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  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第1節 国会及び内閣に対する報告

<参考:報告書はこちら>

第4 独立行政法人改革等による制度の見直しに係る主務省及び独立行政法人の対応状況について


検査対象
内閣府、総務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省、独立行政法人87法人
独立行政法人改革等の概要
独立行政法人をその事務及び事業の特性に応じて分類した上で主務大臣が中期目標等を策定し、自ら評価を行うこと、中期目標等に定められた「一定の事業等のまとまり」ごとの区分に基づくセグメント情報を作成して評価にセグメント情報を活用すること、運営費交付金の収益化基準を原則、業務達成基準として経営努力の促進を図ること、内部統制・ガバナンスの強化等の業務運営を改善する仕組みを構築することなど
87独立行政法人の経常費用の額
16兆4628億円(平成29事業年度)
87独立行政法人のうち運営費交付金が交付されている74独立行政法人に対する運営費交付金の交付額
1兆5230億円(平成29事業年度)

1 検査の背景

(1) 創設時における独立行政法人制度の概要

独立行政法人制度は、平成13年1月の中央省庁等改革の一環として、行政における企画立案部門と実施部門を分離し、企画立案部門の能力を向上させる一方で、実施部門に法人格を与え、運営裁量を与えることにより、政策実施機能を向上させることを目的として創設された。

独立行政法人の運営の基本その他の制度の基本となる共通の事項については、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)において定められており、各独立行政法人の目的及び業務の範囲については、各独立行政法人の名称、目的、業務の範囲等に関する事項を定める法律(以下「個別法」という。)等において定められている。

独立行政法人は、公共的な性格を有し、利益の獲得を目的とせず、独立採算制を前提としないなどの特殊性があることから、この特殊性を踏まえた「「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」」(平成12年2月独立行政法人会計基準研究会(以下「会計基準研究会」という。)策定。以下「会計基準」という。)及び「「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」に関するQ&A」(平成12年8月中央省庁等改革推進本部事務局及び日本公認会計士協会策定。以下「会計基準Q&A」といい、会計基準と合わせて「会計基準等」という。)が定められている。会計基準等は、主務省令に基づき、独立行政法人がその会計を処理するに当たって従わなければならない基準とされている。そして、独立行政法人は、国から運営費交付金を受領したときは、その相当額を運営費交付金債務として負債に計上することとなっていて、その後、業務の進行に応じて負債から収益に振り替えることなどとなっている(以下、運営費交付金債務を運営費交付金収益に振り替えることを「収益化」といい、収益化に係る基準を「収益化基準」という。)。また、独立行政法人制度創設時の制度では、独立行政法人は、中期目標期間の最終事業年度以外の事業年度に、損益計算において利益が生じたときは、当該利益のうち、独立行政法人の経営努力として主務大臣が承認(以下、主務大臣の承認を「経営努力認定」という。)した利益を目的積立金として積み立て、中期計画に記載した使途に使用することができることとなっていた。そして、中期目標期間の最終事業年度末には運営費交付金債務を全て収益化し、これにより生じた利益も含めて最終事業年度における当期未処分利益は全て積立金に振り替えることとなっていた。

(2) 独立行政法人改革等に至るまでの経緯

政府は、内閣に設置された行政改革推進本部の下、行政改革推進会議における議論を踏まえ、「独立行政法人改革等に関する基本的な方針」(平成25年12月閣議決定。以下「基本的な方針」という。)を決定した。基本的な方針によれば、独立行政法人改革等の目的は、独立行政法人制度を導入した本来の趣旨にのっとり、主務大臣から与えられた明確なミッションの下で、独立行政法人の長(以下「法人の長」という。)のリーダーシップに基づく自主的・戦略的な運営、適切なガバナンスにより、国民に対する説明責任を果たしつつ、独立行政法人の政策実施機能の最大化を図るとともに、官民の役割分担の明確化、民間能力の活用等により官の肥大化防止・スリム化を図ることとされている。

(3) 独立行政法人改革等の概要

基本的な方針に沿った独立行政法人改革等(以下「独立行政法人改革等」という。)を進めるために、「独立行政法人通則法の一部を改正する法律」(平成26年法律第66号。以下「改正法」という。)が26年6月に公布され、27年4月から施行された(以下、改正法による改正後の通則法を「改正通則法」といい、改正前の通則法を「旧通則法」という。)。また、基本的な方針を踏まえ、会計基準研究会等における議論を経て、「独立行政法人会計基準の改訂について」(平成27年1月独立行政法人会計基準研究会、財政制度等審議会財政制度分科会法制・公会計部会了承。以下「「会計基準の改訂について」」という。)が公表され、同年1月に会計基準が改訂された(以下、改訂された会計基準を「改訂会計基準」という。)。さらに、同年3月及び28年2月に会計基準Q&Aが改訂された(以下、改訂された会計基準Q&Aを「改訂会計基準Q&A」という。)。

そして、前記の目的を達成するために、独立行政法人改革等においては、次のような措置を講ずることとされた。

ア 独立行政法人の事務及び事業の特性に応じた分類を踏まえた主務大臣の目標策定及び評価並びにセグメント情報の評価への活用

改正通則法では、独立行政法人の政策実施機能の強化を図り、適切なガバナンスを構築していくために、独立行政法人の事務及び事業の特性に応じ、業務に係る成果の最大化や質の向上に必要な目標管理の仕組みの在り方、業務運営における独立行政法人の裁量と国の関与の程度等を基に、独立行政法人を中期目標管理法人、国立研究開発法人及び行政執行法人の三つ(以下「3分類」という。)に分類することとなった。

主務大臣は、3分類に応じて、中期目標管理法人においては中期目標を、国立研究開発法人においては中長期目標を、行政執行法人においては年度目標(以下、これらを合わせて「中期目標等」という。)をそれぞれ策定することとされた。また、独立行政法人が政策実施機能を発揮する上で、主務大臣の下での政策のPDCA(Plan(計画)―Do(実行)―Check(評価)―Action(改善))サイクルの機能の強化を図るために、主務大臣が毎事業年度又は中期目標等の期間における独立行政法人の業務の実績を自ら評価(以下「主務大臣評価」という。)することで、目標及び評価の一貫性及び実効性を向上させることとされた。そして、主務大臣評価の客観性や政府全体としての評価等との整合性を確保するために、総務省に置かれた内閣総理大臣が任命する委員から成る独立行政法人評価制度委員会が外部から点検する仕組みが導入された。

また、改正通則法により、総務大臣は、26年9月に、「独立行政法人の目標の策定に関する指針」(平成26年9月総務大臣決定。以下「目標指針」という。)及び「独立行政法人の評価に関する指針」(平成26年9月総務大臣決定。以下「評価指針」という。)を策定して主務大臣に通知している。改正通則法においては、中期目標等には、「国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項」(国立研究開発法人は「研究開発の成果の最大化その他の業務の質の向上に関する事項」。以下、「国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項」と合わせて「「業務の質の向上に関する事項」」という。)等の四つの事項等を定めることとなっている。そして、目標指針によれば、主務大臣は、国民に対する説明責任を果たす観点、適正かつ厳正な評価に資する観点、さらに、国立研究開発法人については研究開発成果の最大化の観点から、「業務の質の向上に関する事項」については、「一定の事業等のまとまり」(独立行政法人の内部管理の観点や財務会計との整合性を確保した上で少なくとも、目標及び評価において一貫した管理責任を徹底し得る単位とされており、具体的には主要な事業ごとの単位、事業部単位、目標に対応したプログラム単位等)ごとに中期目標等の項目を設定することとされている。

評価指針によれば、主務大臣は、原則、中期目標等を設定した項目を評価単位として評価を実施することとしつつ、その際に細分化した単位で評価を行うことは妨げないとされている。そして、主務大臣評価に当たっては、独立行政法人が自ら評価を行った結果を明らかにした報告書(以下「自己評価書」といい、独立行政法人が自ら行った評価を「自己評価」という。)を十分に活用するとされている。また、独立行政法人は、自己評価書の作成に当たって、評価において十分に説明し得るよう「可能な限り最小の単位」(国立研究開発法人は「目標に応じたマネジメントに係る実効的な単位」。以下同じ。)で評価を行うこと、「当該自己評価を適正に行うための評価単位を統合したものが主務大臣が行う評価単位と整合するよう留意する」ことなどに努め、主務大臣評価の円滑化に資することとされた。その後、31年3月に評価指針が改定され、中期目標管理法人及び行政執行法人については、「可能な限り最小の単位」は「事務・事業の特性に応じて適切な単位」とされるとともに、「当該自己評価を適正に行うための評価単位を統合したものが主務大臣が行う評価単位と整合するよう留意する」は「主務大臣が行う評価にも活用できるよう留意する」とされている。

評価指針によれば、中期目標管理法人及び行政執行法人における主務大臣評価の手法については、定量的な成果実績であるアウトプット情報と資源投入量である財務情報等のインプット情報との対比を行うなどして、効率性の観点からも評価することとされており、その際、できるだけ「一定の事業等のまとまり」ごとの財務情報等を活用することとされている。また、国立研究開発法人については、研究開発活動に係る成果等と財務情報等のインプット情報とを対比させるなどすることとされている。

そして、改訂会計基準第43では、目標策定及び評価に資する情報となる財務情報の有用性をより担保するために、「独立行政法人における開示すべきセグメント情報は、当該法人の中期目標等における一定の事業等のまとまりごとの区分に基づくセグメント情報とする」とされた。これにより、27事業年度以降は、独立行政法人は、セグメントを「一定の事業等のまとまり」ごとに設定することとなっている。

なお、改正法附則第8条において、中期目標管理法人又は国立研究開発法人については、旧通則法に基づき策定された中期目標を改正通則法における中期目標又は中長期目標とみなすとする経過措置(以下「改正法附則第8条に係る経過措置」という。)が規定されている。29事業年度末現在の独立行政法人87法人(注1)のうち、改正法附則第8条に係る経過措置の対象となっているのは34法人となっていて、残りの53法人(注2)は改正通則法に基づく中期目標等が策定されており(以下、この53法人を「改正通則法に基づく中期目標等策定53法人」という。)、新しいセグメント区分によるセグメント情報を開示する改訂会計基準第43の規定が適用されることとなっている。

(以下、各独立行政法人の名称中「独立行政法人」「国立研究開発法人」は記載を省略した。)

(注1)
87法人  国立公文書館、北方領土問題対策協会、日本医療研究開発機構、国民生活センター、情報通信研究機構、統計センター、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(平成31年4月1日以降は、郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構。以下同じ。)、国際協力機構、国際交流基金、酒類総合研究所、造幣局、国立印刷局、国立特別支援教育総合研究所、大学入試センター、国立青少年教育振興機構、国立女性教育会館、国立科学博物館、物質・材料研究機構、防災科学技術研究所、量子科学技術研究開発機構、国立美術館、国立文化財機構、教職員支援機構、科学技術振興機構、日本学術振興会、理化学研究所、宇宙航空研究開発機構、日本スポーツ振興センター、日本芸術文化振興会、日本学生支援機構、海洋研究開発機構、国立高等専門学校機構、大学改革支援・学位授与機構、日本原子力研究開発機構、勤労者退職金共済機構、高齢・障害・求職者雇用支援機構、福祉医療機構、国立重度知的障害者総合施設のぞみの園、労働政策研究・研修機構、労働者健康安全機構、国立病院機構、医薬品医療機器総合機構、医薬基盤・健康・栄養研究所、地域医療機能推進機構、年金積立金管理運用、国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター、農林水産消費安全技術センター、家畜改良センター、農業・食品産業技術総合研究機構、国際農林水産業研究センター、森林研究・整備機構、水産研究・教育機構、農畜産業振興機構、農業者年金基金、農林漁業信用基金、経済産業研究所、工業所有権情報・研修館、産業技術総合研究所、製品評価技術基盤機構、新エネルギー・産業技術総合開発機構、日本貿易振興機構、情報処理推進機構、石油天然ガス・金属鉱物資源機構、中小企業基盤整備機構、土木研究所、建築研究所、海上・港湾・航空技術研究所、海技教育機構、航空大学校、自動車技術総合機構、鉄道建設・運輸施設整備支援機構、国際観光振興機構、水資源機構、自動車事故対策機構、空港周辺整備機構、都市再生機構、奄美群島振興開発基金、日本高速道路保有・債務返済機構、住宅金融支援機構、国立環境研究所、環境再生保全機構、駐留軍等労働者労務管理機構
(注2)
53法人  国立公文書館、日本医療研究開発機構、情報通信研究機構、統計センター、郵便貯金・簡易生命保険管理機構、国際協力機構、国際交流基金、酒類総合研究所、造幣局、国立印刷局、国立特別支援教育総合研究所、大学入試センター、国立青少年教育振興機構、国立女性教育会館、国立科学博物館、物質・材料研究機構、防災科学技術研究所、量子科学技術研究開発機構、国立美術館、国立文化財機構、教職員支援機構、科学技術振興機構、日本原子力研究開発機構、労働政策研究・研修機構、医薬基盤・健康・栄養研究所、年金積立金管理運用、国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター、農林水産消費安全技術センター、家畜改良センター、農業・食品産業技術総合研究機構、国際農林水産業研究センター、森林研究・整備機構、水産研究・教育機構、経済産業研究所、工業所有権情報・研修館、産業技術総合研究所、製品評価技術基盤機構、日本貿易振興機構、土木研究所、建築研究所、海上・港湾・航空技術研究所、海技教育機構、航空大学校、自動車技術総合機構、自動車事故対策機構、住宅金融支援機構、国立環境研究所、駐留軍等労働者労務管理機構

イ 経営努力の促進等に係る取組

会計基準によれば、運営費交付金の会計処理に当たっては、運営費交付金受領時に「運営費交付金債務」として負債に計上し、収益化基準に基づき収益化することとされている。改訂前の会計基準では、収益化基準として、業務達成基準(業務の達成度に応じて収益化を行う基準)、期間進行基準(一定の期間の経過を業務の進行とみなし収益化を行う基準)、費用進行基準(業務と運営費交付金の対応関係を明らかにすることが困難であることなどを理由に対応関係が示されない場合に支出額を限度として収益化を行う基準)の三つの基準が示されている。

そして、独立行政法人の経営改善や合理化努力のインセンティブを最大限機能させるために、基本的な方針においては、①収益化基準については原則として業務達成基準を採用すること、②独立行政法人における管理会計の活用等により自律的マネジメントの実現を図ること、③経営努力認定の要件を緩和することとされた。

改訂会計基準第81において、運営費交付金の収益化基準として、事業年度末時点の業務の進行状況を測定する必要のある業務達成基準の採用を原則とし、収益化基準の単位としての業務(運営費交付金予算が配分され、投入費用の管理を行う単位の業務であり、管理部門の活動を除いたもの。以下「収益化単位の業務」という。)を設定して、収益化単位の業務ごとに業務の進行状況を測定した上で配分された運営費交付金債務を収益化することとされた。また、期間進行基準及び費用進行基準は例外的な方法として限定された場合のみに適用される取扱いとされた。なお、「会計基準の改訂について」において、この改訂会計基準第81の適用については、27事業年度から適用することが原則とされているが、28事業年度から適用することも容認されている(以下、これを「改訂会計基準第81に係る経過措置」という。)。

また、管理会計の活用等による自律的マネジメントに関し、その考え方が「会計基準の改訂について」において、「独立行政法人の会計に管理会計的な発想を取り入れることを検討し、今回の基準及び注解の改訂においては、業務達成基準の原則適用を求めている。業務達成基準を採用するためには、独立行政法人において、収益化単位の業務ごとの見積り費用と実績費用の管理体制を構築することが必要となる。当該管理体制を構築することは、独立行政法人の長による収益化単位の業務ごとの予算と実績の比較分析を通じたPDCAを可能にし、これにより会計情報を用いたマネジメントの実現に貢献するものと考える。」等と示されている。

さらに、経営努力認定に関しては、基本的な方針において、運営費交付金で賄う経費の節減により生じた利益の一定割合(原則として5割)について新たに経営努力として認められることなどとされた。

また、総務省は、各独立行政法人の主務省(内閣府を含む。以下同じ。)に対して「次期中期目標期間への積立金の繰越しについて」(平成26年総管査第227号総務省行政管理局長通知)を発出しており、この中で、次期中期目標又は次期中長期目標の期間へ繰り越す積立金(以下「繰越積立金」という。)に、中期目標又は中長期目標の期間の最終事業年度における経営努力認定に相当する額(以下「経営努力相当額」という。)を含めることができると考えられる旨を通知している。

ウ 内部統制・ガバナンスの強化等

内部統制の取組に関して、改正通則法において、独立行政法人の業務方法書に、役員(監事を除く。)の職務の執行が通則法、個別法又は他の法令に適合することを確保するための体制その他独立行政法人の業務の適正を確保するための体制(以下「内部統制システム」という。)の整備に関する事項を記載しなければならないこととされた。

そして、総務省は、各独立行政法人の主務省に対して「「独立行政法人の業務の適正を確保するための体制等の整備」について」(平成26年総管査第322号総務省行政管理局長通知。以下「体制整備通知」という。)を発出した。この中で、独立行政法人における内部統制とは、「中期目標等に基づき法令等を遵守しつつ業務を行い、独立行政法人のミッションを有効かつ効率的に果たすため、法人の長が法人の組織内に整備・運用する仕組み」であるとしている。また、内部統制の目的を達成するために必要とされる内部統制の基本要素は、①統制環境、②リスクの評価と対応、③統制活動、④情報と伝達、⑤モニタリング、⑥ICT(Information and Communication Technology)への対応の六つであり、これらの要素に対する対応状況が、内部統制が有効に機能しているかどうかの判断基準となるものとしている。

体制整備通知によれば、内部統制の基本要素の6要素を更に細分化するなどした106項目を、各独立行政法人の業務方法書に具体的に記載することとされている(以下、これらの項目を「具体的項目」という。)。ただし、研究開発や子法人に関する具体的項目等の独立行政法人の形態等により記載する必要がないものについては、記載を省略することができることとされている。

そして、改正通則法では、監事機能の強化に関し、監事に対して監査報告の作成義務、事業報告に係る調査権限等が規定された。また、主務大臣は、監事を任命しようとするときは、必要に応じ、公募の活用に努めなければならず、公募によらない場合であっても、透明性を確保しつつ、候補者の推薦の求めその他の適任と認める者を任命するために必要な措置を講ずるよう努めなければならないとされた。

基本的な方針においては、監事の調査権限を明確化するとともに、監事を補佐する体制(以下「監事補佐体制」という。)の整備等、監事の機能の実効性を向上させるための運用面での取組について充実させることにより、監査の質の向上を図ることなどとされた。これを踏まえ、総務省は、各独立行政法人の主務省に対して「独立行政法人の監事の機能強化に伴う措置について」(平成26年総管査第321号総務省行政管理局長通知。以下「監事の機能強化通知」という。)を発出し、主務大臣に対して、可能な限り独立行政法人における監事補佐体制の整備に協力することなどを求めている。

(4) 独立行政法人の統合等

独立行政法人については、13年4月に57法人が設立された後、15年10月に、特殊法人等改革に伴って特殊法人等から移行するなどして31法人が設立されるなどの経緯を経て、26事業年度末現在における独立行政法人の総数は98法人となった。

そして、27事業年度から29事業年度までに更に統合等がなされて、29事業年度末現在では87法人が設置されている。

2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

基本的な方針によれば、独立行政法人改革等の目的は、独立行政法人制度を導入した本来の趣旨にのっとり、主務大臣から与えられた明確なミッションの下で、法人の長のリーダーシップに基づく自主的・戦略的な運営、適切なガバナンスにより、国民に対する説明責任を果たしつつ、独立行政法人の政策実施機能の最大化を図ることなどであるとされている。

上記の目的を達成するために、独立行政法人改革等においては、独立行政法人を事務及び事業の特性に応じて分類した上で主務大臣が中期目標等を策定し、自ら評価を行うこと、中期目標等に定められた「一定の事業等のまとまり」ごとの区分に基づくセグメント情報を作成して評価にセグメント情報を活用すること、運営費交付金の収益化基準を原則、業務達成基準として経営努力の促進を図ること、内部統制・ガバナンスの強化等の業務運営を改善する仕組みを構築することなどとされた。

そして、独立行政法人改革等を進めるために、通則法が改正されるとともに、会計基準等が改訂されている。

そこで、本院は、独立行政法人改革等による制度の見直しに係る主務省及び独立行政法人の対応状況について、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、次の点に着眼して検査した。

ア 独立行政法人が政策実施機能を発揮する上で、主務大臣の下での政策のPDCAサイクルを機能させるための主務大臣の目標策定及び評価の状況並びにセグメント情報等の評価への活用状況はどのようになっているか。

イ 独立行政法人の自律的なマネジメントの実現を図るための管理会計の考え方がどのように取り入れられているか、経営努力の促進等に係る取組はどのようになっているか。

ウ 内部統制システムの整備等及び主務大臣による監事の任命、監事の機能強化等による独立行政法人の内部統制・ガバナンスの強化の状況等はどのようになっているか。

(2) 検査の対象及び方法

29事業年度末現在における各独立行政法人の主務省11府省(注3)及び全87独立行政法人(29事業年度の経常費用の額計16兆4628億余円及び87法人のうち29事業年度に運営費交付金が交付されている74法人に対する運営費交付金交付額計1兆5230億余円)を対象として、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき独立行政法人から提出された財務諸表等のほか、独立行政法人改革等に伴う業務の実施状況等に係る調書等の提出を求めて、これらを分析するとともに、11府省のうち6省(注4)及び87法人のうち39法人(注5)において会計実地検査を行った。

(注3)
11府省  内閣府、総務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省
(注4)
6省  総務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省
(注5)
39法人  国立公文書館、日本医療研究開発機構、国民生活センター、情報通信研究機構、国際交流基金、酒類総合研究所、国立印刷局、国立特別支援教育総合研究所、国立青少年教育振興機構、物質・材料研究機構、量子科学技術研究開発機構、国立美術館、国立文化財機構、教職員支援機構、日本スポーツ振興センター、日本芸術文化振興会、国立高等専門学校機構、日本原子力研究開発機構、労働政策研究・研修機構、国立病院機構、医薬品医療機器総合機構、医薬基盤・健康・栄養研究所、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、農林水産消費安全技術センター、農業・食品産業技術総合研究機構、森林研究・整備機構、水産研究・教育機構、工業所有権情報・研修館、製品評価技術基盤機構、海技教育機構、航空大学校、自動車技術総合機構、国際観光振興機構、水資源機構、国立環境研究所、駐留軍等労働者労務管理機構

3 検査の状況

(1) 主務大臣の目標策定及び評価の状況並びにセグメント情報等の評価への活用状況

ア 評価単位とセグメントの対応状況

評価に財務情報であるセグメント情報を活用させるなどのために、目標指針において「一定の事業等のまとまり」ごとに目標を策定して評価を実施することとされた。また、会計基準において開示すべきとされたセグメント情報は、改訂前の会計基準では各独立行政法人において個々に定めるとされていたのに対し、改訂会計基準においては、目標策定及び評価に資する情報となる財務情報の有用性をより担保するために、開示すべきセグメント情報は、「一定の事業等のまとまり」ごとの区分に基づくものとされた。これにより、独立行政法人改革等による制度の見直し後は、評価単位(中期目標等を設定した項目を細分化して評価を行っている場合は、中期目標等を設定した項目)とセグメントが対応することになった。

そこで、改正通則法に基づく中期目標等策定53法人の29事業年度の自己評価及び主務大臣評価における評価単位とセグメントの対応状況をみると、49法人においては評価単位とセグメントが全て対応していたものの、4法人(注6)においてはこれらの一部又は全部が対応していなかった。

(注6)
4法人  国立青少年教育振興機構、国立美術館、教職員支援機構、医薬基盤・健康・栄養研究所

なお、国立青少年教育振興機構、国立美術館及び教職員支援機構は、本院の検査を踏まえて、30事業年度の財務諸表からセグメントを「一定の事業等のまとまり」に対応できるよう、セグメントの設定の見直しを図るとしている。また、医薬基盤・健康・栄養研究所は、29年3月に、会計検査院法第30条の2の規定に基づき、国会及び内閣に対して報告した「国立研究開発法人における研究開発の実施状況について」における本院の所見を踏まえて、令和4事業年度から始まる次期中長期目標期間からセグメントを評価単位と対応させるとしている。

イ 「一定の事業等のまとまり」の単位と評価を行った単位の状況

評価指針によれば、主務大臣評価は、独立行政法人が作成した自己評価書を十分に活用して行うとともに、中期目標等を設定した項目を細分化した単位で評価を行うことは妨げないとされている。そして、独立行政法人は、自己評価書の作成に当たっては、可能な限り最小の単位で評価を行うこと、当該単位を統合したものが主務大臣が行う評価単位と整合するよう留意することなどに努めるとされた。その後、平成31年3月に評価指針が改定され、中期目標管理法人及び行政執行法人については、事務・事業の特性に応じた適切な単位で評価を行い、主務大臣が行う評価にも活用できるよう留意することなどに努めるとされている。

そこで、改正通則法に基づく中期目標等策定53法人のうち、「一定の事業等のまとまり」と評価単位が対応していない医薬基盤・健康・栄養研究所を除いた52法人について、29事業年度の自己評価及び主務大臣評価における評価単位の状況をみると、一部又は全部の「一定の事業等のまとまり」を細分化した単位で評価を行っている独立行政法人は、自己評価において25法人、主務大臣評価において23法人となっていた。

そして、自己評価において「一定の事業等のまとまり」を細分化した単位で評価を行っている25法人について、細分化した単位での評価だけでなく「一定の事業等のまとまり」の単位での評価も行っているかをみると、評価を行っている独立行政法人が4法人ある一方で、行っていない独立行政法人が21法人(注7)となっていた。

また、主務大臣評価において「一定の事業等のまとまり」を細分化した単位で評価を行っている23法人については、「一定の事業等のまとまり」の単位での評価も行っている独立行政法人が4法人ある一方で、行っていない独立行政法人が19法人(注8)となっていた。

そして、この19法人の「一定の事業等のまとまり」を細分化した単位での主務大臣評価に係る評定をみると、それぞれの評定に異なる評定が混在(例えば、「一定の事業等のまとまり」を五つに細分化していて、それぞれの評定が「B」「A」「S」「A」「A」になっているなど)しているなどのため、「一定の事業等のまとまり」の単位での評定が分からない状況となっていた。

(注7)
21法人  国立公文書館、国際協力機構、酒類総合研究所、造幣局、国立印刷局、国立女性教育会館、国立科学博物館、物質・材料研究機構、防災科学技術研究所、国立美術館、国立文化財機構、労働政策研究・研修機構、年金積立金管理運用、農業・食品産業技術総合研究機構、国際農林水産業研究センター、森林研究・整備機構、海技教育機構、航空大学校、自動車技術総合機構、自動車事故対策機構、国立環境研究所
(注8)
19法人  国立公文書館、国際協力機構、酒類総合研究所、造幣局、国立印刷局、大学入試センター、物質・材料研究機構、防災科学技術研究所、国立美術館、国立文化財機構、労働政策研究・研修機構、年金積立金管理運用、農業・食品産業技術総合研究機構、国際農林水産業研究センター、森林研究・整備機構、海技教育機構、航空大学校、自動車技術総合機構、自動車事故対策機構

ウ 主務大臣評価におけるセグメント情報等の活用状況

評価指針によれば、主務大臣は、「一定の事業等のまとまり」ごとのインプット情報に係るセグメント情報等を活用し、中期目標管理法人及び行政執行法人について、定量的な成果実績であるアウトプット情報と資源投入量である財務情報等のインプット情報との対比を行うことなどにより、また、国立研究開発法人について、研究開発活動に係る成果等とインプット情報との対比を行うことなどにより、効率性の観点等からも評価を行うなどして評価の実効性を確保することとされている。そして、主務大臣は、主務大臣評価において、目標・計画(予算)と実績(決算)の差異が生じたことの要因分析を実施することとされている。

そこで、インプット情報が評価に活用されているかをみるために、改正通則法に基づく中期目標等策定53法人から前記の評価単位とセグメントが対応していない4法人を除いた49法人に係る29事業年度の主務大臣評価において評定を付している項目のうち、「一定の事業等のまとまり」の単位での評価を行っていて、評価項目がセグメントと対応している38法人172項目の主務大臣評価の評価書(以下「主務大臣評価書」という。)のインプット情報についてみると、予算額の記載がないため、決算額と予算額の対比ができない項目が3法人(注9)8項目あった。

また、改訂会計基準Q&Aにおいて決算報告書の決算額が予算額に対して10%以上増減した場合を著しいかい離としていることを踏まえ、決算額が予算額に対して10%以上増減している項目をみたところ、上記の3法人8項目を除いた35法人164項目のうち24法人(注10)49項目において10%以上の増減が見受けられた。そして、これらの項目のインプット情報についてみると、評定の根拠を記載する欄等に、決算額と予算額の差異の理由を踏まえた評価等の明確な記載が見受けられず、インプット情報を主務大臣評価に活用しているかが確認できない状況となっていた。この中には、決算額が予算額に対して1.5倍以上となっており、当初の計画に比べて「一定の事業等のまとまり」に係る支出額が大幅に増加している項目も7法人7項目含まれていた。

(注9)
3法人  郵便貯金・簡易生命保険管理機構、大学入試センター、国立女性教育会館
(注10)
24法人  日本医療研究開発機構、情報通信研究機構、統計センター、国際協力機構、国際交流基金、国立特別支援教育総合研究所、国立科学博物館、量子科学技術研究開発機構、日本原子力研究開発機構、国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立長寿医療研究センター、家畜改良センター、農業・食品産業技術総合研究機構、水産研究・教育機構、経済産業研究所、産業技術総合研究所、製品評価技術基盤機構、日本貿易振興機構、土木研究所、海上・港湾・航空技術研究所、住宅金融支援機構

さらに、前記の49法人について、主務大臣評価書に記載されているインプット情報に、評価単位に対応するセグメント情報等の数値が適切に記載されているかをみると、計数の転記誤りなどにより差異が生じている項目が、3法人(注11)3項目において見受けられた。

(注11)
3法人  情報通信研究機構、日本原子力研究開発機構、海技教育機構

(2) 経営努力の促進等に係る取組状況

ア 業務達成基準を採用したことによる運営費交付金の収益化等の状況

運営費交付金の交付を受けている74法人の運営費交付金の交付状況をみると、29事業年度に運営費交付金の交付を受けた額は、計1兆5230億余円となっていた。

上記の74法人について、改訂会計基準の適用前後における収益化基準の採用状況をみると、改訂会計基準適用前の26事業年度は、50法人において全ての業務で費用進行基準を採用していた。これに対し、改訂会計基準適用直後の27事業年度は、全ての業務で期間進行基準を採用していた1法人を除く49法人において改訂会計基準第81に係る経過措置を適用して全ての業務で費用進行基準を採用していた。そして、改訂会計基準第81に係る経過措置適用終了後の28、29両事業年度は、上記の1法人を除く73法人において、少なくとも一部の業務を除き業務達成基準を採用していた。

また、業務達成基準を採用していた上記の73法人における収益化単位の業務ごとの業務完了の考え方や業務の進行状況の測定方法について、各独立行政法人の規程、通知、マニュアル等(以下「規程等」という。)により明文化されているかをみると、31法人(注12)においては明文化されていなかった。なお、上記31法人のうち6法人(注13)は、本院の検査を踏まえて、令和元年5月末までに、規程等により明文化している。

(注12)
31法人  国立公文書館、北方領土問題対策協会、日本医療研究開発機構、国民生活センター、情報通信研究機構、国立特別支援教育総合研究所、国立青少年教育振興機構、国立女性教育会館、防災科学技術研究所、国立文化財機構、教職員支援機構、日本スポーツ振興センター、日本芸術文化振興会、大学改革支援・学位授与機構、高齢・障害・求職者雇用支援機構、国立重度知的障害者総合施設のぞみの園、労働政策研究・研修機構、労働者健康安全機構、医薬品医療機器総合機構、医薬基盤・健康・栄養研究所、国際農林水産業研究センター、経済産業研究所、工業所有権情報・研修館、新エネルギー・産業技術総合開発機構、土木研究所、建築研究所、海上・港湾・航空技術研究所、海技教育機構、自動車技術総合機構、国際観光振興機構、駐留軍等労働者労務管理機構
(注13)
6法人  国立公文書館、国立特別支援教育総合研究所、防災科学技術研究所、高齢・障害・求職者雇用支援機構、工業所有権情報・研修館、国際観光振興機構

上記73法人の平成29事業年度における業務達成基準による運営費交付金収益への振替額及び業務達成基準を採用していた業務に係る運営費交付金債務の繰越しの状況をみると、73法人の業務達成基準による運営費交付金収益への振替額は計1兆2963億余円であり、うち42法人は、業務達成基準を採用していた業務において業務が未了であると判定したものがあったことから、当該業務に係る運営費交付金債務計1276億余円が30事業年度に繰り越されていた。また、29事業年度末において、上記の42法人に係る収益化単位の業務における業務の進行状況を測定する指標をみると、当該事業年度に業務が実施されていないなどにより運営費交付金配分額全額を翌事業年度に繰り越している業務を除き、全ての業務において投入費用が指標として設定されていた。そして、当該法人は、当該事業年度における当該収益化単位の業務に対する運営費交付金配分額から当該収益化した額を差し引いた残りを運営費交付金債務として翌事業年度に繰り越していた。

イ 法人の長における収益化単位の業務ごとの財務情報の把握状況

 「会計基準の改訂について」によれば、業務達成基準を採用するに当たり収益化単位の業務ごとの見積費用と実績費用の管理体制を構築することは、会計情報を用いたマネジメントの実現に貢献するものと考えるとされている。

そこで、29事業年度において、業務達成基準を採用していた73法人について、法人の長における事業年度途中の収益化単位の業務ごとの予算と実績等の財務情報の把握の状況をみると、57法人では、法人の長において事業年度途中における収益化単位の業務ごとの財務情報を把握していた。

一方、16法人(注14)では、法人の長において事業年度途中における収益化単位の業務ごとの財務情報を把握していなかった。なお、このうち2法人(注15)は、本院の検査を踏まえて、30事業年度から、法人の長が事業年度途中における収益化単位の業務ごとの財務情報を把握することとしている。

(注14)
16法人  日本医療研究開発機構、情報通信研究機構、国立青少年教育振興機構、国立女性教育会館、教職員支援機構、国立高等専門学校機構、日本原子力研究開発機構、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立長寿医療研究センター、森林研究・整備機構、海技教育機構、航空大学校、自動車技術総合機構、国際観光振興機構
(注15)
2法人  情報通信研究機構、国立循環器病研究センター

ウ 経営努力認定の状況

中期計画等に剰余金の使途が記載されている71法人の27事業年度から29事業年度までの当期総利益及び当期未処分利益の状況をみると、29事業年度は71法人のうち58法人が当期総利益計5929億余円を計上し、このうち55法人が当期未処分利益計5442億余円を計上していた。

また、27事業年度から29事業年度までに当期未処分利益を計上している独立行政法人のうち、翌事業年度に経営努力として認定された額(以下「経営努力認定額」という。)を目的積立金に計上したり経営努力相当額を繰越積立金に含めて計上したりしている独立行政法人の割合の推移をみると、27事業年度7.5%、28事業年度15.2%、29事業年度21.8%と年々増加しており、また、これらの独立行政法人のうち、経営努力認定額及び経営努力相当額に運営費交付金で賄う経費の節減分が含まれる独立行政法人の割合の推移をみると、27事業年度は該当する独立行政法人がなく、28事業年度44.4%、29事業年度75.0%と同様に増加していた。

(3) 内部統制・ガバナンスの強化等の状況

ア 内部統制システムの整備状況

改正通則法において、独立行政法人は、内部統制システムの整備に関する事項を業務方法書に記載しなければならないこととなっている。

検査の対象とした全87法人(26事業年度末時点では、27年4月に設立された日本医療研究開発機構を除く86法人)について、改正法施行前の26事業年度末時点及び施行後の29事業年度末時点における106の具体的項目の業務方法書への記載状況をみると、26事業年度末時点においては、いずれの具体的項目も記載していない独立行政法人が66法人と全体の76.7%を占めていたが、29事業年度末時点では皆無となっていた。そして、29事業年度末時点では、全体の41.3%を占める36法人は、上記106の具体的項目のうち、独立行政法人の形態等により記載する必要のない具体的項目を除いた全ての具体的項目を業務方法書へ記載していた。一方で、全体の58.6%を占める51法人は、独立行政法人の形態等により記載する必要のない具体的項目以外にも業務方法書へ記載していない具体的項目が見受けられた。

そして、29事業年度末時点において、業務方法書に記載されていない具体的項目がある51法人のうち46法人は、その理由について、既に法人の規程等が整備されており業務方法書への記載は必要ないためであるなどとしていた。一方、51法人のうち8法人(注16)は、業務方法書への記載を現在検討中であるとしていた具体的項目があった。

(注16)
8法人  酒類総合研究所、国立特別支援教育総合研究所、国立女性教育会館、国立美術館、医薬基盤・健康・栄養研究所、国立成育医療研究センター、海技教育機構、自動車事故対策機構

また、監事によるモニタリングに必要な措置に係る具体的項目の業務方法書への記載状況をみると、該当する全ての具体的項目を業務方法書に記載していた独立行政法人は、26事業年度末においては皆無であったが、29事業年度末においては84法人となっていた。

そして、これらの具体的項目が業務方法書等に記載されたことによって監事のモニタリングの実施に影響があったとしている独立行政法人は、具体的項目ごとに11法人から27法人までとなっていて、監事によるモニタリングに必要な措置に係る具体的項目が独立行政法人の業務方法書等に記載されたことによる一定の効果が見受けられた。一方、監事のモニタリングの実施に影響がなかったとしている独立行政法人は、具体的項目ごとに60法人から76法人までとなっていて、その理由について、業務方法書等に記載された事項については従来行っていたためであるなどとしていた。

イ 内部統制の取組状況

体制整備通知では、具体的項目の一つとして、WBS(Work Breakdown Structuresの略称であり、体制整備通知によれば、プロジェクト全体を細かい作業に分割した構成図のこと)等の手法を用いた業務部門ごとの業務フローの認識及び明確化が示されていることから、全87法人における29事業年度末現在のWBS等の手法を用いた業務部門ごとの業務フローの認識及び明確化の状況をみると、業務フローの認識及び明確化を行ったとしている独立行政法人は71法人となっていた。一方、WBS等の手法を用いて業務フローの認識及び明確化を行っていなかったとしている独立行政法人は16法人(注17)となっており、その理由については、WBS等の手法を用いて業務フローの認識及び明確化をどのように行えばよいか分からなかったり、組織規模が小さいため業務フローの認識及び明確化をしなくても柔軟で効率的な対応ができると判断したりしたためであるなどとしていた。

(注17)
16法人  国立公文書館、国立特別支援教育総合研究所、国立青少年教育振興機構、国立女性教育会館、国立美術館、教職員支援機構、日本芸術文化振興会、国立高等専門学校機構、国立重度知的障害者総合施設のぞみの園、医薬基盤・健康・栄養研究所、地域医療機能推進機構、国立精神・神経医療研究センター、国立長寿医療研究センター、森林研究・整備機構、情報処理推進機構、海上・港湾・航空技術研究所

そして、各独立行政法人における29事業年度末のリスクの識別から対応まで(独立行政法人のミッション遂行の障害となるものをリスクと位置付け、それらを網羅的に洗い出す「リスクの識別」から、識別されたリスクが顕在化した場合の影響度及び発生可能性を評価し、それらを勘案して重要度の高いリスクを把握する「リスクの評価」を行い、対応すべきリスクを決定し、職員・部署が行うべき対応等について示した対応計画(以下「リスク対応計画」という。)を策定する「リスクへの対応」を行うことまで)に係る2項目の業務方法書への記載状況についてみると、全87法人で2項目とも記載されており、リスクの識別から対応までについて取り組むことが定められていた。

しかし、全87法人の29事業年度末現在におけるリスクの識別から対応までに係る2項目の進捗状況(注18)についてみると、リスクの識別の作業が未着手の段階の独立行政法人(以下「未着手段階法人」という。)が5法人(注19)、リスクの識別から対応までの作業を行っている途中段階の独立行政法人(以下「途中段階法人」という。)が21法人(注20)、リスクの識別から対応までを行い、リスク対応計画を策定し、当該計画を基に統制活動を行い、モニタリングが実施できる段階の独立行政法人(以下「実施段階法人」という。)が61法人となっていた。また、リスクの識別から対応までが完了していない理由をみたところ、未着手段階法人においては、全ての独立行政法人で、リスクの識別から対応までをいつから実施して、いつまでに終わらせるかなどの計画を作成していないとしており、途中段階法人においては、作業に従事する職員が足りず、作業が停滞したとしている独立行政法人(21法人中15法人)が最も多くなっていた。

なお、本院の検査を踏まえて、上記の未着手段階法人5法人のうち、1法人(工業所有権情報・研修館)については令和元年5月末までにモニタリングが実施できる段階まで作業を進めたとしていて、3法人(注21)については同月末までにリスクの識別から対応までに係る作業に着手したとしている。また、途中段階法人21法人のうち、6法人(注22)については同月末までにモニタリングが実施できる段階まで作業を進めたとしている。

(注18)
防災業務計画や事業継続計画等の事故・災害等の緊急時に関する具体的項目に係る計画については、これらの計画そのものをリスクの識別とすると全ての独立行政法人でリスクの識別が行われていることとなるため、これらについては除外している。
(注19)
5法人  国立青少年教育振興機構、日本芸術文化振興会、国立がん研究センター、国立長寿医療研究センター、工業所有権情報・研修館
(注20)
21法人  国立公文書館、北方領土問題対策協会、酒類総合研究所、大学入試センター、国立女性教育会館、防災科学技術研究所、国立美術館、国立文化財機構、教職員支援機構、国立高等専門学校機構、労働者健康安全機構、国立病院機構、医薬品医療機器総合機構、医薬基盤・健康・栄養研究所、国立循環器病研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、日本貿易振興機構、航空大学校、自動車技術総合機構、奄美群島振興開発基金
(注21)
3法人  国立青少年教育振興機構、日本芸術文化振興会、国立がん研究センター
(注22)
6法人  労働者健康安全機構、国立病院機構、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、日本貿易振興機構、自動車技術総合機構

ウ 監事の機能強化等の状況

前記のとおり、改正通則法では、主務大臣は、監事を任命しようとするときは、必要に応じ、公募の活用に努めなければならず、公募によらない場合であっても、透明性を確保しつつ、候補者の推薦の求めその他の適任と認める者を任命するために必要な措置を講ずるよう努めなければならないとする監事の任命方法に係る規定が追加され、また、監事補佐体制について、監事の機能強化通知が発出されている。

改正法施行後の平成28事業年度又は29事業年度に任期が開始した66法人延べ130人の監事のうち73人は再任された者であり、初めて任命された者(前回の任期末から期間をおいて任命された者を含む。以下同じ。)は57人となっていた。そして、初めて任命された57人について任命状況をみると、公募によらない場合としている割合は96.4%となっており、このうち外部有識者の意見を聴取するなどの方法により任命したとしている「推薦以外」の割合が高くなっていた。

また、任命された監事の経歴についてみると、常勤監事は民間企業出身者が、非常勤監事は公認会計士・税理士の占める割合が、それぞれ高くなっていた。

そして、全87法人について、監事の人数及び常勤・非常勤の構成をみると、27年4月に設立された日本医療研究開発機構を除いた86法人について改正法施行前の26事業年度末の状況と施行後の29事業年度末における状況を比較すると、監事の人数、構成に変化があったのは4法人となっていて、残りの82法人において変化は見受けられなかった。

また、全87法人の監事補佐体制についてみると、26事業年度末に対して29事業年度末に監事を補助する専属の職員が改正法の施行等に伴い増加したとしている独立行政法人(16法人21人増)がある一方で、組織又は業務の見直しにより減少したとしている独立行政法人(3法人3人減)も見受けられた。

そして、29事業年度末に監事を補助する専属の職員が皆無であるとしている独立行政法人は64法人(この中には、役職員数が1,000人以上である24法人のうち13法人が含まれている。)となっていて、多くの独立行政法人が監事の補助業務と内部監査業務を兼務する職員を配置していた。

4 所見

(1) 検査の状況の概要

ア 主務大臣の目標策定及び評価の状況並びにセグメント情報等の評価への活用状況

(ア) 評価単位とセグメントの対応状況

改正通則法に基づく中期目標等策定53法人の29事業年度の自己評価及び主務大臣評価における評価単位とセグメントの対応状況をみると、4法人においてはこれらの一部又は全部が対応していなかった。

(イ) 「一定の事業等のまとまり」の単位と評価を行った単位の状況

改正通則法に基づく中期目標等策定53法人のうち、29事業年度の自己評価において「一定の事業等のまとまり」を細分化した単位で評価を行っている25法人について、細分化した単位での評価だけでなく「一定の事業等のまとまり」の単位での評価も行っているかをみると、行っていない独立行政法人が21法人となっていた。また、29事業年度の主務大臣評価において「一定の事業等のまとまり」を細分化した単位で評価を行っている23法人については、「一定の事業等のまとまり」の単位での評価を行っていない独立行政法人が19法人となっていた。

(ウ) 主務大臣評価におけるセグメント情報等の活用状況

改正通則法に基づく中期目標等策定53法人から前記の評価単位とセグメントが対応していない4法人を除いた49法人に係る29事業年度の主務大臣評価において評定を付している項目のうち、「一定の事業等のまとまり」の単位での評価を行っていて、評価項目がセグメントと対応している38法人172項目の主務大臣評価書のインプット情報についてみると、予算額の記載がないため、決算額と予算額の対比ができない項目が3法人8項目あった。上記の3法人8項目を除いた35法人164項目のうち、決算額が予算額に対して10%以上増減している24法人49項目のインプット情報についてみると、評定の根拠を記載する欄等に、決算額と予算額の差異の理由を踏まえた評価等の明確な記載が見受けられず、インプット情報を主務大臣評価に活用しているかが確認できない状況となっていた。さらに、上記の49法人のうち、主務大臣評価書に記載されているインプット情報に、計数の転記誤りなどにより差異が生じている項目が、3法人3項目において見受けられた。

イ 経営努力の促進等に係る取組状況

(ア) 業務達成基準を採用したことによる運営費交付金の収益化等の状況

業務達成基準を採用していた73法人における収益化単位の業務ごとの業務完了の考え方や業務の進行状況の測定方法について、各独立行政法人の規程等により明文化されているかをみると、31法人においては、明文化されていなかった。また、上記73法人のうち42法人は、29事業年度に業務達成基準を採用していた業務に係る運営費交付金債務を30事業年度に繰り越しており、当該42法人に係る収益化単位の業務における業務の進行状況を測定する指標をみると、運営費交付金配分額全額を翌事業年度に繰り越している業務を除き、全ての業務において投入費用が指標として設定されていた。そして、当該法人は、当該事業年度における当該収益化単位の業務に対する運営費交付金配分額から当該収益化した額を差し引いた残りを運営費交付金債務として翌事業年度に繰り越していた。

(イ) 法人の長における収益化単位の業務ごとの財務情報の把握状況

29事業年度において、上記73法人のうち16法人では、法人の長において事業年度途中における収益化単位の業務ごとの財務情報を把握していなかった。

(ウ) 経営努力認定の状況

経営努力認定額を目的積立金に計上したり経営努力相当額を繰越積立金に含めて計上したりしている独立行政法人の割合や、経営努力認定額及び経営努力相当額に運営費交付金で賄う経費の節減分が含まれる独立行政法人の割合が年々増加していた。

ウ 内部統制・ガバナンスの強化等の状況

(ア) 内部統制システムの整備状況

全87法人の29事業年度末時点における体制整備通知において業務方法書に具体的に記載することとされている106の具体的項目の業務方法書への記載状況をみると、51法人は、業務方法書へ記載していない具体的項目が見受けられ、うち46法人は、その理由について、既に規程等が整備されており必要ないためであるなどとしていた。一方、51法人のうち8法人は、業務方法書への記載を現在検討中であるとしていた具体的項目があった。

また、監事によるモニタリングに必要な措置に係る具体的項目の業務方法書への記載状況をみると、該当する全ての具体的項目を業務方法書に記載していた独立行政法人は、29事業年度末においては84法人となっていた。

(イ) 内部統制の取組状況

全87法人における29事業年度末現在のWBS等の手法を用いた業務部門ごとの業務フローの認識及び明確化の状況をみると、WBS等の手法を用いて業務フローの認識及び明確化を行っていなかったとしている独立行政法人は16法人となっていた。

また、各独立行政法人における29事業年度末のリスクの識別から対応までに係る2項目の業務方法書への記載状況についてみると、全87法人で2項目とも記載されており、リスクの識別から対応までについて取り組むことが定められていたが、全87法人の29事業年度末現在におけるリスクの識別から対応までに係る2項目の進捗状況についてみると、未着手段階法人が5法人、途中段階法人が21法人、実施段階法人が61法人となっていた。

(ウ) 監事の機能強化等の状況

28事業年度又は29事業年度に任期が開始した66法人延べ130人の監事のうち73人は再任された者であり、初めて任命された者は57人となっていた。そして、初めて任命された57人について任命状況をみると、公募によらない場合としている割合は96.4%となっており、このうち推薦以外によるとしている割合が高くなっていた。また、任命された監事の経歴についてみると、常勤監事は民間企業出身者が、非常勤監事は公認会計士・税理士の占める割合が、それぞれ高くなっていた。そして、27年4月に設立された日本医療研究開発機構を除いた86法人について改正法施行前の26事業年度末の状況と施行後の29事業年度末における状況を比較すると、監事の人数、構成に変化があったのは4法人となっていた。

また、全87法人の監事補佐体制は、26事業年度末に対して29事業年度末に監事を補助する専属の職員が改正法の施行等に伴い増加したとしている独立行政法人がある一方で、組織又は業務の見直しにより減少したとしている独立行政法人も見受けられ、29事業年度末に監事を補助する専属の職員が皆無であるとしている独立行政法人は64法人となっていて、多くの独立行政法人が監事の補助業務と内部監査業務等を兼務する職員を配置していた。

(2) 所見

基本的な方針によれば、独立行政法人改革等の目的は、独立行政法人制度を導入した本来の趣旨にのっとり、主務大臣から与えられた明確なミッションの下で、法人の長のリーダーシップに基づく自主的・戦略的な運営、適切なガバナンスにより、国民に対する説明責任を果たしつつ、独立行政法人の政策実施機能の最大化を図ることなどであるとされている。

上記の目的を達成するために、独立行政法人改革等においては、独立行政法人を事務及び事業の特性に応じて分類した上で主務大臣が中期目標等を策定し、自ら評価を行うこと、中期目標等に定められた「一定の事業等のまとまり」ごとの区分に基づくセグメント情報を作成して評価にセグメント情報を活用すること、運営費交付金の収益化基準を原則、業務達成基準として経営努力の促進を図ること、内部統制・ガバナンスの強化等の業務運営を改善する仕組みを構築することなどが求められている。

そして、独立行政法人改革等を進めるために、通則法が改正されるとともに、会計基準等が改訂されている。

したがって、主務省及び独立行政法人は、独立行政法人が効果的かつ効率的に業務運営を行うという理念の下、制度導入の本来の趣旨にのっとり、国民に対する説明責任を果たしつつ、政策実施機能を最大限発揮できるよう、次の点に十分留意することが必要である。

ア 自己評価及び主務大臣評価について

  • (ア) 29事業年度末時点において自己評価及び主務大臣評価における評価単位とセグメントが対応していない独立行政法人について、主務大臣及び独立行政法人においては、セグメントを評価単位である「一定の事業等のまとまり」に対応させることができるように十分に検討した上で、セグメントの設定の見直しを図るなどして、評価単位とセグメントを適切に対応させること
  • (イ) 自己評価において「一定の事業等のまとまり」の単位で評価を行っていない独立行政法人においては、細分化した単位で評価を行う場合であっても、主務大臣評価の円滑化に資するために、評定を付す際には「一定の事業等のまとまり」の単位で評価を行うこと。また、中期目標等に定めた「一定の事業等のまとまり」の単位で主務大臣評価を行っていない主務大臣においては、細分化した単位で評価を行う場合であっても、独立行政法人の評価等にセグメント情報を十分に活用し、独立行政法人が政策実施機能を発揮する上で、主務大臣の下での政策のPDCAサイクルの機能の強化に資するために、中期目標等に定めた「一定の事業等のまとまり」の単位での評価を行うこと
  • (ウ) インプット情報を主務大臣評価に活用しているかが確認できない状況となっている独立行政法人の主務大臣評価書について、主務大臣においては、成果に対して要したインプットに係る評価についても適切に主務大臣評価書に記載し、セグメント情報等を評価にどのように活用しているかが分かるようにするなどして、国民に対する説明責任を果たすとともに、評価の実効性を確保するなどすること。また、主務大臣評価書に記載されているインプット情報が評価単位に対応する適切なセグメント情報等の数値となっていない独立行政法人に対する主務大臣評価書においては、対応するセグメント情報等の数値を適切に記載して、評価を適切に行うこと

イ 経営努力の促進等に係る取組について

  • (ア) 29事業年度末時点において収益化単位の業務ごとの業務完了の考え方や業務の進行状況の測定方法を明文化していない独立行政法人においては、業務達成基準を採用するに当たって、収益化単位の業務ごとの業務完了の考え方や業務の進行状況の測定方法を規程等により明確にすること
  • (イ) 29事業年度末時点において法人の長が事業年度途中における収益化単位の業務ごとの財務情報を把握していない独立行政法人においては、法人の長の事業年度途中における収益化単位の業務ごとの財務情報の把握の必要性等について検討すること

ウ 内部統制・ガバナンスの強化等について

  • (ア) 29事業年度末時点において業務方法書への記載について検討中の具体的項目があるとしている独立行政法人においては、早期に方針を決めて、業務方法書への記載を行うなどの対応を執ること
  • (イ) WBS等の手法を用いて業務フローの認識及び明確化を行っていなかったとしている独立行政法人においては、リスク対応計画の作成や見直しなどの際に、業務ごとにリスクが網羅的に洗い出されるよう、WBS等の手法を用いるなどして業務フローの認識及び明確化を行うことにより、リスクの識別をより効果的に行うことを検討すること
  • (ウ) 29事業年度末時点において未着手段階法人においては、法人の長のリーダーシップの下、早期にリスクの識別から対応までの作業に着手し、途中段階法人においては、モニタリングが実施できる段階まで早期に作業を進めること。また、実施段階法人においては、モニタリングの結果等を踏まえ、目標の設定に反映させていく取組を引き続き適切に実施していくこと
  • (エ) 独立行政法人においては、監事監査の実効性を担保するために、監事の機能強化通知を踏まえ、引き続き監事補佐体制の強化を図ること

本院としては、独立行政法人改革等による制度の見直しに係る主務省及び独立行政法人の対応状況について、今後とも多角的な観点から引き続き注視していくこととする。