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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第5 外務省|
  • 平成29年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(2) 政府開発援助の効果の発現について


(平成29年度決算検査報告2か所参照 リンク10101 20607-1

1 本院が表示した意見

外務省及び独立行政法人国際協力機構(以下「機構」という。)は、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保により一層積極的に貢献することを目的として、開発途上地域の政府等に対して政府開発援助を実施している。しかし、無償の資金供与による協力(以下「無償資金協力」という。)による太陽光を活用したクリーンエネルギー導入計画において事業実施機関が太陽光発電設備の故障の際に調達代理店である本邦企業に修理を依頼したとしているものの対応が図られず電力が得られていなかったり、草の根・人間の安全保障無償資金協力(以下「草の根無償」という。)による助産院機材整備計画において既存の婦人科・小児科のクリニック(以下「クリニック」という。)を高水準の治療を行うことができる助産院として開業することを目的として医療用の機材(以下「機材」という。)を整備したものの新生児室の設置等の助産院の開業基準を満たしていないことにより整備後一度も使用されていない機材があったり、産科診療所建設計画において安全対策等が必要であるとの指摘を受けたことから診療所として開業するまでに約3年の遅延が生じていたほか開業後も電力の供給がなされていなかったため妊産婦の出産が行われていなかったり、有償の資金供与による協力(以下「有償資金協力」という。)による下水道整備事業において整備した下水道施設に不具合が生ずるなどして稼働が停止されたりしていて援助の効果が十分に発現していない事態が見受けられた。

したがって、外務大臣及び独立行政法人国際協力機構理事長に対して平成30年10月に、会計検査院法第36条の規定により、次のような措置を講ずるよう意見を表示した。

  • ア 無償資金協力
    太陽光を活用したクリーンエネルギー導入計画については、機構において、事業実施機関、調達代理店等に対して、故障したパワーコンディショナの修理が行われるよう働きかけを行うとともに、当該計画における事態を踏まえて、今後、無償資金協力を実施するに当たって、事業実施機関においてこれまで導入実績がない太陽光発電設備の設置を主たる事業内容とする場合、故障等の際に事業実施機関と本邦企業等間のみでは速やかな対応が図られないときには機構に連絡することを周知すること
  • イ 草の根無償
    • (ア) 助産院機材整備計画については、外務省において、事業実施機関に対して、助産院としてより高水準の治療を行うことができるように開業基準を満たすよう引き続き働きかけるとともに、当該計画における事態を踏まえて、今後、草の根無償を実施するに当たって、既存の医療施設においてより高水準の治療を行う目的で機材の整備等を行う場合、機材の整備以外に既存の医療施設に関して準拠しなければならない基準等の内容を確認した上で、事業実施機関に対して当該基準を満たすための措置が執られているか確認すること
    • (イ) 産科診療所建設計画については、外務省において、当該計画における事態を踏まえて、今後、草の根無償を実施するに当たって、関係機関との協議等に起因して診療所の開業が遅延したり、診療に制約を受けたりしていることを把握した場合、事業の促進及び計画に基づいた診療の実施が行われるよう事業実施機関に加えて関係機関と協議を行うなど十分な働きかけを行うこと
  • ウ 有償資金協力
    下水道整備事業については、機構において、当該事業における事態を踏まえて、今後、有償資金協力を実施するに当たって、我が国や他国の有償資金協力による下水道整備事業を実施した実績がない地方政府機関であるなど事業実施能力に配慮を要する事業実施機関が大規模な事業を行う場合、貸付契約等に基づいて、事業実施機関から提出される事業進捗報告書や施工管理を行っているコンサルタントに対するモニタリング等を通じるなどして、整備する施設に不具合等が生じていないかについて確認を行うこと

2 当局が講じた処置

本院は、外務本省及び機構本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、外務省及び機構は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。

  • ア 無償資金協力
    太陽光を活用したクリーンエネルギー導入計画については、機構において、事業実施機関、調達代理店等に対して修理状況の進捗確認を行ったり、事業実施機関からの連絡及び相談内容を調達代理店等に伝達したりするなどして、故障したパワーコンディショナの修理が確実に行われるよう働きかけを行った。その結果、事業実施機関により故障したパワーコンディショナが修理され、太陽光発電設備が稼働を開始した。また、機構は、令和元年5月に関係部署に対して通知を発して、今後、無償資金協力を実施するに当たって、事業実施機関においてこれまで導入実績がない太陽光発電設備の設置を主たる事業内容とする場合、故障等が発生した際に事業実施機関と本邦企業等間のみでは速やかな対応が図られないときには機構に連絡して相談することを周知するとともに、連絡があった場合には、故障等への対応がなされるよう事業実施機関を支援することとした。
  • イ 草の根無償
    • (ア) 助産院機材整備計画については、外務省において、事業実施機関に対して、助産院としてより高水準の治療を行うことができるように開業基準を満たすよう働きかけを行った。その結果、事業実施機関は助産院としての開業基準を満たすようクリニックに新生児室の設置等を行ったことから、相手国政府において、助産院の開業に必要な手続が進められている。また、外務省は、元年6月に在外公館に対して通知を発して、今後、草の根無償を実施するに当たって、既存の医療施設においてより高水準の治療を行う目的で機材の整備等を行う場合、機材の整備以外に既存の医療施設に関して準拠しなければならない基準等の内容を確認した上で、事業実施機関に対して当該基準を満たすための措置が執られているか確認することとした。
    • (イ) 産科診療所建設計画については、外務省において、元年6月に在外公館に対して通知を発して、今後、草の根無償を実施するに当たって、関係機関との協議等に起因して診療所の開業が遅延したり、診療に制約を受けたりしていることを把握した場合、事業の促進及び計画に基づいた診療の実施が行われるよう事業実施機関に加えて関係機関と協議を行うなど十分な働きかけを行うこととした。
  • ウ 有償資金協力
    下水道整備事業については、機構において、元年6月に関係部署に対して通知を発して、今後、有償資金協力を実施するに当たって、我が国や他国の有償資金協力による下水道整備事業を実施した実績がない地方政府機関であるなど事業実施能力に配慮を要する事業実施機関が大規模な事業を行う場合、貸付契約等に基づいて、事業実施機関から提出される事業進捗報告書や施工管理を行っているコンサルタントに対するモニタリング等を通じるなどして、整備する施設に不具合等が生じていないかについて確認を行うこととした。