防衛省は、自衛隊又は我が国に駐留するアメリカ合衆国の軍隊が使用する飛行場等周辺地域のうち指定する区域(以下「補助対象区域」という。)内において、日本放送協会と放送の受信についての契約を締結した者に対して、航空機騒音によるテレビ放送の聴取障害(以下「テレビ聴取障害」という。)の対策として、放送受信料のうち地上系放送分の半額相当額を補助している。しかし、補助対象区域の指定に当たり勘案することとなっている各種要件(以下「指定基準」という。)を定めた際の根拠資料が残されておらず、指定基準がテレビ放送の聴取における航空機騒音の実態を適切に反映したものとなっているか不明となっている事態が見受けられた。
したがって、防衛省において、指定基準がテレビ放送の聴取における航空機騒音の実態を反映させたものとなっているかを検証し、指定基準を見直すなどして、防衛施設周辺放送受信事業(以下「放送受信事業」という。)により補助金を交付する根拠について透明性を十分に確保するよう、防衛大臣に対して平成24年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、防衛省内部部局、各地方防衛局等において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、防衛省は、本院指摘の趣旨に沿い、24年度には指定基準の見直しなどに係る検討のための基礎的な資料を収集し整理するために文献調査等を実施し、25年度にはテレビ聴取障害の定義付けや指定基準の見直しなどを検討した上で学識経験者により構成された検討委員会を開催して検証を行い、26年度には25年度の検証結果がテレビ聴取障害の現地の実態を反映したものとなっているかを確認するための調査を実施して、その結果について検討委員会において検証を行い、27年度には検討委員会において26年度までの調査結果を指定基準に反映するための最終的な検証を行い、28年度にはこれらを踏まえて航空機騒音の実態を反映させた指定基準の改正の方向性を取りまとめた。
29年度には地元関係者に指定基準の改正の方向性を説明する時期等について検討を行うとともに、別途実施している住宅防音工事が完了した世帯は30年8月31日をもって放送受信事業の補助の対象としないこととするなど、放送受信事業の一部見直しについて地元関係者に対して説明を行うなどした。30年度には上記の住宅防音工事が完了した世帯等に係る放送受信事業の一部見直しについて通達の改正などを行った。そして、令和元年度以降は、放送受信事業の一部見直し後の状況を踏まえつつ地元関係者に対して説明を行うなどした上で指定基準を制定し各地方防衛局等に対して周知するなどの所要の処置を講ずることとしている。