東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社(以下、これらの3会社を総称して「東日本等3会社」という。)、本州四国連絡高速道路株式会社、首都高速道路株式会社及び阪神高速道路株式会社(以下、これらの6会社を総称して「高速道路6会社」という。)は、高速道路の大口・多頻度利用者を対象にETC(有料道路自動料金収受システム)の利用を前提とした大口・多頻度割引制度を実施している。そして、高速道路6会社は、高速道路の構造を保全し又は交通の危険を防止するために、道路管理者(国土交通省等)の権限を代行する独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構からの要請により、道路法(昭和27年法律第180号)の規定に違反して総重量等が車両制限令(昭和36年政令第265号)で定める最高限度を超えるなど、道路法令に違反して通行している車両の通行の禁止又は制限のために必要な措置等を講じている。また、高速道路の通行者の中には、大口・多頻度割引の利益を享受する一方で、道路法令違反により道路橋等の構造物の劣化、重大事故等を引き起こすなどして高速道路6会社に対して劣化対策及び安全対策に係る費用負担を増大させるなどの不利益を与えている者(以下「道路法令違反者」という。)が多数存在していることから、東日本等3会社は、交通管理部門及び料金徴収部門が連携して割引停止措置等を実施しており、さらに、高速道路6会社は、平成28年10月から新たに、割引停止措置等について統一的な運用を実施している。しかし、総重量等の違反の程度に応じた違反点数が付与されていない軸重(車両の重量がそれぞれの車軸に掛かる荷重)超過等の違反や道路法の規定に係る行政処分の発出基準(以下「措置命令発出基準」という。)未満の違反等を繰り返している道路法令違反者に対して割引停止措置等が実施されておらず、道路法令違反者に対する割引停止措置等の適用要件等が道路構造物の保全、道路法令違反の抑止等に十分実効性のあるものとはなっていないと認められ、高速道路6会社が、大口・多頻度割引の利益を享受する道路法令違反者から道路構造物の劣化等の不利益を受け続けていたり、道路法令違反者に係る割引適用状況に係る情報の共有が各会社間及び各部門間で十分に図られていなかったりしている事態が見受けられた。
したがって、高速道路6会社において、大型車交通の急激な増加等の社会情勢の変化、軸重を自動的に計測する自動軸重計等の整備状況及びこれら機器による取締りの実施状況を考慮し、割引停止措置等に係る更なる強化策として、違反点数が付与されていない軸重超過等の違反や措置命令発出基準未満の違反等に係る道路法令違反者に対しても割引停止措置等を適用するなどのため、利用約款、営業規則、マニュアル等における違反点数の付与・累計方法等適用要件の見直しを適切に行ったり、高速道路6会社間及び各部門間において、道路法令違反者に係る違反履歴情報及び割引適用情報の共有が適切に行われるような体制を整備したりするよう、高速道路6会社の代表取締役社長に対して28年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、高速道路6会社の本社において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、高速道路6会社は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 割引停止措置等に係る更なる強化策として、利用約款等を改正し、当該改正を踏まえて「車両制限令違反者情報の集計及び大口・多頻度割引制度における割引停止措置等の実施マニュアル」(以下「新マニュアル」という。)を制定するなどして、29年4月から、軸重超過等の違反や措置命令発出基準未満の違反に対しても違反点数を付与することとした上で違反点数の累計期間を四半期から2年に延長して、違反点数に係る従来の付与・累計方法では30点未満となる違反を繰り返す道路法令違反者に対しても累計期間中の違反点数に応じて割引停止措置等を適用することとしたり、道路法令違反を理由とする告発について、その事実をもって割引停止措置等を適用することとしたりするなど適用要件の見直しを行った。
イ 高速道路6会社間で新マニュアル等に基づき割引停止措置等の適用に必要な道路法令違反者に係る違反履歴情報を集約して一元的に管理し、違反履歴情報の共有が適切に行えるよう体制を整備するとともに、交通管理部門と料金徴収部門間において違反履歴情報及び割引適用情報の共有が適切に行われるよう高速道路6会社においてその体制を整備した。