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  • 平成28年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 環境省|
  • 平成27年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

除染事業等における仮置場の整備について


平成27年度決算検査報告参照

1 本院が要求した適宜の処置及び求めた是正改善の処置

環境省は、「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(平成23年法律第110号)に基づき、国が指定した地域における除染等の措置等、廃棄物の収集、保管等を実施しており、除染等の措置等に伴い除去した汚染土壌(以下「除去土壌」という。)等及び収集した廃棄物をそれぞれの仮置場(以下、それぞれ「除染仮置場」「廃棄物仮置場」という。)に一時保管することとしている。除去土壌等は、フレキシブルコンテナ等(以下「コンテナ」という。)に詰めて除染仮置場に運搬して、コンテナを台形状に積み上げて保管し、除去土壌等に含まれる放射性物質の流出及び雨水の浸入を防止するために、コンテナ全体を遮水シート等で密閉することとなっている。そして、コンテナが遮水性を有していない場合、除去土壌等から放射性物質を含む水が浸出して遮水シート内にたまるおそれがあることから、除染仮置場の造成工事において、その浸出水を集水するために、基礎底面に勾配を設けて集水管及び集水タンクを設置し、浸出水中の放射性物質濃度を測定するなどして、安全に管理されていることを確認することになっている。また、部外者の立入りが可能となる場所に除染仮置場及び廃棄物仮置場を整備するときは、金属製の目隠しフェンス(以下「囲い柵」という。)等を設置することとしている。しかし、除染仮置場の設計に当たり、基礎地盤の沈下を考慮せずに集水勾配を決定しており、基礎地盤の沈下量の最大想定値に基づく集水勾配が逆勾配となって浸出水の集水を適切に行えず、浸出水の放射性物質濃度を測定することができなくなるおそれがあるなどの事態並びに除染仮置場及び廃棄物仮置場の囲い柵の設計に当たり、設計基準がなく、現地の状況を踏まえた設計風速及び安全率を用いて設計を行っていない事態が見受けられた。

したがって、環境大臣に対して平成28年10月に、次のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求めた。

  • ア 除染仮置場の造成工事について、上載荷重等により生ずるおそれのある基礎地盤の沈下を考慮した設計方法等を策定するとともに、沈下が見受けられた際の対応について検討を行い、その方策を定めること(会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めたもの)
  • イ 除染仮置場及び廃棄物仮置場の囲い柵に作用する設計風速、安全率等について検討し、現地の状況を踏まえた設計基準を策定するとともに、策定した設計基準に基づき安定計算を行い必要な措置を講ずること(同法第34条の規定により是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたもの)

2 当局が講じた処置

本院は、環境本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、環境省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。

ア 29年5月に、除染仮置場の造成に当たっては、沈下の予測結果を踏まえて排水勾配の見直しを行うなど、コンテナ等の上載荷重等により生ずるおそれのある基礎地盤の沈下を考慮した設計方法を策定した。また、沈下が見受けられた際の対応について検討した結果、既存の仮置場等において沈下のおそれがあるものについては、必要に応じて地盤の状況等を確認しながらコンテナの積上げ段数を制約するなどの取扱いを定めた。

イ 除染仮置場及び廃棄物仮置場の囲い柵については、28年11月までに、現地の状況を踏まえた設計風速及び安全率を用いて設計し、補強工事を実施した。そして、29年5月に上記の囲い柵に作用する設計風速、安全率等について現地の状況を踏まえた設計基準を策定し、補強工事実施後の囲い柵について、改めて当該設計基準に基づき安定計算を行い、所要の安全度が確保されていることを確認した。