会計検査院は、集中復興期間における復旧・復興事業の実施状況等の総括として、参議院から要請を受けた各事項について、合規性、効率性、有効性等の観点から、①東日本大震災に伴う被災の状況等はどのようになっているか、②復興特会において措置された復旧・復興予算は、どのような経費に配分されているか、予算の執行は計画的、効率的に行われているか、また、復興債の発行及び償還は適時に行われているか、その償還財源として位置付けられている株式の売却等はどのようになっているか、③復興関連基金事業及び復興交付金事業において、使用見込みのない余剰金が基金に滞留するなどしていないか、また、補助事業等、復興関連基金事業、復興交付金事業等の復旧・復興事業について、予算の執行は円滑かつ適切に行われているか、④被災地のうち津波等により甚大な被害を受けた東北3県において、集中復興期間中に実施された復旧・復興事業によりどのような成果が得られているか、⑤原子力災害からの復興再生について、各府省庁、福島県等が実施する事業は円滑かつ迅速に実施されているかなどに着眼して、検査を実施した。
会計検査院は、28年次においては、復旧・復興予算が措置されている16府省庁等を対象として引き続き検査するとともに、東日本大震災による被害を受けた地方公共団体については、特定被災自治体である11道県及び227市町村における被災状況、復旧・復興事業等の実施状況等について検査した。特に東北3県及び管内127市町村に対して、国からの財政支援を受けて実施した復興関連基金事業や復興交付金事業の実施状況、成果等について検査した。また、日本公庫に対して、事業者等への資金繰り支援の成果について検査した。検査に当たっては、14府省庁等の内部部局等並びに4県及び管内45市町村に対して会計実地検査を行うなどして、調書及び関係資料を徴したり担当者等から説明を聴取したりするなどして把握した内容等を基に調査分析を行った。
死者、行方不明者等の人的被害は死者15,893人、行方不明者2,556人等となっており、また、建物被害は全壊121,739戸、半壊279,088戸等となっている(2008_1_1_1_1リンク参照)。
各府省庁が所管する公共施設等の被災の状況は、基盤整備関係では被災地区海岸数677海岸、交通関係では道路(県及び市町村管理区間)における被災路線数6,293路線、農林水産業関係では津波により被災した農地面積21,480ha等となっている。また、全壊等の被害を受けた施設は、医療施設4,158施設、福祉施設1,626施設、学校施設等12,150施設等となっている(2008_1_1_1_2リンク参照)。
29年2月13日現在の避難者数は、全国でなお123,168人に上っており、このうち東北3県の各県内の避難者数は、計77,946人となっていて全体の63%を占めている(2008_1_1_1_3リンク参照)。
復興基本方針では、復興期間は10年間とされ、当初の5年間が集中復興期間と位置付けられて、復興支援の体制、復興施策、事業規模、財源等に関する基本方針が定められた。このうち復興支援の体制について、国は、24年2月に復興庁を設置し、同庁に復興推進会議を設置した。復興施策については、住宅再建・復興まちづくりの加速化のためのタスクフォースの検討の下に、用地取得手続の迅速化、技術者・技能者の確保、資材の円滑な確保等の加速化措置等を実施したり、産業復興の推進に関するタスクフォースの検討の下に、26年6月に産業復興創造戦略を策定したりなどした(2008_1_1_2_1リンク参照)。
さらに、復興基本法に基づき、28年3月に「「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針」が定められた。同方針では、原子力事故災害からの復興再生について、遅くとも29年3月までに避難指示解除準備区域及び居住制限区域の避難指示を解除できるよう環境整備に取り組むことなどとされた(2008_1_1_2_2リンク参照)。
a 復旧・復興に向けた主な取組
24年3月に福島復興再生特別措置法が施行され、国は、同法に基づき福島基本方針を閣議決定して、住民の安全のための除染等による放射能汚染対策を始めとする各種対策を計画的に講ずることとした。除染等による放射能汚染対策について、放射性物質汚染対処特措法に基づき、環境省等は、特措法3事業を実施している。福島第一原発の事故による損害については、原子力損害賠償紛争審査会が損害賠償に関する円滑な合意形成のために、23年8月に賠償すべき損害として類型化が可能なものを示すなどした(2008_1_1_2_2リンク参照)。
b 帰還支援等に向けた取組
国は、避難指示が解除された区域への帰還支援等の取組として24年度に生活環境整備事業及び帰還・再生事業を市町村等に対する委託事業としてそれぞれ創設した。そして、25年度に長期避難者の生活拠点の形成を促進するなどの長期避難者生活拠点形成事業及び福島定住等緊急支援事業を創設した。さらに、25年8月の避難指示区域の見直しの完了を受けて、長期避難者支援から早期帰還までを一括して支援する福島再生加速化交付金を創設して、25年度に創設した2事業及び再生加速化事業を国庫補助事業として実施することとした。また、国は、27年5月に再生加速化事業を拡充して帰還環境整備事業とした。さらに、帰還・再生事業と生活環境整備事業を合わせて生活環境整備・帰還再生事業として再編し、福島再生加速化交付金事業の3事業と生活環境整備・帰還再生事業を合わせた福島復興事業を福島の復興再生の柱として実施している(2008_1_1_2_2_2リンク参照)。
国は、復興期間10年間に係る事業規模と財源の見込みを32兆円程度の規模とする32兆円フレームを示した。32兆円フレームでは、27年度までの集中復興期間に係る事業費を25.5兆円程度、28年度からの復興・創生期間に係る事業費を6.5兆円程度と見込んでいる。
集中復興期間に係る事業費として見込んだ25.5兆円及び25兆円フレームにおける計上済財源の27年度末現在の状況について、事業規模をみると、23年度から27年度までの支出済額27.6兆円程度と28年度への繰越額1.4兆円程度の計29.0兆円程度から、復興財源フレームの対象外経費等を除くなどした事業費は、24.6兆円程度となっている。また、財源をみると、27年度末までに復興特別税収が3.4兆円、歳出削減・税外収入等が11.3兆円程度、日本郵政株式の売却収入が1.4兆円、それぞれ確保されている(2008_1_1_2_3リンク参照)。
a 復旧・復興予算の歳出予算額及び執行状況
集中復興期間において各年度に措置された予算現額の合計額33兆4922億余円の27年度末現在における執行状況は、支出済額27兆6231億余円、繰越額1兆4111億余円、不用額4兆4579億余円であり、集中復興期間5か年度全体の執行率、繰越率、不用率は、それぞれ82.4%、4.2%、13.3%となっている(2008_1_2_1_1リンク参照)。
b 経費項目別の執行状況
集中復興期間における復旧・復興予算について経費項目別の支出済額をみると、「災害対応公共事業関係費」「施設費災害復旧費等」「公共事業等の追加」及び「復興関係公共事業等」の4経費項目で計4兆0144億余円となっている。また、特措法3事業の実施に係る経費項目については、「原子力災害復興関係経費」2兆5087億余円となっていて、累計執行率は、他の経費項目と比べておおむね低くなっている(2008_1_2_1_1_2リンク参照)。
a 財源項目別の歳入の予算・決算
集中復興期間における復旧・復興事業の財源等の予算額及び決算額のそれぞれの計は、予算額が33兆3261億余円、決算額が36兆7576億余円となっている(2008_1_2_1_2リンク参照)。
b 復興債の発行及び償還の状況
集中復興期間における復興債の発行状況をみると、発行計画額計17兆3535億円に対して発行実績額計14兆9932億余円となっている。25年度は復興債は発行されず、26年度においても発行計画額1兆0970億円に対して発行実績額1199億余円と計画の1割程度にとどまっている。27年度は発行計画額1兆9463億円に対して発行実績額1兆3199億余円と計画の約7割となっている。また、復興債の年度末現在額をみると、23年度末の11兆2574億余円から27年度末の7兆2612億余円に減少している(2008_1_2_1_2_2リンク参照)。
集中復興期間における復興財源フレームでは、3会社株式の売却による収入が計4.7兆円程度見込まれているが、27年度末での実績は計2兆4006億余円となっている。今後確保すべき復興財源フレーム計上額は差引で計2.3兆円程度であるのに対して、売却による収入は売却時点の株価に応じて決まることになるが、復興債の償還財源となる日本郵政株式及び東京地下鉄株式の27年度末の残高は、計3兆2788億余円となっている(2008_1_2_1_3リンク参照)。
集中復興期間中の5か年度に東日本大震災関係経費として国から交付された国庫補助金等及び地方交付税のうち、特定被災自治体である11道県及び227市町村に交付されたものは、計13兆4117億余円であり、このうち東北3県及び沿岸31市町村に交付されたものが計11兆4867億余円となっていて全体の85.6%を占めている。また、国からの財政支援に係る類型ごとの交付額について、交付額の合計に占める割合をみると、補助事業等が32.9%と最も高く、次いで地方負担に係る地方財政措置としての震災復興特別交付税22.3%、復興交付金事業21.4%、復興関連基金事業19.4%の順となっている(2008_1_2_2_1リンク参照)。
集中復興期間における特定被災自治体に対する国庫補助金等の交付決定額は、計5兆7936億余円(補助事業執行率88.4%)となっていて、このうち津波等により甚大な被害を受けた東北3県及び管内127市町村への交付決定額は計5兆3267億余円と、交付決定額の9割以上を占めている。特定被災自治体が実施している補助事業等について、事業区分ごとの実施状況をみると、「災害廃棄物処理」及び「被災者支援」の補助事業執行率はそれぞれ99.8%、100%と高くなっているが、「社会基盤施設」及び「漁業」の補助事業執行率はそれぞれ79.1%、77.8%となっている(2008_1_2_2_2リンク参照)。
a 集中復興期間における復興関連基金事業の実施状況
復興関連基金事業157事業の実施状況をみると、国庫補助金等交付額は計4兆4483億余円、27年度末までの基金の取崩額は2兆7683億余円、基金事業執行率は62.2%、27年度末に保有している国庫補助金等相当額は1兆3746億余円となっている(2008_1_2_2_3_2リンク参照)。
b 終了予定年度別及び終了予定年度の延長期間別の実施状況
終了予定年度別にみると、26年度を終了予定年度としている事業が23事業と最も多くなっている。また、集中復興期間の終了後も継続して実施するとしている事業は98事業(27年度末に保有している国庫補助金等相当額1兆3182億余円)となっている。一方、終了期限を定めていない24事業は、原子力災害からの復興再生が長期にわたると想定されている福島県に交付されたものや、除染事業等の原子力災害関係経費に係るものが多くなっている(2008_1_2_2_3_3リンク参照)。
c 復興関連基金事業に係る国庫補助金等の国庫への返納状況等
復興関連基金事業157事業のうち77事業において、各基金団体は27年度末までに3064億余円、28年度(28年8月末現在)に323億余円、計3387億余円の基金残額(運用益を含む。)を国庫に返納している(2008_1_2_2_3_4リンク参照)。
d 集中復興期間内に事業が終了した復興関連基金事業のその後の状況
集中復興期間内に事業の終了期限が到来したり、国庫補助金等交付額の全額を取り崩したりするなどして事業が終了した59事業について終了後の同種事業の実施状況をみると、基金方式を採らずに実施していたもの(一般会計又は復興特会以外の特別会計から交付された国庫補助金等によるものを含む。)は12事業となっている(2008_1_2_2_3_5リンク参照)。
a 復興交付金の交付等の状況
復興交付金事業について、集中復興期間において8道県及び96市町村に復興交付金2兆8720億余円が交付されていて、このうち約9割に当たる7県及び88市町村が基金型事業を選択していて、23年度から27年度までの5か年度の実施計画分に係る交付額は計2兆6415億余円、取崩額は計1兆6326億余円、基金事業執行率は61.8%となっている(2008_1_2_2_4リンク参照)。
b 集中復興期間における復興交付金事業の完了等の状況
集中復興期間内に復興交付金事業計画に記載された復興交付金事業を全て完了している特定被災自治体数は3道県及び30市町村であり、全体の31.7%となっている。27年度末現在において実施中である基幹事業1,612事業のうち当初の復興交付金事業計画において完了予定時期を27年度末以前としていた1,297事業を対象に延長期間の状況をみると、3年以上延長している事業は479事業となっていて、5年以上延長している事業も134事業ある状況となっている。基幹事業の別にみると、道路事業及び防災集団移転促進事業において、3年以上延長している事業数が特に多くなっている(2008_1_2_2_4_2リンク参照)。
c 集中復興期間における基金型事業の実施状況
基金型事業について、基幹事業、効果促進事業(個別配分)及び効果促進事業(一括配分)別にみると、基金事業執行率はそれぞれ64.8%、67.9%、31.2%、取崩未済額はそれぞれ8158億余円、226億余円、1669億余円となっており、特に効果促進事業(一括配分)の基金事業執行率が低くなっている。
効果促進事業(一括配分)は、24年度から27年度までの4か年度の実施計画分に係る交付額計2429億余円のうち事業内容が未定の交付額が1099億余円あり、このうち計8億余円が事業内容の全てが未定となっている。また、上記の1099億余円の約2割の206億余円は交付されてから3年以上にわたり事業内容が未定のままとなっている。さらに、事業内容が決定していても実際には執行されていない状況も見受けられる(2008_1_2_2_4_3リンク参照)。
集中復興期間における福島再生加速化交付金事業の実施状況をみると、長期避難者生活拠点形成事業(25年度から27年度までの実施計画分に係る交付額計1816億余円、執行額及び取崩額計639億余円)では、福島県及び10市町村は単年度型事業により実施していて、交付額計108億余円、執行額計73億余円となっている。また、福島県及び7市町村は基金型事業により実施していて、25年度から27年度までの3か年度分に係る交付額計1708億余円、27年度末までの取崩額計565億余円、基金事業執行率33.0%となっている。福島定住等緊急支援事業(25年度から27年度までの実施計画分に係る交付額計141億余円、執行額計117億余円)では、27市町村が事業を実施していて、交付額計141億余円、執行額計117億余円となっている。帰還環境整備事業(25年度から27年度までの実施計画分に係る交付額計302億余円、執行額及び取崩額計238億余円)では、福島県、27市町村及び2一部事務組合は単年度型事業により実施していて、交付額計247億余円、執行額計219億余円となっている。さらに、福島県及び7市町村は基金型事業により実施していて、25年度から27年度までの3か年度分に係る交付額計55億余円、取崩額計19億余円、基金事業執行率35.8%となっている(2008_1_2_2_5リンク参照)。
集中復興期間の交付税特会における震災復興特別交付税に係る経費の執行状況をみると、累計繰入額3兆7642億余円に対する累計支出済額は3兆1884億余円(累計の執行率84.7%)となっている(2008_1_2_2_6リンク参照)。
集中復興期間における東北3県及び沿岸31市町村の普通会計に係る歳入歳出決算の状況についてみると、東北3県の歳入総額は、22年度の2兆4460億余円から、23年度に5兆6113億余円と大幅に増加した後、24年度から26年度までは減少が続き、27年度に微増に転じて4兆6037億余円と推移しており、期間平均の対22年度比は200.8%となっている。沿岸31市町村の歳入総額は、22年度の9619億余円から、23年度1兆8428億余円、24年度3兆0304億余円と増加した後、25年度以降は減少が続いて、27年度2兆3574億余円と推移しており、期間平均の対22年度比は256.6%となっている(2008_1_2_2_7リンク参照)。
東北3県の歳出総額は、22年度の2兆3321億余円から、23年度に5兆2862億余円と大幅に増加した後、24年度から26年度までは減少が続き、27年度に微増に転じて4兆2447億余円と推移しており、期間平均の対22年度比は193.8%となっている。沿岸31市町村の歳出総額は、22年度の9250億余円から、23年度1兆7214億余円、24年度2兆8117億余円と増加した後、25年度以降は減少が続いて、27年度2兆0814億余円と推移しており、期間平均の対22年度比は242.0%となっている(リンク参照)。
22年度から27年度までの各年度末現在における基金の状況をみると、東北3県及び沿岸31市町村の積立金現在額は、22年度がそれぞれ2974億余円、1897億余円であったのに対して、25年度にそれぞれ1兆6859億余円、1兆5617億余円に達している(2008_1_2_2_7_2_3リンク参照)。
a 復興関連基金事業
23年度第3次補正予算に計上された費用のうち国会の議決を受けた復興費用に関する権利義務は、特別会計に関する法律の一部を改正する法律附則第3条の規定に基づき、翌年度以降に繰り越して使用することとされたものを除き、復興特会に帰属することとなっているため、23年度第3次補正予算に復興費用として計上されて23年度内に交付された国庫補助金等について、使用する見込みのないなどの額を国庫に返納させる場合、国は、復興特会に返納させることとなる。しかし、国土交通省において、使用する見込みのない額83億8631万余円を誤って復興特会ではなく一般会計に返納させている事態が見受けられた。
一方、23年度第1次補正予算又は23年度第2次補正予算に計上された費用等のうち使用する見込みのないなどの額について、国はこれまで、一般会計に返納させた後、その額を復興特会に繰り入れて復旧・復興事業の費用等の財源に充てられるように、その原因となった支出を把握するなどして復興税外収入として別途整理するなどの所要の措置を執ってきている。しかし、この措置が執られていない事態が、文部科学省及び農林水産省で計42億5317万余円見受けられた(2008_1_2_2_8_1リンク参照)。
b 復興交付金事業
復興庁が公表している第1回から第14回までの復興交付金に係る交付可能額の通知時における復興交付金配分計画表を確認するなどしたところ、27年2月に復興庁が岩手県陸前高田市に通知した交付可能額に算定の誤りがあり、同市も同様に算定を誤って復興交付金の交付申請を行った結果、8541万余円が過大に交付されていた事態が見受けられた。また、復興交付金の交付可能額の算定について、過年度の交付可能額の通知時において制度要綱で定められた効果促進事業費(一括配分)の上限額を超えて交付可能額が算定されている事態が、2市分で計15億9946万余円見受けられた(2008_1_2_2_8_2リンク参照)。
東北3県及び沿岸31市町村における25の施策項目の計画事業費は、27年度末現在、計7兆2786億余円であり、これに対する完成分事業費は計2兆2452億余円(うち国庫補助金等計1兆8433億余円)となっている。施策項目別の完成率をみると、100%は「鉄道」「空港」「公営住宅」及び「養殖施設」の4項目であり、80%以上が「港湾」「造成宅地の滑動崩落防止」等の9項目、20%以下が「海岸(防潮堤)」「海岸防災林」「上水道」及び「都市再生区画整理事業」の4項目である。20%以下の4項目は、津波により破壊し、流出した海岸保全施設、その背後地の市街地等の整備に関する施策項目となっている(2008_1_2_3_1リンク参照)。
a 津波防災に関するハード施策に係る復旧・復興事業の状況
防潮堤の整備に係る復旧・復興事業は、27年度末現在、36市町村に所在する576海岸において事業が計画されており、このうち集中復興期間における完成施設数は87海岸、完成率は15.1%となっている。計画事業費1兆3433億余円のうち支出済事業費は4605億余円、事業費進捗率は34.2%、完成分事業費は332億余円(うち国庫補助金等302億余円)となっている。
県別にみると、計画施設数は、岩手県が111海岸、宮城県が370海岸、福島県が95海岸となっていて、それぞれの完成施設数及び完成率は、11海岸、9.9%、54海岸、14.5%、22海岸、23.1%となっている。また、市町村別にみると、27年度末現在、36市町村のうち計画施設数の全てが完成した市町村は1村、計画施設数のうち一部が完成した市町村は17市町村であり、18市町村では完成した防潮堤はない。
27年度末までに事業を実施している556海岸について、26年度末現在と27年度末現在の計画事業費を比較すると、増加したものが184海岸、減少したものが123海岸となっている。また、556海岸から27年度末現在までに完成した87海岸を除く469海岸の完成(予定)年度をみると、26年度末現在の見込みより延長されたものが299海岸と約6割を占め、このうち7海岸は3か年度以上延長されている(2008_1_2_3_2_2リンク参照)。
b 津波防災まちづくりに係る復旧・復興事業の状況
復興土地区画整理事業及び津波復興拠点整備事業による市街地の整備状況をみると、復興土地区画整理事業では計画面積1,532ha、実績面積319ha、整備率20.8%となっており、津波復興拠点整備事業では計画面積260ha、実績面積145ha、整備率55.7%となっている。また、両事業のかさ上げに係る計画面積及び実績面積は、それぞれ761haのうち169ha、143haのうち90haであり、整備率はそれぞれ22.3%、62.9%となっている。
市町村別に全体の整備状況をみると、復興土地区画整理事業について、20市町村のうち整備が完了したものが1村、整備率が80%を超えているものが1町、整備率が20%以下のものが10市町となっている。津波復興拠点整備事業について、整備を実施している16市町のうち整備が完了したものが4市町、整備率が80%を超えているものが1市、整備率が20%以下のものが4市となっている(2008_1_2_3_2_3リンク参照)。
c 津波防災に関するソフト施策に係る復旧・復興事業の状況
沿岸31市町村の津波避難計画の策定状況をみると、27年度末現在、津波避難計画を策定しているのは21市町村で、このうち、東日本大震災前に津波避難計画を策定していたのは5市町となっており、16市町村は東日本大震災後に策定している(2008_1_2_3_2_4_2リンク参照)。
津波情報等の収集・伝達手段の確保に係る機器等の整備状況について、津波監視カメラの整備状況をみると、沿岸31市町村のうち整備が完了したものが14市町、整備中のものが1村、整備していないものが16市町村となっている。また、情報伝達手段の確保に係る通信機器の整備等の実施状況をみると、沿岸31市町村のうち整備等が実施済みとなっている市町村数は、システムの耐災害性の強化が27市町村、Jアラートによる自動起動対象の拡大が28市町村、緊急速報メールの一括送信が29市町村、防災行政無線の整備のうち同報系システムが全ての市町村、移動系システムが24市町村、難聴区域の解消が21市町村となっている(2008_1_2_3_2_4_2_3リンク参照)。
沿岸31市町村における避難施設の指定の状況をみると、全ての市町村が避難所、緊急避難場所等の避難施設を指定しており、27年度末現在の指定数は2,313施設となっていて、東日本大震災前の2,266施設から47施設増加している。しかし、東北地方太平洋沖地震による津波で浸水した地域等に所在する避難施設が緊急避難場所で49施設、避難所で56施設、耐震性の有無を把握していない避難施設が津波避難ビルで4施設、避難所で168施設となっている。また、住民等が避難施設に移動するための誘導標識等が設置されていないものが緊急避難場所で684施設、津波避難ビルで11施設、避難所で630施設となっている。
避難所等の装備の状況をみると、非常用電源が備えられていない避難施設が津波避難ビルで25施設、避難所で497施設、ラジオ等の情報機器がない避難施設が津波避難ビルで62施設、避難所で369施設、備蓄倉庫がない施設が津波避難ビルで56施設、避難所で485施設となっている。
備蓄倉庫が設置されている避難所460施設について、避難者を支援するための備蓄物資の状況をみると、27年度末現在、食事の供与が全くできないものが145施設あり、1日以下が255施設、1日超3日以下が52施設等となっている。また、毛布が不足するものが349施設、非常用電源がないため停電時に照明等の電気製品が使えないものが48施設、石油ストーブが備蓄されていないため暖房を使えないものが234施設となっている(2008_1_2_3_2_4_2_5リンク参照)。
a 被災者等に対する応急仮設住宅の供与
東北3県が整備等を行った建設型応急仮設住宅(整備戸数計52,822戸)及び借上型応急仮設住宅(借上戸数計24,856戸)について、集中復興期間における整備費、維持管理費等をみると、建設型応急仮設住宅の整備費は計3370億余円、維持管理費は計574億余円、撤去費は計14億余円、借上型応急仮設住宅の維持管理費は計1449億余円となっている。建設型応急仮設住宅に係る維持管理費について、集中復興期間における年度別の状況をみると、震災直後の23年度が344億余円とピークとなっており、24年度以降、建設型応急仮設住宅の統廃合や廃止の進捗により減少傾向となっている(2008_1_2_3_3_1リンク参照)。
b 恒久住宅等の整備に係る復旧・復興事業
災害公営住宅整備事業等は、東北3県及び沿岸31市町村のうち岩手、福島両県及び30市町村のほか、その他の22市町村において実施されており、集中復興期間における整備状況をみると、759地区における計画戸数29,575戸に対して16,747戸が完成(完成率56.6%)し、整備が完了した地区に係る整備額は4383億余円となっている。集中復興期間に整備された災害公営住宅の入居の状況等をみると、入居可能戸数15,617戸のうち14,754戸(94.4%)が入居済み又は入居手続中であり、863戸(5.5%)が入居者未定で空室となっている。国土交通省は、各事業主体が災害公営住宅を被災者等に提供するために様々な対策を講じたにもかかわらず入居者未定の空室が生じている場合、事業主体の判断により、災害発生から3年を経過した後、一般向け公営住宅に変更し、被災者等以外に貸与等を行うことはやむを得ないとの見解を示している。
防災集団移転促進事業は、東北3県及び沿岸31市町村のうち22市町村のほか、その他の4市町において実施されており、集中復興期間における整備状況をみると、324地区における計画区画数の8,840区画に対して6,484区画が完成(完成率73.3%)し、整備が完了した地区に係る整備額は1252億余円となっている。集中復興期間に整備された宅地の分譲等の状況をみると、整備された宅地6,484区画のうち5,775区画(89.0%)が分譲等済み又は分譲等手続中であり、709区画(10.9%)が分譲等未定で空き区画となっている。
漁業集落防災機能強化事業は、東北3県及び沿岸31市町村のうち13市町村において実施されており、集中復興期間における整備状況をみると、36地区において計画区画数500区画に対して276区画が完成(完成率55.2%)し、整備が完了した地区に係る整備額は59億余円となっている。集中復興期間に整備された宅地の分譲の状況をみると、整備された宅地276区画のうち257区画(93.1%)が分譲済み又は分譲手続中であり、19区画(6.8%)が分譲未定で空き区画となっている。
都市再生区画整理事業は、東北3県及び沿岸31市町村のうち17市町村において実施されており、集中復興期間における整備状況をみると、50地区における計画区画数10,129区画に対して1,652区画が完成(完成率16.3%)し、整備が完了した地区に係る整備額は59億余円となっている(2008_1_2_3_3_2リンク参照)。
a 各種産業に係る施設等の復旧・復興事業の状況
27年度末現在の東北3県における農水産業に係る施設等の復旧・復興の状況をみると、農地については計画施設数38,718haのうち32,703haが完成(完成率84.4%)し、農業用施設については計画施設数4,838施設のうち3,914施設が完成(完成率80.9%)している。また、漁港施設については計画施設数2,636施設のうち1,645施設が完成(完成率62.4%)し、水産業共同利用施設については計画施設数4,922施設のうち4,637施設が完成(完成率94.2%)している。
グループ補助金による事業の実績をみると、27年度末現在、交付決定を受けた延べ8,937事業者のうち延べ7,207事業者が事業を完了しているが、延べ202事業者が事業を廃止し又は取り消しているほか、延べ1,528事業者が事業を延期するなどしている。また、東北3県におけるリース補助事業の実績をみると、27年度末現在、集中復興期間に6,023件に対して35億余円が交付されており、このうち宮城県が4,361件、24億余円となっている(2008_1_2_3_4_1リンク参照)。
b 農林漁業者、中小企業者等に対する資金繰り支援
農林漁業者等震災特例貸付及び復興特別貸付の22年度(23年3月)から27年度までの間の実績をみると、農林漁業者等震災特例貸付が3442億余円、復興特別貸付が3兆8614億余円、計4兆2057億余円となっていて、復興特別貸付の規模が大きいものとなっている。東北3県における貸付実績は、全国計4兆2057億余円のうち8914億余円であり、県別の計では、宮城県が4836億余円、福島県が2490億余円、岩手県が1587億余円となっている(2008_1_2_3_4_2リンク参照)。
c 企業立地支援による復旧・復興の状況
集中復興期間に、津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金2090億円、地域経済産業復興立地推進事業費補助金2102億余円がそれぞれ国から基金団体に交付されており、27年度末現在の基金の取崩額は、津波・原子力災害立地補助事業に係る基金が111億余円(基金事業執行率5.3%)、ふくしま立地支援事業に係る基金が1301億余円(基金事業執行率61.9%)となっている。
集中復興期間の採択、交付決定等の状況をみると、27年度末現在、津波・原子力災害立地補助事業は、採択件数512件、採択額1997億余円、交付決定件数200件、交付決定額868億余円となっていて、企業が立地される市町村数及び新規地元雇用者数のそれぞれの見込みは、69市町村、6,359人となっている。また、ふくしま立地支援事業は、採択件数446件、採択額3142億余円、交付決定件数338件、交付決定額1300億余円となっていて、企業が立地される市町村数及び新規地元雇用者数のそれぞれの見込みは、福島県の管内47市町村、4,394人となっている。両事業を合わせた採択事業者数、完了事業者数、辞退事業者数の状況をみると、採択事業者数は958事業者、完了事業者は407事業者、完了率は42.4%となっているが、一方で、辞退事業者数は232事業者、辞退率は24.2%となっている(2008_1_2_3_4_3リンク参照)。
d 観光の復興状況
沿岸31市町村の観光イベントについて、東日本大震災の影響、集客等の状況をみると、東日本大震災前に実施していた67件のうち43件が震災の影響で取りやめとなっており、27年度末までに31件が再開されたものの、12件はいまだ再開に至っていない。東日本大震災以後に復興に関するものとして実施されている新しい観光イベントは33件あり、このうち29件は27年度末現在、定期的に継続して実施されている。27年度末現在で実施されている観光イベントは、震災の影響がなかったもの24件、再開されたもの31件及び定期的に実施されている新しいもの29件を合わせて84件となっている。また、集客数について、25年度が約764万人、27年度が約829万人となっていて、25年度から27年度までの3か年度の間で20市町村において集客数が増加したとしている(2008_1_2_3_4_4リンク参照)。
e 産業の回復の状況
産業の回復の状況に関する沿岸31市町村の認識についてみたところ、全体的に回復したとしている市町村数は、沿岸31市町村のうち21市町村となっている。業種ごとにみると、震災前の水準に回復したとする市町村数は、建設業では19市町村、観光業では16市町村と沿岸31市町村の半数以上を占めるが、農業、水産業ではそれぞれ8市町村、商業・サービス業では7市町となっている。また、震災前の水準に回復していないとする市町村数は、水産業では19市町村、農業では18市町村となっている(2008_1_2_3_4_5リンク参照)。
a 原子力災害関係経費の執行状況
集中復興期間における原子力災害関係経費の支出済額計3兆1334億余円のうち、特措法3事業に係る支出済額が1兆8227億余円と全体の58.1%を占めていて、その大部分は汚染土壌等の除染等の費用の1兆6337億余円となっている。そして、除染等による放射線量の低減対策に係る事業全体の支出は1兆8698億余円に上り、原子力災害関係経費の59.6%を占めている(2008_1_2_4_1_1リンク参照)。
b 原子力災害関係経費以外の経費で実施している放射線量の低減対策に係る事業の執行状況
集中復興期間において、地方公共団体が単独事業として実施している表土の改善等の放射線量の低減対策に係る事業費に対して算定された震災復興特別交付税は7県138市町村の計54億余円、特別交付税は6府県177市町村の計14億余円となっている。このほか、農林水産省所管の東日本大震災農業生産対策交付金により実施された放射性物質の吸収抑制対策に係る事業費の総額は計61億余円となっている(2008_1_2_4_1_2リンク参照)。
a 汚染土壌等の除染等の実施状況
除染特別地域における特別地域内計画に基づく除染等の措置の状況をみると、7市町村では28年3月までに終了しており、4市町村では29年3月までに終了するよう実施している。集中復興期間において除染特別地域で実施された汚染土壌等の除染等に係る支出済額は計7850億余円となっている。また、27年度末現在の除染特別地域における仮置場等の箇所数及び保管量は、264か所、596万m3となっており、仮置場等から中間貯蔵施設等に搬出した保管量は44万m3(仮置場等の保管量の7.4%)となっている。
汚染状況重点調査地域に指定された市町村の状況についてみると、福島県管内で汚染状況重点調査地域に指定された39市町村のうち36市町村が、また、福島県以外の7県管内で汚染状況重点調査地域に指定された58市町村のうち57市町村が、それぞれ除染実施計画を策定して、同計画に基づき除染等の措置を実施している。そして、集中復興期間においてこれらの地域で実施された汚染土壌等の除染等に係る支出済額の合計は8475億余円となっている。
福島県管内の汚染状況重点調査地域における除去土壌等の保管箇所及び保管量は、27年度末現在、現場と仮置場の合計で142,161か所、518万m3であるのに対して、除去土壌等の仮置場等から中間貯蔵施設等への輸送量は、現状ではまだ僅かな状況である。そして、除去土壌等の仮置場等における保管のため集中復興期間に要した維持管理費は、32市町村で計95億余円となっており、これらの維持管理費は、除去土壌等の中間貯蔵施設等への輸送が進み、同施設等において集中管理することにより逓減することが期待されるが、同施設等への輸送が進まない場合、長期にわたり発生し続けることになる。仮置場の設置箇所についてみると、市町村が定める津波の浸水区域に仮置場が設置されているため、除去土壌等が搬出されるまでの間、比較的頻度の高い一定程度の津波高を超える津波等の災害の発生時には保管した除去土壌等が流出し、除染等の措置による効果が減少するおそれが継続する状況となっているものが見受けられた(2008_1_2_4_2_1リンク参照)。
b 汚染廃棄物処理事業の実施状況
27年度末現在の対策地域内における災害廃棄物等の処理状況をみると、推定量(帰還困難区域を除く。)116.6万tに対して、仮置場等への搬入量は81.6万tとなっている。また、搬入実施率が30%未満となっているのは3町村となっている。そして、福島県を含む12都県に保管されている指定廃棄物の数量は、27年度末現在17.2万tとなっている。
放射性物質に汚染された廃棄物のうち農林業系廃棄物等についてみると、国や都道府県の指示、要請等で利用できなくなった結果、一般廃棄物等となり、市場に流通させずに保管されているものなどが10道県管内で計27.5万tとなっており、既存の焼却処理施設の能力が不足していることなどから減容化が進んでおらず、一時集積所の容量も不足していることなどから、各農家等で一時保管されている状況となっている。また、クリーンセンター等で焼却処理を行い焼却灰となった廃棄物は5県管内で計17.4万tとなっていて、これは引き続きクリーンセンター等に保管されているものである(2008_1_2_4_2_2リンク参照)。
c 中間貯蔵施設事業の実施状況
中間貯蔵施設に係る用地取得の状況をみると、環境省は、27年度末現在、当該用地の登記簿上の約2,400人の地権者(面積約1,600ha)のうち連絡先を把握している約1,480人(同約1,450ha)に連絡するなどしているが、土地の売買契約等の成立件数は83件(同約22ha)にとどまっている。
環境省は、26年11月に、「中間貯蔵施設への除去土壌等の輸送に係る基本計画」を策定し、27年3月から28年3月までの間にパイロット輸送が実施され、大熊町のストックヤードに23市町村計2.3万m3、双葉町のストックヤードに20市町村計2.2万m3、合計43市町村4.5万m3の除去土壌・廃棄物が輸送され、同年3月に検証報告が取りまとめられている。また、同省は、28年3月に中間貯蔵施設に係る「当面5年間の見通し」を公表し、32年度までに500万m3から1250万m3程度の除染土壌等を搬入できる見通しであるとした(2008_1_2_4_2_3リンク参照)。
特措法3事業については、集中復興期間における事業実施済額の計1兆5607億余円に対して、28年10月末現在の求償額は計1兆1932億余円、東京電力の支払額は計5062億余円となっている。また、緊急実施除染事業については、集中復興期間における事業実施済額の計2098億余円に対して、28年10月末現在の求償額は計745億余円、支払額は計418億余円となっている(2008_1_2_4_3リンク参照)。
東日本大震災は、被災地域が極めて広範囲にわたる大規模なものであるとともに、地震、津波及び原子力発電施設の事故による複合的な未曽有の大災害である。
復興基本方針等で定めた23年度から27年度までの集中復興期間において、国は、東日本大震災からの復旧・復興のために、既存の制度の見直し、財政支援、自由度の高い交付金の創設等の様々な施策を、その総力を挙げて取り組んできた。
集中復興期間において、国は、総額27兆6231億余円を支出した。そして、これに対する財源を、49年12月までの長期にわたって確保される復興特別税(復興特別所得税等)や歳出削減等により賄うとしているが、他方、多額の費用が限られた期間に生ずることから、事業の実施に当たり不足する資金を確保するために復興債等を発行している。また、復興予算の計上及び執行に当たり、各事業が被災地及び被災者の復興に真に必要かつ有効なものとなっているかなどの視点から議論がなされたことから、国は、復興予算について、不適切な使用であるなどの批判を招くことがないように使途を厳格化するなどの取組も行ってきた。
こうした国の取組や復旧・復興事業を中心となって実施する地方公共団体の総力を挙げての取組により、集中復興期間が終了した現在、事業の進捗とともにその成果も見受けられる一方、防潮堤やまちづくりなどに係る事業において、膨大な事業量や事業の実施に伴う地域住民や関係機関との調整、他事業との調整等の様々な困難から、被災者がひ益するに至っていないものも依然として見受けられる。
復旧・復興事業について、28年度以降も多くの事業が一刻も早い完了を目指して実施されているところであり、国は、地震・津波被災地域を中心に事業完了に向けた見通しが立ちつつあることを踏まえて、28年度以降の復興支援については、被災地の自立につながるものとしていく必要があるとし、28年度からの5年間を被災地の自立につながり、地方創生のモデルとなるような復興を実現していく観点から「復興・創生期間」と位置付けた。そして、復興・創生期間において、全国に共通する課題への対応という性質を併せ持つ事業については被災した地方公共団体においても一定の負担を行いつつ、国は、復興の新たなステージに応じた切れ目のない被災者支援を行うとともに、次なる災害に備えた住まいの再建や復興まちづくりなどを着実に進めるとしている。
ついては、復興庁及び関係府省等は連携して、国及び地方公共団体が行う施策が復興基本法に定める基本理念に即して更なる復旧・復興の進展につながるよう、今後も引き続き次の点に留意するなどして、復興施策の推進及び支援に適切に取り組む必要がある。
以上のとおり報告する。
会計検査院は、東日本大震災からの復興に向けた確実な歩みがなされている一方、復旧・復興の完了までに長期間を要するものもあることから、東日本大震災に伴う被災等の状況とともに、復興等の各種施策及び支援事業の実施状況として、復旧・復興予算の執行状況、被害の大きかった東北3県を中心に復旧・復興事業の実施状況や復旧・復興事業の成果の状況、原子力災害からの復興再生の状況等を分析して、計5回にわたり報告した。
会計検査院としては、復興基本方針等で定められた集中復興期間が終了して、28年度から復興・創生期間として復興は新たな段階を迎えたことから、復興・創生期間における事業の実施状況についても、引き続き検査していくこととする。