農林水産省は、都市と農山漁村の共生・対流を推進することなどを目的として、平成25年度から、都市農村共生・対流総合対策事業(以下「共生・対流事業」という。)を実施する事業主体に対して、都市農村共生・対流総合対策交付金を交付している。共生・対流事業における取組の一つである集落連携推進対策について、事業主体は、事業の応募に当たって、交流人口、売上げ及び雇用に係る数値目標を設定することとなっており、地方農政局等は、事業実施提案書(以下「提案書」という。)の採択に当たって、数値目標の設定は妥当であるか、事業完了後に自立的、継続的な取組が可能であるかなどについて審査することとなっている。また、地方農政局等は、提案書の採択後に事業主体が作成する共生・対流促進計画(以下「促進計画」という。)について、自立的、発展的な取組であることなどを要件として、都市農村共生・対流総合対策交付金実施要綱等に照らして適当であると認める場合はこれを承認することとなっている。そして、地方農政局等は、事業開始年度の翌年度以降、事業の実施状況、数値目標の達成状況等の各評価項目について評価し、これらの結果を踏まえて、総合的評価がC(低調)とされた事業について、その要因を分析するなどした上で、取組の改善を図るための重点指導を実施することとなっている。しかし、集落連携推進対策について、数値目標が適切に設定されていないのに提案書の採択及び促進計画の承認がされている事態、提案書や促進計画に記載され、事業完了後に自立的、継続的な取組が可能であるかについて審査を受け、採択及び承認がされている取組の実施が低調となっていたり、数値目標の達成率が低調となっていたりしている事態並びに取組の実施や数値目標の達成率が低調となっているにもかかわらず、重点指導が十分に活用されていない事態が見受けられた。
したがって、農林水産省において、実施要綱等に数値目標の設定方法を定めるなどして、事業主体に対して、集落連携推進対策で実施する取組に対応した数値目標を適切に設定するよう指導したり、地方農政局等に対して、提案書の採択及び促進計画の承認に当たり、数値目標の設定の妥当性及び事業完了後の自立的、継続的な取組への展開の可能性について適切に審査するよう指導したり、事業主体及び地方農政局等に対して、事業完了後に自立的、継続的な取組へ展開していくことの重要性について周知するとともに、重点指導の対象とする範囲を拡充するなどした上で、地方農政局等に対して、取組の実施や数値目標の達成率が低調となっている事業主体に対して適時適切な重点指導を行うように指導したりするよう、農林水産大臣に対して28年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、共生・対流事業を組み込んで28年度に新設した農山漁村振興交付金事業において、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 28年10月及び11月に地方農政局等を通じて事業主体に対して通知を発したり、29年2月に公表した公募要領において数値目標の設定方法を示したりなどして、数値目標を適切に設定するよう指導した上で、同年3月に実施要綱等を改正して、取組に対応した数値目標を設定するよう定めた。
イ 28年9月に地方農政局等に対して通知を発したり、アの公募要領において、実施する事業が自立的、継続的なものとなるために取り組む内容を提案書に記載させることを具体的に示したり、担当者会議で数値目標の設定例を示したりなどして、提案書の採択等に当たっては、取組に対応した数値目標及び事業完了後も自立的、継続的に実施していく方策を事業主体に確実に提案書等に記載させ、数値目標の設定の妥当性及び事業完了後の自立的、継続的な取組への展開の可能性について適切に審査するよう指導した。
ウ 28年9月に地方農政局等に対して通知を発して、事業完了後に自立的、継続的な取組へ展開していくことの重要性について周知した。これを受けて地方農政局等は、同年10月及び11月に事業主体に対して通知を発して上記の趣旨を周知した。また、同年9月に発した通知において、取組の実施や数値目標の達成状況が低調となる場合に、地方農政局等が事業主体に対して改善を促すための重点的な指導、助言等を行うことを示し、さらに、アの実施要綱等の改正において、重点指導の対象とする範囲を拡充するなどして、適時適切な重点指導を行うよう指導した。