厚生労働省は、介護保険法(平成9年法律第123号)等に基づき、市町村(特別区、広域連合及び一部事務組合を含む。以下同じ。)が実施主体として実施する包括的支援事業等の地域支援事業に対して地域支援事業交付金(以下「交付金」という。)を交付して、その実施を助成している。市町村は、包括的支援事業等を実施するに当たり、自ら地域包括支援センターを設置することができるほか、社会福祉法人等に対して、包括的支援事業の実施を委託することができることとなっており、この場合、委託を受けた社会福祉法人等は、自ら同センターを設置することができることとなっている。地域包括支援センターは、包括的支援事業を実施するほか、市町村から指定介護予防支援事業者の指定を受けた場合には、介護保険事業の一環として、指定介護予防支援を行うこととなっており、指定介護予防支援を行った場合は介護報酬の支払を受けることとなっている。そして、包括的支援事業の一つである介護予防ケアマネジメントと指定介護予防支援とは、制度としては別のものであるが、その実施に当たっては、共通の考え方に基づき、一体的に行われるものとされており、地域包括支援センターの職員は、包括的支援事業に係る業務と指定介護予防支援に係る業務とを兼務することができることとなっている(以下、両業務を兼務する職員を「兼務職員」という。)。しかし、市町村において、兼務職員が指定介護予防支援に係る業務に従事した場合には所定の介護報酬が支払われていることを考慮することなく、兼務職員に係る人件費や委託契約に基づき社会福祉法人等に支払った委託費を包括的支援事業の対象経費として、これにより交付金の交付を受けている事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、市町村に対して、交付金の交付額の算定に当たっては、指定介護予防支援に係る業務については所定の介護報酬が支払われることを踏まえ、同業務の実施に要した経費に相当する額を交付金の対象経費から適切に控除するなど、交付額の算定を適正なものとするための具体的な算定方法を示し、周知するよう、厚生労働大臣に対して平成28年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、29年6月に地域支援事業交付金交付要綱を改正して、交付金の交付額の算定に当たっては、指定介護予防支援に係る業務の実施に要した経費に相当する額を交付金の対象経費から控除することなどとする算定方法を定め、同月に通知を発して、改正した同要綱を都道府県を通じて市町村に周知する処置を講じていた。