厚生労働省は、国の事務、事業等に係る役務について、業者に請け負わせ、又は委託する契約により実施するなどしている。会計法(昭和22年法律第35号)等によれば、支出負担行為担当官又は支出負担行為担当官から命ぜられた監督職員は契約の適正な履行を確保するために必要な監督をしなければならないこととされており、支出負担行為担当官又は支出負担行為担当官から命ぜられた検査職員は給付の完了の確認をするために必要な検査をして、契約金額が200万円を超えない場合等を除き、検査調書を作成しなければならないなどとされている。また、厚生労働省は、契約の相手方が再委託又は下請を行う場合には承認を必要とし、承認申請書を提出させて審査等することとしている。しかし、データ入力業務等の請負契約について、業務が完了していないのに事実と異なる検査調書を作成するなどして代金を支払っている事態、請負人が厚生労働省の承認の手続をとることなく業務の一部を下請けさせている事態及び契約の適正な履行を確保するための監督が十分に行われていない事態が見受けられた。
したがって、厚生労働大臣に対して平成30年10月に、次のとおり是正改善の処置を求め及び改善の処置を要求した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 31年2月に通知を発して、毎年度、検査職員等に対して会計法令や検査・監督実務の要点等に関する研修を実施することとするなどし、会計法令の遵守を周知徹底した。
イ アの通知及びアの通知と共に発した事務連絡並びに令和元年6月に作成した作業計画書の審査マニュアルにより、事業実施部局において、仕様書等の調達関係資料の作成に当たり、履行期間が契約の適正な履行を確保する上で十分なものとなっているか検討するとともに、落札等した業者から提出される作業計画書の厳格な審査等による実施体制の確認等を十分に行うよう周知徹底した。
ウ アの通知及びイの事務連絡により、契約実施部局において、入札の実施等に当たり、応札等しようとする業者及び落札等した業者に対して、下請等の制限を含む契約条項を遵守するよう周知徹底することとした。
エ アの通知及びイの事務連絡により、承認の手続をとることなく下請等が行われていないかを含む履行体制、履行状況等を確認するために実施する監督職員等の立入調査の対象及び方法を例示するなどして周知徹底した。