(平成27年度決算検査報告2か所参照 リンク10123 20684)
外務省及び独立行政法人国際協力機構(以下「機構」という。)は、国際社会の平和と発展に貢献することなどを目的として、開発途上地域の政府等に対する無償資金協力等の政府開発援助を実施している。しかし、無償資金協力で整備された冷凍倉庫等の使用が停止されていたり、給水等のための調達機材の一部が故障するなどして使用されていなかったり、草の根・人間の安全保障無償資金協力(以下「草の根無償」という。)で改修工事が行われた職業訓練校の実習棟が十分に活用されていなかったり、草の根無償及び技術協力において、建設された施設の一部が使用されているだけで職業訓練等に係る技術指導が十分にいかされていなかったり、技術協力で供与された病院の医療機材の一部が電圧変化の影響等により故障して使用できなくなっていたり、有償資金協力で整備されたコンテナターミナルのコンテナ貨物取扱量の実績が目標値に対して低いままとなっていたりしていて、援助の効果が十分に発現していない事態が見受けられた。
したがって、外務大臣及び独立行政法人国際協力機構理事長に対して平成28年10月に、会計検査院法第36条の規定により、次のような措置を講ずるよう意見を表示した。
本院は、外務本省及び機構本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、外務省及び機構は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 無償資金協力について、機構は、事業実施機関に対して給水等のための調達機材のうち故障するなどして使用されていないものについて修理するなどして活用するよう働きかけを行った。その結果、事業実施機関は使用されていない機材の修理に着手するなどした。また、機構は、29年6月に関係部署に対して通知を発して、冷凍倉庫等の使用が停止されるなどした際は事業実施機関からその事実について速やかに報告を求め、今後の活用方法について検討するなどして当該冷凍倉庫等が有効に活用されるよう事業実施機関に対して適切な働きかけを行ったり、調達機材の使用状況等を報告書等により確認することとしている場合、報告書等を適切に提出させるなどして調達機材の維持管理の状況を適切に把握したりすることとした。
イ 草の根無償について、外務省は、事業実施機関等に対して実習棟が有効に活用されるよう働きかけを行った。その結果、職業訓練校の学生数が増加し、実習棟は活用されていた。また、外務省は、29年6月に在外公館に対して通知を発して、職業訓練校の実習棟の改修等を行う事業を実施するに当たり、教育省等の関係機関が企業からの需要を踏まえて学生定員数を決定している場合、事業計画策定時に関係機関を通じて企業の需要を把握することとした。
ウ 草の根無償及び技術協力について、外務省及び機構は、事業実施機関等に対して施設が有効に活用されるよう働きかけを行った。その結果、当該施設で水産加工女性組合の構成員を対象とした水産資源の管理に関する研修が実施されるなどした。また、外務省及び機構は、29年6月に在外公館及び機構の関係部署に対して通知を発して、草の根無償で建設された施設を拠点とした技術指導を実施する場合、事業計画策定時に施設の持続的な運営管理についての具体的な検討を十分に行うこととした。
エ 技術協力について、機構は、当該病院の医療機材利用者等に対して、停電発生時に医療機材のプラグを抜くことなどを確実に行うことの必要性及び重要性に関する研修を実施するなどした。そして、機構は、当該病院において、研修を実施した28年12月から29年5月の確認時点までの間に停電回復時に生ずる異常な高電圧等を原因とする医療機材の故障が発生していないことを確認した。また、機構は、29年6月に関係部署に対して通知を発して、医療機材の更新等を行う場合、医療機材利用者等に対して、過去の無償資金協力等における故障の教訓を踏まえた取扱いを確実に行うための指導を行うこととした。
オ 有償資金協力について、機構は、29年6月に関係部署に対して通知を発して、既存港を代替して補完するコンテナターミナルを整備する場合、港湾利用者の需要等や既存港の拡張可能性等についての検討を十分に行うなどして、新規整備コンテナターミナルで取り扱われることとなるコンテナ貨物取扱量の需要予測の検討を適切に行うこととした。