内閣府は、原子力発電施設等の使用がその区域内で開始されるなどしている都道府県等(以下「所在都道府県等」という。)が、原子力発電施設等緊急時安全対策交付金交付規則等に基づき、緊急時連絡網整備事業として統合原子力防災ネットワークを構成する地域系ネットワークの構築及び運用を行う場合に、原子力発電施設等緊急時安全対策交付金(以下「交付金」という。)を交付している。そして、同規則によれば、交付対象経費は、地域系ネットワーク内の所在都道府県等や緊急事態応急対策等拠点施設等を結ぶ専用回線の設置費及び使用料並びにテレビ会議システム等の通信設備等に係る経費とされている。しかし、地域系ネットワークと緊急事態応急対策等拠点施設を結ぶ基幹回線において通信設備の使用時に消費される帯域(以下「消費帯域」という。)が専用回線の契約により使用できることとなっている帯域(以下「契約帯域」という。)を上回っていて通信の安定性が確保されていない事態、枝回線を使用する全ての通信設備の消費帯域を合計して更に予備の帯域を加えるなどした帯域が契約帯域を大幅に下回っていて専用回線の使用料が節減できると認められる事態及び地域系ネットワーク内に設置する必要のないMCU(注)が設置されている事態が見受けられた。
したがって、内閣総理大臣に対して令和元年10月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり改善の処置を要求した。
本院は、内閣府本府において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、内閣府は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 緊急時連絡網整備事業により設置する専用回線について、通信の安定性を確保するために必要かつ十分な帯域の算出方法を検討して、2年3月に所在都道府県等に対して事務連絡を発し、通信設備ごとの消費帯域を参考値として示すとともに、当該参考値を基に算定した通信設備ごとの消費帯域を積み上げることなどにより専用回線の帯域を算出することを周知して、通信の安定性が確保されなかったり、契約帯域が消費帯域を大幅に上回っていることにより交付金の交付が過大となったりすることがないよう指導した。
イ 2年3月に所在都道府県等に対して事務連絡を発し、統合原子力防災ネットワークにおける通信設備の構成に係る共通の仕様を示すなどして、通信設備の構成を適切なものとするよう指導した。