日本中央競馬会は、日本中央競馬会法(昭和29年法律第205号)等に基づき、畜産の技術の研究開発に係る事業等(以下「畜産振興事業」という。)について助成することを業務とする法人(以下「特定法人」という。)に対して、当該助成に必要な資金の全部又は一部に充てるため、日本中央競馬会畜産振興交付金を交付している。特定法人である公益財団法人全国競馬・畜産振興会は、同交付金の交付を受けて、日本中央競馬会が毎年度作成する日本中央競馬会畜産振興事業公募要領(以下「公募要領」という。)等に基づき、畜産振興事業を行う者(以下「実施主体」という。)に対して、助成対象経費に所定の率(以下「助成率」という。)を乗ずるなどして助成金を交付している。公募要領によれば、助成対象経費の範囲は、畜産振興事業の実施に直接必要な資産の取得費、賃借料、委託費等の経費とされているが、これらの経費の具体的な範囲等は明示されておらず、賃借料として助成の対象となるリース料の算定方法も示されていない。助成率については、少額案件等を除き、通常案件は10分の8以内に設定されているが、資産の取得費に適用する助成率については10分の5以内に設定されている。しかし、実施主体が実質的に負担していない委託費を助成対象経費に計上している事態、事業終了後も実施主体が自らの業務で継続して使用する期間に係る分析装置等のリース料を助成対象経費に計上している事態及び資産の取得費に当たるソフトウェアの開発費について通常案件の助成率を適用している事態が見受けられた。
したがって、日本中央競馬会理事長に対して平成30年10月に、次のとおり是正改善の処置を求め、及び改善の処置を要求した。
本院は、日本中央競馬会本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、日本中央競馬会は、本院指摘の趣旨に沿い、30年10月に、31年度の公募要領等を作成して、次のような処置を講じていた。
ア 事業の一部を委託して実施する場合は、実施主体が実質的に負担していない経費は助成の対象とならないことを明示して助成対象経費の範囲を明確にした。
イ 助成対象となるリース料については、原則として、リース料算定の基礎となるリース期間を法定耐用年数又はそれ以上の期間と設定することを明示するなどして、事業終了後も助成対象となるリース物件を実施主体が自らの業務で継続して使用する場合には、リース期間を法定耐用年数又はそれ以上の期間とすることとした。
ウ 通常案件より低く設定した助成率を適用する資産の取得費に当たるソフトウェアの開発費は、固定資産として管理するソフトウェアの開発費とする判断基準を明確に定めた。