った収入の分配が見込まれるような契約内容を検討すること
さらに、保留レセプト及び返戻レセプトに係る未処理額については、その改善のために各病院内において定期的に注意喚起を行うなど組織的な取組を強化していくこと、また、診療報酬請求額に対するレセプトの査定率の引下げは収入の増加要因となることから、事務手続等に改善の余地がある場合には、引下げに向けた定量的な目標の設定等の取組を実施することにより、診療報酬請求事務の適切な実施を更に図ること
本院としては、独立行政法人及び国立大学法人等の自己収入の確保等に向けた取組の状況について、今後とも多角的な観点から引き続き注視していくこととする。