林野庁は、立木の状態で木材を販売する立木販売を行っており、立木販売においては、立木の伐倒、造材、集材等の作業を立木の買受者(買受者が作業を委託した森林組合、業者等の林業事業体を含む。以下同じ。)が行うこととしている。立木販売の契約に係る予定価格は、各森林管理局が制定した予定価格を算定するための基準(以下「積算基準」という。)等に基づいて、丸太の価格から買受者が負担することになる立木の伐倒、造材、集材等の作業に係る経費等を差し引くなどして算定されている。一方、林野庁は、低コストで効率的な木材生産を実現するために、林業事業体に対して多機能で高性能な林業機械(以下「高性能林業機械」という。)の購入に対する補助等を行い、その普及・定着を図っている。しかし、北海道、東北、九州各森林管理局(以下「3森林管理局」という。)において、高性能林業機械の普及が進み、立木販売に係る造材作業及び集材作業においても高性能林業機械が多数使用されているにもかかわらず、造材作業及び集材作業の両方又は一方に係る経費の積算に当たり、高性能林業機械の使用実態を積算基準に反映させることなく、従来型の林業機械を採用することとして積算している事態が見受けられた。
したがって、林野庁において、3森林管理局に対して、高性能林業機械の使用実態を把握して、これを積算基準に反映させて、立木販売に係る造材作業及び集材作業に係る経費について実態に即した積算を行わせるよう、林野庁長官に対して平成28年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
本院は、林野庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、林野庁は、本院指摘の趣旨に沿い、28年11月に3森林管理局に対して通知を発するなどして、高性能林業機械の使用実態を踏まえて積算基準を改正させて、29年4月以降に行う立木販売に係る造材作業及び集材作業に係る経費の積算に適用させることとする処置を講じていた。