日本私立学校振興・共済事業団(以下「事業団」という。)は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、私立大学等を設置する学校法人に対して、私立大学等経常費補助金(以下「補助金」という。)を交付しており、私立大学等における特定の分野、課程等に係る教育の振興等のために特に必要があると認めるときは、補助金を増額して交付すること(以下「特別補助」という。)ができることとなっている。そして、事業団は、大学における社会人の受入れを促進するために、社会人の就学を促進する取組を実施している私立大学等を設置する学校法人に対して、社会人の組織的な受入れに係る特別補助を行っている(以下、この特別補助の補助金を「社会人受入れ補助金」という。)。しかし、社会人受入れ補助金の算定対象となる社会人学生について、就業している者であることなどの要件は設けられておらず、当該年度の4月1日現在で25歳以上の者で、永続的に日本に生活拠点を置かず一時的な滞在を予定している外国人留学生を除くこと(以下「25歳以上要件」という。)のみが要件となっているため、出産、育児、就職等やむを得ない理由がないのに卒業に必要な単位を取得できず修業年限を超えて在籍した結果、25歳以上要件を満たすこととなった学生(以下「修業年限を超えた学生」という。)が算定対象に含まれていたり、研究科に在籍する学生のうち25歳以上要件を満たす者が一律に算定対象に含まれていたりしている事態が見受けられた。
したがって、事業団において、社会人受入れ補助金の算定対象に、修業年限を超えた学生を含めたり、研究科に在籍する学生のうち25歳以上要件を満たす者を一律に含めたりすることとならないようにその要件等を見直すことにより、社会人受入れ補助金が社会人受入れを促進する意義等を踏まえた効率的、効果的なものとなるよう、日本私立学校振興・共済事業団理事長に対して平成28年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、事業団において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、事業団は、本院指摘の趣旨に沿い、29年度からの社会人受入れ補助金の算定対象について、学部等に関しては、修業年限を超えた学生を含めることとならないよう、補助対象年度の25歳以上の入学者等に、また、研究科に関しては、研究科に在籍する学生のうち25歳以上要件を満たす者を一律に含めることとならないよう、文部科学省が実施している学校基本調査における社会人の定義(注)に該当する補助対象年度の入学者に、要件等をそれぞれ変更するなどして、29年5月に各学校法人に対して事務連絡を発して周知するなどの処置を講じていた。