国土交通省は、市街地の防災性の向上等を図るために、都市の防災構造化等を総合的に推進する都市防災総合推進事業(以下「都市防災事業」という。)を実施する地方公共団体等に対して、社会資本整備総合交付金等を交付している。そして、市区町村が地震防災対策として策定した「地震に強い都市づくり推進五箇年計画」に基づく場合は、交付対象施設の特例として、災害時の情報通信を確保するために情報の送受信等を行うのに必要な施設(以下「防災情報通信ネットワーク」という。)を都市防災事業により整備できるとされている。防災情報通信ネットワークの整備として防災行政無線の設備を建物に設置する場合は、地震発生時に有効に機能するよう、耐震診断により耐震性が確保されていることが確認できているなどの建物に設置する必要がある。しかし、27市区町において、防災行政無線の設備が、耐震性が確保されていない建物又は耐震診断が行われておらず耐震性が確保されているか確認できない建物に設置されているなどして、地震発生時に有効に機能しないおそれがある事態が見受けられた。
したがって、国土交通大臣に対して平成28年10月に、次のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求めた。
本院は、国土交通本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、国土交通省は、本院指摘の趣旨に沿い、28年12月に都道府県等に事務連絡を発するなどして、次のような処置を講じていた。
ア 27市区町に対して、防災行政無線の設備のうち耐震性が確保されていない建物等に設置されている設備について、地震発生時に有効に機能させるために、耐震診断や設備の移設等の対策方法、時期等の各設備に応じた必要な措置を講ずるための計画を29年2月までに策定させて、当該計画に基づき改善させることとし、改善の進捗状況について定期的に確認することとした。
イ 地方公共団体等に対して、都市防災事業により整備する防災情報通信ネットワークを地震発生時に有効に機能させるために、整備に当たっては、その設備の設置場所に係る耐震性を確保しなければならないことについて周知した。