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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
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  • 補助金

(9) 生活保護費等負担金(保護施設事務費負担金に係る分)が過大に交付されていたもの[6府県](193)


1件 不当と認める国庫補助金 29,641,866円

生活保護費等負担金(保護施設事務費負担金に係る分。以下「負担金」という。)(生活保護費等負担金の概要については、「生活扶助費等負担金等が過大に交付されていたもの」参照)は、都道府県又は市町村(特別区を含む。以下「事業主体」という。)が、身体上又は精神上著しい障害があるため日常生活を営むことが困難な被保護者等について、社会福祉法人等が設置する救護施設等の保護施設(以下「保護施設」という。)に入所を委託するなどしたことに伴い必要な保護施設の事務費(以下「施設事務費」という。)を支弁した場合に、その一部(4分の3)を国が負担するものである。

施設事務費の月額は、施設事務費支弁基準額(以下「基準額」という。)に各月初日の入所実人員を乗ずるなどして算定することとなっている。

基準額は、入所者1人当たりの月額単価であり、保護施設ごとに保護施設を管轄する都道府県知事又は政令指定都市若しくは中核市の市長(以下「都道府県知事等」という。)が、保護施設の所在する地域区分、取扱定員ごとに定められた一般事務費単価に保護施設からの申請に基づき看護師加算、介護職員加算(以下、これらを「看護師等加算」という。)等の所定の単価を加算して設定することとなっている。そして、事業主体の長が保護施設に入所を委託するなどした場合、事業主体は保護施設を管轄する都道府県知事等が設定した基準額に基づき施設事務費を支弁することになる。

看護師等加算は、看護師又は介護職員の増員が必要と認定される場合に算定される加算であり、「生活保護法による保護施設事務費及び委託事務費の取扱いについて」(昭和63年社施第85号)に定める保護施設職員職種別配置基準表(以下「職員配置基準」という。)による職員数が充足され、かつ、各月初日時点において加算配置数として規定された看護師又は介護職員が配置されていることなどの要件を全て満たす場合に加算されることとなっている。

本院が、23都道府県及び19市において会計実地検査を行ったところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

  部局等 補助事業者
(基準額を設定した者)
補助事業者
(事業主体)
年度 国庫負担対象事業費 左に対する国庫負担金交付額 不当と認める国庫負担対象事業費 不当と認める国庫負担金交付額 摘要
          千円 千円 千円 千円  
(193) 三重県、滋賀県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県 奈良県 25事業主体 23~25 610,064 457,548 39,522 29,641 加算の要件を満たしていなかったものなど

奈良県は、管轄する1救護施設について、看護師等加算の要件を全て満たしているとして、一般事務費単価に看護師等加算の単価を加算するなどして当該救護施設に係る基準額(平成23年4月168,320円、同年5月から24年3月まで165,520円、同年4月169,960円、同年5月から25年3月まで167,150円、同年4月170,070円、同年5月から同年10月まで167,260円、同年11月から26年3月まで172,830円)を設定していた。

そして、25事業主体(注)は、同県が設定した基準額に基づき、施設事務費として23年度から25年度までの間に計610,064,611円を支弁して、これに係る負担金計457,548,442円の交付を受けていた。

しかし、23年4月から26年3月までの間に、当該救護施設に実際に配置されていたのは、職員配置基準で定める看護師1名及び介護職員18名であり、加算配置数として規定された看護師及び介護職員各1名の増員は行われていなかったにもかかわらず、同県は、誤って、看護師等加算の要件を満たしているとして前記加算の単価を加算するなどして基準額を設定していた。

したがって、適正な基準額(23年4月158,220円、同年5月から24年3月まで155,400円、同年4月159,720円、同年5月から25年3月まで156,910円、同年4月159,840円、同年5月から同年10月まで157,030円、同年11月から26年3月まで162,590円)により施設事務費を算定すると計570,542,131円となり、支弁された施設事務費との差額39,522,480円が過大に支弁されていた。そして、適正な施設事務費に基づき負担金を算定すると計427,906,576円となり、交付額との差額29,641,866円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、当該救護施設において制度に対する理解が十分でなかったことにもよるが、同県において、制度に対する理解が十分でなかったため、基準額の設定に当たり施設の実態確認及び審査が十分でなかったことなどによると認められる。

(注)
25事業主体  奈良、和歌山両県、四日市、長浜、高島、京都、長岡京、木津川、大阪、堺、守口、柏原、東大阪、奈良、大和高田、大和郡山、天理、橿原、桜井、御所、生駒、香芝、葛城、宇陀、紀の川各市