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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
  • 平成25年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(1) 病床転換助成事業の実施に当たり社会保険診療報酬支払基金に剰余金として保有されている病床転換支援金について


平成25年度決算検査報告参照
平成26年度決算検査報告参照
平成27年度決算検査報告参照

1 本院が表示した意見及び求めた是正改善の処置

病床転換助成事業(以下「転換事業」という。)は、厚生労働省が定めた医療費適正化に関する施策についての基本的な方針に基づき、医療保険制度及び後期高齢者医療制度が適用される療養病床の介護保険施設等への転換を促進するために、平成20年度から都道府県が実施している事業である。転換事業の実施に要する費用の一部は社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」という。)が都道府県に交付する病床転換助成交付金をもって充て、同交付金は支払基金が保険者から徴収する病床転換支援金をもって充てることとなっており、支払基金は転換事業に係る経理を他の経理と区分するために病床転換助成事業特別会計(以下「特別会計」という。)を設けている。そして、厚生労働省は、病床転換支援金を支払基金に納付する保険者のうち、全国健康保険協会、市町村及び国民健康保険組合に対して、国民健康保険病床転換支援金負担金等(以下「国庫補助金」という。)を交付しているが、支払基金が保険者から病床転換支援金とともに徴収する病床転換助成関係事務費拠出金(以下「事務費拠出金」という。)については国庫補助金の交付の対象外となっている。しかし、転換事業の実施状況は極めて低調となっており、病床転換支援金の大部分が支払基金の特別会計の事業費勘定における利益処分後の積立金残高(以下「剰余金」という。)となっていて、転換事業の実施に必要な資金としてほとんど活用されていない事態及び剰余金が国庫補助金の交付の対象外である事務費拠出金に係る経理を行う特別会計の事務費勘定に繰り入れられて、事務の処理に要する経費(以下「事務費」という。)の財源に充当されている事態が見受けられた。

したがって、厚生労働大臣に対して26年10月に、次のとおり意見を表示し、及び是正改善の処置を求めた。

  • ア 支払基金に剰余金として保有されている病床転換支援金に含まれる国庫補助金相当額の有効な活用を図るために、病床転換支援金の十分な活用について見直しなどを行うこと(会計検査院法第36条の規定により意見を表示したもの)
  • イ 国庫補助金相当額が含まれる病床転換支援金の一部を特別会計の事務費勘定に繰り入れて事務費の財源に充当している支払基金の経理について、国庫補助金相当額の返還を含む見直しの指導等を行うこと(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めたもの)

2 当局が講じた処置

本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。

ア 支払基金に剰余金として保有されている病床転換支援金の活用等については、同省に設置された社会保障審議会の療養病床の在り方等に関する特別部会での議論等を踏まえて、転換事業における療養病床の転換先の施設として、新たに創設される介護保険施設である介護医療院を加えることとし、また、転換事業の実施期限(36年3月末)においてもなお剰余金として保有されている病床転換支援金がある場合には、剰余金に含まれる国庫補助金相当額を支払基金から国庫に納付させることとした。そして、これらを実施するために必要な「高齢者の医療の確保に関する法律」(昭和57年法律第80号。以下「高齢者医療確保法」という。)等の改正等を盛り込んだ「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」を作成し、同法律案は、29年2月7日に閣議決定されて、第193回国会(常会)に提出された。

なお、「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」(平成29年法律第52号。以下「地域包括ケア強化法」という。)は同年6月2日に公布されて、転換事業に係る改正部分については30年4月1日から施行することとされた。

イ 支払基金において国庫補助金相当額が含まれる病床転換支援金の一部を特別会計の事務費勘定に繰り入れて事務費の財源に充当していた経理については、支払基金に対して、28年度以降は病床転換支援金を事務費勘定に繰り入れることのないよう指導するとともに、既に事務費の財源に充当されていた病床転換支援金に含まれる国庫補助金相当額については、地域包括ケア強化法により改正された高齢者医療確保法に基づき、支払基金から国庫に納付させることとした。