(平成27年度決算検査報告参照)
1 本院が求めた是正改善の処置及び表示した意見
厚生労働省は、雇用保険法(昭和49年法律第116号)等に基づき、日々雇用される者又は30日以内の期間を定めて雇用される者であって一定の要件を満たす者(以下「日雇労働被保険者」という。)が失業した場合に、その生活の安定を図るために日雇労働求職者給付金(以下「日雇給付金」という。)を支給している。日雇給付金の支給に当たり、公共職業安定所は、日雇労働被保険者が労働の意思及び能力を有するのに職業に就くことができない状態であると認める場合には、その日の失業の認定(以下「失業認定」という。)を行うなどとなっている。また、日雇労働被保険者が一定期間以上同一の事業主に雇用されたなどの場合は、原則として日雇労働被保険者資格を失い、一般被保険者等として取り扱うこととなっている(以下、この取扱いを「一般被保険者等への切替え」という。)。しかし、日雇給付金の支給に当たり、日雇労働被保険者資格の確認が十分行われておらず、一般被保険者等への切替えなどが適切に行われていない事態、失業認定において日雇労働被保険者の労働の意思の有無等の確認が必ずしも十分に行われていない事態及び支給要件の確認等が十分に行われないまま日雇給付金が支給されていたり、日雇給付金の不正受給を防止するための取組が効果的に行われていなかったりしている事態が見受けられた。
したがって、厚生労働大臣に対して平成28年10月に、次のとおり是正改善の処置を求め、及び意見を表示した。
- ア 都道府県労働局(以下「労働局」という。)等に対して、日雇労働被保険者資格の確認を十分に行い、一般被保険者等への切替えなどの取扱いを適切に行うよう指導すること(会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めたもの)
- イ 労働局等に対して、失業認定に当たり、日雇労働被保険者の労働の意思の有無等を確認するための具体的な方法等を業務取扱要領等に明示するなどして、日雇労働被保険者の労働の意思の有無等の確認を十分に行うよう指導すること(同法第36条の規定により意見を表示したもの)
- ウ 労働局等に対して、日雇労働被保険者に対する支給要件の確認を十分に行わせるとともに、事業所調査を計画的に実施させるなどして、日雇給付金の不正受給を防止するための取組を効果的に実施するよう指導すること(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めたもの)
2 当局が講じた処置
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、28年12月に労働局に対して通知を発したり、業務取扱要領及び不正受給対策業務関係要領を改正したりするなどして、次のような処置を講じていた。
- ア 労働局等に対して、失業認定や事業所調査の際に、日雇労働被保険者の就労実態等により日雇労働被保険者資格の確認を十分に行い、一般被保険者等への切替えなどの取扱いを適正に行うよう指示した。
- イ 労働局等に対して、失業認定に当たり、日雇労働被保険者の労働の意思の有無等を確認するために、就労状況等の確認に使用する書類等を不正受給対策業務関係要領等に具体的に示した上で、日雇労働被保険者に対する聴取等によりその確認を十分に行うよう指示した。
- ウ 労働局等に対して、日雇労働被保険者に対する就労状況の聴取等により支給要件の確認を十分に行わせるとともに、調査すべき事業所の選定基準や調査内容等を具体的に示した上で計画的な事業所調査等を実施させることとし、不正受給を防止するための取組を効果的に実施するよう指示した。