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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
  • 平成29年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(6) 地域支援事業交付金における介護自立支援事業に係る交付金交付対象者について


平成29年度決算検査報告参照

1 本院が要求した改善の処置

厚生労働省は、市町村(特別区、広域連合及び一部事務組合を含む。以下同じ。)が実施する地域支援事業に対して地域支援事業交付金(以下「交付金」という。)を交付している。地域支援事業のうち介護自立支援事業は、平成27年度に同省が地域支援事業実施要綱(以下「実施要綱」という。)の改正を行い、その前身に当たる家族介護継続支援事業(介護の慰労のための金品の贈呈)を改定して新設したものであり、介護自立支援事業に係る交付金の交付対象者を、「介護サービスを受けていない中重度の要介護者を現に介護している家族」とした(以下、介護自立支援事業に係る交付金の交付対象となる家族を「交付金交付対象者」という。)。市町村は、従来、高齢者等の要介護者を介護している家族に慰労等を目的として金品を支給する事業(以下、当該金品の支給対象となる家族を「慰労金支給対象者」という。)を実施しており、家族介護継続支援事業の対象者に介護サービスを受けている要介護者に係る慰労金支給対象者を含めることも可能であった。厚生労働省は、交付金交付対象者が介護する要介護者について「介護サービスを受けていない」という条件を設けた趣旨を、交付金交付対象者への交付金の交付と当該交付金交付対象者が介護する要介護者が継続的に介護サービスを受けることによる当該要介護者本人に対する保険給付との同一家族内での重複(以下「交付金と保険給付との重複」という。)を避け、介護保険制度の下で、介護自立支援事業と介護サービスとの整合を図ることであるとしている。そして、上記条件の取扱いについて、要介護者が年間10日以内の範囲で一時的に介護サービスを受けることを許容する一方、介護サービスを受けた日数の合計が年間10日を超える要介護者(以下「継続的なサービス受給者」という。)に係る慰労金支給対象者を交付金交付対象者に含めることは想定していないとしている。しかし、市町村において、継続的なサービス受給者に係る慰労金支給対象者を交付金交付対象者に含めていることから、交付金と保険給付との重複が生じていて、介護保険制度の下で、介護自立支援事業と介護サービスとの整合が十分に図られていない事態が見受けられた。

したがって、厚生労働省において、介護保険制度の下で、介護自立支援事業と介護サービスとの整合を図るために、要介護者が一時的に受けることができる介護サービスの範囲を、実施要綱に明記するなどして市町村に周知するよう、厚生労働大臣に対して30年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。

2 当局が講じた処置

本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、介護保険制度の下で、介護自立支援事業と介護サービスとの整合が図られるよう、31年4月に実施要綱を改正して、交付金交付対象者が介護する要介護者が一時的に受けることができる介護サービスの範囲について、介護自立支援事業の実施前の1年間における介護サービスの利用日数の合計が10日以内であることを明記するとともに、同月に都道府県に対して通知を発して、実施要綱に明記した内容について、都道府県を通じて市町村に周知するなどの処置を講じていた。