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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成30年12月|

国庫補助金等により地方公共団体等に設置造成された基金について


4 所見

(1) 検査の状況の概要

地方公共団体等に設置造成されている基金は、28年度において、基金法人等に設置造成されている基金の基金数の約3.7倍となっており、基金保有額も依然として多額となっている。そして、基金法人等に設置造成されている基金については、18年度に定められた基金基準に基づくなどして10年以上にわたり見直しが行われており、基金シートを通じた各府省の自己点検等の取組状況は、25年から公表されて明らかとなっている。一方、地方公共団体等に設置造成されている基金については、26年10月の改正政令の施行に伴う見直しや前記の行政事業レビューによる見直しなどが行われており、各府省の自己点検等の取組状況は、30年9月から公表されることとなった。

そこで、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、地方公共団体等に設置造成されている基金について、①地方公共団体等に設置造成された基金の基金数、基金保有額及び基金の運用方法はどのような状況となっているか、②基金事業として実施されている事業が改正適正化令に規定された基金事業としての性質に該当するものとなっているか、基金の基本的事項の公表に係る規定が適切に整備されているかなど、改正適正化令の適用状況等はどのようになっているか、③基金規模はどのような状況となっているか、基金規模の確認は適切に行われているかに着眼して検査を実施した。

ア 地方公共団体等に設置造成された基金の推移等

24年度末から28年度末までの間、地方公共団体等に設置造成されている基金の基金数及び基金保有額は、減少傾向となっているものの、28年度末においても多額の基金が保有されている。また、28年度末対象基金1,463基金のうち、基金保有額を個別に運用しているとしていた753基金について、28年度末における基金の運用方法別の基金保有額の状況をみたところ、その大半が預金や国債等の債券により保有されている状況であり、その他の方法により運用されているものもあるが、基金ごとにみたところ、24年度から28年度までの間の各年度において運用損が生じている状況は見受けられなかった(2009_3_1リンク参照)。

イ 改正適正化令の適用状況等

28年度末対象基金1,463基金を設置造成するために交付された国庫補助金等70補助金について、適用対象補助金と適用対象外補助金に分類すると、適用対象補助金が26補助金、適用対象外補助金が44補助金となっており、28年度末において適用対象外補助金が6割強ある状況となっている(2009_3_2リンク参照)。

(ア) 基金事業としての性質の該当性の状況等

上記の70補助金について、基金事業の性質を分類したところ、①不確実な事故等の発生に応じて資金を交付する事業としているものが14補助金、②資金の回収を見込んで貸付けなどを行う事業としているものが8補助金、③事業の実施が他の事業の進捗に依存する事業としているものが1補助金となっていた。一方、残りの47補助金については、その他の事業となっており、これが全体の7割弱を占める状況となっていた(2009_3_2_1リンク参照)。

上記の47補助金について、交付要綱等に定める対象事業の実施方法により分類したところ、 a「地方公共団体等において基金事業又は単年度型事業を事業内容により選択して実施することとしているもの」が19補助金、b「基金事業のみにより実施することとしているもの」が28補助金となっていた。そして、上記47補助金のうち、農林水産省において、基金によることなく事業を実施することの可否について検討する必要があると考えられるものが、基金事業のみにより実施することとしている国庫補助金等において2補助金見受けられた(2009_3_2_1_aリンク参照)。

(イ) 基金の基本的事項の公表に係る規定の整備状況等

前記の70補助金について、基本的事項の公表に係る規定の整備状況についてみたところ、適用対象補助金26補助金のうち、基本的事項の公表が定められていたものは24補助金となっていた。しかし、厚生労働、経済産業両省において、交付要綱等の改正は不要であると認識していたなどのため、適用対象補助金であるが、交付要綱等において基本的事項の公表が定められていなかったものが2補助金見受けられた。また、適用対象外補助金44補助金については、交付要綱等において基本的事項の公表が定められていたものは22補助金、基本的事項の公表が定められていなかったものは22補助金となっており、適用対象補助金に比べて基本的事項の公表が定められていたものの割合が低く、基金の設置造成時期の違いなどにより、基本的事項の公表に係る規定の整備状況に差が生じている状況となっていた(2009_3_2_2リンク参照)。

さらに、交付要綱等において基本的事項の公表が定められていた46補助金に係る1,018基金について、地方公共団体等における基本的事項の公表状況をみたところ、932基金は、基本的事項が公表されていたものの、残りの86基金は、各府省がホームページで基金の実施状況を公表しているなどとして、地方公共団体等において基本的事項が公表されていなかった。一方、基本的事項の公表が定められていなかった24補助金に係る445基金について、地方公共団体等における基金の運営管理に関する事項の公表状況をみたところ、公表されていなかったものは216基金となっていた(2009_3_2_2_2リンク参照)。

そして、基本的事項等が公表されていなかった計302基金のうち、各府省による基金に関する情報の公表及び地方公共団体等による基本的事項等の公表のいずれも行われていなかったものが内閣府において4基金見受けられた(2009_3_2_2_2_aリンク参照)。

(ウ) 保有割合等の報告に係る規定の整備状況等

前記の70補助金について、保有割合等の報告に係る規定の整備状況をみたところ、適用対象補助金26補助金については、保有割合等の報告に係る規定があるものが20補助金、保有割合等の報告に係る規定がないものが6補助金となっていた。一方、適用対象外補助金44補助金については、保有割合等の報告に係る規定があるものが8補助金、保有割合等の報告に係る規定がないものが36補助金となっており、適用対象外補助金においても保有割合等を報告させることとしていたものも見受けられるが、適用対象補助金と比べると、保有割合等を報告させることとしていないものの割合が高い状況となっていた(2009_3_2_3リンク参照)。

また、28年度末対象基金1,463基金について、地方公共団体等による保有割合等の報告状況をみたところ、保有割合等の報告に係る規定がある計693基金のうち、報告されていたものは655基金となっており、残りの38基金は、保有割合等の報告に係る規定があるのに、報告されていなかった。この中には、保有割合等を報告することを失念していたり、保有割合等を報告することの認識が欠けていたりするものも見受けられた。そして、保有割合等を報告する必要がないものを除き報告されていなかったものは、保有割合等の報告に係る規定がないものを含めると、計801基金となっていて、半数以上の基金において、基金規模を客観的に把握することが困難な状況となっていた(2009_3_2_3_aリンク参照)。

そして、保有割合等の報告に係る規定があるもののうち、文部科学、厚生労働両省がそれぞれ所管しているものの、同一の交付要綱に基づいて設置造成されている基金において、所管別に区分して経理を行っていて相互に配分変更することができないこととなっているのに、これらを合算して保有割合を算定していたため、基金規模の妥当性を適切に確認できない状況となっていたものが、2補助金見受けられた(2009_3_2_3_bリンク参照)。

(エ) 国庫返納に係る規定の整備状況等

前記の70補助金について、交付要綱等における終期前返納規定の整備状況についてみたところ、適用対象補助金26補助金については、終期前返納規定が定められているものが24補助金となっていた。しかし、厚生労働、経済産業両省において、適用対象補助金であるが終期前返納規定が定められていないものが2補助金見受けられ、基金規模が過大であると認められた場合、速やかに国庫返納を行うことができないおそれがある状況となっていた。そして、上記の2補助金について終期前返納規定を定めていない理由を確認したところ、厚生労働省は、基金を保有する都道府県において、法令に基づき、基金拠出率を設定する際に、基金規模や将来のリスクを踏まえた検証が適切に実施されているとし、経済産業省は、基金の取扱要領の整備が遅れたため、終期前返納規定が定められていなかったとしていた。一方、適用対象外補助金44補助金については、終期前返納規定が定められているものが25補助金となっていた。そして、終期が近いためや改正適正化令の適用対象外であるためなどとして、終期前返納規定が定められていないものが19補助金となっており、適用対象補助金と比べると、基金の見直しによる国庫返納のための終期前返納規定が定められていないものの割合が高い状況となっていた(2009_3_2_4リンク参照)。

また、24年度から28年度までの間に存在していた基金のうち、岩手、宮城、福島各県等に設置造成された基金を除く3,671基金について、24年度から28年度までの間における国庫返納の状況等についてみたところ、国庫返納の実績のあるものが1,063基金となっており、これらについて、国庫返納額等の状況をみると、国庫返納件数は1,336件、国庫返納額は計3162億余円となっていた。これらについて、返納理由をみると、基金規模の見直しに伴うものが156件、計894億余円となっており、基金規模の見直しに伴う国庫返納件数は全体の1割強で、これらは全て終期前返納規定が定められている国庫補助金等に係る国庫返納となっていた(2009_3_2_4_aリンク参照)。

ウ 基金規模等の状況

取崩し型の基金405基金について、過去3か年度の事業実績についてみたところ、過去3か年度において基金事業の事業実績がないものが16基金あった。また、残りの389基金について、基金保有倍率を算定したところ、基金保有倍率が10倍以上となっている基金が32基金となっていた。そして、これらの計48基金のうち5基金は、終期の到来や基金規模の見直しにより29年度以降に既に国庫返納が行われていた(30年9月末現在)。また、残りの43基金は、不確実な事故等の発生に応じて資金を交付する基金事業であり、基金の取崩しの対象となる事故等が少なかったなどとしていたものが2基金、基金事業の計画上、過去3か年度は基金事業の執行が少ないなどの期間であったとしていたものが12基金、基金事業の事情により、過去3か年度において当初の計画よりも基金事業の実施が少なかったなどとしていたものが29基金となっていた。そして、これら29基金のうち、総務、文部科学、農林水産、経済産業各省所管の基金において、今後の基金の使用見込みが計画等において十分に示されていなかったものが10基金見受けられた(2009_3_3リンク参照)。

回転型の基金90基金について、平均繰越率を算定したところ、平均繰越率が50%以上のものが78基金となっており、90基金の86.6%を占める状況となっていた。そして、78基金のうち76基金は、農林水産省(林野庁及び水産庁)が所管する基金であり、同省は、これらについて、従前から、自主納付制度を設けて、基金規模を客観的に把握するために、毎年度、都道府県に余剰金の額を算定させて、余剰金の自主納付について検討させるといった基金規模の適正化に向けた取組を行っていた。しかし、依然として繰越率が高くなっている基金が見受けられることなどを踏まえて、76基金のうち48基金(2補助金)は、同省(林野庁)において、基金規模の適正化に向けて自主納付制度の運用の見直し中であるとしている。また、残りの28基金(1補助金)については、同省(水産庁)において、自主納付制度が都道府県において十分に活用されているかについて十分に確認できていないなどの状況となっていた(2009_3_3_2リンク参照)。

(2) 所見

前記のとおり、会計検査院が23年10月に国会及び内閣に「国庫補助金等により都道府県等に設置造成された基金について」を報告して以降、政府において、行政事業レビューによる地方公共団体等に係る基金の見直しが行われるようになったり、26年10月に改正政令が施行され、基金造成費補助金等を交付する際の交付の条件が定められるようになったりして、各府省においては基金規模等の適正化に向けた取組が行われるようになってきている。

しかし、検査したところ、①基金によることなく事業を実施することの可否について検討する必要があると考えられるものが見受けられたこと、②各府省による基金に関する情報の公表及び地方公共団体等における基本的事項等の公表のいずれも行われていなかった基金が見受けられたこと、③基金規模を客観的に把握することが困難な状況となっていたこと、④終期前返納規定を整備することについて適切に検討を行う必要があるものが見受けられたこと、⑤今後の基金の使用見込みが計画等において十分に示されていなかった基金が見受けられたことなどから、各府省は、次の点に留意して、地方公共団体等と十分に連携し、基金事業が適切かつ有効に実施され、使用見込みの低い基金については国庫返納を促すことなどについて努める必要がある。

ア 改正適正化令の適用状況等

(ア) 基金事業としての性質の該当性の状況等

各府省は、今後も改正適正化令の趣旨を踏まえて、基金事業として実施されている事業が基金事業の性質に該当しているか、事業ごとに又は国庫補助金等ごとに確認するなどして、基金により事業を実施する必要があるか不断に検討すること。農林水産省は、2補助金の基金事業について、基金によることなく事業を実施することの可否について十分に検討すること

(イ) 基金の基本的事項の公表に係る規定の整備状況等

各府省は、適用対象補助金について、交付要綱等に基本的事項の公表を定めることについて十分に留意すること。適用対象外補助金についても、基金の透明性を高めて、国民への説明責任を果たすために、基本的事項の公表を定めることについて検討すること。また、交付要綱等において基本的事項等の公表が定められているのに、公表されていなかったなどの基金について、地方公共団体等に対して、基本的事項を適時適切に公表するよう周知徹底するとともに、各府省においても公表対象を十分に把握するなどして基金に関する情報を適時適切に公表するよう留意すること

(ウ) 保有割合等の報告に係る規定の整備状況等

各府省は、適用対象補助金はもとより、適用対象外補助金であっても、地方公共団体等と協議を行い、保有割合等を報告させるなどして基金規模を客観的に把握し、基金規模の妥当性を適切に確認すること。また、各府省は、保有割合等の報告に係る規定がある基金について、地方公共団体等が報告していないことの事情等を十分に把握した上で、保有割合等を報告させるよう周知徹底すること。文部科学、厚生労働両省は、所管別に区分して経理が行われている安心こども基金について、基金規模の妥当性を適切に確認できるようにするために、所管別に保有割合等を算定するようにすること

(エ) 国庫返納に係る規定の整備状況等

厚生労働省は、適用対象補助金であるが終期前返納規定が定められていない1補助金について、国費の適正かつ効率的な使用の観点等から、基金規模が過大であると認められる場合に、速やかに国庫補助金等相当額の国庫返納が行われるようにするために、終期前返納規定を整備することについて、適切に検討すること。また、各府省は、適用対象外補助金についても、基金の見直しにより基金規模を適正化するために、終期前返納規定を整備していない場合は、終期前返納規定を整備することについて検討すること

イ 基金規模等の状況

各府省は、基金の実際の使用実績や具体的な根拠資料等により今後の使用見込みを十分に把握したり、基金規模を客観的に把握できるよう保有割合等を報告させたりするなどして、引き続き基金を保有することの妥当性及び基金規模の妥当性を十分に確認等すること

会計検査院としては、今後とも国庫補助金等により地方公共団体等に設置造成された基金について引き続き注視していくこととする。