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  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第3 総務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1) 個人番号カード交付事業費補助金について、その交付額の算定に当たり、補助の対象とならない通知カードの再交付枚数を適切に把握することなどを周知することにより、補助対象経費が適切に算定されるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)総務本省 (項)電子政府・電子自治体推進費
部局等
総務本省
補助の根拠
予算補助
補助事業の概要
市区町村が地方公共団体情報システム機構に交付する通知カード等の作成、発送等の事務に要する費用に相当する金額等について、国が補助金を交付するもの
補助事業者
(事業主体)
864市区町村
上記の補助事業者に対する国庫補助金交付額
124億1542万余円(平成27年度)
上記のうち国庫補助金が過大に交付されていた補助事業者数及び過大に交付されていた国庫補助金額
142市区町村1171万円
補助対象経費が適切に算定されているか確認できなかった補助事業者数及びこれに係る国庫補助金額
50市区町村 39億6518万円(背景金額)(平成27年度)

1 制度の概要

(1) 個人番号カード交付事業費補助金等の概要

総務省は、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(平成25年法律第27号)に定める通知カード(注1)及び個人番号カード(注2)(以下「マイナンバーカード」という。)の交付等を円滑に行うことにより、社会保障・税番号制度の導入を推進し、国民の利便性の向上及び行政運営の効率化を図ることを目的として、個人番号カード交付事業費補助金交付要綱(平成27年総行住第65号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、個人番号カード交付事業費補助金(以下「補助金」という。)を市区町村に対して交付している。補助金は、通知カード及びマイナンバーカードに係る事務のうち、通知カード等の作成、発送等の事務を「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の規定による通知カード及び個人番号カード並びに情報提供ネットワークシステムによる特定個人情報の提供等に関する省令」(平成26年総務省令第85号。以下「省令」という。)に基づき地方公共団体情報システム機構(以下「機構」という。)に行わせることとした市区町村が、省令の規定により機構が定めた同事務に要する費用に相当する金額を機構に交付金として交付する場合に、当該交付金等を補助対象経費として、当該市区町村に交付されるものである。

(注1)
通知カード  氏名、住所、生年月日、性別、個人番号その他省令で定める事項が記載されたカード。平成27年10月中旬以降、住民票を有する全ての住民に対して、個人番号を通知するために郵送された。
(注2)
個人番号カード  氏名、住所、生年月日、性別、個人番号その他政令で定める事項が記載され、本人の写真が表示され、かつ、これらの事項その他省令で定める事項(カード記録事項)が電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)により記録されたカード

(2) 補助金の交付額の算定等

交付要綱によれば、補助金の交付額は、通知カード等の作成、発送等の事務を機構に行わせることとした市区町村が機構に交付する交付金の額から、通知カードを再交付した枚数に交付要綱に定める500円を乗ずるなどした額(以下「手数料相当額」という。)等を控除した金額とすることとされている。

通知カードの再交付は、通知カードの交付を受けた者が、当該通知カードを紛失し、焼失し、又は著しく損傷した場合に、住所地の市区町村長に対して再交付を受けようとする旨及びその事由等を記載した再交付申請書を提出するのを受けて、当該市区町村長により行われることとなる(以下、このような場合の再交付を「紛失等による再交付」という。)。

そして、補助金の交付額の算定において、紛失等による再交付に伴う手数料相当額は、原則として補助の対象とならず機構に交付する交付金の額から控除することとされているが、市区町村又は機構の誤りによる場合や天災その他の本人の責によらない場合といった再交付がやむを得ないと認められる場合(以下「天災等による場合」という。)は、その手数料相当額の控除は要しないとされている。

また、転居又は転出したことにより通知カードを受け取れなかった者に対する通知カードの再発行(以下「転居・転出による再交付」という。)を、新しい住所地の情報を機構に送信し、新しい住所地が記載された通知カードを再発行させること(以下「再送処理」という。)により行う場合については、通知カードによる個人番号の通知が開始された平成27年10月から同年12月末までの再送処理に伴う手数料相当額は控除を要しないが、28年1月以降の再送処理に伴う手数料相当額は、市区町村による通知カードの受取人に対する個人番号の通知義務は果たされているとして、補助の対象とならず機構に交付する交付金の額から控除することとされている。

なお、交付要綱によれば、市区町村は、補助事業の会計帳簿等について、補助事業の完了した日の属する会計年度の終了後5年間保存しておかなければならないこととされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性等の観点から、補助金の交付額が交付要綱等に基づき適切に算定されているかなどに着眼して、27年度に23都道府県(注3)の864市区町村に対して交付された補助金計124億1542万余円を対象として、総務本省及び402市区町村において実績報告書、再交付申請書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、残りの462市区町村についても調書の作成及び提出を求めるなどして検査した。

(注3)
23都道府県  東京都、北海道、京都、大阪両府、青森、岩手、埼玉、神奈川、新潟、富山、石川、福井、長野、岐阜、愛知、奈良、島根、広島、徳島、香川、佐賀、大分、沖縄各県

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 補助金が過大に交付されていた事態

19都道府県の142市区町村において、次のとおり、補助の対象とならない通知カードの再交付に係る手数料相当額を補助対象経費に含めていて、計1171万余円の補助金が過大に交付されていた。

ア 12都道府県(注4)の43市区町村(表参照)において、紛失等による再交付について、天災等による場合に該当せず補助の対象とならない通知カード計2,841枚の再交付に係る手数料相当額計142万余円を控除しておらず、同額の補助金が過大に交付されていた。

(注4)
12都道府県  東京都、北海道、大阪府、岩手、埼玉、神奈川、富山、岐阜、奈良、島根、大分、沖縄各県

イ 19都道府県(注5)の116市区町村(表参照)において、転居・転出による再交付について、28年1月以降に再送処理していて補助の対象とならない通知カード計20,589枚の再交付に係る手数料相当額計1029万余円を控除しておらず、同額の補助金が過大に交付されていた。

(注5)
19都道府県  東京都、北海道、京都、大阪両府、青森、岩手、埼玉、神奈川、富山、長野、岐阜、奈良、島根、広島、徳島、香川、佐賀、大分、沖縄各県

(2) 補助対象経費が適切に算定されているか確認できなかった事態

10都道府県の50市区町村(これらの市区町村に交付された補助金交付額計39億6518万余円)において、次のとおり、補助対象経費が適切に算定されているか確認できない状況となっていた。

ア 補助の対象とならない通知カードの再交付枚数を把握していなかったもの

補助対象経費を適切に算定するためには、通知カードの再交付申請書に記載された再交付を受けようとする事由等を確認して、補助の対象とならない、紛失等による再交付で天災等による場合に該当しない通知カードの再交付に伴う交付枚数や、転居・転出による再交付で28年1月以降の再送処理に係る通知カードの再交付に伴う交付枚数(以下、これらを合わせて「補助の対象とならない再交付枚数」という。)を把握しておく必要がある。しかし、10都道府県(注6)の43市区町村(表参照。これらの市区町村に交付された補助金交付額計30億6984万余円)において、通知カードの再交付に伴う交付枚数を事由別に集計していないなどのため補助の対象とならない再交付枚数を把握していなかった。このため、43市区町村に対する補助金の交付額の算出において、補助の対象とならない再交付枚数に係る手数料相当額を控除していないおそれがあると認められた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

大阪府守口市は、平成27年度に、補助の対象とならない通知カードの再交付枚数は168枚であったとする実績報告書を大阪府に提出して、補助金39,857,000円の交付を受けていた。

しかし、同市は、天災等による場合に該当しない再交付枚数である上記の168枚については把握していたものの、28年1月以降に再送処理した再交付枚数については把握しておらず、168枚以外の補助の対象とならない再交付枚数に係る手数料相当額を控除していないおそれがある状況となっていた。

(注6)
10都道府県  東京都、北海道、大阪府、岩手、神奈川、富山、長野、愛知、大分、沖縄各県

イ 再交付申請書を十分な確認をしないまま廃棄していたもの

前記のとおり、交付要綱において、補助事業の会計帳簿等は、5年間保存しておかなければならないこととなっている。しかし、東京都及び大阪府の105市区町村において、通知カードの再交付を受けようとする者が提出する再交付申請書の保存期間について確認したところ、15市区で保存期間を1年としており、そのうち8市区(表参照。これらの市区に交付された補助金交付額計10億5134万余円)において、27年度の再交付申請書を29年7月時点で十分な確認をしないまま既に廃棄していた。そして、8市区においては、その他の補助事業の会計帳簿等によっては再交付を受けようとする事由が十分に確認できず、8市区に対する補助金の交付額の算出において、補助の対象とならない再交付枚数に係る手数料相当額を控除していないおそれがあると認められた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例2>

東京都荒川区は、平成27年度に、補助の対象とならない通知カードの再交付枚数は491枚であったとする実績報告書を東京都に提出して、補助金57,592,000円の交付を受けていた。

しかし、同区は、再交付申請書の保存期間を1年として、27年度の再交付申請書については、29年7月時点で既に廃棄していたことから、通知カードの再交付の枚数及び再交付を受けようとする事由を十分に確認できず、補助の対象とならない再交付枚数に係る手数料相当額を控除していないおそれがある状況となっていた。

表 都道府県別・市区町村別の態様内訳

都道府県名 市区町村名
〈事例番号〉
(1)過大交付の事態 (2)確認できなかった事態

(注)
北海道 札幌市    
函館市    
帯広市    
留萌市    
芦別市    
士別市    
名寄市    
千歳市  
砂川市    
深川市    
恵庭市    
北斗市    
石狩郡当別町    
石狩郡新篠津村    
上磯郡木古内町    
茅部郡鹿部町    
茅部郡森町    
二海郡八雲町    
檜山郡江差町    
久遠郡せたな町    
寿都郡黒松内町    
虻田郡ニセコ町    
余市郡仁木町    
余市郡余市町    
空知郡南幌町    
空知郡奈井江町    
上川郡上川町    
上川郡美瑛町    
増毛郡増毛町    
網走郡美幌町    
網走郡津別町    
勇払郡安平町    
幌泉郡えりも町    
日高郡新ひだか町  
河東郡士幌町    
河東郡上士幌町    
河東郡鹿追町    
中川郡池田町  
中川郡本別町    
釧路郡釧路町    
厚岸郡浜中町    
川上郡標茶町    
野付郡別海町    
目梨郡羅臼町    
青森県 むつ市    
岩手県 盛岡市    
花巻市  
北上市    
遠野市    
一関市  
二戸市    
奥州市    
西磐井郡平泉町    
九戸郡軽米町    
埼玉県 朝霞市    
幸手市  
東京都 中央区      
港区      
新宿区      
台東区      
墨田区  
江東区      
品川区    
目黒区  
大田区  
世田谷区    
渋谷区    
中野区      
杉並区  
豊島区      
荒川区<事例2>      
板橋区      
練馬区      
足立区      
葛飾区    
江戸川区    
八王子市    
小金井市      
小平市      
国立市      
狛江市      
東大和市      
稲城市      
西多摩郡奥多摩町      
新島村      
御蔵島村      
小笠原村    
神奈川県 横浜市  
川崎市    
相模原市    
平塚市    
小田原市    
秦野市  
大和市    
伊勢原市    
座間市  
足柄上郡山北町    
富山県 黒部市    
南砺市    
中新川郡舟橋村    
長野県 上田市    
岡谷市    
諏訪市    
小諸市    
中野市    
塩尻市    
北佐久郡軽井沢町    
北佐久郡御代田町    
北佐久郡立科町    
諏訪郡富士見町    
諏訪郡原村    
上伊那郡飯島町    
上伊那郡南箕輪村    
下伊那郡高森町    
下伊那郡根羽村    
下伊那郡大鹿村    
東筑摩郡山形村    
下高井郡野沢温泉村    
上水内郡信濃町    
岐阜県 岐阜市    
関市    
美濃加茂市    
可児市    
瑞穂市    
海津市    
揖斐郡揖斐川町    
加茂郡坂祝町    
愛知県 弥富市    
京都府 長岡京市    
京田辺市    
木津川市    
乙訓郡大山崎町    
綴喜郡井手町    
与謝郡伊根町    
大阪府 大阪市      
堺市      
岸和田市      
池田市      
吹田市      
守口市<事例1>    
茨木市      
八尾市      
寝屋川市      
摂津市    
藤井寺市    
泉南市      
四條畷市    
豊能郡能勢町      
泉北郡忠岡町      
奈良県 大和高田市    
大和郡山市    
吉野郡大淀町    
島根県 浜田市    
雲南市    
広島県 安芸郡海田町    
徳島県 名西郡石井町    
那賀郡那賀町    
海部郡牟岐町    
海部郡美波町    
板野郡北島町    
香川県 綾歌郡綾川町    
佐賀県 嬉野市    
大分県 大分市    
杵築市    
速見郡日出町    
玖珠郡九重町  
玖珠郡玖珠町    
沖縄県 那覇市    
石垣市    
浦添市    
沖縄市    
国頭郡大宜味村  
国頭郡今帰仁村    
国頭郡恩納村    
国頭郡宜野座村    
国頭郡金武町    
国頭郡伊江村    
中頭郡北中城村  
中頭郡中城村    
中頭郡西原町    
島尻郡与那原町    
島尻郡南風原町    
島尻郡南大東村    
島尻郡八重瀬町    
宮古郡多良間村    
八重山郡与那国町    
43 116 43 ◎8、〇7
(注)
〇は、再交付申請書の保存期間を1年としていた市区であり、は、保存期間を1年としていた市区のうち、平成29年7月時点で既に廃棄していた市区である。

このように、補助事業の実施に当たり、市区町村において、補助の対象とならない通知カードの再交付に係る手数料相当額を補助対象経費に含めていて、補助金が過大に交付されていた事態及び補助の対象とならない再交付枚数を適切に把握していなかったり、再交付申請書が既に廃棄されていたりしたため、補助対象経費が適切に算定されているか確認できない状況となっていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、市区町村において、補助対象経費についての理解が十分でないことなどにもよるが、総務省において、次のことなどによると認められた。

  • ア 市区町村に対して、補助対象経費を適切に算定するためには、通知カードの再交付申請書に記載された再交付を受けようとする事由等を確認して、補助の対象とならない再交付枚数を適切に把握する必要があること及び補助の対象とならない再交付枚数に係る手数料相当額を補助対象経費から控除する必要があることについての周知徹底が十分でなかったこと
  • イ 市区町村に対して、補助対象経費が適切に算定されているかについて把握及び確認をするためには、再交付申請書が本件補助事業の補助対象経費の把握及び確認をするために必要となるものであること並びに再交付申請書を補助事業の会計帳簿等として5年間保存するなどしておかなければならないことを十分周知していなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、総務省は、補助の対象とならない再交付枚数の算定誤りにより補助金が過大に算定されていた市区町村に対して、改めて実績報告を行わせ、過大となった補助金の返還を求めた。そして、補助の対象とならない再交付枚数を適切に把握していなかった市区町村に対して、可能な限り再交付の事由を確認することにより補助の対象とならない再交付枚数を把握させ、必要に応じて改めて実績報告を行わせ、過大となった補助金がある場合には返還を求めるとともに、29年9月に都道府県等に通知を発して、次のような処置を講じた。

ア 補助対象経費の算定に当たり、補助の対象とならない再交付枚数を適切に把握して再交付に係る手数料相当額を適切に算定する必要があることについて周知徹底するとともに、通知カード等の再交付を事由別に把握するなどの様式を定めた。

イ 再交付申請書を補助事業の会計帳簿等として交付要綱に定める期間にわたり保存することなどについて周知徹底した。