水産庁は、平成20年度に水産物供給基盤機能保全事業を創設して、漁港施設等の機能保全計画の策定及び同計画に基づく漁港施設等の機能保全対策を実施するための工事(以下「機能保全工事」という。)を行う都道府県又は市町村に対して国庫補助金を交付している。そして、同庁が定めたガイドラインによれば、漁港管理者(漁港が所在する都道府県又は市町村)において、施設の現況把握、機能診断の実施、機能保全対策の検討等を経て機能保全計画の策定を行い、同計画に定めた日常管理計画に基づく点検を行うとともに、計画的に機能保全対策を実施し、これらを通じて得られた施設情報を蓄積し及び活用して効率的な維持管理を行うなどの取組が重要であるとされている。しかし、機能保全計画に沿って機能保全工事が実施されていない事態、機能保全計画において定めた日常管理計画に基づく点検の結果が適切に記録及び保存されておらず、老朽化の進行状況が確認できない事態、施設情報が保存されておらず、機能保全計画の策定等に活用されていない事態が見受けられた。
したがって、水産庁において、漁港管理者に対して、施設の効率的な維持管理を図る上で、機能保全計画に基づいて機能保全工事や点検結果の記録及び保存を適切に実施すること並びに施設情報を保存することの重要性を周知徹底して、機能保全計画に基づいて施設の維持管理を効率的に行うことを助言するよう、水産庁長官に対して28年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、水産庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、水産庁は、本院指摘の趣旨に沿い、28年12月に関係都道府県に対して通知を発して、漁港管理者として、機能保全計画に基づいて機能保全工事や点検結果の記録及び保存を適切に実施すること並びに施設情報を保存することの重要性を周知徹底するとともに、漁港管理者である関係市町村にその旨を周知徹底するよう求めて、機能保全計画に基づいて施設の維持管理が効率的に行われるよう助言するなどの処置を講じていた。