繰入率特例は、貸倒実績率と法定繰入率とのいずれか高い率による引当金の繰入れを容認するものであることから、前記のとおり、法人課税小委員会報告において、法人によっては、適正な見込額を超え、過大な引当金の繰入れが行われているおそれがあると指摘されている。法定繰入率は、概算で繰入率を定めているという趣旨からすれば、常に貸倒実績率をしんしゃくしつつ、合理的に測定された適正なものにすることが必要であるとして、制度創設以降、随時、貸倒れの実績率とのかい離がある場合には引下げ等が行われてきたが、図表4のとおり、昭和60年度以降(金融保険業については56年度以降)、法定繰入率の見直しは行われていない。一方、平成元年4月に消費税が導入され、逐次税率が引き上げられる中で、期末一括評価債権額に含まれる損失とならない仮受消費税相当額が拡大していると思料される。
また、割増特例は、昭和41年度に2年間の時限措置として制度が創設されて以降、累次にわたる延長とともに、適用対象法人及び割増率の見直しを経て現在に至っている。そして、前記のとおり、27年度適用実態報告書において、業種別の適用実績(単体法人に限る。)をみると、図表7のとおり、金融保険業の全体に占める割合が、適用額では95.1%となっている。
そこで、会計検査院は、有効性等の観点から、①繰入率特例における繰入限度額は、貸倒実績率等をしんしゃくしつつ、合理的に測定された適正なものとなっているか、②期末一括評価債権額の算出は合理的なものとなっているか、③割増特例は、課税の公平原則に照らして国民の納得できる必要最小限のものとなっているか、④関係省庁及び財務省における中小企業等の貸倒引当金の特例(以下「貸倒引当金の特例」という。)の検証は適切に行われているかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、次の①及び②の法人に係る繰入率特例の適用状況を国税庁及び農林水産省から提出を受けた資料により検査するとともに、③の法人に係る期末一括評価債権額に含まれる仮受消費税相当額等の状況並びに④及び⑤の法人に係る割増特例の適用状況を法人税確定申告書等により検査した(別表参照)。
そして、関係省庁である金融庁、厚生労働省、農林水産省、経済産業省及び国土交通省(以下「5省庁」という。)において、政策評価に係る関係資料や要望書における貸倒引当金の特例の検証状況を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。また、財務省において、貸倒引当金の特例の検証状況を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。