本院は、合規性等の観点から、傷病手当金の併給調整が適正に行われているかなどに着眼して、協会本部及び26支部において、平成26、27両年度に傷病手当金の支給決定を行った対象者のうち10,204人に支給された傷病手当金を対象として、申請書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、5支部において次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
5支部は、管内の事業所に勤務していた対象者計33人から申請書の提出を受け、傷病手当金計143,770,007円(支給期間:24年度から28年度まで)の支給決定を行っており、協会本部は、これに基づき同額の傷病手当金を支給していた。
しかし、上記の33人は、同一の疾病等により傷病手当金と障害厚生年金を同じ期間を対象として受けており、また、協会本部が機構から上記の33人に係る年金情報の提供を受けていて、5支部においても年金情報を確認した上で併給調整を行うことができたにもかかわらず、5支部は、上記の33人に支給された傷病手当金について併給調整を行っていなかった。
したがって、前記支給額のうち、同一の疾病等により障害厚生年金の支給を受けている期間に支給された傷病手当金計34,147,943円について適正な支給額を算出すると、計17,712,764円となり、その差額16,435,179円(支給期間:25年度から28年度まで)の併給調整が適正でなく、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、5支部において、協会が機構から年金情報の提供を受けているのに、併給調整の要否についての確認が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
大阪支部は、管内の事業所に勤務していた対象者Aから同一の疾病等により計8回の申請書の提出を受け、平成26年1月25日から27年6月25日までの間の休業日数計499日分に係る傷病手当金計3,992,000円の支給決定を行い、協会本部は、これに基づきAに対して同額の傷病手当金を支給していた。
一方、Aについては、27年12月3日に障害厚生年金の裁定が行われており、26年8月分以降の障害厚生年金が遡及して支給されることとなっていた。
しかし、協会本部は、機構からAに係る年金情報の提供を受けており、同支部は、年金情報を確認した上で併給調整を行うことができたにもかかわらず、併給調整を行っていなかった。
したがって、前記支給額のうち、同一の疾病等により障害厚生年金の支給を受けている期間に支給された傷病手当金計2,632,000円について適正な支給額を算出すると計383,318円となり、その差額2,248,682円の併給調整が適正でなかったと認められる。
なお、本院の指摘により、前記の適正でなかった支給額計16,435,179円は、全て返還の処置が執られた。
これらの適正でなかった支給額を支部ごとに示すと次のとおりである。
支部名 | 併給調整を行う必要があった対象者数 | 左の対象者に支給した傷病手当金の額 | 左のうち併給調整を行う必要がある期間に支給した傷病手当金の額 | 左のうち不当と認める傷病手当金の額 |
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人 | 千円 | 千円 | 千円 | |
神奈川 | 2 | 11,271 | 2,514 | 1,242 |
長野 | 6 | 23,887 | 6,805 | 4,250 |
大阪 | 12 | 51,152 | 11,627 | 5,431 |
兵庫 | 9 | 36,824 | 6,851 | 3,648 |
長崎 | 4 | 20,633 | 6,349 | 1,862 |
計 | 33 | 143,770 | 34,147 | 16,435 |