国土交通省は、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸するなどのために、公営住宅等を整備する地方公共団体(以下「事業主体」という。)に対して社会資本整備総合交付金を交付している。柱、土台、筋交いなどで骨組みを構成する木造軸組工法により建築する公営住宅等(以下「木造公営住宅等」という。)は、建築基準法(昭和25年法律第201号)等に基づき、地震等により生ずる水平力に抵抗するために、柱と柱の間に筋交いなどが設置された壁(以下「耐力壁」という。)を設計計算上必要な長さ以上、釣合い良く配置しなければならないとなっている。そして、耐力壁を構成する柱は、水平力により生ずる引抜力に抵抗するために、建築基準法等に基づく告示「木造の継手及び仕口の構造方法を定める件」等に基づき、必要な引抜耐力を有する金物等を選定して土台等と接合することとなっている。しかし、建築物の安全を確保する上で重要な建物の外側の隅の柱(以下「出隅の柱」という。)に取り付けた金物の引抜耐力が不足するなど、設計及び施工が適切でない状態が継続して見受けられているにもかかわらず、国土交通省において、建築技術系の専門知識を有した職員がいない事業主体の実態等を踏まえた実効性のある再発防止策を講じていないなどの事態が見受けられた。
したがって、国土交通省において、木造公営住宅等の建築に当たり、出隅の柱と土台等とを接合する金物等の設計や施工が適切に行われているかなどの確認等に重点を置いたチェックリストを作成して、事業主体がチェックリストを活用した工事監理等の状況を設計事務所等に報告させてその内容の確認等を行うことができるようにするなど、実効性のある再発防止策を検討して、事業主体に対してこれを周知するよう、国土交通大臣に対して平成28年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
本院は、国土交通本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、国土交通省は、本院指摘の趣旨に沿い、木造公営住宅等の建築に当たり出隅の柱と土台等とを接合する金物等の設計や施工が適切に行われているかなどの確認等を行うことができるチェックリストを作成した。そして、29年3月に都道府県及び政令市に対して通知を発して、事業主体がチェックリストを活用した工事監理等の状況を設計事務所等に報告させてその内容の確認等を行うことができるようにするなどの再発防止策を事業主体に対して周知する処置を講じていた。