農林水産省は、国の防災情報の充実と土地改良法(昭和24年法律第195号)等に基づき整備された国営造成土地改良施設(以下「国営施設」という。)の被災や地域の被害の防止・軽減を目的として、国営施設から収集した防災情報を内閣府の総合防災情報システムに提供するとともに、国から国営施設の管理を受託した者や国営施設が所在するなどする市町村(以下「関係市町村」という。)等に防災情報を提供し、国営施設の的確な操作運用、関係市町村における迅速な初動態勢の整備等を図るために、国営造成土地改良施設防災情報ネットワーク事業(以下「防災ネット事業」という。)を行っている。国営造成土地改良施設防災情報ネットワーク(以下「防災ネットワーク」という。)は、水位、雨量等の計測情報等(以下「観測情報」という。)のうち、同省が提供対象として選定した、ダム、頭首工等(以下、これらを「対象施設」という。)の観測情報を防災情報として、全国に所在する国営施設を管理する土地改良調査管理事務所等(以下「管理事務所等」という。)が管理する送信設備(以下「データ転送装置」という。)を経由して防災中央データセンター(以下「中央センター」という。)に転送することなどにより、関係市町村等に提供するなどするものである。そして、中央センターに転送する防災情報の項目(以下「転送項目」という。)等については、管理事務所等が管理受託者と協議するなどして選定している。また、政府機関及び地方公共団体が気象の観測に使用する雨量計については、気象業務法(昭和27年法律第165号)等に基づき行う検定に合格したものでなければ使用してはならないなどとされており、雨量計に係る検定の有効期間は5年となっている。しかし、データ転送装置等の管理が適切でないため、防災情報が中央センターへ転送されていない事態、雨量計の検定の有効期限が経過しているため、雨量計の観測情報を防災情報として提供できない事態が見受けられた。
したがって、農林水産大臣に対して平成30年10月に、次のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求めた。
本院は、農林水産本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、農林水産省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 管理事務所等にデータ転送装置の不具合の原因を調査させるなどして防災情報が転送されていない事態への対応方針等を報告させた上で、35地区のうち26地区についてデータ転送装置の修理等により不具合を解消するなどの必要な措置を講じた。
イ 30年10月及び令和元年6月に地方農政局等に対して通知を発するなどして、管理事務所等に防災ネットワークの管理に関する計画を作成させて、当該計画に基づき、データ転送装置等の不具合の有無等を確認して定期的に報告させることとするなどして、防災ネットワークの運用状況を適時適切に把握する体制を整備するとともに、管理事務所等に対して、防災ネット事業における防災情報の重要性を周知徹底させ、データ転送装置等の動作状況を原則として毎勤務日に確認するなどして適切に管理するよう指導させた。
ウ 平成30年10月に地方農政局等に対して通知を発するなどして、管理事務所等に対して、気象業務法に基づく雨量計の検定の重要性を周知徹底させるとともに、雨量計の検定の有効期限を適切に管理するよう指導させた。
一方、農林水産省は、引き続き、データ転送装置等の不具合が解消していない残りの9地区について、令和元年度中を目途に、不具合を解消するための工事等の必要な措置を講ずることとしている。