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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
  • 平成28年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

国民年金法及び厚生年金保険法に基づく遺族年金の支給について


1 本院が要求した適宜の処置及び求めた是正改善の処置

厚生労働省は、被保険者の老齢、障害又は死亡について各種年金を支給しており、これらの支給に係る事務の一部を日本年金機構(以下「機構」という。)に委任又は委託している。このうち、国民年金法(昭和34年法律第141号)に基づく遺族基礎年金及び寡婦年金並びに厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)に基づく遺族厚生年金(以下、これらを合わせて「遺族年金」という。)は、被保険者等が死亡したときに、その者によって生計を維持されていた遺族に対して支給されるものである。国民年金法等によれば、遺族年金の受給権者(以下「受給権者」という。)が死亡したとき、又は婚姻等をしたときは受給権が消滅するとされている(以下、遺族年金の受給権の消滅を「失権」といい、失権の原因となる死亡又は婚姻等の事由を「失権事由」という。)。そして、受給権者が失権事由(死亡を除く。以下同じ。)に該当した場合、失権事由に該当した日(以下「失権日」という。)、失権事由等を記載した届書(以下「失権届」という。)を所定の期限までに機構に提出しなければならないとされている。しかし、失権事由に該当しているのに失権届を提出していなかった受給権者に対して遺族年金を支給している事態、及び失権届を遅れて提出したり、失権届に事実と相違する失権日を記載したりしていた受給権者に対して遺族年金を支給している事態が見受けられた。

したがって、厚生労働大臣に対して平成29年10月に、次のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求めた。

  • ア 失権事由に該当している受給権者を特定した上で、失権事由に該当しているのに失権届を提出していなかった受給権者に対して支給された遺族年金や、失権届に事実と相違する失権日を記載していた受給権者に対して支給された遺族年金について、既に消滅時効が成立しているものなどを除き、機構に対して返還の手続を行わせること(会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求したもの)
  • イ 住基ネット情報(住民票に記載されている受給権者の住所、氏名等の本人確認情報)や必要に応じて婚姻届や戸籍謄本等を活用するなどして受給権者の受給権を適切に確認するための手続を定めて機構に示すとともに、機構に対して、当該手続に基づき受給権者の失権日及び失権事由を適時かつ的確に把握するよう指導すること(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めたもの)
  • ウ 遺族年金の受給権は婚姻等をしたときは消滅すること、失権届には実際の失権日を記載して所定の期限までに提出する必要があることなどについて、機構を通じて受給権者に対する周知徹底を図ること(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めたもの)

2 当局が講じた処置

本院は、厚生労働本省等において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。

ア 令和元年6月までに、失権事由に該当している受給権者を特定した上で、失権事由に該当しているのに失権届を提出していなかった受給権者に対して支給された遺族年金や、失権届に事実と相違する失権日を記載していた受給権者に対して支給された遺族年金について、既に消滅時効が成立しているものを除き、機構に対して返還の手続を行わせた。

イ 平成30年1月に国民年金法施行規則等を改正するなどして、住基ネット情報や必要に応じて戸籍謄本等を活用するなどして受給権者の受給権を適切に確認するための手続を定めて機構に示すとともに、同年2月に機構に対して通知を発するなどして、当該手続に基づき受給権者の失権日及び失権事由を適時かつ的確に把握するよう指導した。

ウ 遺族年金の受給権は婚姻等をしたときは消滅すること、失権届には実際の失権日を記載して所定の期限までに提出する必要があることなどについて、29年11月以降、機構のホームページに明記させたり、機構から受給権者に対して当該事項を記載したパンフレットを送付させたりするなどして、機構を通じて受給権者に対する周知徹底を図った。