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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 農林水産省|
  • 平成29年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

(5) 危険地区の山地災害対策の強化に資する治山事業の計画の適切な策定、ソフト対策との連携等について


平成29年度決算検査報告参照

1 本院が要求した改善の処置

林野庁は、治山施設を整備するなどする治山事業について、森林管理局に国有林直轄治山事業等(以下「直轄治山事業」という。)を実施させている。また、都道府県も、国庫補助金等の交付を受けて、民有林における治山事業(以下「補助治山事業」という。)を実施している。そして、林野庁は、森林管理局及び都道府県に対して、「山地災害危険地対策の推進について」等(以下「山地災害通知」という。)を発し、山地災害危険地区(以下「危険地区」という。)に係るソフト対策として、危険地区に関する資料(以下「山地災害通知資料」という。)を関係する市町村に提供して市町村の地域防災計画に危険地区対策を組み入れるよう指導させている。しかし、直轄治山事業において山地荒廃の実態や基礎資料を収集するための治山流域別調査(以下「流域別調査」という。)の結果が反映されていない国有林野施業実施計画(以下「施業実施計画」という。)に基づき治山施設の工事が実施されていたり、流域別調査が長期間実施されないまま策定された施業実施計画に基づき治山施設の工事が実施されていたりしている事態、補助治山事業において危険地区及びその実態を把握するための調査の結果である危険度等を活用して総合的に判断して作成されたとはいえない事業箇所別実施計画に基づき予防治山事業に係る治山施設の工事が実施されている事態、直轄治山事業及び補助治山事業において市町村の地域防災計画におけるソフト対策との連携が図られないまま治山施設の工事が実施されている事態が見受けられた。

したがって、林野庁長官に対して平成30年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり改善の処置を要求した。

  • ア 森林管理局に対して、施業実施計画の策定に当たり、流域別調査の結果を施業実施計画に反映するよう指示すること、また、流域別調査を適時適切に実施して山地荒廃の実態や治山施設の整備の必要性を把握するよう指示すること
  • イ 都道府県に対して、予防治山事業に係る事業箇所別実施計画の作成に当たり、危険度が低い箇所を計画箇所とする場合には当該箇所を優先しなければならない理由等を具体的に明示することを徹底するなどして計画箇所を現地の荒廃状況等と合わせて危険度を活用して総合的に判断して選定するよう周知すること
  • ウ 森林管理局及び都道府県が山地災害対策に関係する市町村に対して提供する危険地区に関する資料として、山地災害通知資料以外に、危険地区の山地災害により被害が生ずる保全対象の位置等を示した5千分の1の地図等も提供するよう山地災害通知を改訂すること

2 当局が講じた処置

本院は、林野庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、林野庁は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。

ア 31年3月に、森林管理局に対して、事務連絡を発して、施業実施計画の策定に当たり、流域別調査の結果を施業実施計画に反映するよう指示するとともに、流域別調査の調査要領を改正し、流域別調査を適時適切に実施して山地荒廃の実態や治山施設の整備の必要性を把握するよう指示した。

イ 31年3月に、都道府県に対して通知を発して、予防治山事業に係る事業箇所別実施計画の作成に当たり、危険度が低い箇所を計画箇所とする場合には、予防治山事業の優先度整理表に当該箇所を優先しなければならない理由等を具体的に明示することを徹底するなどして、現地の荒廃状況等と合わせて危険度を活用して総合的に判断して計画箇所を選定するよう周知した。

ウ 31年3月に、山地災害通知を改訂して、森林管理局及び都道府県に対して、山地災害対策に関係する市町村に対して提供する危険地区に関する資料として、危険地区の山地災害により被害が生ずる保全対象の位置等を示した5千分の1の地図等も提供することを周知した。