厚生労働省は、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づき、国民健康保険の保険者である市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)に対して療養給付費負担金を、国民健康保険組合に対して療養給付費補助金(以下、市町村と国民健康保険組合とを合わせて「市町村等」といい、また、療養給付費負担金と療養給付費補助金とを合わせて「療養給付費負担金等」という。)を交付しており、その交付額は、療養の給付に要する費用の額等(以下「医療給付費」という。)を基に算定することとなっている。また、同省は、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)に基づき、後期高齢者医療制度の運営主体である後期高齢者医療広域連合に対して後期高齢者医療給付費負担金を交付しており、その交付額は、療養の給付等に要した費用の額等を基に算定することとなっている。そして、医療機関等が偽りその他不正の行為によって療養の給付等に関する費用の支払を受けたときは、市町村等又は後期高齢者医療広域連合は、当該医療機関等に対して、その支払った額を返還させるほか、当該返還させる額に100分の40を乗じて得た額(以下「加算金」という。)を支払わせることができることとなっている。また、同省の通知によれば、法令に基づく徴収金返還金等の収入があるときは、国庫補助金の算定に当たり、国庫補助事業の総事業費から当該収入額を控除することとされており、その具体的な取扱いは、別途、各国庫補助金の交付要綱によることとされている。そして、同省は、加算金について、法令に基づく徴収金返還金等の収入に該当するものとしており、後期高齢者医療給付費負担金の交付額の算定に当たっては、同負担金の交付要綱に基づき、療養の給付等に要した費用の額から加算金の額を控除することとなっている。しかし、療養給付費負担金等の交付額の算定については、国民健康保険療養給付費等負担金等交付要綱(以下「交付要綱」という。)等に加算金の取扱いに関する定めがなく、市町村等において、療養給付費負担金等の交付額の算定に当たり、加算金の額を医療給付費の額から控除していない事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、療養給付費負担金等の交付額の算定に当たり、加算金の額を医療給付費の額から控除することを交付要綱等に明記して、その控除方法を定めるとともに、都道府県を通じて、市町村等に対して周知するよう、厚生労働大臣に対して平成28年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、29年4月に交付要綱を改正して、療養給付費負担金等の交付額の算定に当たっては、加算金の額を医療給付費の額から控除することを明記して、その控除方法を定めるとともに、同月に通知を発し、都道府県を通じて市町村等に対して周知する処置を講じていた。