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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 文部科学省|
  • 平成27年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(2) 高等学校等就学支援金の受給資格の認定等について


平成27年度決算検査報告参照

1 本院が求めた是正改善の処置及び表示した意見

文部科学省は、「高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(平成22年法律第18号)等に基づき、高等学校等の生徒又は学生(以下「生徒」という。)が授業料に充てるために、都道府県知事又は都道府県教育委員会(以下、これらを合わせて「知事等」という。)が生徒に支給することとなっている高等学校等就学支援金(以下「就学支援金」という。)の支給に要する費用の全額に相当する金額を都道府県に交付することとなっている。そして、知事等が就学支援金の受給資格を有することの認定及び確認並びに支給額の決定(以下、これらを合わせて「受給資格の認定等」という。)を行うに当たっては、生徒が在学する高等学校等の設置者(以下「学校設置者」という。)に受給資格認定申請書等の確認作業を委託できることとなっている。また、就学支援金は学校設置者が生徒に代わって受領して授業料債権の弁済に充てるものとすることとなっている。さらに、保護者等の収入の状況に照らして経済的負担を軽減する必要があるとは認められない者には就学支援金を支給しないこととなっている。しかし、知事等が受給資格の認定等を行う際に学校設置者が行った確認結果の妥当性についての検証を行っていない事態、単位登録時に授業料を全額納入させていて就学支援金を充てるべき授業料債権が存在しないのに生徒に就学支援金が速やかに引き渡されていない事態及び国外に在住している保護者等の収入を考慮することなく受給資格の認定等を行っている事態が見受けられた。

したがって、文部科学大臣に対して、平成28年10月に、次のとおり是正改善の処置を求め、及び意見を表示した。

  • ア 知事等が受給資格の認定等に当たり学校設置者に受給資格認定申請書等の確認作業を委託する場合には、確認結果の妥当性についての検証を行い、確認作業が適正かつ確実に実施されるよう指導を十分に行うことについて、高等学校等就学支援金事務処理要領に明記するなどした上でその内容を都道府県に対して周知徹底すること(会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めたもの)
  • イ 就学支援金を充てるべき授業料債権が存在しない場合の就学支援金の学校設置者から生徒への引渡しについて、知事等は、特段の事情がある場合を除き速やかに生徒に引き渡すよう学校設置者への指導を十分に行うとともに、就学支援金が生徒に適時適切に引き渡されることを確保することについて、同事務処理要領に明記するなどした上でその内容を都道府県に対して周知徹底すること(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めたもの)
  • ウ 高等学校等の生徒の保護者等が国内に在住している場合と国外に在住している場合で就学支援金の支給が可能な限り公平に行われるよう、都道府県及び学校設置者の事務負担に配慮した上で、国外に在住している保護者等の収入の把握方法やその収入を考慮した受給資格の認定等の方法を検討すること(同法第36条の規定により意見を表示したもの)

2 当局の処置状況

本院は、文部科学本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、文部科学省は、本院指摘の趣旨に沿い、29年3月に同事務処理要領を改正するなどして、次のような処置を講じていた。

ア 知事等が受給資格の認定等に当たり学校設置者に受給資格認定申請書等の確認作業を委託する場合には、学校設置者における確認結果が法令にのっとって適切に確認されたものとなっているか抽出して調査するなどして確認結果の妥当性についての検証を行い、確認作業が適正かつ確実に実施されるよう指導監督することについて、同事務処理要領に明記した上で、その内容を都道府県に周知徹底した。

イ 就学支援金を充てるべき授業料債権が存在しない場合の就学支援金の学校設置者から生徒への引渡しについて、知事等は、特段の事情がある場合を除き速やかに生徒に引き渡すよう学校設置者への指導を行うとともに、学校設置者に引渡し状況の報告を求めるなどして就学支援金が生徒に適時適切に引き渡されることを確保することについて、同事務処理要領に明記した上で、その内容を都道府県に周知徹底した。

一方、文部科学省は、国外に在住している保護者等の収入の把握方法やその収入を考慮した受給資格の認定等の方法については、高等学校等就学支援金の支給に関する法律が25年度に改正された際に衆議院及び参議院において行われた附帯決議により求められた制度改正による効果や影響等についての検証を行うために外部有識者からなる会議を29年4月に設けたことから、同会議での議論も踏まえて、引き続きこれを検討していくこととしている。