厚生労働省は、国民年金法(昭和34年法律第141号)に基づき市町村(特別区を含む。以下同じ。)が行っている基礎年金、福祉年金等に係る事務(以下「法定受託事務」という。)の処理に必要な費用及び法定受託事務に付随して、市町村が国と協力・連携して実施する事務(以下「協力・連携事務」という。)に係る費用に対して、国民年金等事務取扱交付金(以下「交付金」という。)を交付している。交付金のうち、協力・連携事務に係る交付金(以下「協力・連携交付金」という。)の交付額は、国民年金等事務費交付金等交付要綱(以下「交付要綱」という。)によれば、市町村が協力・連携を行う場合に各市町村において現に要した費用の額を上限として、各市町村が行った協力・連携事務の件数(以下「算定基礎件数」という。)に所定の単価を乗ずるなどして算定した額(以下「算定額」という。)とされており、各市町村は、交付要綱、交付要綱に基づき同省が毎年定める算定基礎表等(以下、これらを合わせて「交付要綱等」という。)に基づき、算定額を算定している。しかし、市区町において、算定基礎件数を実績に基づかずに計上していて、協力・連携交付金に係る算定額が適切に算定されていない事態、地方厚生局において、交付申請書の審査に当たって、算定額について算定基礎表の根拠資料の確認等を十分に行っていない事態、市区町において、法定受託事務となる免除等に係る制度についてのみ説明を行った場合の相談の件数及び年金事務所に送付した免除申請書等に記載された被保険者の電話番号の情報提供に係る件数を算定基礎件数に含めていて、協力・連携交付金に係る算定額が適切に算定されていなかったり、過大に算定されていたりしている事態、及び日本年金機構(以下「機構」という。)の年金事務所において、市町村に対して保険料の未納者に係る所得情報の追加依頼の際に、機構のシステムに所得情報が収録されていない未収録者だけでなく重複した対象者についても所得情報の提供依頼を行っていたため、協力・連携交付金の算定額が過大となっている事態が見受けられた。
したがって、厚生労働大臣に対して平成30年10月に、次のとおり是正改善の処置を求め及び改善の処置を要求した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 令和元年5月に地方厚生(支)局に対して事務連絡を発出して、地方厚生(支)局は、当該事務連絡に基づき、算定基礎件数には実際に協力・連携事務を行った実績件数を計上するとともに、当該実績件数が確認できる資料を作成するよう、市町村に対して周知徹底した。
イ 平成31年1月に、市町村が免除申請書等の提出を受けた際に免除等に係る制度についてのみ説明を行った場合の相談の件数及び市町村が年金事務所等に送付した免除申請書等に記載された被保険者の電話番号の情報提供に係る件数は算定基礎件数に含めないことを交付要綱に基づき定める算定基礎表に明示した。
ウ 31年1月に地方厚生(支)局に対して事務連絡を発出して、交付申請書の審査の際に、算定額について算定基礎表の件数を確認し、必要に応じて根拠資料の提出を求めるよう周知徹底した。
エ 30年12月に機構に対して指示文書を発出して、所得情報の追加依頼を行う場合は未収録者分を対象とすることを各年金事務所に周知徹底するよう指示した。