林野庁は、森林病害虫等防除事業を実施する都道府県に対して森林病害虫等防除事業費補助金を、また、森林病虫獣害対策等の事業を実施する都道府県に対して森林整備加速化・林業再生整備費補助金を、それぞれ交付している(以下、森林病害虫等防除事業と森林病虫獣害対策の事業とを合わせて「防除事業等」という。)。そして、各都道府県は、自ら防除事業等を実施するほか、管内の市町村等が事業主体として実施する防除事業等に対して補助金を交付している。防除事業等の補助金額は、森林病害虫等防除事業実施要領(以下「要領」という。)等において、都道府県知事が定めた補助単価に事業量を乗じて算定した額(以下「標準価額」という。)と実際に要した経費とを比較して低い方の額を基にするなどして算定することとなっている。そして、防除事業等のうち、松くい虫が運ぶ線虫による松の枯死を予防するために行う松の生立木への薬剤の注入の事業(以下「樹幹注入」という。)に係る補助単価は、資材費、労務費等から構成されており、このうち資材費は、樹幹注入剤の価格等を基に算定されている。しかし、16県で実施された樹幹注入において、各県は、製造業者等から徴取した見積価格をそのまま樹幹注入剤の価格として採用するなどしていて、施工業者等が実際の取引で購入する価格(以下「実勢価格」という。)を適切に把握しておらず、補助単価を割高に設定して、標準価額を割高に算定している事態が見受けられた。
したがって、林野庁において、要領等を改正して、都道府県が樹幹注入剤の実勢価格を適切に把握するよう定めたり、都道府県に対して上記の改正内容を周知して、都道府県が毎年度の補助単価の設定の際に樹幹注入剤の取引の実態を十分に把握して適切な補助単価を設定するよう周知したりするよう、林野庁長官に対して平成28年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
本院は、林野庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、林野庁は、本院指摘の趣旨に沿い、29年3月に要領を改正して、都道府県が樹幹注入剤の取引の実態に係る調査を毎年度行って実勢価格を適切に把握して、その結果を踏まえて補助単価を設定するよう定めるとともに、同年4月に開催した会議において、都道府県に対して要領の改正内容を周知する処置を講じていた。