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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
  • 平成27年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(6) 第三者行為災害において取得した求償権の債権管理等について


平成27年度決算検査報告参照

1 本院が要求した改善の処置

厚生労働省は、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)に基づき、被災労働者等に対して保険給付を行っている。同法によれば、政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為等によって生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権(以下「求償権」という。)を取得するとされている。そして、求償権の管理に当たっては、国の債権の管理等に関する法律(昭和31年法律第114号)、会計法(昭和22年法律第35号)等(以下、これらを合わせて「会計法令」という。)に基づき、時効中断の効力を有する納入の告知を行うなどの適切な債権管理を行う必要がある。しかし、厚生労働省は、通達において、保険給付の原因である事故が無資力又はこれに近い者の行為によって生じた場合等については、求償権の行使を差し控えることとしていたため、都道府県労働局(以下「労働局」という。)において、会計法令に定める債権管理事務が適切に行われず求償権が時効によって消滅していたり、必ずしも債権の回収が困難であったとは認められないのに求償権の行使が差し控えられていたりするなどしている事態が見受けられた。

したがって、厚生労働省において、通達を改正するなどして、無資力等の状態にある第三者に係る事案について、会計法令に基づき納入の告知、履行延期の特約等の手続を適切に行うこととしたり、労働局にこれらの手続を適切に行うよう周知徹底を図るとともに、上記求償権の行使が差し控えられていた事案のうち求償権が時効によって消滅していないものについては、改めて調査確認を行うとともに、個別の事情等も考慮した上で、速やかに納入の告知等を行うよう指示したりするよう、厚生労働大臣に対して平成28年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。

2 当局が講じた処置

本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。

ア 29年1月に通達を改正するなどして、無資力等の状態にある第三者に係る事案について、会計法令に基づき納入の告知、履行延期の特約等の手続を適切に行うこととした。

イ アに基づき、同年2月に労働局の担当課長を対象として開催した会議において、労働局が納入の告知、履行延期の特約等の手続を適切に行うよう周知徹底を図った。また、前記求償権の行使が差し控えられていた事案のうち求償権が時効によって消滅していないものについては、28年12月に関係労働局に対して事務連絡を発して、当該労働局において改めて調査確認を行うとともに、個別の事情等も考慮した上で、速やかに納入の告知等を行うよう指示した。