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  • 平成30年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第1節 国会及び内閣に対する報告

<参考:報告書はこちら>

第2 国庫補助金等により地方公共団体等に設置造成された基金について


検査対象
内閣府、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省、47都道府県、1,009市町村、166公益法人その他の法人等
検査の対象とした基金の概要
都道府県、市町村、公益法人その他の法人等が、国庫補助金等の交付を受けて単年度では完結しない特定の目的を持つ事務又は事業を行う場合に設置造成するもの
検査の対象とした基金数
3,918基金
上記のうち平成28年度末における基金数及び基金保有額
1,578基金 1兆0757億円
上記のうち国庫補助金等相当額
7005億円

1 検査の背景

(1) 基金の概要

国は、地方公共団体及び法人等(注1)が、基金を設置又は積増し(以下「設置造成」という。)して、単年度では完結しない特定の目的を持つ事務又は事業(以下「基金事業」という。)を実施する場合に、その基金の設置造成に必要な資金の全部又は一部を対象として、当該地方公共団体及び法人等に国庫補助金又は国庫交付金(以下「国庫補助金等」という。)を直接又は間接に交付している。そして、国庫補助金等の交付を受けて基金を設置造成した地方公共団体及び法人等は、国の交付要綱等に基づき、設置造成した基金を他の事業の財源と区分して経理し、基金事業を実施している。

上記の基金を運営形態別に分類すると、おおむね次のとおりとなる。

  • ① 取崩し型
    基金を各事業の財源に充てることによって費消していくもの
  • ② 回転型
    貸付けなど基金を繰り返し回転させて使用するもの
  • ③ 保有型
    基金を債務保証等の信用力の基盤となる財源として保有するもの
  • ④ 運用型
    基金を運用元本として、その運用益を事業の財源に充てていくもの
(注1)
法人等  独立行政法人、特別民間法人、公益法人、一般財団法人、一般社団法人、特殊法人、認可法人、特定非営利活動法人、株式会社、法人格のない組合等

(2) 政府による基金に係る制度の見直しなどの状況

政府は、これまで基金に係る制度の見直しなどについて検討を行っており、平成18年以降、政府が実施した主な見直しなどの状況は、次のとおりである。

ア 「補助金等の交付により造成した基金等に関する基準」による見直し

政府は、18年8月に、「補助金等の交付により造成した基金等に関する基準」(平成18年8月閣議決定。以下「基金基準」という。)を閣議決定し、国庫補助金等の交付を受けて設置造成した基金を保有する法人(独立行政法人、特殊法人、認可法人及び共済組合を除く。以下、この基金基準の対象となる法人を「基金法人」という。)が当該基金により実施している事業に関して、国庫補助金等の交付元府省が国庫補助金等の交付要綱等に基づく指導監督を行う場合の基準を定めている。

基金基準において、各府省は、国庫補助金等を交付する際に、基金事業を終了する時期(以下「終期」という。)を設定し、これを交付要綱等に明記するとともに、基金法人において、①少なくとも5年に1回は定期的に見直しをすること、②あらかじめ事業の効果に着目して定めた目標の達成度を評価し、当該結果を公表すること、③定期的な見直しの際に、基金の規模が過大となっていないかなどの状況を客観的に把握するために、基金事業に要する費用に対する保有金額等の割合(以下「保有割合」という。)を合理的な事業見通しなどを用いて算出すること、④直近3年以上事業実績がない基金、保有割合が1を大幅に上回っている基金等の使用見込みの低い基金については、定期的な見直しの際に国庫補助金等の国庫への返納等その基金の取扱いを検討することなどの基準を明記することとなっている。また、基金法人及び各府省は、基金の名称、基金額、終期、定期的な見直しの時期、基金事業の目標等を公表することとなっている。

イ 行政事業レビューによる基金の見直し、公表等

各府省は、「行政事業レビュー実施要領」(平成25年4月行政改革推進会議。以下「実施要領」という。)等に基づき、国庫補助金等の交付を受けて基金を設置造成した地方公共団体及び国庫補助金等の交付を受けた地方公共団体から間接交付された資金により基金を設置造成した法人等(以下、これらを合わせて「地方公共団体等」という。)に係る基金並びに基金法人及び国庫補助金等の交付を受けて設置造成した基金を保有する独立行政法人等(以下、これらを合わせて「基金法人等」という。)に係る基金について、基金別に執行状況等の点検を行っている。また、基金の名称、基金額、基金事業の概要、成果目標、成果実績、収支の状況、基金方式(国庫補助金等により設置造成された基金により事業を実施する方式をいう。)の必要性等について、地方公共団体等に設置造成された基金については、26年度以降、「地方公共団体等保有基金執行状況表」(以下「執行状況表」という。)により、基金法人等に設置造成された基金(執行状況表により公表している基金を除く。)については、それ以前の25年度以降、「基金シート」により、それぞれ基金の設置造成に充てられた資金を予算計上した各府省が毎年度9月末を目途に前年度の状況を公表することとなっている。

ウ 「経済財政運営と改革の基本方針2014」における基金に係る方針

 「経済財政運営と改革の基本方針2014」(平成26年6月閣議決定。以下「基本方針」という。)によれば、公的部門の改革の推進における財政の質の向上を図るための政府の方針として、基金は、利点もある一方で、執行管理の困難さも指摘されていることから、基金の設置造成については、財政規律の観点から、厳に抑制するとともに、国から交付された補助金等により独立行政法人、公益法人等や地方公共団体に造成された基金の執行状況を全て公表して、使用実績も踏まえながら使用見込みの低い基金については返納を検討するとされている。

エ 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令の改正等

各省各庁の長が基金造成費補助金等(注2)を交付する場合に補助事業者等に対して付すべき条件の明確化を図るために、26年10月に「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令の一部を改正する政令」(平成26年政令第341号。以下「改正政令」という。)が施行され、これにより、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令(昭和30年政令第255号)が改正された(以下、改正後の施行令を「改正適正化令」という。)。そして、改正適正化令第4条第2項の規定において、これまで法令上明確でなかった基金事業の性質について、「複数年度にわたる事務又は事業であって、各年度の所要額をあらかじめ見込み難く、弾力的な支出が必要であることその他の特段の事情があり、あらかじめ当該複数年度にわたる財源を確保しておくことがその安定的かつ効率的な実施に必要であると認められるもの」と規定された。また、国庫補助金等の交付の目的を達成するために必要がある場合には、その交付の条件として、補助事業等の完了後においても従うべき事項等を定めるものとすることとなっていて、同項の規定において、国庫補助金等が基金造成費補助金等に該当する場合には、次の事項を定めることとなっている。

  • (ア) 基金事業に係る運営及び管理に関する基本的事項として各省各庁の長が定めるものを公表すべきこと
  • (イ) 基金を廃止するまでの間、毎年度、当該基金の額及び基金事業の実施状況を各省各庁の長に報告すべきこと
  • (ウ) 基金の額が基金事業の実施状況その他の事情に照らして過大であると各省各庁の長が認めた場合又は各省各庁の長が定めた基金の廃止の時期が到来したことその他の事情により基金を廃止した場合は、速やかに、交付を受けた基金造成費補助金等の全部又は一部に相当する金額を国に納付すべきこと

また、26年10月に、改正政令の施行に関し必要な事項を示すために、財務大臣は、各省各庁の長宛てに「基金造成費補助金等の活用に関する指針について」(平成26年10月財計第2534号。以下「指針」という。)を発出した。

指針によれば、具体の事務又は事業が、前記の「複数年度にわたる事務又は事業であって、各年度の所要額をあらかじめ見込み難く、弾力的な支出が必要であることその他の特段の事情があり、あらかじめ当該複数年度にわたる財源を確保しておくことがその安定的かつ効率的な実施に必要であると認められるもの」に該当するか否かについては、個々に判断することとなるが、①不確実な事故等の発生に応じて資金を交付する事業、②資金の回収を見込んで貸付けなどを行う事業、③当該事業の実施が他の事業の進捗に依存するものについては、基金事業の性質に該当し得ると考えられるとされている。他方、これら以外の事務又は事業については、基金造成費補助金等によることなく対応することが可能か不断に検討すべきであるとされている。さらに、指針において、各省各庁の長は、保有割合、保有割合の算定根拠、基金事業の目標に対する達成度等の情報を交付要綱等に基づき毎年度報告させて、これらの情報に基づき毎年度基金の見直しを行うとともに、これらの情報を基金シートや執行状況表により公表することとなっている。そして、基金法人等に設置造成された基金については、基金基準に従うなどして、地方公共団体等に設置造成された基金については、基金基準を参考として、それぞれ、あらかじめ基金の廃止時期を設定するとともに、当該廃止時期が到来する前の時点においても、基金の額が過大であるか否かを不断に確認することなどとなっている。

また、改正適正化令(第4条第2項)は、改正政令の施行後に、基金を設置するために交付する基金造成費補助金等及び既存の基金に積増しを行うために交付する基金造成費補助金等を対象とするものであるが、前記の(ア)から(ウ)までの各事項に関しては、積増しを行わない基金も、補助事業者等と協議して、できる限り、交付要綱等に改正適正化令と同旨の内容を盛り込むよう努めるものとすることとなっている。

(注2)
基金造成費補助金等  補助事業者等が基金事業の財源として設置造成する基金に充てる資金として各省各庁の長が交付する国庫補助金等

(3) 地方公共団体等及び基金法人等に設置造成されている基金の状況

各府省が公表している執行状況表及び基金シートにより、地方公共団体等及び基金法人等に設置造成されている基金について、28年度の状況をみると、基金数は計2,566基金あり、基金保有額は計5兆6674億余円(国庫補助金等相当額計4兆9578億余円)と多額となっている。そして、地方公共団体等に設置造成されている基金は、基金法人等に設置造成されている基金の基金数の約3.7倍となっており、基金保有額も依然として多額となっている。

(4) 過去の会計検査の状況

本院は、従来、国庫補助金等により設置造成された基金について検査を行っているところであり、地方公共団体等に設置造成された基金については、会計検査院法第30条の2の規定に基づき、23年10月に国会及び内閣に報告した「国庫補助金等により都道府県等に設置造成された基金について」において、地方公共団体等が主体的に基金事業の見直しに努めるとともに、国庫補助金等の交付元府省において交付要綱等に基金事業の見直しの基準等を明記したり、使用見込みのない余剰金がある場合に国庫補助金等相当額を国に返還する旨の規定を定めたりなどして、基金が適切な基金規模となるよう努める必要があるとの所見を記述している。

また、同法第30条の3の規定に基づき、29年4月に参議院に報告した「東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について」において、国庫補助金等を原資として設置造成が行われる基金により復旧・復興事業として実施される事業(以下「復興関連基金事業」という。)について、国は、国からの国庫補助金等の交付を受けて基金を設置造成した地方公共団体、公益法人その他の団体と十分に連携して適切な基金の執行管理を行うとともに、使用見込みのない余剰金等が生じている場合には、これを国庫に返納することを要請するなど、資金が適切かつ有効に活用されるよう努めること、また、東日本大震災復興交付金を原資として基金の設置造成等を行うなどして実施される事業(以下「復興交付金事業」という。)について、基金を設置造成して実施する事業において取崩未済額が多額となっている状況等を踏まえて、国は、適切な同交付金の配分を行うとともに、事業が完了して生じた残余額等について、着実な縮小を図ることなどに留意するなどして、復興施策の推進及び支援に適切に取り組む必要があるとの所見を記述している。

これらのほか、本院は、個別の基金について、同法第34条又は第36条の規定に基づき意見を表示し又は処置を要求するなどしている。

2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

地方公共団体等に設置造成されている基金は、28年度において、基金法人等に設置造成されている基金の基金数の約3.7倍となっており、基金保有額も依然として多額となっている。そして、地方公共団体等に設置造成されている基金については、26年10月の改正政令の施行に伴う見直しや前記の行政事業レビューによる見直しなどが行われており、各府省の自己点検等の取組状況は、30年9月から公表されることとなった。

そこで、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、地方公共団体等に設置造成されている基金について、次のような点に着眼して検査を実施した。

ア 地方公共団体等に設置造成された基金の基金数、基金保有額及び基金の運用方法はどのような状況となっているか。

イ 基金事業として実施されている事業が改正適正化令に規定された基金事業としての性質に該当するものとなっているか、基金の基本的事項の公表に係る規定が適切に整備されているかなど、改正適正化令の適用状況等はどのようになっているか。

ウ 基金規模はどのような状況となっているか、基金規模の確認は適切に行われているか。

(2) 検査の対象及び方法

国庫補助金等により地方公共団体等に設置造成された基金のうち、24年度から28年度までに存在した基金(復興関連基金事業及び復興交付金事業に係る基金並びに23年度末までに基金事業が終了した基金を除く。)を対象として、これらの基金を所管している9府省(注3)及び47都道府県等(注4)から特別調書等の提出を受け、特別調書により特定できた3,918基金について、その内容を分析するとともに、9府省及び18都道府県(注5)において実績報告書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(注3)
9府省  内閣府、総務、文部科学、厚生労働、農林水産、経済産業、国土交通、環境、防衛各省
(注4)
47都道府県等  47都道府県、1,009市町村及び都道府県等から間接交付された資金により基金を設置造成した166公益法人その他の法人等。ただし、福島県の原子力災害に伴う避難指示区域等に指定された11市町村は含めていない。
(注5)
18都道府県  東京都、北海道、大阪府、青森、岩手、宮城、福島、埼玉、千葉、神奈川、新潟、福井、静岡、愛知、兵庫、鳥取、福岡、沖縄各県

3 検査の状況

(1) 地方公共団体等に設置造成された基金の推移等

上記の3,918基金について、24年度から28年度までの各年度末における基金数(各年度末時点において国庫補助金等相当額がない基金を除く。以下同じ。)及び基金保有額の合計について、24年度末と28年度末を比較してみると、基金数は、24年度末計2,038基金、28年度末計1,578基金、基金保有額は、24年度末計2兆1684億余円(国庫補助金等相当額計1兆8849億余円)、28年度末計1兆0757億余円(同計7005億余円)となっており、28年度末における基金数は対24年度末比で77.4%、同基金保有額は同49.6%(国庫補助金等相当額は同37.1%)と基金数及び基金保有額共に減少傾向となっている。

ア 都道府県別の基金数及び基金保有額の推移等

都道府県別の基金数及び基金保有額の推移等をみると、28年度末において、基金数が最も多いのは北海道で71基金、最も少ないのは秋田県で20基金となっている。基金保有額が最も多いのは東京都で829億余円、最も少ないのは滋賀県で68億余円となっている。そして、28年度末における基金数は、対24年度末比でみると、沖縄県を除く都道府県で減少しており、基金保有額は、対24年度末比でみると、全ての都道府県で減少している。

イ 府省別の基金数及び国庫補助金等相当額の推移等

府省別の基金数及び国庫補助金等相当額の推移等をみると、28年度末における基金数が最も多いのは厚生労働省所管の基金で474基金、最も少ないのは総務省所管の基金で23基金となっている。国庫補助金等相当額が最も多いのは厚生労働省所管の基金で4605億余円、最も少ないのは総務省所管の基金で2億余円となっている。そして、28年度末における基金数は、対24年度末比でみると、農林水産、国土交通、環境、防衛各省で増加しているが、他の府省では減少している。国庫補助金等相当額は、対24年度末比でみると、防衛省で増加しているが、他の府省では減少している。

ウ 地方公共団体等の種類別の基金数及び基金保有額の推移等

地方公共団体等の種類別の基金数及び基金保有額の推移等をみると、28年度末における基金数及び基金保有額が最も多いのは、都道府県に設置造成されている基金で1,022基金、9781億余円(国庫補助金等相当額6190億余円)、最も少ないのは、その他の法人等に設置造成されている基金で13基金、27億余円(同16億余円)となっている。そして、28年度末における基金数は、対24年度末比でみると、市町村で増加しているが、他の地方公共団体等の種類では減少している。基金保有額は、対24年度末比でみると、全ての地方公共団体等の種類において減少している。

エ 運営形態別の基金数及び基金保有額の推移等

運営形態別の基金数及び基金保有額の推移等をみると、28年度末における基金数及び基金保有額が最も多いのは、取崩し型の基金で885基金、5112億余円(国庫補助金等相当額4009億余円)となっている。そして、28年度末における基金数は、対24年度末比でみると、取崩し型及び回転型両者の性質を有するなどの運営形態(以下「複合型」という。)の基金で増加しているが、他の運営形態の基金では減少している。また、基金保有額は、対24年度末比でみると、回転型の基金及び複合型の基金で増加しているが、他の運営形態の基金では減少しており、保有型の基金は、28年度末までに終期を迎えて国庫補助金等相当額が国庫返納されている。

オ 基金の運用方法別の基金保有額の状況

前記28年度末計1,578基金のうち、岩手、宮城、福島各県並びに当該3県の市町村及び当該3県から間接交付された資金により法人等に設置造成された115基金を除く(注6)基金(以下「28年度末対象基金」という。)1,463基金について、基金の運用方法をみると、基金保有額を個別に運用しているとしていたものは753基金(28年度末基金保有額計3412億余円)となっていた。そして、当該753基金について、28年度末における基金の運用方法別の基金保有額の状況をみたところ、定期預金等の預金により運用しているとしていたものが計3074億余円(28年度末基金保有額3412億余円の90.0%)、国債及び地方債により運用しているとしていたものが計243億余円(同7.1%)、社債、株式等のその他の方法により運用しているとしていたものが計94億余円(同2.7%)となっており、基金ごとにみたところ、24年度から28年度までの間の各年度において運用損が生じている状況は見受けられなかった。

(注6)
検査対象年度とした平成24年度から28年度までの間は、23年3月に発生した東日本大震災に係る集中復興期間と重なっており、甚大な被害を受けるなどした岩手、宮城、福島各県並びに当該3県の市町村及び当該3県から間接交付された資金により法人等に設置造成された115基金は、通常期と状況が大きく異なり、比較に適さないと考えられることなどから、対象から除外している。

(2) 改正適正化令の適用状況等

本院は、前記のとおり、23年10月に「国庫補助金等により都道府県等に設置造成された基金について」を国会及び内閣に報告したところである。そして、その後、26年10月に、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令が改正され、改正適正化令第4条第2項の規定において、基金事業の性質が規定されるとともに、基金造成費補助金等の交付に当たり、各省各庁の長が定める基本的事項を公表すべきこと、基金の額及び基金事業の実施状況を各省各庁の長に報告すべきこと、基金の額が基金事業の実施状況その他の事情に照らして過大であると各省各庁の長が認めた場合等は、基金造成費補助金等の全部又は一部に相当する金額を国に納付すべきことなどを交付の条件として定めることとなった。

改正適正化令(第4条第2項)は、前期のとおり、指針において、改正政令の施行後に、基金を設置するために交付する基金造成費補助金等及び既存の基金に積増しを行うために交付する基金造成費補助金等を対象とするものであるが、積増しを行わない基金も、補助事業者等と協議して、できる限り、交付要綱等に改正適正化令と同旨の内容を盛り込むよう努めるものとすることとなっている。

上記のような状況を踏まえると、改正政令の施行後に補助事業者等が基金を設置するため及び既存の基金に積増しを行うために交付される国庫補助金等(以下「適用対象補助金」という。)、改正政令の施行前に設置され、かつ、改正政令の施行後に積増しが行われていないなどの基金に係る国庫補助金等(以下「適用対象外補助金」という。)の別にかかわらず、国庫補助金等により地方公共団体等に設置造成された基金について、改正適正化令で規定されているように、交付の条件を交付要綱等に定めて、基金事業として実施することの必要性を不断に検討すること、基金に関する情報の公表を適時適切に行うこと、基金規模の妥当性について不断に検討するとともに、基金の規模が過大であると認められる場合に国庫返納が適時適切に行われることなどが重要である。

28年度末対象基金1,463基金を設置造成するために交付された国庫補助金等70補助金について、適用対象補助金と適用対象外補助金に分類すると、適用対象補助金が26補助金(889基金、70補助金の37.1%、28年度末基金保有額6844億余円)、適用対象外補助金が44補助金(574基金、同62.8%、同3211億余円)となっており、28年度末において適用対象外補助金が6割強ある状況となっている。

ア 基金事業としての性質の該当性の状況等

上記の70補助金(1,463基金)について、指針の趣旨を踏まえて、基金事業の性質を分類したところ、①不確実な事故等の発生に応じて資金を交付する事業としているものが14補助金(111基金、70補助金の20.0%)、②資金の回収を見込んで貸付けなどを行う事業としているものが8補助金(222基金、同11.4%)、③事業の実施が他の事業の進捗に依存する事業としているものが1補助金(1基金、同1.4%)となっていた。

一方、残りの47補助金(1,129基金、同67.1%)については、その他の事業となっており、これが全体の7割弱を占める状況となっていた。これらの事業について、各府省は、比較的大規模な施設整備や改修等の工事であったり、事業の進捗状況によって弾力的な支出が必要となるものであったり、地域の関係者の意見を踏まえて、必要性、公益性の高い事業を計画し、課題の解決に取り組むものであったりなどしていて、基金事業としての性質に該当するとしている。

これら基金事業の性質がその他の事業となっている47補助金について、交付要綱等に定める対象事業の実施方法により分類したところ、a「地方公共団体等において基金事業又は国庫補助金等の交付を受けて単年度で実施する事業(以下「単年度型事業」という。)を事業内容により選択して実施することとしているもの」が19補助金(467基金、47補助金の40.4%)、b「基金事業のみにより実施することとしているもの」が28補助金(662基金、同59.5%)となっていた。

aについては、交付要綱等により、地方公共団体等において基金事業又は単年度型事業を事業内容により選択することとしていることから、これら19補助金については、各府省は、地方公共団体等において基金事業として実施されている事業が、基金事業の性質に該当しているか、基金事業として選択した事業ごとに確認することが重要である。

一方、bについては、交付要綱等により、あらかじめ基金事業のみにより実施することとしていることから、これら28補助金については、各府省は、交付要綱等において基金事業として実施することとした事業が、基金事業の性質に該当しているか、国庫補助金等ごとに地方公共団体等における事業の実態等を踏まえて確認することが重要である。

そして、基金事業の性質がその他の事業となっている前記47補助金のうち、農林水産省において、基金によることなく事業を実施することの可否について検討する必要があると考えられるものが、上記bの基金事業のみにより実施することとしている国庫補助金等において2補助金(76基金、28年度末基金保有額429億余円)見受けられた。

イ 基金の基本的事項の公表に係る規定の整備状況等

(ア) 規定の整備状況

前記のとおり、改正適正化令において、各省各庁の長は、国庫補助金等の交付の目的を達成するために必要がある場合には、その交付の条件として、基金事業に係る運営及び管理に関する基本的事項として各省各庁の長が定めるもの(以下「基本的事項」という。)を地方公共団体等が公表すべきことについて、交付要綱等に規定することとなっている。そこで、改正適正化令の趣旨を踏まえて、前記の70補助金(1,463基金)について、基本的事項の公表に係る規定の整備状況についてみたところ、適用対象補助金26補助金(889基金、28年度末基金保有額6844億余円)のうち、交付要綱等において基本的事項の公表が定められていたものは24補助金(840基金、26補助金の92.3%、同5430億余円)となっていた。

しかし、厚生労働、経済産業両省において、交付要綱等の改正は不要であると認識していたなどのため、適用対象補助金であるが、交付要綱等において基本的事項の公表が定められていなかったものが2補助金(49基金、同7.6%、同1414億余円)見受けられた。

また、適用対象外補助金44補助金(574基金、28年度末基金保有額3211億余円)については、交付要綱等において基本的事項の公表が定められていたものは22補助金(178基金、44補助金の50.0%、同839億余円)、基本的事項の公表が定められていなかったものは22補助金(396基金、同50.0%、同2371億余円)となっており、適用対象補助金に比べて基本的事項の公表が定められていたものの割合が低く、基金の設置造成時期の違いなどにより、基本的事項の公表に係る規定の整備状況に差が生じている状況となっていた。

(イ) 基本的事項の公表状況等

交付要綱等において基本的事項の公表が定められていた46補助金(適用対象補助金24補助金、適用対象外補助金22補助金)に係る1,018基金(28年度末基金保有額6270億余円)について、地方公共団体等における基本的事項の公表状況をみたところ、932基金(1,018基金の91.5%、同5812億余円)は、ホームページ(885基金)、閲覧(16基金)、広報誌(13基金)等により、基本的事項が公表されていたものの、残りの86基金(同8.4%、同458億余円)は、各府省がホームページで基金の実施状況を公表しているなどとして、地方公共団体等において基本的事項が公表されていなかった。一方、基本的事項の公表が定められていなかった24補助金(適用対象補助金2補助金、適用対象外補助金22補助金)に係る445基金(28年度末基金保有額3785億余円)について、基本的事項ではないものの、基金の額、国庫補助金等相当額等の基金の運営管理に関する事項の地方公共団体等における公表状況をみたところ、公表されていたものは229基金(445基金の51.4%、同1664億余円)、公表されていなかったものは216基金(同48.5%、同2121億余円)となっていた。

また、基本方針によれば、各府省においても、国庫補助金等により地方公共団体等に設置造成された基金の執行状況を全て公表することとされており、実施要領等において、国庫補助金等の予算を計上した府省は、26年度から執行状況表を作成して、毎年度9月末を目途に前年度の基金の執行状況等を公表することとなっている。そこで、地方公共団体等において、基本的事項又は上記基金の運営管理に関する事項(以下、これらを合わせて「基本的事項等」という。)が公表されていなかった計302基金について、各府省が29年度に公表した執行状況表における基金に関する情報の公表状況についてみたところ、内閣府において、地方公共団体等からの報告漏れにより公表対象を十分に把握できていなかったなどのため、基金に関する情報が公表されていなかった基金が4基金(1補助金、28年度末基金保有額4301万余円)見受けられ、これら4基金については、各府省による基金に関する情報の公表及び地方公共団体等による基本的事項等の公表のいずれも行われていなかった。

ウ 保有割合等の報告に係る規定の整備状況等

前記の70補助金(1,463基金)について、保有割合や保有割合以外の基金規模を客観的に把握するための今後の基金の使用見込みなどを含めた指標値(以下、これらを合わせて「保有割合等」という。)の報告に係る規定の整備状況をみたところ、適用対象補助金26補助金(889基金、28年度末基金保有額6844億余円)については、保有割合等の報告に係る規定があるものが20補助金(557基金、26補助金の76.9%、28年度末基金保有額4640億余円)、保有割合等の報告に係る規定がないものが6補助金(332基金、同23.0%、同2204億余円)となっていた。そして、各府省は、保有割合等の報告に係る規定がない理由を、補助事業者から提出される基金全体計画書等により基金事業の実施状況や事業見込みを確認できるためとしていたり、各年度末時点の残高並びに各年度の収入額及び支出額の報告を受けており、基金規模が過大となっていないかを一定程度判断することが可能であるためとしていたり、終期が定められていないことから事業が完了するまでに要する費用を算定することができないためなどとしていたりしていた。

一方、適用対象外補助金44補助金(574基金、28年度末基金保有額3211億余円)については、保有割合等の報告に係る規定があるものが8補助金(136基金、44補助金の18.1%、28年度末基金保有額362億余円)、保有割合等の報告に係る規定がないものが36補助金(438基金、同81.8%、同2849億余円)となっており、適用対象外補助金においても保有割合等を報告させることとしていたものも見受けられるが、適用対象補助金と比べると、保有割合等を報告させることとしていないものの割合が高い状況となっていた。

また、28年度末対象基金1,463基金について、地方公共団体等による保有割合等の報告状況をみたところ、保有割合等の報告に係る規定がある計693基金のうち、報告されていたものは655基金(693基金の94.5%)となっており、残りの38基金(同5.4%)は、保有割合等の報告に係る規定があるのに、報告されていなかった。この中には、終期が既に28年度末で確定しており、基金残額については、国庫に返納することが義務付けられており保有割合等を報告する必要がないものがあった一方で、保有割合等を報告することを失念していたり、保有割合等を報告することの認識が欠けていたりするものも見受けられた。そして、保有割合等を報告する必要がないものを除き報告されていなかったものは、保有割合等の報告に係る規定がないものを含めると、計801基金(1,463基金の54.7%)となっていて、半数以上の基金において、基金規模を客観的に把握することが困難な状況となっていた。

さらに、保有割合等の報告に係る規定があるもののうち、文部科学、厚生労働両省がそれぞれ所管しているものの、同一の交付要綱に基づいて設置造成されている基金において、所管別に区分して経理を行っていて相互に配分変更することができないこととなっているのに、これらを合算して保有割合を算定していたため、基金規模の妥当性を適切に確認できない状況となっていたものが、2補助金(87基金、28年度末基金保有額793億余円)見受けられた。

エ 国庫返納に係る規定の整備状況等

改正適正化令の趣旨を踏まえて、前記の70補助金(1,463基金)について、基金の額が基金事業の実施状況その他の事情に照らして過大であると各省各庁の長が認めた場合において、基金造成費補助金等の全部又は一部に相当する金額を国に納付すべきことについての規定(以下「終期前返納規定」という。)の整備状況についてみたところ、適用対象補助金26補助金(889基金、28年度末基金保有額6844億余円)については、終期前返納規定が定められているものが24補助金(840基金、26補助金の92.3%、28年度末基金保有額5430億余円)となっていた。

しかし、厚生労働、経済産業両省において、適用対象補助金であるが終期前返納規定が定められていないものが2補助金(49基金、同7.6%、同1414億余円)見受けられ、基金規模が過大であると認められた場合、速やかに国庫返納を行うことができないおそれがある状況となっていた。

上記の2補助金について終期前返納規定を定めていない理由を確認したところ、厚生労働省は、同省所管の1補助金は基金を保有する都道府県において、法令に基づき、基金拠出率を設定する際に、基金規模や将来のリスクを踏まえた検証が適切に実施されているとし、経済産業省は、同省所管の1補助金は基金の取扱要領の整備が遅れたため、終期前返納規定が定められていなかったとしていた。なお、経済産業省において、終期前返納規定を含めた基金の取扱要領は、29年10月に整備された。

一方、適用対象外補助金44補助金(574基金、28年度末基金保有額3211億余円)については、終期前返納規定が定められているものが25補助金(455基金、44補助金の56.8%、28年度末基金保有額1384億余円)となっていた。そして、終期が近いためや改正適正化令の適用対象外であるためなどとして、終期前返納規定が定められていないものが19補助金(119基金、同43.1%、同1827億余円)となっており、適用対象補助金と比べると、基金の見直しによる国庫返納のための終期前返納規定が定められていないものの割合が高い状況となっていた。

また、24年度から28年度までの間に存在していた3,918基金のうち、岩手、宮城、福島各県並びに当該3県の市町村及び当該3県から間接交付された資金により法人等に設置造成された247基金を除く3,671基金について、24年度から28年度までの間における国庫返納の状況等についてみたところ、国庫返納の実績のあるものが1,063基金(3,671基金の28.9%)、国庫返納の実績のないものが2,608基金(同71.0%)となっており、国庫返納の実績のないものが全体の7割強を占めている状況となっていた。また、国庫返納の実績のある上記の1,063基金について、国庫返納額等の状況をみると、国庫返納件数は1,336件、国庫返納額は計3162億余円となっていた。これらについて、返納理由をみると、終期の到来に伴うものが1,019件(1,336件の76.2%)、計2060億余円(3162億余円の65.1%)、基金規模の見直しに伴うものが156件(同11.6%)、計894億余円(同28.2%)となっていた。このように、国庫返納件数の7割強が終期の到来に伴う国庫返納となっており、基金規模の見直しに伴う国庫返納件数は全体の1割強で、これらは全て終期前返納規定が定められている国庫補助金等に係る国庫返納となっていた。

(3) 基金規模等の状況

28年度末対象基金1,463基金のうち、基金の設置造成後3か年度以上が経過していて、28年度末基金保有額が1000万円以上の取崩し型の基金405基金及び回転型の基金90基金について、本院において基金規模の状況がどのようになっているか分析したところ、次のような状況となっていた。

ア 取崩し型の基金

上記の取崩し型の基金405基金について、過去3か年度の事業実績についてみたところ、過去3か年度において基金事業の事業実績がないものが16基金あった。また、残りの389基金について、28年度末基金保有額がどの程度の規模となっているかについてみるために、基金保有倍率(28年度末基金保有額を26年度から28年度までの3か年度の平均事業実績額で除して得た数値)を算定したところ、基金保有倍率が10倍以上となっている基金が32基金となっていた。

そして、過去3か年度において基金事業の事業実績がない16基金と基金保有倍率が10倍以上となっている32基金の計48基金(28年度末基金保有額117億余円)は、事業実績から勘案して基金規模の妥当性を十分に確認する必要があると考えられることから、これらの基金について、国庫返納の状況や基金保有倍率が10倍以上となっている事情についてみたところ、48基金のうち5基金は、終期の到来や基金規模の見直しにより29年度以降に既に国庫返納が行われていた(30年9月末現在)。また、残りの43基金は、不確実な事故等の発生に応じて資金を交付する基金事業であり、基金の取崩しの対象となる事故等が発生しなかった又は少なかったとしていたものが2基金、基金事業の計画上、過去3か年度は基金事業の執行がない又は少ない期間であったとしていたものが12基金、基金事業の事情により、過去3か年度において基金事業の実施に至らなかった又は当初の計画よりも基金事業の実施が少なかったとしていたものが29基金となっていた。

そして、上記29基金のうち、総務、文部科学、農林水産、経済産業各省所管の基金において、今後の基金の使用見込みが計画等において十分に示されていなかったものが10基金見受けられた。

イ 回転型の基金

回転型の基金90基金について、基金規模の状況をみるために、過去3か年度における各年度末の基金造成総額に対する各年度末の資金残高の比率(以下「繰越率」という。)の3か年度平均(以下「平均繰越率」という。)を算定したところ、平均繰越率が50%以上のものが78基金(28年度末基金保有額293億余円)となっており、90基金の86.6%を占める状況となっていた。

上記78基金のうち2基金(2補助金)は、内閣府が所管する基金であり、これらは沖縄県において本土復帰に伴い、将来にわたって広く県民の福祉に寄与することなどを目的として設置造成されているもので、繰越率が毎年度高くなっている状況となっているものの、同県によれば、今後とも道路整備の継続的な需要が予想されるなどとしていた。

また、78基金のうち76基金(3補助金)は、農林水産省(林野庁及び水産庁)が所管する基金であり、同省は、これらについて、従前から、自主納付制度を設けて、基金規模を客観的に把握するために、毎年度、都道府県に余剰金の額を算定させて、余剰金の自主納付について検討させるといった基金規模の適正化に向けた取組を行っていた。しかし、依然として繰越率が高くなっている基金が見受けられることなどを踏まえて、76基金のうち48基金(2補助金)は、同省(林野庁)において、基金規模の適正化に向けて自主納付制度の運用の見直し中であるとしている。また、残りの28基金(1補助金)については、同省(水産庁)において、自主納付制度が都道府県において十分に活用されているかについて十分に確認できていないなどの状況となっていた。

4 所見

(1) 検査の状況の概要

ア 地方公共団体等に設置造成された基金の推移等

24年度末から28年度末までの間、地方公共団体等に設置造成されている基金の基金数及び基金保有額は、減少傾向となっているものの、28年度末においても多額の基金が保有されている。また、28年度末対象基金1,463基金のうち、基金保有額を個別に運用しているとしていた753基金について、28年度末における基金の運用方法別の基金保有額の状況をみたところ、その大半が預金や国債等の債券により保有されている状況であり、その他の方法により運用されているものもあるが、基金ごとにみたところ、24年度から28年度までの間の各年度において運用損が生じている状況は見受けられなかった。

イ 改正適正化令の適用状況等

28年度末対象基金1,463基金を設置造成するために交付された国庫補助金等70補助金について、適用対象補助金と適用対象外補助金に分類すると、適用対象補助金が26補助金、適用対象外補助金が44補助金となっており、28年度末において適用対象外補助金が6割強ある状況となっている。

(ア) 基金事業としての性質の該当性の状況等

上記の70補助金について、基金事業の性質を分類したところ、①不確実な事故等の発生に応じて資金を交付する事業としているものが14補助金、②資金の回収を見込んで貸付けなどを行う事業としているものが8補助金、③事業の実施が他の事業の進捗に依存する事業としているものが1補助金となっていた。一方、残りの47補助金については、その他の事業となっており、これが全体の7割弱を占める状況となっていた。

上記の47補助金について、交付要綱等に定める対象事業の実施方法により分類したところ、a「地方公共団体等において基金事業又は単年度型事業を事業内容により選択して実施することとしているもの」が19補助金、b「基金事業のみにより実施することとしているもの」が28補助金となっていた。そして、上記47補助金のうち、農林水産省において、基金によることなく事業を実施することの可否について検討する必要があると考えられるものが、基金事業のみにより実施することとしている国庫補助金等において2補助金見受けられた。

(イ) 基金の基本的事項の公表に係る規定の整備状況等

前記の70補助金について、基本的事項の公表に係る規定の整備状況についてみたところ、適用対象補助金26補助金のうち、基本的事項の公表が定められていたものは24補助金となっていた。しかし、厚生労働、経済産業両省において、適用対象補助金であるが、交付要綱等において基本的事項の公表が定められていなかったものが2補助金見受けられた。また、適用対象外補助金44補助金については、交付要綱等において基本的事項の公表が定められていたものは22補助金、基本的事項の公表が定められていなかったものは22補助金となっていた。

さらに、交付要綱等において基本的事項の公表が定められていた46補助金に係る1,018基金について、86基金は、地方公共団体等において基本的事項が公表されていなかった。一方、基本的事項の公表が定められていなかった24補助金に係る445基金について、地方公共団体等における基金の運営管理に関する事項の公表状況をみたところ、公表されていなかったものは216基金となっていた。

そして、基本的事項等が公表されていなかった計302基金のうち、各府省による基金に関する情報の公表及び地方公共団体等による基本的事項等の公表のいずれも行われていなかったものが内閣府において4基金見受けられた。

(ウ) 保有割合等の報告に係る規定の整備状況等

前記の70補助金について、保有割合等の報告に係る規定の整備状況をみたところ、適用対象補助金26補助金については、保有割合等の報告に係る規定があるものが20補助金、保有割合等の報告に係る規定がないものが6補助金となっていた。一方、適用対象外補助金44補助金については、保有割合等の報告に係る規定があるものが8補助金、保有割合等の報告に係る規定がないものが36補助金となっていた。また、28年度末対象基金1,463基金について、地方公共団体等による保有割合等の報告状況をみたところ、保有割合等の報告に係る規定がある計693基金のうち、38基金は、保有割合等の報告に係る規定があるのに、報告されていなかった。そして、保有割合等を報告する必要がないものを除き報告されていなかったものは、保有割合等の報告に係る規定がないものを含めると、計801基金となっていて、半数以上の基金において、基金規模を客観的に把握することが困難な状況となっていた。

そして、保有割合等の報告に係る規定があるもののうち、文部科学、厚生労働両省がそれぞれ所管しているものの、同一の交付要綱に基づいて設置造成されている基金において、所管別に区分して経理を行っていて相互に配分変更することができないこととなっているのに、これらを合算して保有割合を算定していたため、基金規模の妥当性を適切に確認できない状況となっていたものが、2補助金見受けられた。

(エ) 国庫返納に係る規定の整備状況等

前記の70補助金について、交付要綱等における終期前返納規定の整備状況についてみたところ、適用対象補助金26補助金については、終期前返納規定が定められているものが24補助金となっていた。しかし、厚生労働、経済産業両省において、適用対象補助金であるが終期前返納規定が定められていないものが2補助金見受けられ、基金規模が過大であると認められた場合、速やかに国庫返納を行うことができないおそれがある状況となっていた。一方、適用対象外補助金44補助金については、終期前返納規定が定められているものが25補助金となっていた。

ウ 基金規模等の状況

取崩し型の基金405基金について、過去3か年度の事業実績についてみたところ、過去3か年度において基金事業の事業実績がないものが16基金あった。また、残りの389基金について、基金保有倍率を算定したところ、基金保有倍率が10倍以上となっている基金が32基金となっていた。そして、これらの計48基金のうち総務、文部科学、農林水産、経済産業各省所管の基金において、今後の基金の使用見込みが計画等において十分に示されていなかったものが10基金見受けられた。

回転型の基金90基金について、平均繰越率を算定したところ、平均繰越率が50%以上のものが78基金となっており、90基金の86.6%を占める状況となっていた。そして、78基金のうち28基金(1補助金)については、農林水産省(水産庁)において、自主納付制度が都道府県において十分に活用されているかについて十分に確認できていないなどの状況となっていた。

(2) 所見

前記のとおり、本院が23年10月に国会及び内閣に「国庫補助金等により都道府県等に設置造成された基金について」を報告して以降、政府において、行政事業レビューによる地方公共団体等に係る基金の見直しが行われるようになったり、26年10月に改正政令が施行され、基金造成費補助金等を交付する際の交付の条件が定められるようになったりして、各府省においては基金規模等の適正化に向けた取組が行われるようになってきている。

しかし、検査したところ、①基金によることなく事業を実施することの可否について検討する必要があると考えられるものが見受けられたこと、②各府省による基金に関する情報の公表及び地方公共団体等における基本的事項等の公表のいずれも行われていなかった基金が見受けられたこと、③基金規模を客観的に把握することが困難な状況となっていたこと、④終期前返納規定を整備することについて適切に検討を行う必要があるものが見受けられたこと、⑤今後の基金の使用見込みが計画等において十分に示されていなかった基金が見受けられたことなどから、各府省は、次の点に留意して、地方公共団体等と十分に連携し、基金事業が適切かつ有効に実施され、使用見込みの低い基金については国庫返納を促すことなどについて努める必要がある。

ア 改正適正化令の適用状況等

  • (ア) 基金事業としての性質の該当性の状況等
    各府省は、今後も改正適正化令の趣旨を踏まえて、基金事業として実施されている事業が基金事業の性質に該当しているか、事業ごとに又は国庫補助金等ごとに確認するなどして、基金により事業を実施する必要があるか不断に検討すること。農林水産省は、2補助金の基金事業について、基金によることなく事業を実施することの可否について十分に検討すること
  • (イ) 基金の基本的事項の公表に係る規定の整備状況等
    各府省は、適用対象補助金について、交付要綱等に基本的事項の公表を定めることについて十分に留意すること。適用対象外補助金についても、基金の透明性を高めて、国民への説明責任を果たすために、基本的事項の公表を定めることについて検討すること。また、交付要綱等において基本的事項等の公表が定められているのに、公表されていなかったなどの基金について、地方公共団体等に対して、基本的事項を適時適切に公表するよう周知徹底するとともに、各府省においても公表対象を十分に把握するなどして基金に関する情報を適時適切に公表するよう留意すること
  • (ウ) 保有割合等の報告に係る規定の整備状況等
    各府省は、適用対象補助金はもとより、適用対象外補助金であっても、地方公共団体等と協議を行い、保有割合等を報告させるなどして基金規模を客観的に把握し、基金規模の妥当性を適切に確認すること。また、各府省は、保有割合等の報告に係る規定がある基金について、地方公共団体等が報告していないことの事情等を十分に把握した上で、保有割合等を報告させるよう周知徹底すること。文部科学、厚生労働両省は、所管別に区分して経理が行われている安心こども基金について、基金規模の妥当性を適切に確認できるようにするために、所管別に保有割合等を算定するようにすること
  • (エ) 国庫返納に係る規定の整備状況等
    厚生労働省は、適用対象補助金であるが終期前返納規定が定められていない1補助金について、国費の適正かつ効率的な使用の観点等から、基金規模が過大であると認められる場合に、速やかに国庫補助金等相当額の国庫返納が行われるようにするために、終期前返納規定を整備することについて、適切に検討すること。また、各府省は、適用対象外補助金についても、基金の見直しにより基金規模を適正化するために、終期前返納規定を整備していない場合は、終期前返納規定を整備することについて検討すること

イ 基金規模等の状況

各府省は、基金の実際の使用実績や具体的な根拠資料等により今後の使用見込みを十分に把握したり、基金規模を客観的に把握できるよう保有割合等を報告させたりするなどして、引き続き基金を保有することの妥当性及び基金規模の妥当性を十分に確認等すること

本院としては、今後とも国庫補助金等により地方公共団体等に設置造成された基金について引き続き注視していくこととする。