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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書
  • 平成28年4月

原子力災害対策に係る施設等の整備等の状況について


4 所見

(1)検査の状況の概要

23年原発事故後、原子力防災の体制が見直され、原子力災害対策の内容が拡充されるとともに、原子力災害対策重点区域が広がったことを受けて、原子力災害対策を実施する立地道県等に対する国の財政支援の規模が増大している。

そして、九州電力株式会社川内原子力発電所が27年8月に再稼働し、他の原子力発電所についても順次再稼働又は再稼働に向けた適合性審査が行われている状況において、原子力発電所における緊急事態により生ずる被害から国民の生命及び財産を守るために原子力災害対策を適切に実施することは、政府及び立地道県等における重要な課題となっている。

そこで、原子力災害対策に係る施設等の整備等について、立地道県等に対する国の財政支援等の状況や立地道県等における地域防災計画(原子力災害対策編)の作成状況等はどのようになっているか、オフサイトセンターの整備や一時退避施設等の放射線防護対策、防災資機材等の整備等は適切に行われているかなどに着眼して検査したところ、次のような状況が見受けられた。

ア 立地道県等が行う原子力災害対策に係る施設等の整備等に対する国の財政支援等の状況

(ア)原子力災害対策に係る施設等の整備等に対する国の財政支援の状況

原子力災害対策に係る施設等の整備等に対する交付金及び補助金の予算額の推移をみると、23年原発事故後にUPZの概念が導入されて立地道県等の総数が増えたことや一時退避施設等に対する放射線防護対策を行うことにしたことなどに伴い、24年度以降増大している。

24年度から26年度までの上記の交付金及び補助金の合計は、歳出予算額が計786億余円であるのに対して、支出済歳出額が計475億余円になっており、不用額が計137億余円になっていた。

また、上記の交付金及び補助金のうち、立地道県及び隣接府県である21道府県に係る交付額は、計468億余円となっている(5019_3_1_1リンク参照)。

(イ)地域防災計画(原子力災害対策編)の作成等に対する支援

内閣府は、地域原子力防災協議会を設置して、関係省庁と共に、原子力災害対策の継続的な充実及び強化を実現するための取組を行っており、25年9月の設置以降27年12月末までの各地域原子力防災協議会の会議の開催状況についてみると、最も開催回数が多い福井エリア地域原子力防災協議会は20回開催されている一方で、開催回数が2回や3回の地域もあった。

また、原子力防災会議における緊急時対応の了承等の状況をみると、13地域のうち、27年12月末までに福井エリア(高浜)、伊方、川内各地域について緊急時対応の了承が行われている。

そして、各地域における原子力発電所の原子力総合防災訓練の直近の実施状況をみると、13地域のうち、23年原発事故後は志賀、伊方、川内各地域において実施されている(5019_3_1_2リンク参照)。

イ 立地道県等における地域防災計画(原子力災害対策編)等の作成及び修正の状況

原災指針は、24年10月の決定以降、27年12月末までに計5回の改正が行われており、原災指針を補足するマニュアル等にも、複数回の修正が行われているものがある。

一方、地域防災計画(原子力災害対策編)を作成済みとしている130市町村について、28年2月20日現在における同計画の直近の修正の時期をみると、25年中が27市町村、26年中が36市町村、27年以降が67市町村となっている(5019_3_2リンク参照)。

ウ オフサイトセンターの整備状況

(ア)立地状況等

オフサイトセンターの立地要件については、内閣府令等により23年原発事故後の検討を踏まえて原子力事業所との距離に係る具体的な要件が示されているが、27年9月30日までは従前の例によるとする経過措置が規定されている。立地要件を満たすようにするために、3か所は27年9月末までに新築移転等を完了しているが、1か所については経過措置期限を越えて移転工事中でしゅん工予定が28年3月末となっている。また、各オフサイトセンターにおいてヘリポートの夜間離発着のための照明設備等の防災資機材の整備を行っているが、1か所において訓練の実績がないなどの事態が見受けられた(5019_3_3_1リンク参照)。

(イ)建屋構造及び放射線防護対策の状況

オフサイトセンターの建屋は気密性を高め、フィルターにより放射性物質を遮断する機能を具備することとされており、このための工事が各オフサイトセンターにおいて行われている。そして、フィルターにより捕集することができない放射性希ガスの監視については、サンプリング装置とガスモニタを設置するなどの対応が必要であるとされている。しかし、上記装置の設置を完了しているオフサイトセンターは1か所にとどまっており、その他のオフサイトセンターについては今後整備する予定であるとしている(5019_3_3_2リンク参照)。

(ウ)非常用電源装置等の整備状況

ガイドラインによれば、複合災害への対応策として無停電電源装置や非常用電源装置を設置することとされており、非常用電源装置については従来おおむね3日間稼働することとされていたが、ガイドラインを改定することとした26年6月以降は、緊急時における燃料優先供給協定等において担保されている場合を除き、おおむね1週間稼働するための燃料の備蓄を行うこととされた。オフサイトセンターの機能維持のための非常用電源装置等の整備状況についてみると、原則どおりおおむね1週間稼働するために必要な燃料を備蓄する設備が導入されているオフサイトセンターは4か所であり、増設工事中としているものが7か所、増設工事を行わずに緊急時における燃料優先供給協定を地元の石油製品を販売する者で組織する団体等との間で締結するなどの措置により対応することとしているものが3か所となっていた(5019_3_3_3リンク参照)。

(エ)代替オフサイトセンターの整備状況

内閣府令等によれば、代替オフサイトセンターは原子力事業所との距離が30km以上でオフサイトセンターからの陸路による移動が可能であり、かつ、原子力事業所からオフサイトセンターの方向とは年間の風向きを考慮して異なる場所に複数設置することとされている。そして、27年9月30日までの間は従前の例によることとする経過措置が認められているが、経過措置期限経過後も2か所目の代替オフサイトセンターの設置が完了していないオフサイトセンターが5か所、30km未満に立地する代替オフサイトセンター4か所のうち必要とされる放射線防護対策が行われていないものが2か所となっている。また、設置済みの延べ25か所の代替オフサイトセンターのうち、年間の風向きを考慮して異なる場所でなくオフサイトセンターと同一方向に設置されているものが2か所あったが、これらについて、内閣府は、方向が大きく異ならなくても距離が異なることなどを考慮してその機能は十分に確保されるため、内閣府令に定める要件は満たされているとしている(5019_3_3_4リンク参照)。

エ 一時退避施設等の放射線防護対策事業の実施状況

(ア)補助事業の概況及び事業の実施状況

一時退避施設等の放射線防護対策事業については、24年度の一般会計補正予算から事業が開始され、26年6月に実施された行政事業レビュー公開プロセスを踏まえて27年2月に決定された新補助要綱には旧補助要綱に規定されていなかった補助対象施設の要件等が規定されるなどしている。27年12月末までの一時退避施設等140か所に係る事業費は25年度44億余円、26年度163億余円、27年度38億余円、計246億余円となっている。

施設の種類別では特別養護老人ホーム等の社会福祉施設が60か所と最も多くなっており、民間・公共の別では公共施設が86か所と民間施設に比べて多くなっている(5019_3_4_1リンク参照)。

(イ)一時退避施設等が備えている機能の状況

一時退避施設等140か所が備えている機能の状況について整理すると、原子力発電所からの距離の状況は10kmを超え30km以下のものが57か所と最も多くなっている。

耐震性能についてはいずれの施設も要件とされている耐震基準に適合する耐震性能を有することが確認されている施設となっており、耐津波性能についてはいずれの施設も想定される浸水高よりも上層階を放射線防護区画としている施設となっていた。

建屋構造については、鉄筋コンクリート造が120か所となっていた。そして、放射線遮蔽能力をコンクリート壁と比較する必要性の有無について検討を要すると考えられる構造の施設が7か所、車いすを利用する要配慮者等が利用することを想定しているのに、エレベーターが設置されていない建屋の2階以上を放射線防護区画としているため、緊急時に速やかな一時退避を行うに当たって、避難行動の方法等について工夫を要すると考えられる施設が3か所見受けられた。

そして、利用者の想定は「入所者等」としているものが71か所となっているほか、収容人員数は100人以上の規模のものが69か所と最も多くなっていた。

屋内退避等期間については7日間としている施設が80か所と最も多かった。また、フィルターの連続使用可能期間及び非常用電源装置の連続稼働日数は原則として屋内退避等期間を上回っている必要があるが、下回っている施設が59か所見受けられた。

陽圧化工事の実施に当たって差圧をどのように設定すべきかなどといった点についてはOFC参考資料において示されていない。そこで、検査対象とした140か所の一時退避施設等に設置された陽圧化設備136台の実測差圧の状況について整理したところ、全体的に大きなばらつきがある状況となっていた。さらに、施設の建物の壁に生ずる風圧と実測差圧との関係を検証するための試算を行うとともに各施設の実測差圧の状況を道府県別に整理したところ、いずれの道府県についても、全ての施設の実測差圧が年間平均風速から求めた風圧を上回る計算結果となった。また、多くの施設の実測差圧が「20Pa以上40Pa未満」の前後に集中している道県と「100Pa以上120Pa未満」の前後に集中している府県とに大きく二分される状況となっていた。

また、陽圧化設備の設計に当たり、実測差圧の大きさを決定付ける重要な要素の一つである送風機の送風量をどのような考え方に基づき算定しているかについて三つの設計方法に分類して、設計差圧の状況との関係についてみたところ、80Pa以上の設計差圧が設定されている施設では、建屋の壁に吹き付ける風の風速を考慮して設計差圧を求める方法を用いている場合が多い状況となっていた。

さらに、設計差圧の状況に対して原子力発電所からの距離や施設の種類別の状況がどのように対応しているかについてみたところ、明確な傾向は特に見受けられなかった。また、設計差圧の状況に対して建屋構造の状況がどのように対応しているかについてみたところ、建屋構造が鉄骨造であるものの多くは設計差圧が「20Pa以上40Pa未満」の前後に集中している状況となっていた(5019_3_4_2リンク参照)。

(ウ)設備の維持管理、訓練等の状況

放射線防護対策を行った施設においては、設備の維持管理を行う必要があるが、陽圧化設備のフィルターのうち炭素フィルターについては、性能保持についての理解が十分でなかったため、密封包装を開封して設置していて、必要な性能が保持されるとされていた期間が短くなるおそれがあるのに、対策を講じていなかった施設が31か所あるなどの状況が見受けられたほか、設備を使用した訓練を実施していなかった施設は42か所となっており、このうち12か所については今後の訓練時期についても未定としている状況となっている。

放射線防護対策が実施された一時退避施設の避難計画等における位置付け等についてみると、一時退避施設が所在する16道府県のうち5県において避難計画等に記載がないなどの状況が見受けられた(5019_3_4_3リンク参照)。

オ 防災資機材等の整備状況等

(ア)緊急時交付金による防災資機材等の整備状況等

緊急時交付金の交付を受けた道府県は、防災活動資機材等整備事業を実施している。そして、内閣府は、緊急時交付金の対象となる防災資機材等の用途等を具体的に示しており、道府県は地域防災計画(原子力災害対策編)等を考慮して、必要な防災資機材等を整備している。同事業に係る緊急時交付金の交付状況をみると、24年度から26年度までの間の交付額は計74億余円となっている(5019_3_5_1リンク参照)。

(イ)周辺対策交付金により公共施設等に配備された放射線測定器の活用状況等

周辺対策交付金の交付を受けた18道府県は、周辺対策交付金により放射線測定器計8,672台(購入費8億9537万余円、交付金交付額同額)を購入している。

周辺対策交付金の交付を受けた立地道県及び隣接府県は、購入した放射線測定器を公共施設等に配備し、住民への説明会等を通じて放射線に関する知識の普及啓発に活用することになっている。しかし、18道府県における普及啓発のための放射線測定器の活用についての考え方を確認したところ、緊急時のみに活用することとしていることにより放射線測定器の全部又は一部を普及啓発に活用しないとしている道府県が見受けられた。また、25年度に購入されてから27年9月末までの放射線測定器の活用状況を確認したところ、放射線測定器計8,672台中、6,729台(購入費5億4071万余円、交付金交付額同額)は一度も普及啓発に活用されていなかった。

一方、内閣府は、道府県が周辺対策交付金により購入し配備した普及啓発のための放射線測定器を必要に応じて緊急時に活用することができるとしている。道府県が緊急時に活用するとしている放射線測定器計4,107台中、配備先等において緊急時に活用するとされている放射線測定器は3,743台となっていたが、そのうち3,508台については、緊急時に誰が測定し、その測定値を何に活用するかなど、具体的な活用方法が定められていなかった(5019_3_5_2リンク参照)。

(2)所見

緊急時に原子力発電所の周辺住民等を安全かつ確実に避難させるための原子力災害対策に係る施設等の整備等を平素から適切に実施するとともに、周辺住民等に対してその取組の状況を 適時適切に情報提供することは、周辺住民等の生活に安心をもたらすために極めて重要である。

ついては、内閣府は、立地道県等における原子力災害対策の充実強化を推進する役割を担うことを踏まえて、次の点に留意して立地道県等が行う原子力災害対策に係る施設等の整備等に対する財政支援等の支援を実施する必要がある。

  • ア 地域防災計画(原子力災害対策編)等の作成等については、最新の知見を取り入れるなどして適宜見直しが行われている原災指針等の内容に合わせて立地道県等における地域防災計画(原子力災害対策編)及び避難計画の作成及び修正が適切に行われるよう、立地道県等に対して引き続き必要な支援を行うこと
  • イ オフサイトセンターの整備については、整備した防災資機材等が緊急時において有効に機能するよう、オフサイトセンターの要員の訓練や防災資機材の配備等、態勢面の強化に努めるとともに、一部遅延がみられる代替オフサイトセンターの整備等について立地道県等と連携して速やかに必要な措置を講ずること
  • ウ 一時退避施設等の放射線防護対策事業の実施については、研究機関等から技術的知見を得るなどした上で放射線防護対策を実施した施設がより高い安全性を確保するようにするための方策について検討するとともに、間接補助事業者である市町村及び民間団体に対して、施工業者に確認を行うなどして設備の特性を踏まえた一時退避施設等の維持管理の方法について十分把握するよう周知を行うこと。また、緊急時における施設の位置付けやこれを踏まえた訓練について検討し、それらの在り方について定めること。そして、これらの検討の結果を基に、補助事業者である道府県が間接補助事業者である市町村及び民間団体に対して適切な指導等が行えるよう、道府県に対して助言を行うとともに必要な措置を講ずること
  • エ 防災資機材等の整備については、立地道県及び隣接府県に対して、周辺対策交付金により購入した放射線測定器を普及啓発のために活用することを周知して、放射線測定器を活用した普及啓発を図る機会を防災訓練等において設けさせたり、活用されていない放射線測定器の配備先の変更を検討させたりするとともに、これらの放射線測定器を緊急時にも活用することができることを周知して、緊急時における活用方法の検討を促すことなどにより、これらの放射線測定器の有効活用を図ること

会計検査院としては、今後とも原子力災害対策に係る施設等の整備等の状況について引き続き注視していくこととする。