総務省は、地方交付税法(昭和25年法律第211号)及び「東日本大震災に対処する等のための平成二十三年度分の地方交付税の総額の特例等に関する法律」(平成23年法律第41号)に基づき、東日本大震災(平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う原子力発電所の事故による災害をいう。)に係る災害復旧事業、復興事業その他の事業の実施のために特別の財政需要があることなどを考慮して道府県及び市町村に対して特別交付税(以下、この特別交付税を「震災復興特別交付税」という。)を23年度から交付している。
そして、総務省は、道府県及び市町村に交付すべき震災復興特別交付税の額を算定するために、「地方団体に対して交付すべき平成二十三年度分の震災復興特別交付税の額の算定方法、決定時期及び決定額並びに交付時期及び交付額の特例等に関する省令」(平成23年総務省令第155号)等を23年度以降制定して、各年度における特別の財政需要として算定の対象となる事項(以下「算定事項」という。)を定めている(以下、23年度から令和元年度まで各年度に制定している各省令を総称して「復興特交省令」という。)。
また、市町村は、各市町村に該当する算定事項ごとに財政需要に関する基礎資料(以下「算定資料」という。)等を作成して、都道府県に提出しており、都道府県は、市町村から提出された算定資料等の審査を行って総務省に送付し、同省は、提出された算定資料等に基づき、算定事項等に関して、復興特交省令により、新たに生ずる復興事業等に必要な経費等の合計額を算定するなどして震災復興特別交付税の額を決定して交付している。
そして、震災復興特別交付税の額の算定に際しては、復興特交省令等によれば、事業の実施状況に合わせて必要な経費の実績額又はその見込額を用いることなどにより算定することとされており、見込額を用いた場合には、実績額が確定した後に、実績額に基づき算定した額との差額について、実績額が確定した年度の震災復興特別交付税の算定において精算することとされている。
算定事項の主なものには、国の補助金等(復興特交省令の別表に定められた補助金等(東日本大震災復興交付金等))を受けて施行する事業に要する経費のうち道府県及び市町村が負担すべき額として総務大臣が調査した額(以下「補助事業等に係る地方負担額」という。)等がある。
そして、総務省は、平成29年度から令和元年度までの間に、福島県双葉郡広野町が平成26年度から29年度までの間に東日本大震災復興交付金を受けて実施した災害公営住宅に居住する者に対する家賃の低廉化に係る事業(以下「家賃低廉化事業」という。)に要する事業費等に基づき復興事業に必要な経費を算定するなどして、同町に対して、震災復興特別交付税計1,740,246,000円を交付していた。
本院は、合規性等の観点から、震災復興特別交付税の額が適正に算定されているかに着眼して、29年度から令和元年度までの間に交付された震災復興特別交付税を対象として、広野町から算定資料等の提出を受けるなどして検査するとともに、総務本省において算定資料等の内容を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査の結果、同町は、算定資料等の作成に当たり、補助事業等に係る地方負担額のうち、町が負担すべき額の算定において、家賃低廉化事業に係る経費の算定が適切でなかったため、補助事業等に係る地方負担額が過大となり震災復興特別交付税2,083,000円が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同町において、算定資料等の作成に当たり町が負担すべき額の算定の基礎となる家賃低廉化事業に係る交付対象事業費を算定することに対する理解が十分でなかったことなどによると認められる。
(後掲の「災害公営住宅の家賃の低廉化に係る事業費の算定が適切でなかったため、交付金により造成した基金が過大に使用されていたもの」参照)