平成23年3月の東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故後、原子力防災の体制が見直され、原子力発電所が立地している地方公共団体が行う緊急事態応急対策等拠点施設の整備、一時退避施設等の放射線防護対策、原子力防災のために使用される資機材の整備等の原子力災害対策の内容が拡充されるとともに、原子力災害対策重点区域が広がることにより関係する地方公共団体の総数も増えたことを受けて、原子力災害対策に係る施設等の整備等を実施する地方公共団体に対する国の財政支援の規模が拡大している。
そして、27年8月に九州電力株式会社川内原子力発電所が再稼働し、他の原子力発電所についても順次再稼働又は再稼働に向けた適合性審査が行われている状況において、原子力発電所における緊急事態により生ずる被害から国民の生命及び財産を守るために必要な原子力災害対策を適切に実施することは、政府及び関係する地方公共団体における重要な課題となっている。
また、参議院決算委員会は、27年6月に、平成25年度決算に係る議決に当たり、内閣府が原子力災害対策施設整備費補助金を交付して地方公共団体が実施した一時退避施設の放射線防護対策事業において避難場所に適さない津波被害等のおそれがある施設の放射線防護対策に補助金が交付されていた事態について、「政府は、補助金により整備された施設の安全性について検証を行い、住民防護等の実効性を高めるため交付基準等を不断に見直すとともに、地域原子力防災協議会における検討を充実させるなど、補助金による施設の整備が適切に行われるよう措置すべきである」と決議している。
本報告書は、以上のような経緯等を踏まえて、地方公共団体が交付金等の交付を受けて行う原子力災害対策に係る施設等の整備等について検査を実施し、その状況を取りまとめたことから、会計検査院法(昭和22年法律第73号)第30条の2の規定に基づき、会計検査院長から衆議院議長、参議院議長及び内閣総理大臣に対して報告するものである。
平成28年4月
会計検査院
本文及び図表中の数値は、原則として、表示単位未満を切り捨てている。
また、円グラフにおける割合は、表示単位未満を四捨五入している。
上記のため、図表中の数値を集計しても計が一致しないものがある。