整備費補助金による補助対象システムの整備は、地方公共団体がマイナンバー制度の導入のために必要となる機能に関して行うものである。そして、情報連携に向けたスケジュールが総務省から地方公共団体に示されており、デジタルPMO等を活用して、業者から徴した見積書の精査や、仕様書の作成等の補助対象システムの整備に関する作業を地方公共団体が限られた期間で集中的に行ってきているところである。さらに、今後も、29年7月からの情報連携の開始を目指して総合運用テスト等の作業が続くことになる。なお、情報連携後には、制度の改正に伴い更なるシステム整備が行われることも想定されるところである。
そして、地方公共団体の上記のシステム整備はマイナンバー制度の導入のために必要となるものであり、国において各地方公共団体がシステム整備を適切に行えるよう必要な助言や協力を行っていくことが重要であり、25年5月の参議院内閣委員会における番号法の審査に当たり議決された附帯決議において、「社会保障・税番号制度に係る地方公共団体のシステム整備について、地方公共団体の財政負担及び当該システム整備に従事する職員の業務負担を軽減するため、地方公共団体からの意見を十分に考慮し、必要な措置を検討すること」となっている。また、番号法の公布日と同日に施行された内閣法等の一部を改正する法律(平成25年法律第22号)により改正された高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号)において、地方公共団体が、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部に対して情報の提供その他の協力を求めることができることとなり、同本部は協力を求められたときはその求めに応じるよう努めることと規定されているところである。
地方公共団体に対する整備費補助金の予算及び決算の状況をみたところ、次のとおりとなっていた(図表1-1参照)。
総務省の整備費補助金の26年度歳出予算現額は、補正予算で追加された409億余円を含めて計720億余円となっており、26年度中に250億余円が支出され、469億余円が27年度に繰り越されている。総務省は、26年2月に地方公共団体に発出した事務連絡「社会保障・税番号制度システム整備費補助金について」(以下「26年2月総務省事務連絡」という。)において、「番号制度導入に係る地方公共団体のシステム整備に係る団体規模・システム類型別の事業費(積算内訳)」を地方公共団体に示していて、ここで示されている団体規模別及びシステム類型別の事業費(以下「想定事業費」という。)を26年度補正予算で増額したことについて、大型のシステム改修プロジェクトの集中によるシステムエンジニアの人件費等の経費の増加や補助対象システムの機能の追加等の状況変化を反映し、地方公共団体におけるシステム整備に必要となる適正な額を計上した結果としている。このように、マイナンバー制度の導入に伴う補助対象システムの整備が限られた期間に集中したことなどによる経費の増加がこの補正予算の計上の一因となっているとみられる。また、27年度の歳出予算現額は、繰越額を含めて計590億余円となっており、27年度中に452億余円が支出され、54億余円が28年度に繰り越され、82億余円が不用額となっている。
厚生労働省の整備費補助金の26年度歳出予算現額は185億余円となっており、26年度中に21億余円が支出され、163億余円が27年度に繰り越されている。また、27年度の歳出予算現額は、繰越額等を含めて計309億余円となっており、27年度中に227億余円が支出され、44億余円が28年度に繰り越され、36億余円が不用額となっている。
図表1-1 整備費補助金の予算及び決算の状況
所管 | システム等名 | 平成26年度 | 27年度 | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
歳出予算額 | 歳出予算現額 | 支出済歳出額 | 翌年度繰越額 | 不用額 | 歳出予算額 | 前年度繰越額 | 流用等増▲減額 | 歳出予算現額 | 支出済歳出額 | 翌年度繰越額 | 不用額 | |||
当初 | 補正 | |||||||||||||
総務省 | 住民基本台帳システム | / | / | / | 13,500 | / | / | / | / | / | / | 7,580 | / | / |
地方税務システム | 5,801 | 12,708 | ||||||||||||
団体内統合宛名システム | 748 | 1,841 | ||||||||||||
団体内統合利用番号連携サーバー | 3,108 | 12,344 | ||||||||||||
中間サーバー | 1,900 | 10,821 | ||||||||||||
計 | 31,129 | 40,931 | 72,061 | 25,060 | 46,949 | 51 | 12,087 | 46,949 | - | 59,037 | 45,295 | 5,454 | 8,286 | |
厚生労働省 | 社会保障関係システム | 18,534 | - | 18,534 | 2,154 | 16,332 | 47 | 15,418 | 16,332 | ▲842 | 30,908 | 22,710 | 4,499 | 3,698 |
合計 | 49,664 | 40,931 | 90,595 | 27,214 | 63,282 | 99 | 27,506 | 63,282 | ▲842 | 89,945 | 68,006 | 9,954 | 11,985 |
上記のとおり、26年度に繰越額が生じていた理由について、総務省及び厚生労働省は、地方公共団体において、仕様の検討等に不測の日数を要したことなどによるとしている。さらに、27年度に繰越額が生じていた理由について、総務省は、地方公共団体において、設計変更等に不測の日数を要したことなどによるとしており、厚生労働省は、一部の地方公共団体において交付申請を見送ったことなどによるとしている。
また、前記のとおり不用額が生じていた理由について、総務省及び厚生労働省は、地方公共団体からの整備費補助金の交付申請額及び契約価格が予定を下回ったことにより、整備費補助金を要することが少なかったことなどによるとしている。
総務省は、前記のとおり、同省分の整備費補助金について、26年2月総務省事務連絡において、想定事業費を地方公共団体に対して示している。想定事業費は、複数の業者が団体規模別及びシステム類型別にマイナンバー制度導入のために直接的に必要とされる機能を満たすこととした場合の見積りを行ったものを踏まえて、政府内で調整した結果の事業費を基に人口区分を細分化して作成したものであり、各地方公共団体は、想定事業費を踏まえて補助金要望額を積算して、総務省に提出することとなっている。そして、想定事業費の範囲内で補助対象システムの整備に要する事業費に補助率(10分の10又は3分の2)を乗じた額で整備費補助金が交付されることとなっている。なお、想定事業費は、住民基本台帳システム、地方税務システム、団体内統合宛名システム等の別に示されている。
また、厚生労働省は、同省分の整備費補助金について、26年5月に都道府県に対して発した事務連絡「平成26年度社会保障・税番号制度システム整備費補助金(1次交付分)の内示等について」等において、地方公共団体ごとの基準額(内示額)を示している。そして、厚生労働省は、この基準額(内示額)について、予算の範囲内において、同省が想定して算出した事業費を基礎として団体規模別及びシステム類型別に標準的な費用として算出したものであるとしていて、この基準額(内示額)の範囲内で補助対象システムの整備に要する事業費に補助率(10分の10又は3分の2)を乗じた額で整備費補助金が交付されることとなっている。なお、基準額(内示額)は、厚生労働省の補助対象システムのうち、国民年金システム及び特別児童扶養手当システムの両システムを除いた①一般分と②国民年金システム及び特別児童扶養手当システムの両システム分とに分けて示されている。
想定事業費と各地方公共団体が補助対象システムの整備に実際に要した事業費(注7)(以下「実整備費」という。)との関係を補助対象システムごとにみたところ、図表1-2のとおり、総務省分の2,550システムのうち、1,233システム(48.4%)において実整備費が想定事業費以上となっていた一方、1,317システム(51.6%)において実整備費が想定事業費未満となっていた。
図表1-2 総務省の整備費補助金の想定事業費と実整備費の関係
整備費補助金申請年度区分 | システム名 | システム数 | 実整備費が想定事業費以上となっていたシステム | 実整備費が想定事業費未満となっていたシステム | ||
---|---|---|---|---|---|---|
システム数 | 左の割合 | システム数 | 左の割合 | |||
(a) | (b) | (b)/(a) | (c) | (c)/(a) | ||
平成 26、27年度 |
住民基本台帳システム | 830 | 423 | 51.0% | 407 | 49.0% |
26、27年度 | 地方税務システム | 847 | 388 | 45.8% | 459 | 54.2% |
26、27年度 | 団体内統合宛名システム 団体内統合利用番号連携サーバー |
873 | 422 | 48.3% | 451 | 51.7% |
計 | 2,550 | 1,233 | 48.4% | 1,317 | 51.6% |
図表1-3 厚生労働省の整備費補助金の基準額(内示額)と実整備費の関係
整備費補助金申請年度区分 | 基準額(内示額)の区分 | システム数 | 実整備費が基準額(内示額)以上となっていたシステム | 実整備費が基準額(内示額)未満となっていたシステム | ||
---|---|---|---|---|---|---|
システム数 | 左の割合 | システム数 | 左の割合 | |||
(a) | (b) | (b)/(a) | (c) | (c)/(a) | ||
平成26年度 | ①一般分 | 887 | 661 | 74.5% | 226 | 25.5% |
27年度 | 847 | 617 | 72.8% | 230 | 27.2% | |
計 | 1,734 | 1,278 | 73.7% | 456 | 26.3% | |
26年度 | ②国民年金システム及び特別児童扶養手当システム分 | 818 | 613 | 74.9% | 205 | 25.1% |
27年度 | 791 | 545 | 68.9% | 246 | 31.1% | |
計 | 1,609 | 1,158 | 72.0% | 451 | 28.0% | |
26年度 | ①及び②の計 | 1,705 | 1,274 | 74.7% | 431 | 25.3% |
27年度 | 1,638 | 1,162 | 70.9% | 476 | 29.1% | |
計 | 3,343 | 2,436 | 72.9% | 907 | 27.1% |
なお、補助対象システムについて、想定事業費等と実整備費とのかい離状況についてみたところ、総務省の整備費補助金については、実整備費が想定事業費以上となっていた場合のかい離割合が20%以上となっているものが577システム(22.6%)あった。一方、実整備費が想定事業費未満となっていた場合のかい離割合が20%以上となっているものも677システム(26.6%)あった(かい離状況の詳細については別図表3参照)。
また、厚生労働省の整備費補助金については、実整備費が基準額(内示額)以上となっていた場合のかい離割合が20%以上となっているものが基準額(内示額)の区分の①の区分801システム(46.2%)、②の区分684システム(42.5%)あった。一方、実整備費が基準額(内示額)未満となっていた場合のかい離割合が20%以上となっているものも基準額(内示額)の区分の①の区分154システム(8.9%)、②の区分175システム(10.9%)あった(かい離状況の詳細については別図表4参照)。
地方公共団体は、前記のとおり、次のようなスケジュールで補助対象システムの整備を進めることとなっている。
① 住民基本台帳システムのうち個人番号の付番・通知に必要な機能に係る整備を主に26年度に行い、27年9月末までに個人番号生成システムとの連携テストを行う。
② 個人番号の利用に必要な整備を27年12月末までに行う。
③ 整備を行った補助対象システムについて、地方公共団体内での連携テストを28年6月末までに行う。
④ 中間サーバーを介した補助対象システムと情報提供NWSとの連携テスト及び情報連携に係る総合運用テストを29年6月末までに行う。
このうち、①については、総務省によれば、個人番号の付番・通知に直接関係する整備でもあることから、27年9月末までに各地方公共団体において必要な連携テストまで行っており、同年10月から個人番号の付番・通知を開始しているとのことである。
そこで、総務省及び厚生労働省の整備費補助金により整備を行った(27年度に交付申請を行ったものの契約締結に至らなかったものを含む。)総務省分の2,550システム及び厚生労働省分の6,142システムについて、27年12月末までに行うこととなっていた②の個人番号の利用に必要な補助対象システムの整備の状況をみたところ、図表1-4のとおり、27年12月末までに整備が終了していなかったものが総務省分で530システム(20.7%)、厚生労働省分で1,489システム(24.2%)あった。これらのシステムについて、27年12月末までに個人番号の利用に必要な整備が終了していなかった主な理由について地方公共団体に確認したところ、整備のスケジュールに余裕がなかったこと(63.0%)、スケジュールに間に合わせなければならないという認識がなかったこと(20.6%)などとなっていた。なお、これらのシステムについて、28年3月末時点における状況をみたところ、整備が終了していないシステムが総務省分で67システム(2.6%)、厚生労働省分で249システム(4.0%)あり、これらのシステムについては整備費補助金の28年度への繰越手続がとられるなどしていたが、さらに、28年6月末時点における状況をみたところ、整備が終了していなかったのは、総務省分で30システム(1.1%)、厚生労働省分で83システム(1.3%)となっており、②の個人番号の利用に必要な補助対象システムの整備の進捗の遅れは、同月末までには相当程度解消されていた。
また、③の地方公共団体内での連携テストの状況は、図表1-4のとおり、28年6月末までに連携テストが終了していなかったものが総務省分で136システム(5.3%)、厚生労働省分で385システム(6.2%)、計521システムあった。そして、スケジュールどおりに終了しなかった主な理由について地方公共団体に確認したところ、整備のスケジュールに余裕がなかったこと(42.9%)、必要な作業を行うノウハウがなかったこと(12.6%)などとなっていた。
補助対象システムの整備のスケジュールについて、総務省及び厚生労働省は、マイナンバー制度全体のスケジュールを踏まえて決定して、デジタルPMOや地方公共団体への説明会等において地方公共団体に対して周知していた。そして、地方公共団体に対して補助対象システムの整備の進捗状況をデジタルPMOに登録させることで進捗管理を行い、進捗が遅れている地方公共団体については個別に原因の確認や課題解決のアドバイス等をすることにしていた。しかし、28年6月末時点で地方公共団体内での連携テストが終了していなかった補助対象システム521システムの整備の進捗状況の登録状況を確認したところ、回答を得られなかった64システムを除いた457システムのうち、50システムについてはデジタルPMOに補助対象システムの整備の進捗状況を登録していなかった。また、デジタルPMOに整備の進捗状況を登録していた総務省分の120システム及び厚生労働省分の287システムについてみても、同年8月末時点で総務省又は厚生労働省から原因の確認や課題解決のアドバイス等のフォローアップを受けた補助対象システムは、総務省分の38システム及び厚生労働省分の86システムにとどまっていた。
②の整備については、一部のシステムにおいて27年12月末までに整備が終了していなかったが、28年6月末時点では整備の進捗の遅れは相当程度解消されていた。また、③までのスケジュールについては、スケジュールどおりに補助対象システムの整備を進めることが求められているものの、その遅れが直ちにマイナンバー制度全体に影響を及ぼすものではない。しかし、補助対象システムは、29年7月から中間サーバーを介して情報提供NWSと接続して情報連携を行うことを目指すこととなっている。そして、総合運用テスト等のうち地方公共団体間で行うものについては、28年11月から29年4月までの間に3グループに分けて実施されることとなっているが、今後、④の期限内にテストを進めないと、予定されている情報連携を適切に行うことができなくなるおそれがある。
したがって、内閣官房、総務省及び厚生労働省においては、地方公共団体においてスケジュールに余裕がなくなることのないよう、地方公共団体におけるシステムの整備の進捗状況を把握しながら、テストの実施に必要な情報を地方公共団体に適時適切に提供して、総合運用テスト等が予定どおり実施されるよう、なお一層の支援を行っていく必要がある。
図表1-4 補助対象システムの整備の状況
所管省名 | システム名 | システム数 | 個人番号の利用に必要な整備が終了していなかったシステム | 地方公共団体内での連携テストが終了していなかったシステム | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
平成 27年12月末 |
28年3月末 | 28年6月末 | 28年6月末 | |||||||
システム数 | 左の割合 | システム数 | 左の割合 | システム数 | 左の割合 | システム数 | 左の割合 | |||
(a) | (b) | (b)/(a) | (c) | (c)/(a) | (d) | (d)/(a) | (e) | (e)/(a) | ||
総務省 | 住民基本台帳システム | 830 | 112 | 13.4% | 17 | 2.0% | 7 | 0.8% | 41 | 4.9% |
地方税務システム | 847 | 174 | 20.5% | 20 | 2.3% | 8 | 0.9% | 42 | 4.9% | |
団体内統合宛名システム等 | 873 | 244 | 27.9% | 30 | 3.4% | 15 | 1.7% | 53 | 6.0% | |
計 | 2,550 | 530 | 20.7% | 67 | 2.6% | 30 | 1.1% | 136 | 5.3% | |
厚生労働省 | 生活保護システム | 427 | 167 | 39.1% | 26 | 6.0% | 7 | 1.6% | 54 | 12.6% |
障害者福祉システム | 781 | 210 | 26.8% | 40 | 5.1% | 11 | 1.4% | 55 | 7.0% | |
児童福祉システム | 823 | 228 | 27.7% | 37 | 4.4% | 10 | 1.2% | 54 | 6.5% | |
国民健康保険システム | 825 | 168 | 20.3% | 25 | 3.0% | 9 | 1.0% | 46 | 5.5% | |
後期高齢者医療システム | 825 | 148 | 17.9% | 25 | 3.0% | 10 | 1.2% | 32 | 3.8% | |
介護保険システム | 749 | 171 | 22.8% | 30 | 4.0% | 13 | 1.7% | 48 | 6.4% | |
健康管理システム | 704 | 157 | 22.3% | 23 | 3.2% | 8 | 1.1% | 41 | 5.8% | |
国民年金システム | 796 | 162 | 20.3% | 26 | 3.2% | 9 | 1.1% | 28 | 3.5% | |
特別児童扶養手当システム | 212 | 78 | 36.7% | 17 | 8.0% | 6 | 2.8% | 27 | 12.7% | |
計 | 6,142 | 1,489 | 24.2% | 249 | 4.0% | 83 | 1.3% | 385 | 6.2% | |
合計 | 8,692 | 2,019 | 23.2% | 316 | 3.6% | 113 | 1.3% | 521 | 5.9% |
地方公共団体における補助対象システムの整備については、イのとおり、国の示すスケジュールに沿って限られた期間で集中的に行われているところである。一方で、アのとおり、整備に際しては多額の補助金が交付されていることから、補助事業の適正な執行のために交付申請や契約手続を適切に行うことも求められる。
補助対象システムの整備に関して地方公共団体が締結した契約7,916件(総務省分4,603システム(注10)、厚生労働省分12,500システム)、契約金額922億余円について、契約方式、仕様書の記載内容、予定価格の算定等の際の見積書等をみたところ、次のとおりとなっていた。
契約方式については、随意契約によるものが7,797件、契約金額751億余円となっていて、その割合は契約件数で98.4%、契約金額で81.4%と極めて高い割合となっていた。その主な理由について地方公共団体に確認したところ、契約内容がマイナンバー制度の導入に伴う地方既存システムの整備であり、当該システムの構築業者にプログラム等の著作権が帰属しており、他業者が整備を実施することは困難であることなどとなっていた。
地方公共団体は、契約の確実な履行のために、発注者として、仕様書に作業の実施内容に関する事項を記載して、業者が行う作業内容、業者に求める事項、成果物等を具体的に記載する必要がある。そして、仕様書は、業者が作業の内容を把握して適正な見積りをしたり、地方公共団体が請負契約等による給付の完了の確認をするために必要な検査を行ったりする際にも必要なものである。
そこで、地方公共団体がマイナンバー制度に対応するための整備を行うに当たり仕様書を作成していた総務省分の4,182システム及び厚生労働省分の11,453システムのうち、26、27両年度の契約で作業を分けて整備を行っていた総務省分の3,704システム及び厚生労働省分の5,910システムについて、26年度と27年度の仕様書の記載内容を比較したところ、図表1-5のとおり、26年度と27年度で全く同じ作業内容になっていたものが、総務省分で170システム(4.6%)、厚生労働省分で326システム(5.5%)の計496システムあった。
図表1-5 仕様書の記載内容
平成26、27両年度の契約で作業を分けて整備を行っていた補助対象システム数 | 26年度と27年度で作業内容を書き分けていたシステム | 契約の一部について、26年度と27年度で全く同じ作業内容になっていたシステム | 26年度と27年度で全く同じ作業内容になっていたシステム | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
システム数 | 左の割合 | システム数 | 左の割合 | システム数 | 左の割合 | ||
(a) | (b) | (b)/(a) | (c) | (c)/(a) | (d) | (d)/(a) | |
総務省の整備費補助金 | 3,704 | 3,330 | 89.9% | 204 | 5.5% | 170 | 4.6% |
厚生労働省の整備費補助金 | 5,910 | 5,342 | 90.4% | 242 | 4.1% | 326 | 5.5% |
計 | 9,614 | 8,672 | 90.2% | 446 | 4.6% | 496 | 5.2% |
これらの496システムについては、26年度に実施することとして仕様書に記載されていた作業内容が、27年度の仕様書にも記載されていて、26年度中にどこまで完了していたのか、どこまで完了すべきであったのかを事後的に検証することができない状況となっていた。
そして、このように作業内容が全く同じ仕様書を作成していた主な理由について地方公共団体に確認したところ、整備のスケジュールに余裕がなかったこと(47.3%)、適正な仕様書を作成するノウハウがなかったこと(39.3%)などとなっていた。
情報システムの調達に係る給付の完了の確認に当たっては、設計書、テスト計画書、テスト結果報告書等の成果物に基づき、当該システムが要件定義書等において求める要件及び品質を満たしているかを適切に確認する必要がある。そして、そのためには仕様書に確認のために必要となる成果物を適切に記載して、確実に納品させることが必要である。
成果物のうち、テスト計画書は、開発等を行ったプログラムが設計どおりに動作することを確認するための計画を記載したもので、単体テスト、総合テスト等の実施に当たり、業者に対してテスト計画書の提出を求めて、テスト内容の十分性、テストデータの適切性等を確認して、必要に応じて課題等の指摘又は指導を行う必要がある。また、テスト結果報告書は、テスト計画書に基づき実施したテストに関して、実施状況の確認を行うもので、実施結果に不足、誤りなどが発生している場合は、必要に応じて、業者に対して課題等の指摘又は指導を行う必要がある。
仕様書を作成していた総務省分の4,182システム及び厚生労働省分の11,453システムについて、仕様書に成果物として必要なものが記載されていたかをみたところ、図表1-6のとおり、仕様書に成果物が記載されていた総務省分の3,009システム及び厚生労働省分の8,252システムのうち、総務省分の1,971システム(65.5%)、厚生労働省分の5,315システム(64.4%)で仕様書においてテスト計画書が成果物として記載されていなかった。また、総務省分の1,548システム(51.4%)、厚生労働省分の4,023システム(48.8%)でテスト結果報告書が成果物として記載されていなかった。
さらに、総務省分の1,173システム(28.0%)、厚生労働省分の3,201システム(27.9%)、計4,374システムで成果物が仕様書に全く記載されていなかった。
図表1-6 仕様書における成果物の記載状況
所管省名 | 整備費補助金申請年度区分 | 成果物が仕様書に全く記載されていなかったシステム | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
仕様書を作成していた補助対象システム数 | 仕様書に成果物が記載されていた補助対象システム数 | テスト計画書 | テスト結果報告書 | ||||||||||
記載されていたシステム |
記載されていなかったシステム |
記載されていたシステム |
記載されていなかったシステム |
||||||||||
システム数 | 左の割合 | システム数 | 左の割合 | システム数 | 左の割合 | システム数 | 左の割合 | システム数 | 左の割合 | ||||
(a) | (b) | (c) | (c)/(b) | (d) | (d)/(b) | (e) | (e)/(b) | (f) | (f)/(b) | (g) | (g)/(a) | ||
総務省 | 平成 26年度 |
1,967 | 1,391 | 455 | 32.7% | 936 | 67.3% | 620 | 44.6% | 771 | 55.4% | 576 | 29.2% |
27年度 | 2,215 | 1,618 | 583 | 36.0% | 1,035 | 64.0% | 841 | 52.0% | 777 | 48.0% | 597 | 26.9% | |
計 | 4,182 | 3,009 | 1,038 | 34.5% | 1,971 | 65.5% | 1,461 | 48.6% | 1,548 | 51.4% | 1,173 | 28.0% | |
厚生労働省 | 26年度 | 5,933 | 4,244 | 1,471 | 34.7% | 2,773 | 65.3% | 2,094 | 49.3% | 2,150 | 50.7% | 1,689 | 28.4% |
27年度 | 5,520 | 4,008 | 1,466 | 36.6% | 2,542 | 63.4% | 2,135 | 53.3% | 1,873 | 46.7% | 1,512 | 27.3% | |
計 | 11,453 | 8,252 | 2,937 | 35.6% | 5,315 | 64.4% | 4,229 | 51.2% | 4,023 | 48.8% | 3,201 | 27.9% |
そして、仕様書に成果物を記載していなかった主な理由について地方公共団体に確認したところ、仕様書に成果物を記載する必要性を認識していなかったこと(55.4%)、仕様書に記載すべき成果物について精査するノウハウがなかったこと(40.2%)などとなっていた。
前記の成果物が仕様書に全く記載されていなかった事態について、事例を示すと次のとおりである。
徳島県板野郡北島町は、厚生労働省から、整備費補助金921万余円(平成27年度(26年度からの繰越分)533万余円、27年度388万余円)の交付を受けて、障害者福祉システム等の整備を実施している。そして、同町は、業者から提出を受けた書類等により給付の完了の確認を実施したとしていた。しかし、当該システム整備に係る契約の仕様書を確認したところ、成果物の記載が全くなく、本来同町が発注者としてどのような要件等を求めて、何が成果物として必要であると判断したか、給付完了時に同町が求める要件等を満たしていたかを確認していたのかについて、事後的に検証できない状況となっていた。
このように仕様書に成果物を記載していなかった理由について、同町は、仕様書に成果物を記載することの必要性を認識していなかったとしている。
前記スケジュールのとおり、今後も総合運用テスト等が予定されていることから、地方公共団体においては、業者にテスト計画書、テスト結果報告書等の成果物を求めることなどを記載した仕様書を作成し、成果物を確認した上で必要な対応を行っていく必要がある。
地方公共団体においては、契約の発注者として業者が行う作業内容を明確にしておかなければ、業者は適正な見積りを行えず、また、給付の完了の確認も困難になることから、26年度と27年度の作業内容を書き分けるなど適正な仕様書を作成する必要がある。また、求める要件及び品質を満たしているかを適切に確認するために、テスト計画書、テスト結果報告書等の成果物を仕様書に記載しておくことも必要である。しかし、a及びbのとおり、一部の地方公共団体では上記を踏まえた仕様書が作成されていない状況となっていた。
一方、補助対象システムの整備において上記のような状況が見受けられることから、地方公共団体が適正な仕様書を作成するためには国の助言等が重要となる。そこで、総務省及び厚生労働省における仕様書の作成に関する取組の状況を確認したところ、総務省及び厚生労働省は、適正な見積りを徴することと併せて、整備費補助金に関して、適切な会計手続に努めるよう地方公共団体に求めていたが、仕様書の作成については特段の取組を行っていなかった。また、マイナンバー制度の総合調整を行う内閣官房は、システム整備についての作業内容を業者に周知するなどの取組を行っていた。
しかし、マイナンバー制度に係るシステム整備は、全国で同様のシステムの整備を行うものであることから、a及びbのような状況を踏まえて、総務省及び厚生労働省において、地方公共団体に対して、適正な内容を具備した仕様書作成の重要性とともに、仕様書を作成する上での確認事項を明示するなど、必要な技術的助言をなお一層行っていくことが地方公共団体の利益に資するとともに、補助事業の適正な執行に資することになる。
また、内閣官房及び総務省において、地方公共団体が総合運用テスト等を計画的かつ確実に進められるよう、仕様書を作成する上で必要となる総合運用テスト等で実施すべき内容やテストスケジュール等についての情報提供をなお一層行っていくことが重要である。
整備費補助金による補助対象システムの整備については、既に運用しているシステムについて整備を実施するものであり、その多くが当該システムの構築業者と随意契約により実施されるものであることから、契約の相手方になる当該業者から適正な見積書を徴して、当該見積書の内容を十分に確認することが予定価格の適正性を確保するために特に重要となり、見積書の内容が適正なものとなっていない場合、適正な額で補助対象システムの整備が行えなくなるおそれがある。そして、見積書の徴取について、総務省は、地方公共団体に対して、26年2月総務省事務連絡において、整備費補助金の要望額についての事前照会を行い、その際の留意事項として、適切な見積りにより積算するよう求めており、また、26年10月の「社会保障・税番号制度に係るシステム整備における適正な見積り等について(依頼)」(平成26年総行住第114号等)において、交付申請書に添付された見積書等について審査を行ったところ見積りの具体的な内訳が不明な事例等が見受けられたことから、整備費補助金の執行に当たっては適正な見積りを徴するよう求めている。また、厚生労働省も、「社会保障分野における番号制度の導入に向けて」(平成27年3月。以下「27年厚生労働省通知」という。)において、地方公共団体に対して、見積書を確認する際には、業者から、作業工程ごとに、作業項目、作業者と工数が分かる内訳を提出させて、作業項目ごとの作業者と単価が適正か、妥当な工数となっているかなどに注意して内訳を確認することに留意して十分な精査を行うよう依頼している。このように、地方公共団体は、業者から適正な見積書を徴して、その内容を確認し精査した上で補助対象システムの整備を実施することが求められている。
そこで、業者から見積書を徴して予定価格を算定していた11,323システム(総務省分2,970システム、厚生労働省分8,353システム)について、適正な見積書を徴しているか確認するために、当該見積書において、作業項目ごとに作業工数や人件費単価が記載されているか、作業項目が細分化されて記載されているかをみたところ、図表1-7のとおり、作業項目ごとに作業工数の記載がなく、かつ、作業項目ごとに人件費単価の記載がない見積書により予定価格を算定していたものが、3,774システム(総務省分745システム(25.0%)、厚生労働省分3,029システム(36.2%))あり、このうち、「一式」とのみ記載されているなど、見積書における作業項目が全く細分化されていない見積書により予定価格を算定していたものが、1,228システム(総務省分198システム(6.6%)、厚生労働省分1,030システム(12.3%))あった。また、総務省分の補助対象システムのうち、団体内統合宛名システム又は団体内統合利用番号連携サーバーを新規に整備する際に機器の購入を予定している場合について、機器構成の記載があるかをみたところ、図表1-8のとおり、機器構成の記載がない見積書により予定価格を算定していたものが185システム(38.9%)あった。
図表1-7 予定価格の算定に当たり、業者から徴した見積書の内容(作業項目に関する内容)
所管省名 | 業者から見積書を徴していた補助対象システム数 | 作業項目ごとの作業工数(注) | 作業項目ごとの人件費単価(注) | 作業項目ごとに作業工数の記載があり、かつ、人件費単価の記載があるシステム | 作業項目ごとに作業工数の記載がなく、かつ、人件費単価の記載がないシステム | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
記載があるシステム数 | 記載がないシステム数 | 記載があるシステム数 | 記載がないシステム数 | 作業項目が「一式」となっているシステム | ||||||||
システム数 | 左の割合 | システム数 | 左の割合 | システム数 | 左の割合 | |||||||
(a) | (b) | (b)/(a) | (c) | (c)/(a) | (d) | (d)/(a) | ||||||
総務省 | 平成 26年度 |
1,390 | 1,008 | 365 | 921 | 452 | 839 | 60.3% | 352 | 25.3% | 104 | 7.4% |
27年度 | 1,580 | 1,160 | 417 | 1,056 | 521 | 925 | 58.5% | 393 | 24.8% | 94 | 5.9% | |
計 | 2,970 | 2,168 | 782 | 1,977 | 973 | 1,764 | 59.3% | 745 | 25.0% | 198 | 6.6% | |
厚生労働 省 |
26年度 | 4,316 | 2,666 | 1,622 | 2,453 | 1,835 | 2,155 | 49.9% | 1,580 | 36.6% | 560 | 12.9% |
27年度 | 4,037 | 2,539 | 1,497 | 2,354 | 1,682 | 2,043 | 50.6% | 1,449 | 35.8% | 470 | 11.6% | |
計 | 8,353 | 5,205 | 3,119 | 4,807 | 3,517 | 4,198 | 50.2% | 3,029 | 36.2% | 1,030 | 12.3% |
図表1-8 予定価格の算定に当たり、業者から徴した見積書の内容(機器構成に関する内容)
所管省名 | 業者から見積書を徴していた補助対象システム数 | 機器構成の記載 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
記載があるシステム | 記載がないシステム | |||||
(a) | システム数(b) | 左の割合(b)/(a) | システム数(c) | 左の割合(c)/(a) | ||
総務省 | 平成 26年度 |
164 | 78 | 47.6% | 86 | 52.4% |
27年度 | 311 | 212 | 68.2% | 99 | 31.8% | |
計 | 475 | 290 | 61.1% | 185 | 38.9% |
そして、作業項目ごとに作業工数や人件費単価の記載がない見積書を徴していた主な理由について地方公共団体に確認したところ、作業工数及び人件費単価を確認するためのノウハウがなかったこと(41.0%)、整備スケジュールに間に合わせるために作業工数及び人件費単価を確認する時間がなかったこと(39.1%)などとなっていた。
前記の適正な見積書を徴していない事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例2> 予定価格を算定する際に業者から適正な見積書を徴していなかったもの
埼玉県北足立郡伊奈町は、厚生労働省から、平成26年度の整備費補助金の交付を受けて、障害者福祉システム等の整備を428万余円(うち補助対象経費同額、補助金額290万余円)で実施している。同町は、計画・設計段階で不測の日数を要し事業の着手に遅延が生じたことから、事業の完了予定を27年7月31日とする事業内容変更承認申請書を提出し、上記のシステム整備のために、同年7月1日から31日までを工期とする契約を業者と締結していた。
この契約について、業者と締結した上記のシステム整備の内容を仕様書で確認したところ、一部のシステムを除きシステム設計までの工程を実施することとなっており、単体テストまではその内容に含まれていなかった。
一方、予定価格を算定する際に業者から徴した見積書を確認したところ、作業項目ごとの作業工数や人件費単価の記載がなく「一式」とのみ記載されており、見積額は厚生労働省が同町に示している基準額(内示額)と同額となっていた。
そして、厚生労働省が同町に示している基準額(内示額)は、システム設計までだけではなく、単体テストまで含めた作業工程を実施するために同省が算出した標準的な額となっているにもかかわらず、一部のシステムを除きシステム設計までの工程を実施するために業者から徴した見積額をそのまま契約額としていた。
しかし、見積書に作業項目ごとの作業工数や人件費単価の記載がなく「一式」とのみ記載されていたため、作業工程に照らして契約金額が妥当か、割高となっていないかを確認することができなかった。
このように、作業項目ごとの作業工数や人件費単価の記載がない見積書を徴していた理由について、同町は、補助対象システムの整備のスケジュールに間に合わせるために、作業内容、作業工数及び人件費単価の関係を確認する時間がなかったなどとしている。
なお、交付申請時に申請額を算定する際の見積書を予定価格の算定時に用いるなどの例も見られたことから、交付申請時に見積書を徴していた補助対象システムについても同様に確認したところ、作業項目ごとに作業工数の記載がなく、かつ、作業項目ごとに人件費単価の記載がない見積書により交付申請額を算定していた状況や「一式」とのみ記載されているなど、作業項目が全く細分化されていない見積書により算定していた状況が見受けられた(具体的な記載状況については別図表5及び別図表6参照)。
見積書の妥当性の確認について、総務省が地方公共団体に対して具体的に示した文書はないが、厚生労働省は、前記のとおり、27年厚生労働省通知において、地方公共団体に見積書を確認する際には、詳細な内訳を提出させることに留意して十分な精査を行うよう依頼している。また、その際のチェックポイントとして、①業者に対して見積根拠資料を確認すること、特に、見積りには、デジタルPMOに掲載される国が設計及び開発を行う自治体中間サーバー・ソフトウェアの仕様、設計内容、連携方法等の情報に基づいた積算が不可欠であり、業者が見積りの際にこれを十分確認していなかったことにより過大なリスクが見積書に計上されていないか確認すること、②庁内情報システム部門と連携した体制を整備して、共同で見積りを精査すること及び③庁内で先行して見積書を徴している補助対象システムや他の地方公共団体における類似事例との比較を行うことに留意して十分な精査を行うことを例示している。
そこで、予定価格算定時に業者から見積書を徴して予定価格を算定していた厚生労働省分の8,353システムについて、各地方公共団体が①から③までの事項を実施していたかをみたところ、図表1-9のとおり、業者に対して見積根拠資料を確認していなかったものが1,488システム(17.8%)あった。また、庁内情報システム部門と共同で見積りを精査していなかったものが3,555システム(42.5%)あり、庁内で先行している補助対象システム又は他の地方公共団体の類似事例と比較していなかったものが2,551システム(30.5%)あった。そして、①から③までの事項全てを実施していなかったものが、610システム(7.3%)あった。
なお、予定価格算定時に業者から見積書を徴して予定価格を算定していた総務省分の2,970システムについても、①から③までの事項が実施されていたかをみたところ、図表1-9のとおり、一部のシステムで①から③までの事項全てを実施していなかった。
図表1-9 予定価格の算定に当たり、業者から徴した見積書の妥当性の確認
所管省名 | 業者から見積書を徴していた補助対象システム数 | ①業者に対する見積根拠資料の確認(デジタルPMOの活用等) | ②庁内情報システム部門と共同での見積り精査 | ③庁内先行補助対象システム又は他の地方公共団体の類似事例との比較 | ①から③までの事項全てを実施していなかったシステム | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
実施していたシステム数 | 実施していなかったシステム | 実施していたシステム数 | 実施していなかったシステム | 実施していたシステム数 | 実施していなかったシステム | ||||||||
システム数 | 左の割合 | システム数 | 左の割合 | システム数 | 左の割合 | システム数 | 左の割合 | ||||||
(a) | (b) | (b)/(a) | (c) | (c)/(a) | (d) | (d)/(a) | (e) | (e)/(a) | |||||
厚生労働省 | 平成 26年度 |
4,316 | 3,558 | 758 | 17.5% | 2,484 | 1,832 | 42.4% | 2,950 | 1,366 | 31.6% | 318 | 7.3% |
27年度 | 4,037 | 3,307 | 730 | 18.0% | 2,314 | 1,723 | 42.6% | 2,852 | 1,185 | 29.3% | 292 | 7.2% | |
計 | 8,353 | 6,865 | 1,488 | 17.8% | 4,798 | 3,555 | 42.5% | 5,802 | 2,551 | 30.5% | 610 | 7.3% | |
総務省 | 26年度 | 1,390 | 1,173 | 217 | 15.6% | 799 | 591 | 42.5% | 911 | 479 | 34.4% | 70 | 5.0% |
27年度 | 1,580 | 1,331 | 249 | 15.7% | 897 | 683 | 43.2% | 1,077 | 503 | 31.8% | 89 | 5.6% | |
計 | 2,970 | 2,504 | 466 | 15.6% | 1,696 | 1,274 | 42.8% | 1,988 | 982 | 33.0% | 159 | 5.3% |
そして、①から③までの事項いずれかについて実施しておらず、見積書の妥当性の確認を行っていなかった主な理由について地方公共団体に確認したところ、見積書の内容精査を行うノウハウがなかったこと(46.9%)、見積書の精査のための人員が不足していたこと(34.1%)などとなっていた。
また、交付申請時に業者から徴した見積書の妥当性の確認の状況についても同様に確認したところ、一部のシステムで①から③までの事項の確認を実施していない状況が見受けられた(具体的な実施状況については別図表7参照)。
予定価格を基準として契約金額が決定して、当該契約金額により補助金の額も確定することから、地方公共団体においては、適正な見積書を徴して、その内容を確認して精査することが重要である。しかし、a及びbのとおり、一部の地方公共団体ではこれらの手続を実施していない状況となっていた。
一方、補助対象システムの整備において上記のような状況が見受けられることから、地方公共団体がこのような手続を適切に実施するためには国の助言等が重要となる。そこで、総務省、厚生労働省及び内閣官房における予定価格算定時等の見積りに関する取組の状況を確認したところ、次のとおりとなっていた。
総務省は、前記のとおり、地方公共団体に対して、26年10月に整備費補助金の執行に当たっては適正な見積りを徴することを求める通知を発していた。また、26年2月に想定事業費を地方公共団体に示した後、想定事業費の積算内訳を明らかにしてほしいとの要望を地方公共団体から受けて、同年8月に人件費単価、作業工数等が記載された想定事業費の積算内訳を地方公共団体に示していた。この積算内訳は、見積書の作業工数等を確認するためのノウハウがない地方公共団体にとって、予定価格等を算定する上で参考になるものである。なお、交付申請に関しては、同省の社会保障・税番号制度システム整備費補助金交付要綱(平成26年総官企第167号)において、交付申請書の様式を定めており、交付申請書に、作業に関する項目、作業工程、工数、単価等、整備内容及び経費の積算の内訳が明確になる見積書を添付させることとなっていた。
厚生労働省は、前記のとおり、地方公共団体に対して、見積書を確認する際には詳細な内訳を提出させることに留意して十分な精査を行うことを依頼していた。一方、同省においては、基準額(内示額)の積算内訳を明らかにしていなかった。なお、交付申請に関しては、同省の社会保障・税番号制度システム整備費補助金交付要綱(平成26年厚生労働省発政0625第1号)において交付申請書の様式を定めているものの、交付申請書に見積書を添付することは求めていなかった。これについて、同省は、整備費補助金については、地方分権推進計画(平成10年5月閣議決定)を踏まえて、地方公共団体の事業執行の円滑化及び事務負担の軽減の観点から検討した結果としている。
内閣官房は、地方公共団体が情報の提供その他の協力を求めてきたときは、補助対象システムの整備に関して地方公共団体に必要な協力をするよう努めてきたとしている。
このように、総務省、厚生労働省及び内閣官房において、見積書に関して一定の取組が行われてはいるものの、総務省及び厚生労働省において、業者から適正な見積書を徴することや、徴した見積書の内容を精査して妥当性の確認を行うことなどの必要性やその具体的な方法を地方公共団体に示すこと、また、内閣官房において、見積書の内容を精査するなどのノウハウのない地方公共団体の求めに応じて協力していくことについて、なお一層の取組を行うことが重要である。
地方公共団体においては、補助対象システムの整備に係る給付が完了した際には、仕様書の記載事項が適正に履行されたか、仕様書又は見積書に記載されている作業以外に要した経費が請求金額に計上されていないかなどについて確認することが重要となる。
そこで、地方公共団体における給付完了の確認状況を確認したところ、次のとおり、補助対象外の作業に係る経費が契約金額に計上されていたり、給付の完了時点において契約事項の一部が履行されていなかったりしたにもかかわらず、補助対象外の経費を控除することなく実績報告を行って整備費補助金の交付を受けていた事態が見受けられた。
<事例3> 情報システムの整備に係る給付完了の確認が適切に行われていなかったもの
沖縄県うるま市は、平成26年度に、住民基本台帳システムにおいてマイナンバー制度に対応するために必要となる機能の整備を業者と契約して行い、同年度に完了したとする実績報告書を総務省に提出して国庫補助金の交付を受けていた。
しかし、実際には、同市は、補助対象外とされているデータ整備等に要した経費及び26年度に実施されておらず27年度に実施されていた関連システムとの連携テスト等の作業に要した経費を補助の対象に含めて実績報告を行っていた。
この事態については、不当事項として、平成27年度決算検査報告に掲記したところである。
通知カード及び個人番号カードを交付するために、図表2-1のとおり、27年度総務省所管の歳出予算額として事業費補助金656億余円、事務費補助金105億余円、計761億余円が計上されている。このうち、個人番号カードについては、27年度当初予算で1,000万枚、補正予算で1,500万枚、計2,500万枚の交付等に係る経費が計上されている。
そして、両補助金の決算の状況についてみると、事業費補助金は355億余円が支出されて、301億余円が28年度に繰り越され、1200万余円が不用額となっている。また、事務費補助金は28億余円が支出されて、70億余円が28年度に繰り越され、5億余円が不用額となっている。
上記のうち、翌年度繰越額は、事業費補助金については予算額の45.8%、事務費補助金については予算額の67.0%となっている。総務省は、繰越額が生じていた理由について、個人番号カードの申請のペースが緩やかであったためとしている。また、不用額は、事業費補助金については予算額の0.01%、事務費補助金については予算額の5.5%となっている。総務省は、事務費補助金に不用額が生じていた理由について、実績報告時の実績値が交付決定時の見込値を下回ったことによるとしている。
図表2-1 事業費補助金及び事務費補助金の予算及び決算の状況(平成27年度)
補助金名 | 歳出予算額 | 支出済歳出額 | 翌年度繰越額 | 不用額 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
当初 | 補正 | 計 | ||||
事業費補助金 | 44,318 | 21,350 | 65,669 | 35,532 | 30,124 | 12 |
事務費補助金 | 4,004 | 6,508 | 10,513 | 2,873 | 7,052 | 586 |
計 | 48,323 | 27,859 | 76,183 | 38,406 | 37,177 | 599 |
個人番号の指定及び通知に際して、前記のとおり、市町村長は、J-LISから通知された個人番号とすべき番号を個人番号として指定して、住民票を有する者に対して当該個人番号を通知カードにより通知することとなっている。その際、市町村長は、通知カードの作成等をJ-LISに行わせており、これに要する経費を交付金としてJ-LISに支払い、当該交付金を補助対象として総務省から事業費補助金が交付されている。また、前記のとおり、市町村長は、当該市町村が備える住民基本台帳に記録されている者に対して、その者の申請により、その者に係る個人番号カードを交付することとなっている。その際、市町村長は、個人番号カードの作成等をJ-LISに行わせており、これに要する経費を交付金としてJ-LISに支払い、当該交付金を補助対象として総務省から事業費補助金が交付されている。
このように事業費補助金が充当される市町村の交付金によりJ-LISが行った通知カード・個人番号カード関連事務の事業別の経費の内訳は、図表2-2のとおりであり、27年度の総額は394億余円となっていた。
図表2-2 通知カード・個人番号カード関連事務の事業別の経費の内訳(平成27年度)
区分 | 事業名 | 主な事業内容 | 金額 |
---|---|---|---|
1 | 設備費等 |
|
105,978 |
2 | 通知カード等の作成・発送事業 |
|
25,582,099 |
3 | 個人番号カードの申込処理事業 |
|
4,011,693 |
4 | 個人番号カードの製造・発行事業 |
|
8,807,857 |
5 | 個人番号カード機能の一時停止等のためのコールセンター事業 |
|
990,200 |
計 | 39,497,828 |
そして、上記の経費には委託契約等の支払金額、J-LISの人件費、通知カード及び個人番号カードの郵送料等が含まれている。これに関して、J-LISが通知カード・個人番号カード関連事務を行うために締結した主な契約は、「通知カード及び個人番号カード交付申請書等作成業務」、「個人番号カード用ICカード製造業務等」等であり、その契約内容、契約相手方等は、図表2-3のとおりとなっており、28年6月までの支払金額の総額は199億8708万余円となっていた。
図表2-3 J-LISが通知カード・個人番号カード関連事務を行うために締結した契約の状況
契約件名 | 契約内容 | 契約方式 | 契約相手方 | 契約日 | 契約期間 | 区分 |
---|---|---|---|---|---|---|
通知カード及び個人番号カード交付申請書等作成業務 | 通知カード、個人番号カード交付申請書等の作成 | 随意契約 | 独立行政法人国立印刷局 | 平成27年3月20日 | 27年3月20日~29年3月31日 | 2 |
個人番号カード用ICカード製造業務等 | 個人番号カード用ICカード製造業務等(600万枚) | 一般競争契約 | エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 | 27年4月10日 | 27年4月10日~28年6月30日 | 4 |
個人番号カード用ICカード製造業務等(480万枚) | 一般競争契約 | エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 | 27年4月10日 | 27年4月10日~28年6月30日 | ||
個人番号カード用ICカード製造業務等(420万枚) | 一般競争契約 | 凸版印刷株式会社 | 27年4月10日 | 27年4月10日~28年6月30日 | ||
個人番号カード交付申請書受付・発行及び発行管理業務等 | 個人番号カード交付申請書受付・発行及び発行管理業務 | 一般競争契約 | 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ株式会社DNPデータテクノ凸版印刷株式会社 | 27年1月16日 | 27年1月16日~29年3月31日 | 3、4 |
個人番号カード管理システム及び個人番号カード発行委託システム運用管理支援等業務 | 個人番号カード管理システム及び個人番号カード発行委託システム運用管理支援等業務 | 随意契約 | 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ | 27年7月29日 | 27年7月29日~31年3月31日 | 1 |
通知カード及び個人番号カードに係るコールセンター業務 | 住民からの通知カード及び個人番号カードに関する問合せ対応業務 | 一般競争契約 | 株式会社ベルシステム24 | 27年4月7日 | 27年4月7日~29年3月31日 | 5 |
前記のとおり、市町村は、事業費補助金が充当される交付金を交付して、通知カードの交付等に係る業務をJ-LISに行わせている。そして、J-LISは、通知カードの作成等の業務を独立行政法人国立印刷局(以下「国立印刷局」という。)に委託するなどしており、この委託業務等において、市町村から送付された住民情報に基づき、通知カード及び個人番号カード交付申請書の製造、印刷、送付等を行っている。なお、作成した通知カードについては市町村を介さずに国立印刷局から直接郵便局に差し出して、郵便局から簡易書留により世帯ごとにまとめて郵送しており、これに係る郵便料金は、28年3月末時点で170億6800万余円となっている。
通知カードの送付に当たっては、総務省は、27年3月に発した「住民基本台帳の記録の正確性の確保について(通知)」(平成27年総行住第35号)において、住民基本台帳法第34条の規定に基づき、氏名、住所等の事項についての調査を行うことが有効であることから、番号法の施行までの時期に集中的に行うとともに、当該調査の結果を踏まえて、適切に住民票の記載、消除又は記載の修正を行うよう、各市町村に周知徹底を図ることを各都道府県知事に対して依頼している。
郵便局から配達できなかった通知カードは、郵便局において1週間保管された後、市町村に返戻されることになっている。そして、総務省が定めた「通知カード及び個人番号カードの交付等に関する事務処理要領」(平成27年総行住第137号。以下「事務処理要領」という。)において、市町村は、返戻された通知カードについて、受取人が他の市町村へ転出していないかなど、住民票記載事項の確認や調査を行うこととなっている。
事務処理要領及び総務省が27年9月に発した「通知カードの運用上の留意事項、個人番号カードの運用上の留意事項及び転入届の特例及び住民票の写しの広域交付の運用上の留意事項について(通知)」(平成27年総行住第138号)によれば、郵便局から市町村に返戻された通知カードのうち、受取人が他の市町村へ転出したり、死亡により住民票が消除されたりするなどして受取人が既に当該市町村に存在しない場合は廃棄することとされている。また、居住実態の不明等により一定期間(3か月程度)経過しても交付ができない場合も廃棄することとされているが、東日本大震災の避難者等のように本人と連絡を取ることができないなど、通知カードの交付が困難な事態も想定されることから、総務省は、27年12月28日に、当該期間が経過した通知カードについて、28年3月31日まで保管するように市町村長に要請しており、また、同年3月23日に、更に保管期間を延長することを検討するように市町村長に要請している。
総務省は、個人番号の付番が開始される27年10月5日時点での住民票の情報に基づく通知カードの送付についてシミュレーションを行っており、同月から通知カードの送付が開始され、おおむね11月中(11月中に全体の送付通数の94.9%を配達して、最も遅い市町村でも12月27日に配達する予定)には郵便局から住民への初回の配達を行うことになっていた。
しかし、実際の送付状況をみると、通知カードの送付は10月から開始されたが、通知カードの送付に係る作業については、国立印刷局から郵便局への通知カードの差出しの遅れや、市町村の住民情報の作成ミス、市町村からJ-LISへの住民情報の送付ミス、J-LISから国立印刷局への住民情報の送付ミス、配達の際の気象条件等により、一部に遅れが生じていた。そして、11月末時点で初回の配達が行われたものは、全1,741市町村に係る約5,684万通の88.5%である約5,031万通となっており、最終的に初回の配達が終了したのは12月16日であった(通知カードの印刷漏れなどにより配達が遅れた一部の地域を除く。)。
(イ)の事態を踏まえて、検査対象である852市町村が28年3月末までに送付した通知カードの送付の状況をみたところ、送付した通知カードの総数は34,139,408通となっていた(図表2-4参照)。
また、前記のとおり、通知カードの送付に当たっては、住民票に記載をすべきものとされている氏名、住所等の事項についての調査を行うことが有効であるとされていることから、検査対象である852市町村について当該調査の状況をみたところ、518市町村(60.7%)において、時間がなかったことや人手が不足していたことなどの理由で、番号法の施行までの時期に当該調査を実施していなかった。
検査対象である852市町村について通知カードの返戻の状況をみたところ、28年3月までの間に返戻された通知カードは852市町村で3,624,609通となっていた(図表2-4参照)。そして、通知カードが返戻された理由について、市町村に確認したところ、受取人による受取拒否や宛て所なしなどとなっていた。
市町村は、返戻された通知カードについて、住民票記載事項の確認や調査を行うこととなっており、居住実態が確認された場合は、受取人に対して市町村の窓口に取りに来るように促す通知等を行うなど通知カードの確実な交付に努めることが求められている。
そこで、検査対象である852市町村について、28年3月末時点における返戻された通知カードの状況をみたところ、返戻されたもののうち、852市町村において、2,129,393通がその後受取人に交付されるなどしていた一方、840市町村において、交付等ができないまま保管されている通知カードが1,399,132通(会計検査院の試算による通知カードの送付等に係る事業費補助金相当額6億0162万余円)となっていた。このように交付等ができないまま保管している通知カードについて理由別にみると、受取人による受取拒否等のほかに、市町村が返戻後に住民票記載事項の確認や調査を実施していないものが209市町村で350,513通(会計検査院の試算による通知カードの送付等に係る事業費補助金相当額1億5072万余円)となっていた(図表2-4参照)。そして、返戻後に確認や調査を実施できていない理由を該当市町村に確認したところ、人手不足や他の業務で多忙のためなどとなっていた。
前記のとおり、総務省は、通知カードの保管期間を延長するように市町村に要請していた。そこで、検査対象である852市町村において通知カードの状況をみたところ、受取人の受取拒否や居住実態の不明により、上記要請の後に保管期間が一定期間(3か月程度)経過したことにより廃棄されていたものが、28年3月末時点において96市町村で8,656通(会計検査院の試算による通知カードの送付等に係る事業費補助金相当額372万余円)となっていた(図表2-4参照)。
図表2-4 通知カードの交付等の状況(平成28年3月末時点)
市町村数 | 通数 | 会計検査院の試算による事業費補助金相当額
(千円) |
||||
---|---|---|---|---|---|---|
送付した通知カードの総数 | 852 | 34,139,408 | 14,679,945 | |||
返戻されたもの | 852 | 3,624,609 | 1,558,581 | |||
その後受取人に交付されるなどしたもの | 852 | 2,129,393 | 915,638 | |||
交付等ができないまま市町村に保管されているもの | ① | 209 | 350,513 | 150,720 | ||
② | 533 | 395,986 | 170,273 | |||
③ | 483 | 381,053 | 163,852 | |||
④ | 649 | 14,513 | 6,240 | |||
⑤ | 9 | 257,067 | 110,538 | |||
計 | 840 | 1,399,132 | 601,626 | |||
廃棄したもの | ⑥ | 443 | 36,090 | 15,518 | ||
⑦ | 478 | 13,887 | 5,971 | |||
⑧ | 96 | 8,656 | 3,722 | |||
⑨ | 160 | 13,196 | 5,674 | |||
⑩ | 13 | 24,255 | 10,429 | |||
計 | 537 | 96,084 | 41,316 |
個人番号カードの申請及び交付の方法については、交付時来庁方式、勤務地等一括申請方式、申請時来庁方式、居所地経由申請方式及び勤務地等経由申請方式の五つの方式がある。このうち交付時来庁方式における申請から交付までの流れは、次のとおりとなっている(図表2-5参照)。
① 申請者は、通知カード送付時に同封されている個人番号カード交付申請書に必要事項を記載しJ-LISへ郵送するなどして申請を行う。
② J-LISは、申請を受け付けて、当該申請に係る情報を個人番号カードの発行を委託している業者に送付し、当該業者により個人番号カードが発行される。また、申請者に個人番号カードの交付のために市町村の窓口へ来庁する必要があることを知らせるための個人番号カード交付通知書(以下「交付通知書」という。)を作成し、発行した個人番号カードと合わせて市町村へ送付する。
③ 発行された個人番号カード等を受け取った市町村は、統合端末(注11)を用いて電子証明書の利用の設定、更新情報の登録等(以下、これらの作業を「交付前設定」という。)を行った上で交付通知書を申請者に送付する。
④ 市町村は、申請者が通知カード、本人確認書類等を持参して来庁した際、本人確認を行い、暗証番号設定を行った上で個人番号カードを申請者に交付する。
個人番号カードについては、前記のとおり、27年度当初予算で1,000万枚、補正予算で1,500万枚、計2,500万枚の交付等に係る経費が計上されている。
図表2-5 交付時来庁方式における交付事務の流れ
全国における28年1月末から9月末までの個人番号カードの製造枚数(個人番号カード用のICカードの製造枚数)、申請枚数、発行(製造したICカードに必要な情報を付加すること)してJ-LISから市町村に送付した枚数及び交付枚数の推移を確認したところ、同年9月末時点では、製造枚数1,900万枚、申請枚数1,221万余枚、発行してJ-LISから市町村に送付した枚数1,120万余枚に対して、交付枚数は847万余枚となっていた(図表2-6参照)。
図表2-6 個人番号カードの交付枚数等の推移
また、J-LISにおいては、28年3月末時点では、27年度当初予算で計上された1,000万枚に対して、1,000万枚の個人番号カードを製造しており、このうち911万余枚を発行していた。
一方、市町村においては、28年3月末時点での交付枚数は2,277,515枚にとどまっていた。そして、交付が遅れた理由について、総務省が作成した「マイナンバーカード交付促進マニュアル」によれば、交付に係る人員体制等の確保が十分でなかったり、後述のとおり、カード管理等システムの障害が発生したりしたこと、さらに、個人番号カードの交付の本格化と3月から始まる住民の異動に係る繁忙期が重なったことなどの複合的な要因によるとされている。
検査対象である852市町村における28年3月末時点での個人番号カードの交付の状況をみたところ、図表2-7のとおり、申請枚数6,002,486枚、発行してJ-LISから市町村に送付した枚数5,384,085枚に対して、交付枚数は1,225,423枚となっていて、低調な状況となっていた。
図表2-7 852市町村における個人番号カードの交付等の状況(平成28年3月末時点)
申請者から申請があったもの | ||||
---|---|---|---|---|
J-LISから市町村に送付したもの | ||||
市町村から申請者に交付しているもの | ||||
枚 | 枚 | % | 枚 | % |
(a) | (b) | (b/a) | (c) | (c/a) |
6,002,486 | 5,384,085 | 89.6 | 1,225,423 | 20.4 |
また、個人番号カードがJ-LISから市町村へ送付された後、申請者へ交付されるまでの日数について、当該日数を把握していた273市町村に確認して、その平均日数を算出したところ、41.8日となっていた。そして、個人番号カードが市町村に到着してから申請者へ交付通知書を送付するまでの状況について検査対象である852市町村に確認したところ、1か月以上要したものが1,700,831枚あった。このように送付までに一定の時間を要する状況が生じている理由について、市町村に確認したところ、交付が開始されてから間もないことから交付事務の処理に慣れるまで時間を要したり、交付事務に従事する職員数が不足していたり、後述のとおり、J-LISのカード管理等システムに障害が発生したことなどにより市町村において処理に時間を要したりしたことなどとなっていた。なお、市町村が、申請者への交付通知書の送付日から1か月以上先に申請者の来庁日を指定していたものが335,873枚あった。
さらに、個人番号カードの交付時にカード管理等システムに接続できなかったことなどから窓口に訪れた申請者に交付できなかった個人番号カードの枚数について、検査対象である852市町村に確認したところ、516市町村で30,247枚あった(32市町村は、当該事態があったか把握していなかった。)。これらについては、後日、申請者に郵送等することとなり、郵送に係る経費は1388万余円となっていた。
J-LISは、個人番号カードの発行、交付通知書の市町村への送付のための郵便局への差出しの時期についての見通しを、27年12月からホームページで公開するなどしていた。一方、市町村における交付予定の見通しなどについて、検査対象である852市町村に確認したところ、28年3月末時点において、月ごとなどに想定交付枚数を算定していたのは95市町村(11.1%)となっていた。また、個人番号カードの交付計画を策定していたのは46市町村(5.3%)となっていて、残りの806市町村はあらかじめ交付計画を策定していなかった。
総務省は、個人番号カードの交付に遅れが生じたことを踏まえて、28年5月に、市町村が個人番号カードを早期に交付するために「マイナンバーカード交付促進マニュアル」を作成して全市町村に周知し、滞留分の交付通知書の送付が完了する時期の目標やそれを裏付けるための実施体制等を内容として盛り込んだマイナンバーカード交付計画の策定を全市町村に要請した。
なお、個人番号カードの交付計画を策定していなかった市町村は、上記の総務省からの要請を受けてマイナンバーカード交付計画を策定しており総務省による進捗状況のフォローアップ調査結果によれば、28年11月末までに全市町村において交付通知書の送付の滞留が解消したとされている。
個人番号カードは様々な場面で利用されることが想定されている。そして、総務省は、個人番号カードの利活用方法として、①一般的な本人確認手続における本人確認書類としての利用、②ICチップの空き領域にアプリを格納することによる入退館カード等としての利用、③ICチップに格納される電子証明書を用いた国税電子申告・納税システム(e-Tax)等の行政手続のオンラインでの申請、届出等、④情報提供等の記録を確認できるシステムであるマイナポータルへのログイン、⑤コンビニエンスストア等での住民票の写し、印鑑登録証明書の写しなどの交付等が挙げられるとしている。
そして、個人番号カードの普及・利活用の促進として、「世界最先端IT国家創造宣言工程表」において、①印鑑登録者識別カード等の行政が発行する各種カードとの一体化を図る、②住民票の写し、印鑑登録証明書の写し、戸籍謄本等のコンビニエンスストアでの交付を利用できる地方公共団体等を拡大するとともに、順次対象手続の拡大を行い、コンビニエンスストアでの交付について、28年度中に実施団体の人口の合計が6,000万人を超えることを目指すなどの利活用の推進のための方針が示されている。また、個人番号カードの利活用のために新たに必要となる情報システムの導入に要する経費、既存の情報システムの整備に要する経費等について特別交付税による地方財政措置が講じられている。
そこで、28年3月末時点における住民票の写しなどのコンビニエンスストアでの交付等による個人番号カードの利活用の状況について、検査対象である852市町村に確認したところ、115市町村(13.5%)は既に個人番号カードの利活用を行っていた(行うことを決定していたものを含む。)が、737市町村(86.5%)は個人番号カードの利活用を行っておらず、このうち、157市町村は利活用を行うことについて検討していなかった。利活用を行っていない主な理由として、多くの市町村が、費用対効果が乏しいこと、住民のニーズがないことなどを挙げていた。
なお、総務省は、28年9月に、個人番号カードの普及のために、住民票の写し、戸籍謄本等の各種証明書をコンビニエンスストアで交付するサービス等の導入に向けた早期かつ積極的な検討をするよう全国の市町村に依頼している。
カード管理等システムは、図表2-8のとおり、カード管理業務サーバ、中継サーバ等で構成されている。このうち中継サーバは、市町村CSとカード管理業務サーバの間のデータ授受のための暗号化等の機能を有するものであり、業務アプリケーション(市町村CSとカード管理等システムの間の通信を中継するための中継サーバ用ソフトウェア)、耐タンパー装置(住基ネットの安全な通信を行うための暗号処理を行うハードウェア(付随するソフトウェアを含む。))等で構成されている。
図表2-8 カード管理等システムの構成等
(a) 総務省が締結した付番等業務委託契約の概要
総務省は、25年9月に、随意契約により、J-LISと契約期間を28年3月までとする付番等業務委託契約を契約金額100億4690万余円(変更後の契約金額103億6533万余円)で締結している。そして、付番等業務委託契約において、J-LISは、個人番号の生成、公的個人認証サービス、個人番号カード等に係る情報システムの開発等の業務を行うこととなっている。
(b) J-LISが締結したシステム設計・開発等契約の概要
J-LISは、上記の業務を行うために、複数の委託契約等を締結しており、その契約金額の総額は77億5316万余円となっている。このうち、個人番号カードに関係する主な契約として、26年1月に、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ、日本電気株式会社、株式会社日立製作所及び富士通株式会社の5社と、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社を代表責任者として、契約期間を27年12月までとする「番号制度に係るシステム設計・開発等業務」に係る契約を一般競争契約により契約金額68億9580万円(変更後の契約金額69億3468万円)で締結している(以下、この契約を「システム設計・開発等契約」という。)。
システム設計・開発等契約は、①個人番号の生成・通知に係る業務、②住民基本台帳ネットワークシステム既存業務の一部変更に係る業務、③情報提供NWSとの連携に係る業務、④電子証明書に係る業務及び⑤個人番号カードに係る業務の五つの業務を対象とする情報システムの設計、開発等を行うものであり、各業務の内容は、図表2-9のとおりとなっている。
図表2-9 システム設計・開発等契約における業務の内容
業務名 | 業務内容 |
---|---|
①個人番号の生成・通知に係る業務 |
住基ネット全国サーバで管理する住民票コードに対応した個人番号の生成、個人番号の市町村への通知等を行う。 |
②住民基本台帳ネットワークシステム既存業務の一部変更に係る業務 |
本人確認情報への個人番号の追加等に伴いシステムの一部変更を行う。 |
③情報提供NWSとの連携に係る業務 |
情報照会・提供機関の機関別符号又はマイナポータルの開示システム用符号の生成のために、住民票コードを情報提供NWSに通知する。 |
④電子証明書に係る業務 |
署名用電子証明書注(1)及びマイナポータルへのログイン等に利用される利用者証明用電子証明書注(2)に関する発行、失効、失効情報等の提供等を行う。 |
⑤個人番号カードに係る業務 |
ICカードである個人番号カードの発行、交付及びその後のカード情報の管理を行う。 |
上記業務のうち、⑤個人番号カードに係る業務については、更に個人番号カード発行管理業務等の三つの業務に区分されており、その業務内容及び業務を実現するために必要な機能を有する情報システムは図表2-10のとおりとなっていて、システム設計・開発等契約においてこれらの情報システムの開発等を行うこととなっている。
図表2-10 システム設計・開発等契約の⑤個人番号カードに係る業務の内容
業務名 | 業務内容 | 情報システム名 |
---|---|---|
⑤-1 個人番号カード発行管理業務 |
市町村が、利用者からの申請に基づき発行された個人番号カードに関する情報について管理を行う業務 | 市町村CS |
⑤-2 個人番号カード発行委託業務 |
J-LISが、個人番号カードの発行に必要となるカード発行情報を作成して、各システムに連携する業務 | 個人番号カード発行委託システム、個人番号カード発行システム(注)、個人番号カード管理システム、住基ネット全国サーバ、公的個人認証サービスシステム |
⑤-3 個人番号カード管理業務 |
J-LISが、個人番号カードの運用状況、電子証明書の状態、宛名印刷情報等を保持し、各システムが要求するこれらの情報を連携する業務 | 個人番号カード管理システム、住基ネット全国サーバ、公的個人認証サービスシステム |
J-LISは、システム設計・開発等契約における成果物を前記の5社から受領し、これを検査した上で適正なものであるとして、26年5月から28年5月までの間に3回に分けて計69億3468万円を支払っていた。また、システム設計・開発等契約において開発するなどした情報システムについては、契約に基づきJ-LISが所有し、その後管理している。これらの情報システムのうち、カード管理等システムについては28年1月(一部の機能については27年10月)から稼働を開始しており、カード管理等システムの保守・運用に要する経費については、市町村が交付金としてJ-LISに支払っており、この交付金を補助対象として、総務省から市町村に事業費補助金が交付されている。なお、カード管理等システムの開発等に係る経費は、システム設計・開発等契約の契約金額に含まれている。
一方、付番等業務委託契約については、総務省が、J-LISからの成果物として委託業務成果報告書を受領し、これを検査した上で適正なものであるとして、26年4月から28年4月までの間に3回に分けて計94億3801万余円を支払っていた。なお、付番等業務委託契約により開発等した情報システムは、J-LISが所有して管理することとなっている。
28年1月から3月までの間に、複数回にわたりカード管理等システムの中継サーバに障害が発生し、市町村はカード管理等システムに接続できない状態となった。J-LISは、28年4月27日及び6月22日に障害の状況を公表している。J-LISによれば、①中継サーバのCPU内の割り込み通知において処理順序の不整合が発生したこと、②中継サーバの業務アプリケーションにおいてメモリ領域の解放時に異常が発生したことにより、市町村が個人番号カードの交付事務を行う際に用いる統合端末からカード管理等システムに接続できない状態になったとしている。そして、J-LISは、これらの事象について対応策を講じたとしている(カード管理等システムに生じた障害の概要等については別図表8参照)。
J-LISは、上記の発生原因を、中継サーバを担当した業者による設計不備、適合性評価の不足等としており、システム設計・開発等契約の相手方5社の負担により、中継サーバを2台から4台に増設するなどした上で、障害の再現テストを繰り返すなどしてカード管理等システムの改修を進めて、28年4月に根本的な発生原因を取り除くなどの対応策を実施したとしている。また、発生原因の特定に長時間を要した要因として、事象の発生箇所である中継サーバの調査に関し、調査全体を取りまとめる立場の代表責任者であるエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社と中継サーバを担当した業者との間での連携が不足していたため、中継サーバを担当した業者において原因究明への主導的な対応が行われず、総合的な調査が行われるまでに時間を要したなどとしている。
なお、J-LISは、28年6月に、再発防止策として、①情報システム全体の総合的な企画に関すること、情報システムの部門横断的な連携に関することなどを所掌するシステム統括室を設置するなどのJ-LISにおけるプロジェクトマネジメント能力の強化、②カード管理等システム等のマイナンバー制度に関連する情報システムの総点検、③市町村における個人番号カードの交付の際に、関係する情報システムが円滑に稼働しないなどの原因を究明し、対策を講ずるための市町村システム支援担当チーム(仮称)の設置及び④個人番号に関連する情報システムの安定稼働とトラブル発生時の迅速な対応に向けた設計・開発業者側のインシデント(注12)対応体制の強化を行うことを公表して、同年10月にその対応状況を公表していた。
(イ)の障害とは別に、市町村からカード管理等システムに過度に通信が集中したため、カード管理等システムにおいて市町村から送付されるデータの処理が大幅に遅延し、市町村からカード管理等システムにつながりにくい状態が28年2月22日に発生した。J-LISによれば、これはカード管理等システムのカード管理業務サーバの処理遅延が原因であるとされており、対策として、システム設計・開発等契約の相手方5社の負担により必要な改修等を行っていた。
また、同月から3月までにかけて、市町村が暗証番号の設定等の個人番号カードの交付事務を行う際に、統合端末から市町村CSに通信が過度に集中したため、回線がつながりにくくなって処理が中断する状態が発生していた。J-LISは、この対策として、中断した場合に再度のアクセスを可能とするためのソフトウェアを開発するなどして市町村の支援を行ったとしている。
さらに、2月下旬以降、市町村における交付処理及び交付前設定が増加し、また、3月中旬以降、住民の異動等に伴う事務が過度に重なったため、カード管理等システムに対する通信が平日の9時30分頃から12時頃まで及び14時台に集中し、カード管理等システムにつながりにくい状態が発生していた。この状態に対して、総務省は、当該時間帯には交付処理を優先し交付前設定等の処理を控えるよう事務連絡を発するなどして、カード管理業務の円滑化に向けた対応策を講じたとしている。
上記の状態について、J-LISは、前記のカード管理等システム等の総点検結果においても、年1,000万枚の個人番号カードの発行及び交付という開発着手時の要件が、追加要件により3か月で1,000万枚となったため、発行については問題なく対応できたものの、交付については交付時間帯の平準化による対応が必要であり、その情報が市町村に連携されないまま推移した結果、住民の異動が大幅に増えた3月以降、能力不足の状態が発生し、交付前設定の時間帯抑制等を行ったとしている。また、カード管理等システム等として一定の処理制限数を設けており、上限を超える要求が市町村CSから送られた場合は、「接続超過」を返信することにより、カード管理等システム等を安定稼働させる仕組みにしていたが、一旦接続超過が発生すると市町村CS側が正常に処理している通信を全て切断して通信を1分間閉塞するという既存の住基ネットの仕様についての考慮が十分でなく、システム全体としての性能や仕様上の制約に対する検討が十分でなかったなどとしている。そして、J-LISは、この総点検結果等を踏まえて、個人番号カードの安定的な交付を可能とする情報システム等の改修等を行うとしている。
通知カード及び個人番号カードの交付事業のうち、通知カードについては、市町村が受取人に確実に交付できるよう、総務省において、受取人に交付等ができないまま保管されていたり、廃棄されていたりした事態を踏まえて、今後も返戻された通知カードに関する調査等に関して、市町村に対して必要な助言を行うことが重要である。また、個人番号カードについては、市町村が、交付事務に係る人員体制等の不備、J-LISの情報システムの障害等により滞留することがないように交付を行い、個人番号カードの利活用について速やかに検討し利活用を行うことができるよう、総務省において、28年3月末時点で滞留が生じていた原因や個人番号カードの利活用の検討をこれから行う市町村が多いことを踏まえて、今後も個人番号カードの交付や利活用に関して、市町村に対して必要な助言を行うことが重要である。