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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 防衛省|
  • 平成29年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

防衛装備品等に係るコストデータを一元的に管理して分析等を行うパイロットモデルシステムの整備等について


平成29年度決算検査報告参照

1 本院が表示した意見

防衛装備庁は、防衛装備品及びその修理等の役務の調達における見積資料等の妥当性の検証等を行うなどのために、予定価格の決定の基準となる計算価格や原価監査等により得られた実際の製造原価(以下「製造原価」という。)等のコストデータを一元的に管理して分析等を行うライフサイクルコスト・コストデータベース・パイロットモデル(以下「CDBシステム」という。)を整備し、その有用性の検証等を行うためにコストデータを入力して試験的な運用を開始している。そして、民間企業から製造原価を取得する機会を増加させるために積極的に原価調査を行い、原価調査により得られた製造原価もCDBシステムへの入力の対象にすることとしている。しかし、CDBシステムのコスト管理機能について、計算価格又は製造原価のいずれか一方しか入力できないなどのため、コストデータの比較や分析を行うことができるシステムとなっていなかったり、入力したコストデータの多くが分析に適するとされるWBS(注)のレベル1(契約単位)より更に細分化したものとなっておらず、分析に適したデータベースになっていなかったり、原価調査の実施実績が低調で、製造原価を取得する機会が十分に確保されていなかったりしていて、コスト管理機能の整備目的が十分に達成されていない事態が見受けられた。

したがって、防衛装備庁長官に対して平成30年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり意見を表示した。

  • ア 製造原価の取得方法やコストデータの分析手法について、組織として問題を共有して対応を検討できる体制を整備した上で、コストデータの分析に適した製造原価を取得するための方策について民間企業等と調整して、コストデータの具体的な分析手法を十分に検討すること
  • イ アを踏まえて、入力したコストデータの比較や分析を行って見積資料等の妥当性の検証等を行うことによりCDBシステムの有用性の検証等が可能となるシステムの在り方について検討し、CDBシステムの仕様の見直しについても検討すること、また、製造原価の取得の機会を十分に確保するために、原価調査を積極的に行う体制を整備すること
(注)
WBS  Work Breakdown Structureの略。分析の対象となる作業を分解し、体系化して階層構造としたもの

2 当局が講じた処置

本院は、防衛装備庁において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、防衛装備庁は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。

ア 製造原価の取得方法やコストデータの分析手法について、組織として問題を共有して対応を検討するために、30年9月に関係部局に対して通達を発して、庁内の関係部局の者で構成される次期システム検討委員会(以下「検討委員会」という。)を設置して、同年9月から31年3月にかけて検討委員会を開催し、コストデータの具体的な分析手法を検討した。その結果、防衛省が標準的なWBSの基準を定めて、これに沿った製造原価を民間企業から取得し、統計的な手法を用いてコストデータの分析を行うことにより見積資料等の妥当性の検証等を行うこととした。そして、従来、民間企業においてWBSに基づく製造原価の管理を行う経理システムとなっていなかったことから、31年3月から令和元年6月にかけて説明会を開催するなどして民間企業等と調整を行い、新たな契約制度を創設して、標準的なWBSの基準に沿った製造原価の管理を契約相手方である民間企業に義務付け、当該製造原価を提出させることとした。

イ アの検討を踏まえて、CDBシステムの有用性の検証等が可能となるシステムの在り方やCDBシステムの仕様の見直しについて検討委員会において検討を行った。その結果、コスト管理機能については、これまでの防衛省による独自の分析システムを構築するという方針を転換し、外国政府や防衛産業において利用実績のある既製のコスト分析に係るソフトウェアを活用することとした。また、元年6月に、関係部局に対して通知を発して、新たな契約制度の下、契約条項に基づき、標準的なWBSの基準に沿った製造原価の管理を契約相手方である民間企業に義務付け、当該製造原価を提出させることとして、2年度以降に締結する主要な防衛装備品等に係る初回の製造請負契約等に適用することとした。そして、新たな契約制度が適用されない2回目以降の契約についても同制度の例による製造原価の管理を契約相手方である民間企業に実施させることとして、今後の原価調査において効果的にコストデータの分析に適した製造原価を取得できるよう体制を整備した。