内閣府は、待機児童の解消を図り、仕事と子育てとの両立に資することを目的として、平成28年度から企業主導型保育事業を実施しており、28、29両年度は公益財団法人児童育成協会(以下「協会」という。)を補助事業者として選定し、国庫補助金を交付している。そして、協会は、同事業を実施する者に対して、同事業を行うために設置する保育施設(以下「企業主導型保育施設」という。)の整備に要する費用(以下「整備費」という。)等の助成を行っている(以下、整備費の助成を受けて企業主導型保育施設の整備を行う者を「事業主体」という。)。しかし、企業主導型保育施設の利用が低調となっていたり、企業主導型保育施設が設備基準等に適合した設計となっているかなどについて十分に確認しないまま整備を実施していたため、整備途中で生じた設計の変更等により開設が遅延して児童を受け入れられていなかったりなどしている事態が見受けられた。
したがって、内閣総理大臣に対して31年4月に、会計検査院法第36条の規定により次のとおり改善の処置を要求した。
本院は、内閣府本府において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、内閣府は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 令和2年3月に企業主導型保育事業費補助金実施要綱(以下「実施要綱」という。)を改正し、補助事業者に対して、助成の申込みに対する審査基準を定めさせた。そして、この審査基準において、事業主体が助成の申込みに当たって提出する書類として、従業員の意向や地域の保育ニーズを十分に把握した上で利用定員を設定する手順を示した利用意向調査票の様式を定めさせることにより、新たな事業主体の募集の際に、適切に保育ニーズを把握して利用定員を設定することの必要性等を事業主体に周知させた。
また、補助事業者に対して、上記のとおり審査基準を定めさせることにより、利用定員の妥当性等について、事業主体から提出させた利用意向調査票等を確認した上で、適切に審査等を行わせるようにした。
イ アで改正した実施要綱において、補助事業者が、各企業主導型保育施設に係る定員充足率を定期的に把握すること及び利用が低調となっているなどの場合には当該施設と保育ニーズのある企業とのマッチングの支援を行うことを定めて、補助事業者に対して、事業主体に対して十分な指導等を行わせるようにした。
ウ アの審査基準において、事業主体が助成の申込みに当たって提出する書類として、企業主導型保育施設の設備基準等との適合性等について確認するためのチェックシートの様式を定めさせることにより、補助事業者が、設備基準等との適合性等について、事業主体から提出させたチェックシート等を確認した上で、十分に審査等を行えるような仕組みを整備した。