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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
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  • 平成29年3月|

地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地域消費喚起・生活支援型)による事業の実施状況について


3 検査の状況

(1) 地域消費喚起型事業の事業数、事務費等の状況

ア 事業数等の状況

409地方公共団体は、地域消費喚起型事業として716事業を実施しており、これらに要した事業費は計826億1650万余円(交付金交付額計804億9643万余円)となっていた。このうち、プレミアム付商品券事業(特定の商品・サービスを対象としたものなどを除く。)、宿泊費の助成を伴うふるさと旅行券事業及びふるさと名物商品事業(以下、これらを合わせて「3事業」という。)の状況についてみたところ、図表5のとおり、407地方公共団体が553事業を実施しており、これらに要した事業費は計778億5489万余円(交付金交付額計761億2284万余円)となっていた。

図表5 3事業の事業数等

事業名 事業数 事業主体数 事業費 交付金交付額
プレミアム付商品券事業 414事業 393地方公共団体 539億2873万余円 523億3161万余円
ふるさと旅行券事業 81事業 64地方公共団体 192億5334万余円 191億4324万余円
ふるさと名物商品事業 58事業 44地方公共団体 46億7281万余円 46億4799万余円
3事業の計 553事業 407地方公共団体 778億5489万余円 761億2284万余円
(注)
「事業主体数」欄は、複数の事業を実施している事業主体があるため、事業主体数を合計しても計欄の事業主体数とは一致しない。

イ 事務費等の状況

前記の553事業に対する交付金交付額計761億2284万余円のうち事務費は計156億2843万余円であり、3事業ごとに交付金交付額に対して事務費の占める割合(以下「事務費割合」という。)等についてみたところ、次のとおりとなっていた。

(ア) プレミアム付商品券事業における事務費等

プレミアム付商品券事業に対する交付金交付額計523億3161万余円のうち、図表6のとおり、プレミアム分の助成費用に充当されたのは計430億3498万余円、事務費に充当されたのは計92億9662万余円となっており、プレミアム付商品券事業全体での事務費割合は17.7%となっていた(事業別の事務費等については別表2参照)。

図表6 プレミアム付商品券事業の事務費等

図表6 プレミアム付商品券事業の事務費等 画像

また、事務費の内訳について、金額を把握できた費目のうち主なものをみたところ、プレミアム付商品券等の印刷に要した印刷製本費計17億6733万余円(事務費に占める割合19.0%)、金融機関等へ支払った換金手数料計11億9105万余円(同12.8%)、宣伝広告費計10億0221万余円(同10.7%)、人件費計9億0216万余円(同9.7%)となっていた。

(イ) ふるさと旅行券事業における事務費等

ふるさと旅行券事業に対する交付金交付額計191億4324万余円のうち、図表7のとおり、割引分等の助成費用に充当されたのは計144億4091万余円、事務費に充当されたのは計47億0232万余円となっており、ふるさと旅行券事業全体での事務費割合は24.5%となっていた(事業別の事務費等については別表3参照)。

図表7 ふるさと旅行券事業の事務費等

図表7 ふるさと旅行券事業の事務費等 画像

また、事務費の内訳について、金額を把握できた費目のうち主なものをみたところ、宣伝広告費計20億9736万余円(事務費に占める割合44.6%)、人件費計5億0053万余円(同10.6%)、印刷製本費計1億2855万余円(同2.7%)となっていた。

(ウ) ふるさと名物商品事業における事務費等

ふるさと名物商品事業に対する交付金交付額計46億4799万余円のうち、図表8のとおり、割引分等の助成費用に充当されたのは計30億1851万余円、事務費に充当されたのは計16億2948万余円となっており、ふるさと名物商品事業全体での事務費割合は35.0%となっていて、プレミアム付商品券事業及びふるさと旅行券事業より高くなっていた(事業別の事務費等については別表4参照)。

図表8 ふるさと名物商品事業の事務費等

図表8 ふるさと名物商品事業の事務費等 画像

そこで、前記のふるさと名物商品事業58事業のうち、事務費のみに緊急支援交付金を充当した1事業(事業費1,523,976円。交付金交付額同額)を除いた57事業について、事務費割合別の事業数をみたところ、図表9のとおり、事務費割合が50%未満のものが33事業(57事業に占める割合57.8%)、50%以上のものが24事業(同42.1%)となっており、このうち70%以上のものも14事業(同24.5%)あった。

図表9 ふるさと名物商品事業の事務費割合別の事業数

事務費割合が50%未満 33事業
事務費割合が50%以上 24事業
  事務費割合が70%以上 14事業

また、事務費の内訳について、金額を把握できた費目のうち主なものをみたところ、宣伝広告費計6億5792万余円(事務費に占める割合40.3%)、人件費計2億4260万余円(同14.8%)、印刷製本費計8809万余円(同5.4%)となっていた。

上記事務費のうち主なものについて3事業間で比較すると、図表10のとおり、事務費に占める印刷製本費の割合は、プレミアム付商品券事業19.0%、ふるさと旅行券事業2.7%、ふるさと名物商品事業5.4%となっていて、プレミアム付商品券事業において割合が高くなっていた。これは、プレミアム付商品券事業においては、印刷したプレミアム付商品券を発行する事業が多い一方、ふるさと旅行券事業及びふるさと名物商品事業においては、インターネット上でクーポンを発行したり、割引販売したりするなど印刷を要しない販売方法による事業が多いことが影響していると考えられる。

また、事務費に占める宣伝広告費の割合は、プレミアム付商品券事業10.7%、ふるさと旅行券事業44.6%、ふるさと名物商品事業40.3%となっていて、ふるさと旅行券事業及びふるさと名物商品事業において割合が高くなっていた。これは、プレミアム付商品券事業においては、主として市町村の域内における消費喚起を目的としているため、市町村内等で宣伝広告を行うことが多い一方、ふるさと旅行券事業及びふるさと名物商品事業においては、主として域外からの消費喚起を目的としているため、新聞、雑誌、インターネット等による域外向けの広告等が必要となったり、地域や名物商品の魅力を消費者に伝えるための企画等が必要になったりすることが影響していると考えられる。

図表10 3事業の事務費に占める印刷製本費、宣伝広告費及び人件費の割合

図表10 3事業の事務費に占める印刷製本費、宣伝広告費及び人件費の割合 画像

(2) プレミアム付商品券事業の実施状況

前記の393地方公共団体におけるプレミアム付商品券事業414事業(事業費計539億2873万余円、交付金交付額計523億3161万余円)の実施状況についてみたところ、次のとおりとなっていた。

ア プレミアム付商品券の発行状況等

プレミアム付商品券の発行額、販売済額等についてみたところ、図表11のとおり、前記の414事業全体では、発行額計2643億3520万余円、販売済額計2642億2903万余円となっており、このうち商品等の購入に利用され換金された額(以下「利用額」という。)は、計2632億3914万余円(注3)(利用率(注4)99.5%)となっていた。

また、プレミアム率の設定状況についてみたところ、20%としているものが274事業と最も多く、30%が56事業、10%が37事業、25%が13事業、15%が8事業、40%が3事業となっていた。このほか、一つの事業で複数回プレミアム付商品券を発行するなどしたため、プレミアム率を複数設定しているものも見受けられた。

そして、プレミアム率と販売済率(注5)及び利用率の状況についてみたところ、販売済率は99.8%及び99.9%、利用率は99.3%から99.7%となっていて、プレミアム率と販売済率又は利用率との関係に一定の傾向は見られなかった。

(注3)
利用額を把握していなかった1事業を除く413事業の計
(注4)
利用率  プレミアム付商品券の発行額に対する利用されたプレミアム付商品券の券面額の割合
(注5)
販売済率  プレミアム付商品券の発行額に対する販売されたプレミアム付商品券の券面額の割合

図表11 プレミアム付商品券の発行額、販売済額等

(単位:事業、円、%)
プレミアム率 事業数 発行額
(a)
販売済額
(b)
利用額
(c)
販売済率
(b)/(a)
利用率
(c)/(a)
10% 37 26,929,559,000 26,927,728,622 26,855,283,994 99.9 99.7
15% 8 6,194,659,000 6,194,544,000 6,153,999,000 99.9 99.3
20% 274 180,945,596,800 180,914,229,800 180,151,131,051 99.9 99.5
25% 13 9,610,323,000 9,595,248,000 9,577,343,035 99.8 99.6
30% 56 23,917,458,500 23,887,519,500 23,828,193,185 99.8 99.6
40% 3 466,270,000 466,256,000 464,225,600 99.9 99.5
その他 23 16,271,338,000 16,243,510,900 16,208,966,300 99.8 99.6
414 264,335,204,300 264,229,036,822 263,239,142,165 99.9 99.5
注(1)
プレミアム率20%及び「計」の利用額欄は、それぞれ利用額を把握していなかった1事業を除いた273事業及び413事業の合計である。
注(2)
「その他」は、一つの事業でプレミアム率を複数設定したものなどである。

イ プレミアム付商品券の利用期限の設定

前記のとおり、内閣府は、プレミアム付商品券等の利用期限は短期の方が望ましいが、どのような利用期限を設定するにしても、緊急支援交付金事業は27年度で終了し、緊急支援交付金は27年度末までのプレミアム付商品券等の利用実績により精算することとしている。

プレミアム付商品券の利用期限の設定状況についてみたところ、次のとおり、プレミアム付商品券の利用期限の設定が適切でなかったため、消費喚起効果の全てが必ずしも27年度中に発現しないことになり、緊急経済対策の速やかかつ着実な実施を図ることを目的としている緊急支援交付金の趣旨に沿っていない事例が見受けられた。

<事例1> 発行した商品券のうち購入者が支払った金額相当分について利用期限を設定しておらず、緊急支援交付金の趣旨に沿っていなかったもの

島根県浜田市は、平成27年度に、従来、浜田商工会議所が自主事業として発行している商品券(プレミアムを付さず利用期限を設定していない商品券。以下「自主商品券」という。)にプレミアム率20%を付加する形で、1セット当たり券面額12,000円分(1,000円×12枚)の商品券を10,000円で販売する浜田市プレミアム付共通商品券発行事業(国補正分)を同商工会議所に補助金を交付するなどして事業費65,376,666円(交付金交付額64,752,666円)で実施している。同商工会議所は、同事業において総額360,000,000円のプレミアム付商品券を発行しているが、発行したプレミアム付商品券のうちプレミアム分(1セット当たり2枚、券面額2,000円分。総額60,000,000円分)については、27年12月31日までの利用期限を設定していた一方で、購入者が支払った金額相当分の自主商品券(1セット当たり10枚、券面額10,000円分。総額300,000,000円分)については、従来どおり同商工会議所が発行する自主商品券として位置付けていたため、利用期限を設定しておらず、27年度中に使い切る必要がないものとなっていた。

ウ プレミアム付商品券の販売方法等

プレミアム付商品券の初回販売時の販売方法についてみたところ、図表12のとおり、前記414事業のうち、先着順としていたものが208事業と最も多く、事前の予約申込数が発行数を超えた場合は抽選とする予約抽選制としていたものが132事業、購入希望者から事前の申込みを受けた後、抽選ではなく1人当たりの購入数量を調節するなどして購入希望者が一定数購入できるようにしていたものが55事業、その他が19事業となっていた。

図表12 初回販売時の販売方法別事業数

図表12 初回販売時の販売方法別事業数 画像

次に、プレミアム付商品券の購入限度額の設定状況についてみると、図表13のとおり、前記414事業のうち413事業で購入限度額を設けており、1事業で購入限度額を設けていなかった。そして、購入限度額を設けていた413事業のうち個人単位で購入限度額を設けていたものが323事業、世帯単位で購入限度額を設けていたものが90事業となっていた。購入限度額を設けている理由について確認したところ、地方公共団体によれば、国からの緊急支援交付金を財源としていることから、機会の均等と公平性を担保するためなどとなっていた。また、購入限度額を設けていた事業における購入限度額についてみたところ、個人単位で購入限度額を設けていた事業では、券面額6万円分が127事業と最も多く、12万円分が37事業、3万6千円分が24事業、6万5千円分が22事業等となっていた。世帯単位で購入限度額を設けていた事業では、券面額6万円分が22事業、3万6千円分及び12万円分がそれぞれ7事業、1万2千円分が6事業等となっていた一方で、券面額120万円分としていた事業も見受けられた。

図表13 購入限度額の設定状況

購入限度額を設けていた事業 413事業
  個人単位で購入限度額を設けていた事業 323事業
世帯単位で購入限度額を設けていた事業 90事業
購入限度額を設けていなかった事業 1事業

上記のとおり、購入限度額を設けていた理由として機会の均等と公平性を担保するためなどとされていることから、特に先着順で販売していた208事業について購入限度額が設けられているかをみたところ、購入限度額を設けていた事業は207事業あった。そして、この207事業における購入履歴の把握及び記録の状況をみたところ、図表14のとおり、購入履歴を記録していたものは123事業、このうち購入履歴をデータベース化していたものは34事業であったが、これを利用して複数の販売所において購入限度額以内の購入かどうかを確認できるようにしていたものは4事業のみとなっていた。一方、購入限度額を設けたものの、購入履歴を把握していなかったものが84事業あり、これらの事業では、購入限度額以内の購入かどうかを確認できるようになっていなかった。

図表14 購入履歴の把握及び記録の状況

購入履歴を記録していた事業 123事業
  購入履歴をデータベース化していた事業 34事業
  購入履歴のデータベースを利用して各販売所で購入数量を確認できるようにしていた事業 4事業
購入履歴を把握していなかった事業 84事業

先着順で販売し、購入限度額を設けていた207事業のうち、本人に代わってプレミアム付商品券を購入する代理購入を認めていたものが51事業あった。このうち、委任状等により本人の代理であることを確認しているものが24事業あり、残りの27事業については委任の状況を確認する体制がとられていなかった。そして、この27事業について代理できる人数を制限しているかをみたところ、代理できる人数を制限しているものが5事業、制限していないものが22事業となっていた。

上記のように、特に先着順による販売では、購入限度額以内の購入かどうかを確認できるようになっていなかったり、委任の状況を確認する体制がとられておらず人数の制限のない代理購入が認められたりしている事業の場合、特定の者が購入限度額を超えて多額のプレミアム付商品券を購入することが可能となり、国の緊急支援交付金を原資とする支援が特定の者に集中することになって、公平性の面で問題が生ずる可能性もある。

エ プレミアム付商品券の利用状況等

前記のとおり、393地方公共団体の414事業におけるプレミアム付商品券の利用額は計2632億3914万余円となっていた。

そして、プレミアム付商品券の利用状況等についてみたところ、次のとおりとなっていた。

(ア) 店舗別の利用状況

プレミアム付商品券の店舗別の利用額を把握していた308事業について店舗別の利用状況をみたところ、プレミアム付商品券の取扱店舗となることを希望して登録されていたのは計214,356店舗であるが、このうち実際にプレミアム付商品券の利用があったのは計154,135店舗であり、残りの計60,221店舗(取扱店舗全体の28.0%)は、取扱店舗として事業に参加したものの、プレミアム付商品券の利用はなかった。また、50店舗以上で利用実績がある事業において、利用額の多い上位5店舗の利用額の合計が事業における総利用額の5割を超える事業も複数あり、事業によってはプレミアム付商品券の利用が集中する店舗も見受けられた。

(イ) プレミアム付商品券を利用して購入された商品・サービスの状況

内閣府は、前記のとおり、交付金に関するQ&Aにおいて、電気・ガス・水道代、医療サービスに対する支出等の生活上の必要経費で、新規の消費喚起効果がなかったり、高くなかったりするものについては、助成の対象とすることは一般的に推奨されないなどとしている。

前記店舗別の利用額を把握している308事業(利用額計2131億5626万余円)について、日常生活用品の取扱いが多い食品スーパー、ドラッグストア及びコンビニエンスストアでの利用額をみると、図表15のとおり、それぞれ計790億2526万余円(308事業全体の利用額に占める割合37.0%)、計122億8462万余円(同5.7%)及び計24億2009万余円(同1.1%)となっていた。

図表15 食品スーパー、ドラッグストア及びコンビニエンスストアでのプレミアム付商品券の利用額

図表15 食品スーパー、ドラッグストア及びコンビニエンスストアでのプレミアム付商品券の利用額 画像

そして、会計検査院が、プレミアム付商品券により購入された商品・サービスの内容を確認するために、248地方公共団体に対してプレミアム付商品券の取扱店舗の一部への聞き取り調査等を依頼して、その回答により確認できた範囲では、プレミアム付商品券の一部が次のような商品・サービスの購入に利用されていた事態が見受けられた(地方公共団体別の状況については別表5参照)。

  • ① 自動車の車検費用の支払に利用されていたもの 150地方公共団体(このうち法定費用の支払にも利用されていたもの 33地方公共団体)
  • ② プロパンガスの使用料の支払に利用されていたもの 46地方公共団体
  • ③ 医療保険の適用のある診察料や薬代の自己負担分の支払に利用されていたもの 24地方公共団体
  • ④ 司法書士等への報酬の支払に利用されていたもの 18地方公共団体
  • ⑤ 家賃や月極め駐車場代の支払に利用されていたもの 13地方公共団体

このほか、交通機関の定期券代(6地方公共団体)、葬儀費用(5地方公共団体)、保育料(3地方公共団体)の支払に利用されていた事態も見受けられた。

これらの事態は、新規の消費喚起を推進することを目的とした緊急支援交付金の趣旨に沿っていないものと考えられる。

また、内閣府は、前記のとおり、執行に関するQ&Aにおいて、ギャンブル等の遊興娯楽等はプレミアム付商品券の対象とならないとしているが、1地方公共団体の1事業において、上記の趣旨に沿っていないと考えられるパチンコ店での支払にプレミアム付商品券が利用されていた事態が見受けられた。

(ウ) 小売定価以外による販売が禁止されているものに対する利用状況

内閣府は、執行に関するQ&Aにおいて、プレミアム付商品券事業について、たばこの小売販売は、法律上、小売定価以外による販売が禁止されていることから、プレミアム付商品券の利用対象に含めることができないなどとしている。そして、大半の地方公共団体は、プレミアム付商品券事業のポスターやチラシ、又は商品券本体においてたばこの購入には利用できないことを明示していた。しかし、前記248地方公共団体の聞き取り調査等によれば、8地方公共団体でプレミアム付商品券がたばこ専門店等でのたばこの購入に利用されていた事態が見受けられた(地方公共団体別の状況については別表5参照)。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例2> プレミアム付商品券がたばこの購入に利用されていたもの

神奈川県平塚市は、平成27年度に、券面額12,000円分のプレミアム付商品券を10,000円で販売する平塚プレミアム商品券事業を事業費163,168,288円(交付金交付額同額)で平塚商工会議所に委託して実施している。そして、このプレミアム付商品券の裏面には「取扱対象外の商品(例:特売品・酒・タバコなど)やサービスがありますので、ご利用の際にご確認ください。」と記載されているものの、委託契約の仕様書やプレミアム付商品券の取扱店舗に示された事業規約において、たばこがプレミアム付商品券の利用対象外として明示されていなかったことなどから、同市内のたばこ販売店でたばこの購入にプレミアム付商品券1,698,000円分(交付金相当額283,000円)が利用されていた。

(エ) 利用限度額等の状況等

内閣府は、前記のとおり、交付金に関するQ&Aにおいて、プレミアム付商品券事業について、特定の者に高額な商品に対する支援が行われる商品券の設計は公平性の観点から望ましくない、不動産、自動車等の資産性の高い商品を対象とすることは推奨されないなどとしている。

そこで、プレミアム付商品券の利用限度額についてみたところ、46事業においては1回の支払におけるプレミアム付商品券の利用限度額を設けていたが、368事業においては1回の支払における利用限度額を設けていなかった。

そして、利用限度額を設けていた46事業の利用限度額の設定状況についてみたところ、その限度額は6万円としていたものが10事業と最も多く、12万円としていたものが6事業等となっており、中には100万円としていたものも1事業見受けられた。

さらに、高額な商品に対するプレミアム付商品券の利用状況についてみたところ、前記248地方公共団体の聞き取り調査等によれば、1回の支払における利用限度額を設けていなかった33地方公共団体では、1回の支払で100万円以上のプレミアム付商品券が利用されたとされていた(地方公共団体別の状況については別表5参照)。これらの中には、1回の支払で数百万円から1千万円を超える額のプレミアム付商品券が利用されている事態も見受けられた。これらの支払で購入された商品・サービスの内容をみると、自動車が多く、次いで住宅リフォームとなっていた。

1回の支払で多額のプレミアム付商品券が利用されていた事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例3> 1回の支払で多額のプレミアム付商品券が利用されていたもの

福井県は、平成26、27両年度に、県内の宿泊施設に宿泊した者を対象に同県内で使用できる1セット当たり券面額6,000円分のプレミアム付商品券を5,000円で1人当たり10セットまで販売する宿泊者限定プレミアム藩札発行事業を事業費80,110,499円(交付金交付額同額)で実施している。

同事業により販売されたプレミアム付商品券の利用状況について確認したところ、商品等の購入で利用され換金されたプレミアム付商品券297,687,000円分のうち、およそ1割強の33,456,000円分が、取扱店舗である造船会社1社で利用されていた。その主な内容は船舶の購入であり、18,000,000円分(交付金相当額3,000,000円)や4,800,000円分(同800,000円)等と多額のプレミアム付商品券が1回の支払で利用されていた。

プレミアム付商品券事業414事業の実施を踏まえて、今後同様の交付金による事業があれば、今回実施したプレミアム付商品券事業と同様の事業を実施したいかについて地方公共団体に確認したところ、実施したいとするものは242事業(414事業の58.4%)となっている。また、28年度に地方公共団体の一般財源によりプレミアム付商品券事業を実施するとしたものは76事業(同18.3%)となっている。

(3) ふるさと旅行券事業の実施状況

前記の64地方公共団体におけるふるさと旅行券事業81事業(事業費計192億5334万余円、交付金交付額計191億4324万余円)の実施状況についてみたところ、次のとおりとなっていた。

ア ふるさと旅行券の販売方法等

(ア) ふるさと旅行券の販売方法

ふるさと旅行券事業における旅行商品等の販売方法についてみたところ、主なものは次のとおりとなっていた。

  • ① ふるさと旅行券事業の宿泊予約ができるウェブサイト上で助成額分のクーポンが発行され、利用者は宿泊施設の予約申込みをする際に当該クーポンを利用することで宿泊費の割引が受けられるなどとしているもの(以下「宿泊ウェブサイト販売」という。) 27事業
  • ② コンビニエンスストアに設置されている端末等で、宿泊券を助成額分割り引いて販売するなどして、利用者が購入した宿泊券を宿泊施設での支払の際に利用することで宿泊費の割引が受けられるなどとしているもの(以下「実券発行」という。) 39事業
  • ③ 旅行会社が宿泊を伴うパック商品を開発し当該商品を助成額分割り引いて販売するもの 29事業
(イ) ふるさと旅行券の転売対策等

内閣府は、27年5月に、既にふるさと旅行券事業等を実施していた地方公共団体において助成額の大きいふるさと旅行券等がオークションへの出品を通じて転売されていたことから、転売防止の対策が必要である旨の事務連絡を都道府県に対して発出している。

宿泊ウェブサイト販売は、宿泊施設をウェブサイト上で申し込む際にウェブサイト上で発行されたクーポンを利用するため、宿泊施設、宿泊日、宿泊者が特定されることから転売の可能性が低いことや利便性が良いことなどから、前記のとおり27事業において採用されていた。また、宿泊ウェブサイト販売を採用した理由としては、このほかに、既存の宿泊予約のためのウェブサイトを活用することで、参加する宿泊施設の確保が容易であるとする地方公共団体もあった。

実券発行は、転売の可能性はあるもののインターネット環境がない購入希望者でも購入できるなどの理由により、前記のとおり39事業で採用されていた。これらの39事業のうち28事業では発行した宿泊券に転売禁止の記載がなされていたが、11事業では転売禁止の記載がなされていなかった。そして、これらの39事業について、インターネット上のオークションサイト等での転売の確認状況についてみたところ、転売行為がなかった又はオークションサイト等の確認を行ったが出品されている事態が発見されなかったとしているものが16事業、オークションサイト等の確認を行い、出品されている事態が発見された場合に取下げの依頼を行ったとしているものが9事業となっていた。一方、オークションサイト等の確認を行っていたが出品されている事態が発見されても特に取下げの依頼等を行わなかったとしているものが3事業、オークションサイト等の確認を行っていなかったとしているものが11事業となっていた。

(ウ) ふるさと旅行券の販売地域

ふるさと旅行券の販売地域についてみたところ、21事業においては、ふるさと旅行券事業が域外の消費喚起を目的とした事業であることを踏まえて、当該地方公共団体以外の地域からの宿泊客を呼び込みたいなどの理由で域外のみで販売していたが、60事業においては域内でも販売していた。

イ ふるさと旅行券の利用状況等

前記の81事業における割引分の助成費用について、実施計画上の額と実績額(注6)を確認したところ、81事業全体の実施計画上の額は計150億3481万余円であるのに対して実績額は計144億4984万余円となっており、実施計画上の額に対する実績額の割合(以下「計画実績比」という。)は96.1%となっていた。事業別の計画実績比をみると、計画実績比が50%以上のものが74事業、計画実績比が50%未満のものが7事業となっていた。

計画実績比が低くなっていたものについて、事例を示すと次のとおりである。

<事例4> 利用人数が想定の半分未満となっており、計画実績比が低くなっていたもの

岡山県は、平成27年度に、国際線が就航する韓国、中国等からの団体旅行客向けに、同県内での宿泊経費の一部を支援する岡山空港インバウンド受入拡大事業を業者への委託等により事業費23,806,248円(交付金交付額同額)で実施している。宿泊費の割引に係る助成費用は、実施計画では47,712,000円とされていたが、実施計画で想定していた利用人数(7,952人)に対して実際の利用人数が半分未満(3,460人)となったことなどから、助成費用の実績は13,125,048円(計画実績比27.5%)と低くなっていた。そして、業者に委託していた旅行商品造成に向けた情報の集約・翻訳等の委託費は、当初12,402,090円であったのに対して精算額は10,681,200円となっており、事務費割合は44.8%となっていた。

前記のとおり、地方公共団体は、緊急支援交付金事業の効果検証を行い、内閣総理大臣に報告することとされており、この効果検証の中で報告されたふるさと旅行券を利用した宿泊者のうち初めて当該宿泊施設に宿泊したなどの新規顧客の割合についてみたところ、前記81事業のうちこれを把握していた75事業では平均で43%程度となっていたが、事業ごとにみると、4%から100%と幅が広くなっており、事業により差が生じている状況となっていた(図表16参照)。

図表16 ふるさと旅行券が利用された宿泊施設等における新規顧客の割合

図表16 ふるさと旅行券が利用された宿泊施設等における新規顧客の割合 画像

また、緊急支援交付金事業は新規の消費喚起を目的としていることから、上記効果検証の報告により、出張等の仕事での利用者の割合についてみたところ、同割合について把握していた72事業のうち、60%となっていたものが1事業見受けられた。

そして、ふるさと旅行券事業81事業の実施を踏まえて、今後同様の交付金による事業があれば、今回実施したふるさと旅行券事業と同様の事業を実施したいかについて地方公共団体に確認したところ、実施したいとするものが45事業(81事業の55.5%)となっている。また、28年度に地方公共団体の一般財源によりふるさと旅行券事業を実施するとしたものは12事業(同14.8%)となっている。

(注6)
実績額  実績額には、地方公共団体が独自財源で助成した額を含んでいる。

(4) ふるさと名物商品事業の実施状況

前記の44地方公共団体におけるふるさと名物商品事業58事業(事業費計46億7281万余円、交付金交付額計46億4799万余円)の実施状況についてみたところ、次のとおりとなっていた。

ア ふるさと名物商品の販売方法等

ふるさと名物商品事業における割引販売の方法についてみたところ、主なものは次のとおりとなっていた。

  • ① ふるさと名物商品をウェブサイト上で助成額分割り引いて販売するもの(以下「ウェブサイト販売」という。) 41事業
  • ② ふるさと名物商品を扱う店舗等で、ふるさと名物商品の購入に利用できる商品券を助成額分割り引いて販売して、利用者がふるさと名物商品を扱う店舗での支払の際に利用するもの(以下「ふるさと名物商品券」という。) 13事業
  • ③ 実店舗やカタログ通販で助成額分割り引いて販売するもの 37事業(カタログ通販での割引販売 15事業、実店舗での割引販売 35事業)

ウェブサイト販売を採用した41事業の中には、ふるさと名物商品事業のために新規に独自のウェブサイトを立ち上げたものが20事業あり、これら20事業において新たなウェブサイトの開発及び事業実施期間中の運用に要した経費のうち交付金相当額は計1億0583万余円となっていた。そして、ふるさと名物商品事業において構築した新たなウェブサイトについて事業終了後の運営状況をみたところ、9事業では28年度においても引き続き運営されているが、11事業では事業終了後に運営されていない状況となっていた。

イ ふるさと名物商品の販売状況等

前記57事業の割引分の助成費用について、実施計画上の額と実績額を確認したところ、57事業全体の実施計画上の額は計38億5974万余円であるのに対して実績額は計30億2231万余円となっており、計画実績比は78.3%となっていて、前記のふるさと旅行券事業81事業全体の計画実績比96.1%に比べて低くなっていた。事業別の計画実績比をみると、計画実績比が50%以上のものが36事業、50%未満のものが21事業となっていて、前記のふるさと旅行券事業の場合に比べて計画実績比が50%未満の事業の比率が高くなっていた。これらのことから、ふるさと名物商品事業はふるさと旅行券事業と比べて実施計画で想定していたほどには販売額が伸びなかった事業が多かったものと考えられる。そして、計画実績比が50%未満である21事業のうち17事業は事務費割合が50%を超えており、このうち事務費割合が70%を超えていたものが14事業あった。ふるさと名物商品事業の事務費については、商品の販売が実施計画での想定より低調となったが、商品の販売状況によらず支払額が固定している宣伝広告費等があるため、相対的に事務費割合が高くなってしまっているものもあると考えられる。

ふるさと名物商品の販売が低調であったため結果として事務費割合が高くなっていた事業について、事例を示すと次のとおりである。

<事例5> ふるさと名物商品の販売が低調で事務費割合が高くなっていたもの

北海道帯広市は、平成27年度に、乳製品等のふるさと名物商品をウェブサイト上で割り引いて販売するふるさと名物販売促進事業を一般社団法人帯広物産協会に事業費18,116,391円(交付金交付額同額)で委託するなどして実施している。ふるさと名物商品の割引に係る助成費用は、同市から同協会へ補助金として交付しており、その費用は、実施計画では10,800,000円としていたが、ふるさと名物商品の販売が低調だったため、実績は1,916,391円となっていた。一方、販売用のウェブサイトの構築や広告、消費喚起効果の測定等の業務は、同事業の中で、同協会に16,200,000円で確定契約により委託していたため、委託費の支払額は、商品の販売状況によらず固定しており、結果として事務費割合が89.4%と高くなっていた。

前記のとおり、ふるさと名物商品事業では事務費割合が高くなっており、ふるさと名物商品の販売が低調だったことが一つの原因と考えられる。なお、実店舗での販売を行った35事業の計画実績比は、100%以上のものが5事業、50%以上100%未満のものが23事業、50%未満のものが7事業となっていた一方、実店舗での販売を行わなかった22事業の計画実績比は100%以上のものが3事業、50%以上100%未満のものが5事業、50%未満のものが14事業となっていて、実店舗で販売を行った事業は、実店舗での販売を行わなかった事業と比べて計画実績比が高い傾向となっていた。

そして、ふるさと名物商品事業58事業の実施を踏まえて、今後同様の交付金による事業があれば、今回実施したふるさと名物商品事業と同様の事業を実施したいかについて地方公共団体に確認したところ、実施したいとするものが27事業(58事業の46.5%)となっている。また、28年度に地方公共団体の一般財源によりふるさと名物商品事業を実施するとしたものは2事業(同3.4%)となっている。

ウ 委託事業の実施状況

前記58事業のうち、ふるさと名物商品事業を外部に委託して実施していたのは45事業であり、これらの地方公共団体が委託により実施しているふるさと名物商品事業(以下「委託事業」という。)についてみたところ、次のとおり、委託先の団体が、委託事業と委託事業以外に当該団体が行っている事業(以下「自主事業」という。)とを一体的に行っているにもかかわらず、委託事業と自主事業の間で人件費を適切に案分していなかったため、緊急支援交付金が緊急支援交付金事業以外の経費に充当されていた事例が見受けられた。

<事例6> 人件費を自主事業分と委託事業分とに適切に案分していなかったため、緊急支援交付金が緊急支援交付金事業以外の経費に充当されていたもの

長野県は、平成26、27両年度に、地域消費喚起事業(名物商品)等を一般社団法人信州・長野県観光協会(28年7月1日以降は一般社団法人長野県観光機構。以下「協会」という。)に事業費計1,575,397,723円(交付金交付額同額)で委託して実施している。そして、協会は、委託契約に基づき、愛知県名古屋市に実店舗を設けて長野県の産品を販売することとして、店舗の内装工事、賃借料、冷蔵庫等の備品購入費、販売員の人件費等に要する経費22,861,383円を委託費として請求し、同県は緊急支援交付金により委託費を支払っていた。しかし、委託事業の実施に当たり、県産品の振興を図ることを目的に、委託事業による割引価格の商品と委託事業以外の通常価格の商品とを当該店舗で一体的に扱っており、販売員は委託事業に係る割引価格の商品だけでなく自主事業として通常価格の商品の販売も行っていたが、協会は、人件費を自主事業分と委託事業分とに適切に案分していなかったため、自主事業分の人件費に対して緊急支援交付金が充当されていた。

(5) プレミアム付商品券等の販売代金のうち未換金相当分の取扱い

プレミアム付商品券、実券発行により発行されたふるさと旅行券及びふるさと名物商品券については、販売されても必ずしも利用期限までに全てが利用されるとは限らず、最終的に消費者に利用されずに換金されないものもある。プレミアム付商品券等が利用期限までに利用されなかったなどのために未換金となった場合、国が交付した緊急支援交付金を原資とするプレミアム分の額については国庫に返納することとなっているが、プレミアム付商品券等を消費者に販売した際の販売代金のうち未換金相当分は、緊急支援交付金事業において利用されずプレミアム付商品券等の発行者である商工会等に残ることになり、これが余剰金となる。これについて、内閣府は、28年2月に地方公共団体に対して発出した「地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金(地域消費喚起・生活支援型)における余剰金等の扱いについて」の事務連絡において、「余剰金については、本交付金によるものではなく、地域住民等購入・利用者の負担によって発生していることから、国に返納を求めるものではありません。ただし(中略)国民に理解の得られるよう適切な取扱を願います。」としている。

前記のプレミアム付商品券事業414事業における余剰金の状況についてみたところ、事業終了時に余剰金が生じていたものは408事業計4億9187万余円となっており、事業ごとの額は2,857円から2921万余円となっていた。そして、当該余剰金の処理状況についてみたところ、図表17のとおり、事業費全体の収支の中で精算しているものが137事業(計1億5642万余円)、地域住民等のための事業費として活用したものが65事業(計7782万余円)ある一方で、地方公共団体に留保しているものが81事業(計1億3356万余円)、補助先に留保しているものが114事業(計1億1641万余円)、委託先に留保しているものが11事業(計765万余円)あった。

図表17 プレミアム付商品券事業の余剰金の処理状況

図表17 プレミアム付商品券事業の余剰金の処理状況 画像

ふるさと旅行券事業のうち実券発行とした39事業についてみたところ、事業終了時に余剰金が生じていたものは30事業計6790万余円となっており、事業ごとの額は1万余円から1017万円となっていた。そして、当該余剰金の処理状況についてみたところ、事業費全体の収支の中で精算しているものが5事業(計539万余円)、地域住民等のための事業費として活用したものが5事業(計2311万余円)ある一方で、補助先に留保しているものが4事業(計131万余円)、委託先に留保しているものが3事業(計87万余円)、地方公共団体に留保しているものが13事業(計3720万余円)あった。

ふるさと名物商品事業において、ふるさと名物商品券を発行している13事業についてみたところ、事業終了時に余剰金が生じていたものは11事業計1193万余円となっていた。

上記のとおり、余剰金は3事業全体で計5億7171万余円となっており、この中には地方公共団体や補助先等に留保されるものがある状況となっていた。

(6) 生活支援型事業の実施状況

内閣府は、前記のとおり、消費喚起効果の高い地域消費喚起型事業を行うことを推奨しているが、地域における消費喚起に直接効果を有する生活支援型事業を行うことも認めている。

162地方公共団体における生活支援型事業250事業(事業費計135億1743万余円、交付金交付額計112億2820万余円)の実施状況についてみたところ、次のとおりとなっていた(事業別の事業費等については別表6参照)。

ア 生活支援型事業のうち低所得者、子育て世帯等に対して商品券を給付する事業の実施状況

(ア) 事業数等の状況

上記250事業のうち、低所得者、子育て世帯等への支援として商品券を給付する事業(以下「低所得者等商品券事業」という。)を実施しているものは140事業となっていた。

そして、事業の実施方法についてみたところ、地域消費喚起型事業において販売されたプレミアム付商品券や既存の商品券を地方公共団体が購入したり、地方公共団体が当該事業のための新たな商品券を発行したりするなどして、これらの商品券を無償で給付していた。

(イ) 低所得者等に給付した商品券の利用状況等

前記のとおり、緊急支援交付金は、緊急経済対策の速やかかつ着実な実施を図ることを目的とするものであり、生活支援型事業も地域における消費喚起に直接効果を有する生活支援として緊急支援交付金により行う事業であることから、生活支援型事業において商品券を給付する場合には、商品券の利用による消費喚起効果が速やかに発現することが望ましい。

そこで、前記の140事業について、低所得者等に給付した商品券の利用状況についてみたところ、給付した商品券の利用実績を把握していたものが113事業、一般販売分の販売数量と生活支援型事業における給付数量等により全体の利用額を案分するなどして算出して把握したとしていたものが13事業、利用実績を把握していなかったものが14事業となっていた。そして、これらの事業のうち、給付した商品券の利用実績を把握していた事業についてみると、プレミアム付商品券や地域の商工会等が発行する既存の商品券を購入して給付する場合に、給付した商品券の管理番号と換金された商品券の管理番号とを照合できるようにするなどして、それらの利用実績を把握しており、27年度末までに利用されなかった商品券については緊急支援交付金の交付対象外としていた。また、利用実績を把握していた事業の中には、既存の商品券を購入して給付する事業の場合でも、商品券の購入契約に、利用実績に応じて購入費用を精算できるように特約を付すなどしている事業もあった。

一方、利用実績を把握していなかった14事業には、利用期限が設定されていない又は28年度以降に設定されている既存の商品券を購入して給付しているものなどがあり、給付した商品券の券面額や給付するために購入した商品券の券面額を交付対象としていた。これらの事業について利用実績をみたところ、事例7のように、27年度中に商品券が利用されなかったものも見受けられ、これらの事業に係る消費喚起効果は、その全てが必ずしも27年度中に発現しないものとなっており、緊急経済対策の速やかかつ着実な実施を図ることを目的としている緊急支援交付金の趣旨に沿っていないものとなっていた。

低所得者等商品券事業で給付した商品券が27年度中に利用されていなかったなどの事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例7> 低所得者等商品券事業で給付した商品券が平成27年度中に利用されていなかったもの

岩手県北上市は、平成27年度に、平成27年度臨時福祉給付金(注)の対象者に対して、北上商工会議所が発行する北上地域プレミアム商品券(以下「プレミアム商品券」という。)を給付する福祉商品券給付事業を事業費29,560,552円(交付金交付額同額。うち事務費580,552円)で実施している。同事業で給付するプレミアム商品券は、同商工会議所の発行する1セット当たり券面額12,000円分(500円×24枚。販売価格10,000円)のプレミアム付商品券で、利用期間は、27年7月7日から12月31日までとされている。そして、同市は、同商工会議所からプレミアム商品券2,898セット、計69,552枚を28,980,000円(交付金相当額同額)で購入して、対象者に給付していた。同市は、給付したプレミアム商品券の利用実績を把握せずにその購入費用全額を緊急支援交付金の交付対象としていた。

しかし、会計検査院が、同市に対して、給付したプレミアム商品券の利用実績の調査を依頼したところ、3,145枚(交付金相当額1,310,417円)が利用されていなかった。

(注)
平成27年度臨時福祉給付金  厚生労働省の補助事業であり、平成26年4月の消費税引上げによる影響を緩和するために、27年度分の住民税が課税されない者に対して1人につき6,000円を給付するもの

<事例8> 低所得者等商品券事業で利用期限が設定されていない商品券が給付されるなどしており、事業の実施が緊急支援交付金の趣旨に沿っていないものとなっていたもの

香川県は、平成27年度に、平成27年度臨時福祉給付金の対象者で、9年4月1日以前に生まれた者を対象に商品券を給付する生活支援事業を事業費376,085,944円(交付金交付額288,191,000円)で実施している。同事業で給付する商品券は、県内の市町や商工会等が発行する地域の商品券がある地域では地域の商品券とし、地域の商品券がない地域では全国共通商品券としている。同県は、券面額87,194,000円分の地域の商品券(販売価格87,194,000円)、券面額224,904,000円分の全国共通商品券(販売価格223,779,480円)、合わせて券面額計312,098,000円分の商品券を310,973,480円(交付金相当額279,561,412円)で購入していた。そして、同県が購入した商品券のうち、対象者に実際に給付した商品券は、地域の商品券が券面額計87,090,000円分、全国共通商品券が券面額計224,424,000円分となっていて、同県は、27年度に給付した商品券の購入費用を緊急支援交付金の交付対象としていた。

しかし、同県が購入した商品券についてみると、地域の商品券は利用期限が28年度以降に設定されていたり、利用期限が設定されていなかったりしており、また、全国共通商品券は利用期限が設定されておらず、いずれも27年度中に使い切る必要のないものとなっていたことから、同事業に係る消費喚起効果は、その全てが必ずしも27年度中に発現しないものとなっており、事業の実施が緊急支援交付金の趣旨に沿っていないものとなっていた。

内閣府は、事例8の事業において、香川県からの問合せに対して、商品券を対象者に給付すれば利用実績の有無にかかわらず緊急支援交付金の対象となり、全国共通商品券を給付することも緊急支援交付金の対象となると回答していた。しかし、給付した商品券が利用されなければ消費喚起効果が生じないため、緊急経済対策の速やかかつ着実な実施という緊急支援交付金の目的を踏まえると、27年度中の利用を促進する手法をとるよう検討すべきであったと認められる。

また、次のとおり、緊急支援交付金で購入したプレミアム付商品券のうち対象者に給付しなかった分で地方公共団体の備品を購入していた事例が見受けられた。

<事例9> 緊急支援交付金で購入したプレミアム付商品券のうち給付しなかった分で町の備品を購入していたもの

京都府精華町は、平成27年度に、75歳以上の要介護認定を受けていない人等を対象に精華町商工会が発行するプレミアム付商品券を給付する健康づくり支援事業を事業費9,368,760円(交付金交付額同額)で実施している。同事業で給付するプレミアム付商品券は、同商工会が発行する1セット当たり券面額13,000円分(500円×26枚。販売価格10,000円)のプレミアム付商品券で、利用期間は、27年8月1日から28年1月31日までとされている。そして、同町は、同商工会からプレミアム付商品券831セット、計21,606枚を8,310,000円(交付金交付額同額)で購入して、購入費用全額を緊急支援交付金の交付対象としていた。

しかし、同町は、支給予定者が転居したなどのため、176枚、券面額88,000円分(交付金相当額67,692円)のプレミアム付商品券について実際には給付しておらず、この給付しなかったプレミアム付商品券を利用して、同町の備品(筆談ボード)を購入していた。

イ その他の生活支援型事業の実施状況

前記250事業のうち、アの事業を除く第3子以降の保育料の減免等を実施しているなどの110事業の実施状況についてみたところ、緊急支援交付金事業として実施したものと同じ事業を26年度以前においても毎年度地方単独事業として実施していたものが42事業あった。これらの42事業のうち、27年度に緊急支援交付金の交付がなくても一般財源により当該事業を実施したとするものが39事業となっていた。このうち、26年度以前から実施していた事業と同規模のものが29事業となっており、これらは、26年度以前に地方単独事業として実施していたものの財源を、地方公共団体の一般財源から緊急支援交付金に変更したものにすぎないものとなっていた。

(7) 効果検証の実施状況

前記のとおり、緊急支援交付金は、地方公共団体の裁量に委ねると同時に、事業・施策の実施責任を求めるものとしていることが大きな特徴であるとされ、緊急支援交付金事業を実施した地方公共団体は、事業実施に伴う効果を検証して、内閣総理大臣に報告することとされており、内閣府は、直接的な消費喚起効果についてはプレミアム付商品券等の利用実績等を、新規の消費喚起効果についてはアンケート結果から類推される金額を地方公共団体から報告させることにしている。

また、消費喚起を目的とした事業の実施においては、新規の消費が喚起されることが重要であり、効果の検証に当たっては、新規の消費喚起効果を正確に把握することが重要であると考えられる。

そこで、緊急支援交付金事業の効果検証の実施状況についてみたところ、次のとおりとなっていた。

ア 地域消費喚起型事業の効果検証の実施状況

地域消費喚起型事業のうち、最も多くの地方公共団体において実施されたプレミアム付商品券事業の効果検証の実施状況についてみたところ、次のような事態が見受けられた。

(ア) プレミアム付商品券事業の消費喚起効果の測定に係るアンケートの実施状況等

内閣府は、前記のとおり、緊急支援交付金事業の効果検証のために、消費者向けのアンケートによる消費喚起効果の測定方法等を示しており、アンケートのひな形において、主なアンケート項目は次のようになっている。

  • ① 消費者の属性(性別、年齢、家族構成)
  • ② 購入した商品券の数量(冊数、金額等)
  • ③ 普段の買物を商品券により支払った金額
  • ④ 商品券の入手がきっかけとなった商品・サービスの購入について、商品券により支払った金額及び追加で現金により支払った金額
  • ⑤ ④の金額の内訳

プレミアム付商品券事業414事業のうち、アンケートは他の事業のアンケートにおいて併せて行ったなどの理由でアンケートが実施されなかった4事業を除いた410事業における消費喚起効果の測定に係る消費者向けのアンケートの実施状況についてみたところ、前記アンケートのひな形において「商品券の利用期間が残っていますので、予定を含めてお答えください」としていることもあり、図表18のとおり、利用期間終了後にアンケートを実施するなどして、利用状況を全て実績で回答させたものが163事業(39.7%)となっていた一方、全て予定で回答させたもの(プレミアム付商品券を利用する前に回答を回収するもの)が36事業(8.7%)、一部予定を含めて回答させたもの(利用期間終了前がアンケートの締切期日となっているもの)が211事業(51.4%)となっており、これらの実績に基づかない今後の利用予定も含めて回答させているものが合わせて247事業(60.2%)となっていた。

これらの247事業においては、消費者がアンケートに記載された利用予定のとおりにプレミアム付商品券を利用しなかった場合には、実際に生じた消費喚起効果を集計できていないことになる。

図表18 プレミアム付商品券事業のアンケートの実施状況

図表18 プレミアム付商品券事業のアンケートの実施状況 画像

また、前記410事業のうち55事業(410事業の13.4%)においては、前記アンケートのひな形に追加して事業効果を検証するために地域の実情に即した独自の指標を設定して、その効果分析を実施したとしているが、残りの355事業(同86.5%)においては、前記アンケートのひな形をそのまま用いるなどしていた。このほか、消費者だけではなく取扱店舗等事業者向けのアンケートも実施していたものは187事業(同45.6%)となっていた。

この効果測定に要した経費に対する交付金相当額についてみたところ、当該経費を個別に把握することができた301事業で計3億5066万余円となっており、その内訳は、調査分析費計1億0170万余円、印刷代計4969万余円、郵送料計3563万余円等となっていた。

(イ) 地方公共団体におけるアンケートの集計方法

内閣府は、地方公共団体に対して、消費者向けのアンケートの実施に当たっては、原則として最低300の有効回答を確保するよう努めることを求めているが、回収したアンケートのうち有効回答として取り扱うことのできる基準については特段示していない。また、3(7)ア(ア)のアンケートのひな形の④の項目について、新規の消費喚起効果額として報告するよう求めている。

そこで、各地方公共団体において、集計対象とする有効回答として取り扱う基準の状況を確認したところ、3(7)ア(ア)のアンケートのひな形の①の項目において無回答のものや③から⑤までの項目に係る回答の整合がとられていないものについては不備な回答として集計対象としていない地方公共団体がある。一方、②の項目の回答である購入した商品券の数量(金額)を③及び④の項目で回答した商品券での支払額の計が上回っているもの、又は、④の項目の回答における商品券での支払額をその内訳であるはずの⑤の項目の回答における支払額の計が上回っているものなど、各質問項目間で整合がとられていない回答も集計対象としている地方公共団体が見受けられており、アンケート結果の集計対象とする有効回答を選別するための取扱いが地方公共団体により異なっていて、集計データの均質化が図られていないことになり、消費喚起効果を正確に把握することができない状況となっていた(図表19参照)。

図表19 アンケートの回答例

図表19 アンケートの回答例 画像

また、次のとおり、アンケート項目の設定が適切でなく商品・サービスの購入における支払額が把握できない項目のアンケートになっていたため、新規の消費喚起効果額の把握が困難と考えられる事例が見受けられた。

<事例10> 新規の消費喚起効果額の把握が困難と考えられるもの

京都府舞鶴市は、平成27年度に、券面額12,000円分のプレミアム付商品券を10,000円で販売する地域住民生活等緊急支援商品券発行事業を舞鶴商工会議所に委託するなどして実施して、同事業の効果測定業務も事業費2,000,000円(交付金相当額1,984,000円)で合わせて委託している。

委託を受けた同商工会議所は、効果測定のための消費者向けのアンケートを実施しており、回収したアンケート954人分を集計したところ、「日頃買えないものや高額な商品の購入、サービスの利用に使われましたか?」という質問に対して、「①使った」と回答した割合が約45%、「②使っていない」と回答した割合が約53%であったことから、同市は、プレミアム付商品券の利用額357,226,000円に約45%を乗じた161,388,000円をアンケートから類推される新規の消費喚起効果額として報告していた。しかし、同市のアンケートは、商品・サービスの購入における支払額を記入させるものとなっておらず、上記の質問に対して「①使った」と回答した者が、必ずしも購入したプレミアム付商品券の全額を「日頃買えないものや高額な商品の購入、サービスの利用」に使ったとは限らないことなどから、上記の効果測定は、新規の消費喚起効果額の把握が困難と考えられるものとなっていた。

舞鶴市が効果測定の際に実施したアンケートの質問内容

舞鶴市が効果測定の際に実施したアンケートの質問内容 画像

イ 生活支援型事業の効果検証の実施状況

前記のとおり、生活支援型事業のうち低所得者等商品券事業においては、給付された商品券の利用による消費喚起効果が速やかに発現することが望ましく、効果検証に当たっても、消費喚起効果を正確に測定することが重要である。

しかし、前記のとおり、低所得者等商品券事業140事業のうち14事業においては、地方公共団体が商品券の利用実績を把握しておらず、このため、利用実績に基づく消費喚起効果額ではなく、給付した商品券の券面額や給付するために購入した商品券の券面額を直接的な消費喚起効果額として報告しているものが見受けられた。これらの事業においては、給付した商品券が必ずしも27年度中に利用されたとは限らないことから、実際に生じた消費喚起効果を集計できていないことになる。