独立行政法人国際協力機構(以下「機構」という。)は、開発途上地域から教育、保健医療等各分野の開発の中核を担う人材を技術研修員として我が国に招き、それぞれの国が必要とする知識や技術に関する研修等を行う研修員受入事業を実施している。そして、上記研修のうち、我が国が課題を開発途上地域の政府に提案して、当該政府の要請を得て実施する課題別研修について、研修の実施機関である機構の各国際センター及び各支部(以下、これらを合わせて「国際センター」という。)は、帰国した技術研修員(以下「帰国研修員」という。)に対して、研修で学んだ知識等を所属組織においてどのように共有したか、研修中に作成した活動計画をどのように実施したかなどの活動内容を最終報告書に記載して報告させることとしており、これらの内容から得られる教訓等は研修の評価や研修の企画・立案等に活用できるものとなっている。また、機構の各在外事務所及び各支所(以下、これらを合わせて「在外事務所等」という。)において、帰国研修員が開発途上地域の開発の中核を担う人材として活動しているかなどの現況を的確に把握することが重要となっている。しかし、最終報告書が提出されていないなどのため、国際センターにおいて、帰国研修員に係る研修効果が発現しているかを把握できておらず、また、最終報告書を研修の評価や研修の企画・立案等に活用できていない状況となっているなどの事態及び在外事務所等において帰国研修員の現況を的確に把握できない状況となっている事態が見受けられた。
したがって、機構本部において、課題別研修を受講する技術研修員に対して最終報告書の提出の意義や重要性について周知するよう国際センターに指示するとともに、最終報告書の管理及び督促の具体的な方法を検討して、これを国際センターに指示するなどして帰国研修員の活動状況や研修効果の発現状況を的確に把握する体制を整備し、最終報告書を研修の評価や研修の企画・立案等に適切に活用できるようにしたり、帰国研修員の現況把握の具体的な方法を検討して、これを在外事務所等に指示するなどして帰国研修員が開発途上地域における開発の中核を担う人材となっているかなどを的確に把握する体制を整備したりするよう、独立行政法人国際協力機構理事長に対して平成28年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、機構本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、機構は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 機構本部は、29年6月に国際センターに指示して、29年度以降に実施される課題別研修を受講する技術研修員に対して最終報告書の提出の意義や重要性について来日時及び帰国前に周知させるとともに、最終報告書管理簿を作成させ、同管理簿により最終報告書の提出状況を把握して提出期限までに提出されていない場合はメール等の方法により督促させたり、帰国研修員が研修で学んだ知識等の所属組織における共有の状況等が最終報告書へ確実に記載されるようにしたりして、帰国研修員の活動状況や研修効果の発現状況を的確に把握する体制を整備し、最終報告書から得られた教訓等を研修の評価や研修の企画・立案等に適切に活用できるようにした。
イ 機構本部は、同月に在外事務所等に指示して、帰国研修員の名簿を定期的に更新させるとともに、必要に応じて当該名簿を補完するために帰国研修員が任意で組織する同窓会の名簿を入手するなどして帰国研修員の所属組織や職務等の現況を把握させることなどにより、帰国研修員が開発途上地域における開発の中核を担う人材となっているかなどを的確に把握する体制を整備した。